1.進化する非外科手技と膨らむ美容医療ニーズ
再生医療の応用や高性能機器の登場により、ボトックス・糸リフト・レーザーなど非外科的な若返り施術が急増している。
また、コロナ禍で一時停滞した施術数も、2022年にはコロナ前を超える水準に回復。
現在は“組み合わせ治療の時代”とも言われるほど、多様なニーズに応える進化が加速している。
NERO考察: 市場の拡大は確実だが、制度面の整備が後手に回れば信頼崩壊につながりかねないとも感じる。
2. 健康被害と説明不足──制度と現場のすれ違い
一方で、副作用・熱傷・後遺症といった健康被害に関する相談は全国的に増加。
調査では、患者の約4〜5割が「十分な説明がなかった」と回答しており、無資格者による施術、カウンセラー主導の診断、医師不在の不透明な現場体制も露呈している。
保健所も専門知識が不足し、実質的なトラブル解決は皮膚科などの医療現場に委ねられているのが現状だ。
NERO考察: 「自由診療」ゆえの放任が、“医療”の根幹を揺るがしているかもしれない。

3. 若手医師の“直美”化と制度未整備の危うさ
一概にすべての若手医師がとは言えないのは、以前からNEROは伝えている。しかし、美容外科における20〜30代の医師比率は10年で倍増し、過半数を突破。
一方、医学部・初期研修では美容医療の教育はほぼ皆無で、実践投入は“即戦力”ではなく“即不安”とも言える部分もあり、「正規カリキュラム化と卒後研修の義務化が不可欠」と指摘の声もある。
NERO考察: 個々の単位での教育なき現場拡大は、患者・医師ともに不幸を招く“制度事故”の予兆かもしれない。
編集長POINT
~美容含む自由診療と教育の間にある“制度の谷”~
美容医療の拡大は歓迎すべき変化だが、制度設計の欠如は見過ごせない。自由診療という“未定義領域”で起きる医療行為には、責任の所在と教育の担保が必要だ。
若手医師の“直美化”は成長機会でもあるが、裏返せば業界全体の制度的放置の象徴ともいえるかもしれない。
今こそ皮膚科や形成外科が主導し、教育・安全・倫理の「三位一体」の仕組みを築くべきときにあり、美容医療の未来は、現場と制度の対話から生まれる。

まとめ