美容整形で全身麻酔を受けた後、「認知力が低下した」と感じる体験談が相次いでいる。麻酔の安全性は確立されているはずだが、問題は医師の技量や管理体制にある可能性が指摘されている。患者が自身を守るために何を知るべきなのか、専門医の見解とともに考察する。
【POINT】
1.全身麻酔後の「認知力低下」報告が相次ぐ
2.執刀医が麻酔も担当する「一人二役」が安全リスクに
3.麻酔科医の有無や管理体制を事前に確認が必須
1. 美容整形の全身麻酔、本当に安全?相次ぐ「認知力低下」の体験談
近年、美容整形の全身麻酔後に「記憶力が落ちた」「判断力が鈍った」と感じる体験談がX(旧Twitter)上で増えている。特に2025年2月中旬から、複数のユーザーがこの現象を指摘し、議論を呼んでいる。
「全身麻酔が原因なのか?」と不安視する声もあるが、麻酔そのものが脳機能に長期的な影響を及ぼす科学的根拠はないと専門家は指摘している。ただし、手術中の管理ミスによって脳が低酸素状態に陥ると、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があるという。
銀座みゆき通り美容外科の水谷和則医師は、「全身麻酔は適切に管理されていれば問題ないが、低酸素状態が続けば脳細胞がダメージを受けることがある」と警鐘を鳴らす。つまり、美容整形のリスクは麻酔そのものではなく、医療体制や医師の管理能力に依存している可能性が高いのだ。

2. 「一人二役」手術の危険性、利益重視のクリニックが抱える課題
本来、全身麻酔を行う際は、麻酔科医と執刀医が別で担当するのが理想的だ。しかし、美容クリニックの中には、執刀医が麻酔も担当する「一人二役」体制をとっているケースがあり、これが安全性の低下に繋がっている可能性がある。
- 全身麻酔は呼吸や血圧、酸素飽和度の管理が不可欠
- 適切な管理がされなければ、低酸素状態が続き、脳機能に影響を及ぼす可能性
- 一人二役の手術では、麻酔の管理が疎かになるリスクが高まる
水谷医師は、「本来ならば麻酔科医が担当すべき全身麻酔を、利益優先のために執刀医が兼務するケースがある」と指摘している。このようなクリニックでは、アラームが鳴っても手術を続行し、患者が危険な状態に陥る例も報告されているという。
さらに、業界内では「直美(医学部卒業後すぐに美容外科へ進む若手医師)」や「シャドウドクター(患者には知らされず別の医師が手術を担当する)」といった問題も重なり、安全性の担保が難しくなっている。売り上げ重視の経営方針が、患者のリスクを高めているのではないかという懸念が拭えない。
3. 患者が自分を守るためにできることとは?
では、美容整形を受ける際に、患者はどのようにリスクを回避すべきか? 水谷医師は以下の点を確認することを推奨している。
✔ 全身麻酔を担当する医師は誰か?
→ 麻酔科医が担当しているかを事前に確認することが重要。「麻酔担当医=執刀医」ではないか、必ずチェックする。
✔ クリニックの安全管理体制はどうなっているか?
→ 生体モニターや気管挿管の設備が整っているか、術前カウンセリングで聞いておく。
✔ 執刀医の経験と実績は?
→ 「直美医師」や経験の浅い医師が全身麻酔を伴う手術を担当する場合、リスクが高くなる可能性がある。
✔ 手術の適応を慎重に考える
→ 全身麻酔を伴う大規模な手術(骨切り・フェイスリフト・豊胸など)を短期間で何度も受けることは避けるべき。