ごきげんクリニック浜田山 院長 前田 陽子先生へインタビュー。放射線科医から一転、点滴療法研究会のセミナーで高濃度ビタミンC点滴との出会いにより自費診療に舵を切った前田先生。アメリカにある「リオルダンクリニック」に留学し学びを深めたのち、現在は「ごきげんクリニック浜田山」院長、ならびに「BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)」の美容内科医として、活躍の場を広げています。今回は、前田先生が医師としてキャリアチェンジされた背景や今後のビジョン、治療へのこだわりなど詳しく教えていただきました。
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ドクターズプロフィール
ごきげんクリニック浜田山 院長
前田 陽子(まえだ ようこ)先生
点滴療法研究会のセミナーで高濃度ビタミンC点滴と出会ったことをきっかけに、栄養療法をはじめとする自費診療に魅力を感じるようになり、アメリカ「リオルダンクリニック」に留学。現在は、「ごきげんクリニック浜田山」院長として、「BIANCA CLINIC(ビアンッカクリニック)」の美容内科医として、再生医療やホルモン補充療法、ペプチド療法など世界基準の先進的な治療を提供し体内からの若返りを目指すことにより、患者さまの健康と美しさをトータルでサポートしている。
(経歴) 2012年 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 初期研修 2014年 京都府立医科大学大学院 放射線診断治療学 入局 2015年 済生会滋賀県病院 放射線科 2016年 麗ビューティー皮フ科クリニック 2018年 リオルダンクリニック(米国) 2022年 三番町ごきげんクリニック 2023年 BIANCA CLINIC 2024年 ごきげんクリニック浜田山 (所属学会・資格等) 日本美容内科学会理事 米国抗加齢医学会(A4M)専門医 A4Mアンチエイジング・代謝・機能性医学フェローシップ 米国先端医療学会キレーション専門医 |
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医師としての背景 ~病気だけに集中して向き合える放射線科医を志した~
―――まずは、医師を目指した背景と放射線科を選んだ理由を教えてください。
母が医師で、ずっとその背中を見て育ちました。だから昔から自分も医師になるものだと思い、地元の静岡県で医学部に進学しました。たくさんある診療科のうち放射線科医を選んだのは、純粋に画像として病態と向き合えるところに魅力を感じたからです。人を含めて病気を診ると表現されることもありますが、私としては実際に患者さまと話をすることで、診断に自分の印象が入るとあまり良くないなと思って。病気だけに集中して向き合える放射線科医を目指すことに決めたんです。
ただ、放射線科を選ぶと患者さまと接する機会が本当になくなってしまうと考え、研修医の間に臨床の経験をたくさん積みたいという観点で「沖縄県立南部医療センター・こども医療センター」を選びました。
美容医療を志したきっかけ ~高濃度ビタミンC点滴療法との出会いが転機に~
―――放射線科医として研鑽を積みながらも、前田先生が現在専門とされる自費診療の治療に興味を持たれたのはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
研修医を経て京都府立医科大学放射線科に入局し、放射線科医としての第一歩を踏み出しました。研修医時代は土日もほとんど病院に入り浸りで忙しかったのですが、いざ放射線科医として働き始めると、時間に余裕ができてしまって。せっかくなら勉強しようと「麗ビューティー皮フ科クリニック」で土日のみ働き始めたんです。
―――「麗ビューティー皮フ科クリニック」を選んだのはなぜですか?
どちらかというと職を求めてというより、自分がきれいになるための知識を身につけたいというのが働き始めた動機でした。そのためには仕事として携わるのが一番勉強になると思い、美容医療クリニックで働くことにしたんです。ただ、きっかけは何であれ、「麗ビューティー皮フ科クリニック」の居原田 麗先生との出会いが私の転機になりました。
居原田 麗先生は社員やアルバイトを問わずすごく勉強させてくれる懐の深い方で。興味がある勉強会に積極的に行かせてくださいました。中でも、私の考え方が変わったのが点滴療法研究会のセミナーです。それまでは保険診療が絶対という考えだったのですが、すごく良い治療だなと感銘を受けて自費診療にも興味がわきました。高濃度ビタミンC点滴療法に出会ってから、ビタミンCのことを考えるだけで胸が高まるくらい好きになってしまって。昔から知られている栄養素ですがさまざまな働きがあり、現在でも研究が進むにつれてまだ新しい発見があるなど、その奥深さに魅了されてしまいました。
―――なるほど、放射線科よりも追求したい領域が見つかったのですね。
そうですね。もともと放射線科医になった理由の1つに、早期発見・早期治療をしたいという想いがあったんです。5mm程の膵がんを見つけたときに早期治療につながると喜んだのですが、まだ小さすぎるという理由で経過観察になってしまったことがあって。大きさが1cm以下の膵がんの5年生存率は80.4%ですが、1cmを超えると50%となってしまうことから、放射線科医は小さいうちに見つける努力をしています。高濃度ビタミンC点滴療法などについて学んでいる身としては、病態を見守るのではなく病気にならないようなアプローチができるのでは、と思ったんです。
また、ニッチな領域で自分の知識を活かしたいと思うようになったことも理由の1つ。放射線科医の対応範囲を超えた領域を追求すべく、医局を辞めることにしました。放射線科の先生方には常々ビタミンCのすごさを布教していたので、本当にそっちの世界に行っちゃうんだねと言われたのを覚えています。
美容医療への情熱 ~探求心に突き動かされ、リオルダンクリニックへ~
―――医局を出られたのち、「リオルダンクリニック」に留学された経緯を教えてください。
医局を辞めてからそのまま「麗ビューティー皮フ科クリニック」で働いていたのですが、当然ながら美容がメインで栄養療法を目的に来られる患者さまはあまりいらっしゃらなくて。美容だけがやりたいわけではなかったので、まずは興味のある高濃度ビタミンC点滴療法について学ぶことを決めました。
―――勉強先として、米国にある「リオルダンクリニック」を選ばれたのはなぜですか?
ビタミンCの勉強をするなら、世界で最も高濃度ビタミンC点滴療法で有名なクリニックが良いだろうと思ったんです。しかし、伝手があったわけではないので、まずは「勉強に行かせてください」という内容のメールを何度か送ってみました。しかし、私のつたない英語では伝わらなかったのか、返信がなくて…。
そこで次なる手として点滴療法の第一人者である柳澤 厚生先生を頼ることにしました。といっても私が一方的に存じ上げているだけで、面識はない状態で。無理を承知で「リオルダンクリニックに勉強に行きたいので推薦してもらえませんか?」とお願いしたところ、その1ヶ月後に「リオルダンクリニック」の先生による来日セミナーの予定があり、直談判できるチャンスをいただけることになったんです。
―――すごい行動力ですね!リサーチフェロー*として「リオルダンクリニック」に留学されたわけですが、そこで得られた学びについて教えてください。
アメリカに行って、高濃度ビタミン療法をはじめ機能性医学や予防医学など、本当に多くのことを学ぶことができました。毎月のようにいろいろな場所で行われる学会に参加できたことも大きかったですね。
私は英語がペラペラというわけではないのですが、Google翻訳などのツールを使い何とかやれたことで、自分に自信を持てるきっかけにもなりました。どこから情報を得れば良いかも分かるようになって、すべてにおいて幅が広がったという印象です。
*リサーチフェロー…大学教員や研究所の研究員などの研究職に従事する者。日本語では、研究員や特別研究員と訳されることが一般的。
―――医療に対する価値観に変化はありましたか?
よく日本の医療は30~50年遅れているという風に表現されますが、本当にそうだなと肌で感じました。これまでは病気がどのように起こるかあまり考えたことがなかったのですが、生活習慣やストレスなどの環境因子が慢性疾患につながることもあると理解でき、病気の見方から大きく変わりましたね。
その後、地元の静岡に戻り、母のクリニックを手伝っていたのですが、自費診療についてより需要の高い東京に出ることを決め、アンチエイジングプログラムを提供する「三番町ごきげんクリニック」で働き始めました。それから美容内科を重視されている「BIANCA CLINIC」にも在籍。現在は、「ごきげんクリニック浜田山」の院長を務めています。
前田先生の治療に対する想いやこだわり ~人生に集中できる状態を提供したい~
―――前田先生の考える美容医療や予防医学の魅力を教えてください。
美容医療も予防医学も、一番大きな目的はその方の人生に集中できる状態を作ることだと思っていて。例えば、美容医療でコンプレックスを解消することで、コンプレックスを意識せず過ごせるようになるかもしれません。健康に関しても、本当に元気なときに健康でありたいってあまり思わないですよね。予防医学で健康になりたいと思わない状態を作ることで、結果的に人生に集中できるようになる。そういった意味で、美容医療も予防医学も人生を豊かにするための1つの手段だと思っているし、私が目指す形でもあります。
―――前田先生はどのようなこだわりを持って治療に臨まれていますか?
私のこだわりは2つあります。1つは情報収集を欠かさないこと。この領域はスピード感が早くて新しい情報がどんどん出てくるので、専門家として乗り遅れちゃいけないなと思っています。
もう1つは、治療方法は患者様に決定してもらうこと。同じ治療をするにしても、おまかせのつもりでやるか、自分が決めるかによって結果って変わってくるんじゃないかと思っているんです。患者様が治療内容をきちんと理解し納得したうえで治療を受けることを重視して、決断プロセスを患者様に委ねるようにしています。
アンチエイジング医学の課題と先生の取り組み ~日本の医療の底上げに貢献したい~
―――前田先生の考える日本の美容医療業界の課題を教えてください。
患者様の美しさを引き出すには、土台となる内側からのケアが欠かせません。海外では、Longevity medicine(長寿医学)専門のクリニックがあり、認知も高まっているのですが、日本では残念ながらまだ一般的ではありません。また、ペプチド療法など日本ではまだなじみのない先進的な治療方法もたくさんあります。私は言語の問題が大きいのではと思っているのですが、ほかの国の情報にもしっかりアンテナを張って認知度を高めていく必要があると感じています。
また、日本に限った話ではありませんが、自費診療になるとどうしてもお金がかかります。同じ10,000円でもレーザー治療だと安くて、サプリメントでは高いというイメージがどうしてもあるようです。今は認知度も低いので仕方ないところではありますが、アンチエイジング医学を駆使した治療が根付いていき取り入れる方が増えれば、価格も下がっていくと思います。
―――前田先生の今後の展望について教えてください。
アメリカに行って改めて感じたのは、日本が好きだなということ。先進国であるはずの日本になぜこの情報が入っていないんだろうと思う場面がすごく多くて悔しかったんです。だからこそ、日本の医療がほかの国と同じレベルまで上がるよう貢献したいというのが私の想いです。日本ではあまり知られていない良い治療を導入するなど、美容内科医としての価値を提供していけたらと思っています。
エピジェネティッククロック(生物学的年齢検査)*もその1つ。これまでの予防医療の難点は、結果が見えなかったところです。例えば、このサプリメントが健康に良いよって言われても、飲み続けた方が亡くなるまで結果は分からないし、長生きしたとしてもサプリメントの効果なのか実証が難しい。しかし、エピジェネティッククロックによりサプリメントを飲み始めたときと数ヶ月後の生物学的年齢を比較すれば、効果の実証ができるようになります。エピジェネティッククロックにより、若返りの領域が次のステージに進む要因になったといえるでしょう。一人ひとりに合わせたアプローチにより生物学的年齢の若返りを目指すことが、私の行う治療の一環です。
現在エピジェネティッククロックに関する論文を日本語に訳したりしているのですが、医療関係者はもちろん、今後医学部が教育の1つとして取り入れてくれて、これから医師を目指す若い方にこういう世界があることを知っていただけると良いなと思っています。
エピジェネティッククロックは今まで行われてきたテロメアテスト*などと比べると、より正確に生物学的年齢を割り出すことができるのですが、どちらも“生物学的年齢を測る”という言葉にすると同じになってしまう。それぞれの違いをきちんと伝えるなど、ほかの国の情報をきちんと導入していくことも、課題の1つだと思っています。
また、「BIANCA CLINIC」では常に世界最新のエピジェネティッククロック検査を導入しています。エピジェネティッククロック検査の種類は随時更新していますが、現在導入しているのはSynphonie AgeやOmicm Ageです。エピジェネティッククロック検査により実際の老化スピードを正確に測定し、治療効果の検証をより高度に行うことができるので、興味のある方はぜひ「BIANCA CLINIC」にお越しいただければと思います。
*エピジェネティッククロック…生物学的年齢を測る検査。メチル基がDNAについたり離れたりする変化をAIで認識し生物学的年齢を予測する。
*テロメアテスト…染色体の末端にあり染色体を保護する役割を担う構造体であるテロメアの長さから遺伝子年齢を予測する。
読者や若手医師へのメッセージ ~若返り治療に注目してQOLを高めて~
―――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
世界的には老化は病といわれていて、実際に老化の原因や治療方法が解明されてきています。若返りは科学的にもかなり現実味を帯びてきていることを、まずは知ってほしいと思っています。
長寿になると高齢者が増えてお金がよりかかってしまうのではと考える方もいると思うのですが、元気に働くことのできる高齢者が増えれば経済的にはプラスなんです。健康寿命が伸びることは、日本の社会にとっても理想的な状況。だからこそ、若返り医療を広く認知していただきながら、自分の健康に注目していけるようになると良いですね。
体が若返ると健康にもなるし美しくなることにもつながり、結果的にQOL*も高まると思います。美容医療で肌がきれいになったりコンプレックスが解消されたりしたら、次のステップとして若返り治療を検討していただければうれしいです。
*QOL…Quality of life(クオリティ・オブ・ライフ)の略称。生きる上での満足度を表す主観的な概念。
―――ありがとうございます!若手医師にもメッセージをいただけますか?
若手医師にお伝えしたいのは、日本での学びがすべてだと思わないでほしいということ。世界は広くて日本とは違う視点の学びも得られます。ぜひ世界まで視野を広げて、医療を追求していってほしいですね。