男性器治療の分野は、言い換えれば“コンプレックスビジネス”。
恥や劣等感を刺激されて、冷静な判断ができないままクリニックで高額な契約を結んでしまうケースがあとを絶ちません。
「包茎・短小は恥ずかしい」「女性を満足させられないかも」……そんな不安をあおる広告が、SNSやネット上にあふれています。
あなたの悩み、本当にその治療が必要でしょうか?適正な男性器治療を見極めるために、まず知っておきたい現実をご紹介します。
増えつづける「不安をあおる」男性向け広告

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インターネットやSNS上で目にする“男性向け”クリニックの広告。
包茎や陰茎部のサイズといった男性器の特徴を「恥」「恋愛や性の失敗」に結びつけるような、刺激的なキャッチコピーを目にしたこともあるのではないでしょうか?
「女性は男性のアソコをチェックしています」
「彼女はガッカリしているはず」
「そのままだと一生、満足させられない」
こうしたキャッチコピーは、不安や劣等感を刺激して、高額な施術へと男性を誘導するための機能として配置されているケースも。
とくに若く、性への自信が揺らぎやすい層の男性に対して、「恥の感情」に訴えかける広告表現は年々エスカレートしている傾向です。
なかには「早漏」「におい」「亀頭部の形状」といった細かな欠点を挙げて、不安を増幅させる広告もみられます。
身体の悩みや症状に寄り添う医療のはずが、いつのまにか売り上げ最優先のマーケティングにすり替わっていないか……。
私たちには、その違いを見極める目を持つことが求められています。
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コンプレックスビジネスの費用が高額になりやすい仕組み

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「今だけ!たった◯◯◯◯円で包茎治療」「陰茎増大が◯分で完了」といった安価な価格設定で、悩みがすぐに解決するかのような印象を与えるネット広告。
しかし、実際にクリニックを訪れると、広告の価格では治療が受けられないというトラブルも後を絶ちません。
良く聞かれるパターンは以下のとおりです。
〈男性向け医療におけるコンプレックスビジネスの一例〉
- 広告の安さアピールに惹かれて来院した男性に対し、カウンセリングで医師やスタッフが「皮が多すぎる」「亀頭が小さい」「このままだと仕上がりが悪くなる」など、専門的な言葉で不安をあおる。
- 「あなたの男性器の状態では、キャンペーン適用外です」と告げ、広告に記載の治療では不十分であることを印象づける。
そして、より適した治療として数十万円~100万円以上もする高額治療の契約を提案する。 - カウンセリング中に「このままだとパートナーに嫌がられますよ」「今決断しないと後悔しますよ」といった、羞恥心や焦りをあおる言葉を投げかけ、契約に強引につなげるケースも。
「自分なら強い意志で断れる」と思う方もいるでしょう。
しかし、陰部の診察という極めてプライベートな場面で、冷静な判断力を保つのは容易ではありません。
実際に「恥ずかしい」「早く終わらせたい」という心理が働き、その場で高額契約にサインしてしまう男性も少なくないのです。
コンプレックスビジネスが成立してしまう背景には、こうした男性特有の「性の悩みは恥ずかしくて誰にも相談できない」という心理があります。
格安治療は最初から成立しない仕組み?
そもそも、こうした格安広告の多くは“集客のためのエサ”であり、最初からその価格で治療するつもりがない場合も……。
医療用の接着剤で一時的に留めるだけの簡易的な処置を「切らない包茎手術」と謳い、すぐ取れてしまったといったケースも報告されています。
また、希望していない亀頭や陰茎へのヒアルロン酸注入などを“必須オプション”として追加され、気づけば高額請求されるケースも。
なお一部の大手クリニックでは、リピーターの獲得よりも一見さんの新規患者を大量に集めることに注力している傾向がみられます。
患者が実際の治療に不満を持ちクリニックを離れても、広告を展開すれば新たなターゲットが流れ込んでくる仕組みになっているのです。
一方で、ドクター側に悪意がなくとも「より良い治療を提供したい」という思いからオプション治療を勧め、結果的にアップセルになっていることも。
美容医療業界では、医師自身がアップセルに対して麻痺してしまっている側面もみられます。
しかし、誠実な医師・クリニックであれば、患者がその場で契約せず持ち帰って考える姿勢を尊重してくれるはずです。
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どう選べば“適正治療”になるのか?

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広告であおられ、不安に駆られたまま受けてしまう高額な男性器治療。
そうならないために、患者はどうやって適正な治療を見極めればいいのでしょうか。
適正治療を選ぶ方法①│本当に治療すべき悩みなのか見つめ直そう
まず重要なのは、「本当に治療が必要かどうか」を冷静に見つめ直すことです。
包茎やサイズの悩みといったデリケートな問題は、そもそも“機能的に治療が必要”なのか、それとも“感覚的なコンプレックス”に過ぎないのかを区別する必要があります。
包茎には、雑菌が繁殖しやすくなることによる炎症や裂傷、刺激に弱くなることによる早漏といった機能性の問題から、医療の介入が推奨されるケースもあります。
しかし、広告が作り出した「正常の基準」によって、男性器の平均的な個人差を“異常”だと思い込んでしまうケースも多いのです。
また「ペニスが短い」と悩んでいる方の中には、日本人男性の平均サイズ(勃起時で12〜13cm程度)であっても不安を抱えてしまう方もいます。
SNSや広告で日々目にする「理想像」。
それが現実離れした状態であっても、繰り返し目にすることで「自分は劣っている」という錯覚を抱いてしまうのかもしれません。
適正治療を選ぶ方法②│信頼できる医師のもと自分の意思で治療を選択
次に大切なのが「クリニック・医師選び」です。
まず、医師が日本泌尿器科学会や日本形成外科学会など、信頼できる医療学会に所属しているかどうかは一つの指標だといえるでしょう。
学会所属医は、一定以上の経験や知識を求められ、倫理規定に基づく医療の提供が期待されます。
また、HPやカウンセリングでの治療の説明がわかりやすく丁寧かどうか、料金表示が明確であるかも重要なチェックポイントです。
オプションメニューが豊富に用意されている場合、メニューの追加を強く勧められる可能性がないとはいえません。
そして初診時に「今日契約すれば割引価格です」といった“今すぐ”を強調されたら、焦らずいったん引き返すことをおすすめします。
信頼できる医師は、患者が訴えるコンプレックスに対して、“治療しなくても大丈夫”という選択肢も含めて提案してくれる傾向にあります。
医療の本質を理解し、誠実に男性器治療に向き合う医師・クリニックも多く存在します。
話をじっくりと聞いてくれる医師に出会い、自分自身の意思で治療を選んでくださいね。
まとめ
あなたが今感じているコンプレックスは、本当に「あなた自身の声」でしょうか?
それとも広告に刷り込まれた「誰かの基準」なのでしょうか?
コンプレックスは誰もが持つ繊細な感情です。
だからこそ、それをビジネスの材料として利用するクリニックには、慎重な目を向ける必要があるでしょう。
適正な価格で本当に望む結果が得られるように、今私たちには正しい知識と冷静な判断力を持つことが求められています。
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