外科医 × 起業家 × 教育者 ― 杉本 真樹氏の軌跡

杉本 真樹(すぎもと まき)
医師・医学博士/帝京大学冲永総合研究所 Innovation Lab 教授/Holoeyes株式会社 共同創業者・CEO
Apple社「世界を変え続けるイノベーター30名」に選出
外科医として現場に立ちつつ、XR・ロボット手術・空間コンピューティングを社会実装する起業家・研究者

👉 Holoeyes Inc.
未来医療を映し出す4つの視点とは?
🔹 医療現場の「非効率」を可視化する
杉本氏が最も強調したのは、
「医療の非効率をどう効率化するか」 という視点だった。
周術期短縮 → 麻酔量削減 → 薬剤コスト低減 → 合併症リスク抑制。
患者の安全と病院経営の両立に直結する仕組みであり、会場の多くが深くうなずいていた。
「医療費の上昇を抑えるだけでなく、現場のモチベーションを回復させる」
地方病院で疲弊した医師を目にしてきた経験から生まれた、この言葉には重みがあった。

🔹 教育の革新
「受け身の教育から、体験し、語り継ぐ教育へ」
講演の中でも、この一節は強く響いた。
VRカンファレンスやアバター教育によって、距離や経験の差を超えた臨場感ある学びが可能になる。
すでに高等学校「情報学」の教科書にはHoloeyesのXR技術が掲載されており、若い世代にとっては “未来の技術”ではなく“日常の学習環境” になりつつある。
「我々が知らない方が遅れている」
その言葉に、会場に一瞬、静かなざわめきが走っていたのは筆者も感じた。

🔹 Apple Vision Proとの融合
「世界で初めて医療機器認証された、Vision Proに対応した医療アプリをリリース済みです」
この発言に、会場からどよめきが起きた。
Holoeyes MD*は臓器の3Dモデルデータや表情の再現を可能にし、
美容外科・形成外科領域では患者説明や治療計画の補助や、若手教育などでの活用が進んでいる。

🔹 環境負荷を減らす「グリーンサージェリー」
ディスプレイや消費電力を減らし、CO₂排出や廃棄物を削減。
欧州で広がるグリーンサージェリーの流れを、日本にも根付かせたいと語った。
単なる技術論ではなく、
“医療を環境負荷まで考える産業へ進化させる” という哲学的視点が、聴衆に新鮮な衝撃を与えた。

製品と社会実装、そして国際的評価へ
杉本氏の思想は、単なる構想にとどまらず Holoeyesの製品群として具現化 されている。
- Holoeyes MD:術前シミュレーション/「術中サポート」「術中アシスト」
- Holoeyes VS:遠隔カンファレンスで暗黙知を共有
- Holoeyes Edu:スマホとゴーグルで誰でも学べる教育アプリ
- Holoeyes Biz:展示会・営業研修を「体験型」に変革
中外製薬との連携事例では、学会展示ブースに長蛇の列ができ、参加者からは
「説明を超えた体験だ」 と感嘆の声が相次いだ。

国立がんセンターや歯科大学、婦人科領域の手術など幅広い現場で応用が進行中。
こうした取り組みは国内にとどまらない。
欧州内視鏡外科学会EAESでは環境負荷低減の取り組みが評価され、2年連続で学会賞であるOR Ready Awardを受賞。
科研費の採択や国際論文発表も続き、
「臨床・教育・研究を結びつける社会実装型イノベーション」 として国際的にも高く評価されている。
美容医療の未来にも直結する可能性も
Holoeyesが描くXR医療は、
美容外科・形成外科における患者説明や術後シミュレーション、安全性の向上 に直結する。
自由診療で求められる「納得感」と「信頼性」をどう高めるか――
その答えの一端を、杉本氏の講演は示していた。

編集長POINT
~自由診療にも波及する、医療の再設計~
医療を進化させるのは暗黙知をいかに伝承した、「知見の伝え方」である。
杉本氏が描いたのは、熟練医師の経験をAI・XRに学習し、
誰もが共有できる“未来の標準”を創る姿だった。
「働き方改革ではなく、働きそのものを改革すべき」
――この宣言に、会場の空気が一瞬震えた。
効率化は保険診療の持続可能性を守り、臨場感ある教育は若手医師を伸ばす。
さらに美容・自由診療では、患者の納得感と信頼性を圧倒的に高める力となる。
これからの競争は、技術の優劣ではなく、
”暗黙知をいかに伝承し、医療全体を効率化、最適化するか” で決まる。
そしてそれこそが、医療全体の未来を動かす原動力になる。
杉本氏の講演は、「医療の進化は共有の力から生まれる」ことを、
確かな熱量で示していたと筆者は心底感じた。
まとめ
- 杉本真樹氏はJSAPS招待講演で 「医療の非効率を効率化する視点」 を提示
- 教育革新:VRカンファレンス・アバター教育で「受け身」から「体験型」へ
- Apple Vision Pro対応:世界初の医療アプリを開発、上市し臨床導入
- グリーンサージェリー:CO₂削減でGX時代の医療へ
- Holoeyes製品群:臨床・教育・研究を結ぶ社会実装型イノベーション
- 保険診療の持続性だけでなく、美容・自由診療での「納得感と信頼性」向上にも直結
”いかに暗黙知を伝承し、医療全体を効率化、最適化するか”
その答えを、杉本氏はすでに走りながら示していた。

*販売名:医療用画像処理ソフトウェア Holoeyes MD(認証番号:302ADBZX00011000)