非侵襲が主流化、年1,500万件の選ばれる医療
米国における美容医療の進化は、外科手術から非侵襲的・短期回復型の施術へとシフトしている。ボトックス、ヒアルロン酸フィラー、レーザー再生、脱毛などの治療は年間1,500万件以上に達し、費用対効果と即効性を重視する中間層に浸透している。
2023年だけで非侵襲施術に60億ドル(約9,300億円)超が投じられ、30〜45歳層が最大の市場セグメントとして年間約500万件を占めた。平均可処分所得は約6万ドル(約930万円)、1人あたり年間平均支出は1,500ドル(約23万円)。この層は“老化の兆し”を早期にケアする意識が高く、美容を“未来投資”として捉えている。
男性130万件、高齢者400万件──多様化する美容ニーズ
男性の施術件数は130万件を突破。SNSと外見意識の変化により、ボディケアや輪郭施術への関心が拡大している。一方、55歳以上の高齢者も年間400万件超の施術を受けており、“ダウンタイムが短い施術”を求める傾向は加速している。
メディカルスパ市場も堅調だ。全米5,000施設が50億ドル(約7,750億円)超の収益を計上。都市部ではAIによる肌診断、バーチャル診療、パーソナル施術設計が当たり前になりつつあり、年間2,500ドル(約38万円)を投じる層も少なくない。日本の医療サービスと比較すると、その“美容×テック”融合の進展には驚かされる。
上位5社で市場シェア43%──“美容医療のGAFA”構造に
BotoxやJUVÉDERMで知られるAbbVie(アッヴィ)を筆頭に、Galderma、J&J(Mentor)、Revanceなど上位5社が43%以上の市場シェアを占める寡占構造が確立されている。
ブランド力とR&D投資の両輪で、“エスニック多様性対応”や“即効性ボツリヌス製剤”など次世代プロジェクトが続々進行。2020年のアラガン買収(約9兆円規模)により、顔面美容とボディ領域の統合戦略が可能となった。製品力+ストーリーテリング+包括的トレーニング体制により、“美容医療のApple”と評される存在に。
一方、日本では「価格感への抵抗」「医師の情報発信力不足」「法規制への過敏さ」などが壁となり、同様のエコシステム形成には時間を要する可能性がある。

編集長ポイント
“選ぶ自由”が医療の価値になる──米国式リテラシー革命に学ぶべきこと
米国市場の成長は、「美容医療がライフスタイルの一部になる未来」を先取りしている。 日本における“自由診療の再定義”も避けられないタイミングに差しかかっている。その鍵となるのは、医療者の教育と発信、そして生活者のリテラシー向上だ。
NEROは、美容医療が「贅沢」でも「広告案件」でもなく、人生と向き合う“自己選択の医療”であることを伝えるためのインフラでありたいと考えている。
✅ まとめ
- 米国美容医療市場は2033年までに714億ドル(約11兆円)規模に到達予測
年間12.65%成長という驚異的な伸びを示す。
- 非侵襲施術が美容医療の主力分野へシフト
ダウンタイム不要・即効性重視の治療に高い需要。
- ミドル層・男性・高齢層の3大セグメントが市場を牽引
それぞれが美容施術に対する新たな主役に。
- SNS・バーチャル診療など、デジタル起点の市場形成が進行中
消費者行動は“リアル×オンライン”で変化。
- 上位5社で市場シェア43%、AbbVieがBotoxなどで圧倒的存在感
ブランド×研究力の融合が寡占構造を加速。
- NERO視点:日本市場は今、“文化的キャッチアップ”を求められている
単なる技術導入ではなく、医療と美容の距離をどう埋めるかが鍵。