
韓国食品医薬品安全処(MFDS)は、女性の外陰部向け洗浄剤やミスト化粧品のオンライン広告75件を虚偽・誇大広告として摘発したと発表した。
違反の約8割は「膣炎の治療」「免疫力向上」など、
化粧品でありながら医薬品的効能を標榜したもの。
膣内使用を誘導する表現や、根拠のない「産婦人科医開発」なども問題視され、
21社の責任販売業者に対して立入検査と行政処分が予定されている。
アジアで拡大するフェムケア市場において、
“医療の言葉”の乱用がどこまで許されるのか――
いま、信頼の線引きが問われている。
INDEX
1. 虚偽広告の実態 ― “医療の言葉”がマーケティング化
韓国・食品医薬品安全処(MFDS)は、
オンライン上で流通していた女性の外陰部用洗浄剤やフェムゾーンミスト化粧品の広告を一斉点検。
その結果、化粧品法に違反する75件の虚偽・誇大広告が確認された。
違反内容の内訳は以下の通り。
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医薬品誤認表現(60件・80%):「膣炎の治療」「皮膚免疫力の向上」「炎症・かゆみ緩和」「膣の乾燥改善」など
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消費者誤認表現(14件・19%):「産婦人科医が開発」「有害菌を除去」「乳酸菌を膣内で再生」など
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機能性誤認(1件・1%):一般化粧品に「シワ改善」などの機能性を表示
いずれも、医薬品・医療機器の領域を超える効能表現であり、
消費者の信頼を誤って誘導する広告として問題視された。
2. 行政対応 ― 販売者だけでなく企業責任も追及
MFDSは、販売業者69件の摘発後、
製品の責任販売業者(メーカー・輸入業者)も追跡調査。
結果として追加で6件の違反を検出し、
合計75件の広告を遮断、21社に立入検査と行政処分を予定。
販売サイトには接続遮断を放送通信審議委員会へ要請し、
オンライン上の医療誤認広告を包括的に制御する方針を示した。
MFDSは「膣内の疾患治療や洗浄をうたう行為は、
安全性・有効性を確認した医薬品または医療機器に限る」と明言した。
3. 分類の線引き ― 医薬品・医療機器・化粧品の違い
韓国当局は、今回の摘発を受けて以下の区分を再提示している。
区分 | 主な目的 | 使用部位 | 備考 |
---|---|---|---|
医薬品 | 膣炎などの治療・軽減 | 膣内外 | 医師の処方が必要 |
医療機器 | 膣内部の洗浄 | 膣内 | 洗浄器とセットで使用 |
化粧品 | 外陰部の洗浄のみ | 外陰部 | 膣内使用は禁止 |
当局は「化粧品は膣の外側のケアに限られ、膣内部使用は不可」と改めて明言。
医療的効果をうたう広告には疑いと確認の意識を持つよう呼びかけた。
4. 背景と波紋 ― フェムケア市場の“信頼の揺らぎ”
韓国では、フェムテック市場が急拡大する中で、
「膣ケア」「デリケートゾーン美白」「清潔革命」といった
美容と医療の言葉を混ぜた広告表現が急増している。
医療的根拠を示さずに“専門家監修”を強調する製品も多く、
消費者はどこまでが美容で、どこからが医療なのかを判断しづらくなっている。
この構図は日本も同様であり、
フェムゾーン化粧品の増加に伴い、広告表現の監視と業界倫理の再整備が求められている。
編集長コメント
~「膣ケア」という言葉の裏で、“医療”が軽く扱われていないか~
フェムケア市場の拡大は歓迎すべき動きだが、
その中で「治療」「免疫」「炎症」など、
医療の言葉がマーケティング化している現実を見逃してはいけない。
医療の言葉は“売るため”の言葉ではない。
それは“守るため”の言葉だ。
この境界を軽視すれば、ブランドは一時的な注目を得ても、
消費者の信頼を失うリスクを抱える。
今回の韓国の摘発は、アジアの美容医療業界全体に向けた
「言葉の倫理」の再定義とも言える。
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韓国MFDSが化粧品広告75件を虚偽・誇大広告として摘発
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医薬品的効能表現が80%、膣炎治療・免疫向上などが主因
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21社に行政処分、販売サイトも遮断要請
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医薬品/医療機器/化粧品の線引きを再提示
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“医療の言葉”を借りる広告の氾濫に警鐘
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日本のフェムケア業界にも共通リスク
まとめ
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虚偽広告75件を韓国当局が摘発
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80%が医薬品誤認表現(膣炎治療・免疫向上など)
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販売業者+責任販売業者21社に行政対応
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化粧品は外陰部専用、膣内使用は禁止
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医療的言葉を使うマーケティングの倫理問題
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日本市場でも広告表現の線引きが急務
NEROでは、アジアの美容・医療・フェムテック市場を横断的に分析し、
「医療×倫理×マーケティング」の境界線を可視化しています。
フェムケアという新しい文化を、
信頼できる言葉で育てる時代が始まっています。
美容医療に関連するニュースをキャッチ次第、投稿していきます!
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