📌 この記事をざっくりまとめると……
- 複数の日本人美容ドクターが「韓国の医師免許で日本で医療行為をしていいのか」「見積もりを出すのは医業ではないか」問い始めた
この疑問の法的な答えは「相談会の内容次第で、グレーどころか医師法違反に当たる行為が含まれている可能性が高い」だ - 日本国内で医業(診察・診断・治療方針の決定など)を行うには日本の医師免許が必要(医師法第17条)。
韓国の医師免許は日本では一切通用しない。またアートメイクの出張施術は、厚労省通知により医師法第17条違反に当たる医行為と明確化されている - 2025年8月の厚労省通知・2025年12月の追加通知により、取り締まりは「注意」から「警察と連携」へと強化されつつある。
患者が「安いから」「話題だから」だけで参加する前に、知っておくべきリスクをNEROが整理する
2026年6月9日夜、X(旧Twitter)の美容医療タイムラインが、ある問いで盛り上がった。
東京・大阪で美容クリニックを経営する医師の投稿が発端だ。
「全く無知なんだけど、韓国の医師免許って日本で医療行為してもいいんだっけか、、、」
「診断、とかたとえば見積もり渡したりとかは立派な医業な気がする」——
この疑問に対し、インフルエンサー医師や美容医療関係者が次々と反応した。
「日本相談会ってずっとグレーじゃない?本当はダメなんだよね?」
「韓国人が日本に来てアートメイクするのもダメ」
この議論、どこまでが法的に正しいのか。
NEROが一次情報をもとに整理する。
INDEX
前提:「韓国の相談会」とは何か
韓国の美容整形・美容皮膚科クリニックの医師やカウンセラーが来日し、
ホテルの会議室・専用会場・提携クリニックのスペース等で
日本人患者を対象にカウンセリングを行うイベントのことだ。参加費は無料のものが多く、通訳が同席する。
「詳しくカウンセリングをし、症例や価格の見積もりなどを出すことができるので、現地に行ってカウンセリングを受けるのと変わらないところが魅力」と説明するサイトもある。
「カンナムオンニ相談会」は2022年11月に初開催し、累計参加人数が約3,000名に到達している。
2026年もWOM CLINIC GINZAなど国内の提携クリニックが韓国クリニック相談会を定期開催している。
なお、NEROはいずれの相談会にも直接取材・参加しておらず、個別の運営実態を確認していない。
本記事は特定の相談会・クリニック・プラットフォームへの告発を意図するものではなく、
厚労省の公式通知と医師法の法的解釈を一般論として解説し、
読者が適切な自衛判断を行えるよう情報を提供することを目的としている。
法的な整理①——韓国の医師免許は日本で使えるか
❌ 結論:一切使えない
医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定し、無免許で医療行為(医業)を行うことを明確に禁止している。
日本国内で「医業(診察・診断・処方・手術など)」を行うには日本の医師免許が必要だ。
外国の医師免許は、特例制度(大学病院での教育・研究目的の臨床修練制度)の適用がある場合を除き、日本の医師法上の資格として認められない。
特例制度は指定された大学病院等での教育・研究目的に限られており、ホテルやイベント会場での美容医療相談会に適用されることはない。
法的な整理②——「診断・見積もりを出す」は医業に当たるか
「この術式が適している」という判断=診断=完全に医業
「あなたにはこの手術が必要」「ここに何cc注入する」という医学的判断(診断)は医師にしか許されていない。
これを日本の医師免許を持たない者が行えば、医師法第17条違反(無免許医業)が成立する。
「個別の見積もりを出す」行為のリスク
単なるメニュー表の提示は事務作業だ。
しかし「あなたの弛み具合なら糸リフト10本と脂肪吸引が必要だから合計〇〇万円」という見積もりは、実質的に治療方針を決定(医業)した上で契約を誘引する行為だ。
厚労省が問題視している「無資格者(カウンセラー等)による診断」と「カウンセラー主導の治療方針決定」に抵触する可能性がある。
「建前」として使われてきた逃げ道
「これは診療ではなく、韓国での治療のための事前カウンセリング(単なる相談)だ」という建前で、
これまで相談会は運営されてきた。
しかし、もし相談会の現場において、日本の医師免許を持たない者が
「個人の解剖学的特徴に基づいた具体的な術式の決定や治療方針の提示」を行っていれば、
それは単なる事前相談の枠を超え、
医師法第17条が禁じる「無免許医業」の領域に抵触するリスクを極めて強くはらんでいる。
法的な整理③——アートメイクの出張施術は?
❌ これは「グレー」どころではない——厚労省通知が医師法違反と明確化
厚生労働省は平成13年(2001年)11月8日の通知(医政発第105号)で、アートメイクを含む針を用いた色素注入行為が医師免許を持たない者には禁じられる「医行為」であると最初に明確化した。
2025年8月15日の包括的通知(医政発0815第21号)では「悪質な場合は警察等捜査機関への相談・告発を行うこと」と保健所への指示が明記され、「注意されるだけ」という時代は終わった。
韓国の施術者が来日して日本のマンションやサロンを借りてアートメイクを行う行為は、医師法違反(無免許医業)として実際に逮捕・送検された例がある。
なぜ今、日本の美容ドクターたちが声を上げ始めたのか
📅 規制強化の流れ——2025〜2026年
2025年8月
厚労省が「無資格者による医療方針の決定」「メールやチャットに限った不十分な診断」など違法疑い事例を明示した通知を都道府県等に発出。
保健所による立入検査の根拠を強化し、指導体制を整備
2025年10月
厚労省が「無資格者が業として行えば医師法第17条に違反する」として脱毛・アートメイク・HIFUを明示。
2025年12月
2026年6月9日
Xで日本の美容医師たちが「韓国の相談会の法的問題」を公開質問。議論が拡散(投稿閲覧数9,000超)
① 韓国グループの日本直営・提携院の急増
韓国のクリニックグループが日本に拠点を持ち、国内で日常的に集客・カウンセリングを行うようになったことで、
「海外の事前相談」という建前が崩れつつある。② 適正な競争の問題
日本の法律を遵守してリスクを背負っている国内医師からすれば、
「法律の網をかいくぐって患者を獲得するスキームは看過できない」という声が出ている。
③ 規制強化で「見て見ぬふり」ができなくなった
厚労省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」(2024年)の調査では、回答クリニックの20.5%でカウンセラーが患者の診察を、13.8%でカウンセラーが施術を行っていたという実態が明らかになった。
保健所の立入検査権限が強化され、「みんなやってるから」が通じない環境になりつつある。
患者が知っておくべきこと
相談会に参加する前に確認すべき3つのこと
- 「診断・治療方針の提示」を誰がやるか:日本の医師免許を持つ医師が行っているか。カウンセラー・韓国医師のみが「これが必要です」と言う場合、その判断の法的根拠を確認する
- 「施術は韓国で」という確認:相談会はあくまで情報収集の場。日本国内で実際に施術が行われる場合、その施術者の資格を確認する
- 契約(申し込み)を急がない:「参加者限定割引」「当日申し込みのみ」という誘引は特定商取引法の不当勧誘に該当する可能性がある。特に高額手術の即日契約は慎重に
NEROはこの問題を「韓国 vs 日本」の話として取り上げるつもりはない。
韓国の美容医療の技術力は本物だし、
正規ルート(韓国渡航・日本の医師免許保有医師による診療)での提供は何も問題ない。問題は「日本の法律の網をかいくぐる形で、患者が法的保護を受けられない環境に置かれること」だ。
医師法は「患者を守るため」にある。
その網の外で治療を受けた患者が被害を受けても、救済制度の対象にならない可能性がある。
「グレーゾーン」という言葉は
しばしば「患者が守られていない」
という意味と同義だ。
まとめ
- 韓国の医師免許は日本で認められず、日本国内での診断・治療方針の決定は日本の医師免許が必要(医師法第17条)。相談会での「診断に基づく個別見積もり」は医業に当たる可能性がある
- アートメイクの出張施術は「グレー」ですらなく医師法違反に当たると厚労省が明確化。2025年12月の厚労省通知で「悪質な場合は警察と連携」と明記された
- 2025〜2026年の相次ぐ厚労省通知・保健所権限強化により、「みんなやってるから大丈夫」という慣行への取り締まりが強化されている
- 患者は「誰が診断しているか」「施術はどこで誰がやるか」「即日契約を急かされていないか」の3点を確認してから参加判断することが重要だ
よくある質問
出典
医師法第17条(昭和23年法律第201号) / 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」(令和7年8月15日付け 医政発0815第21号) / 厚生労働省「医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて」(平成13年11月8日付け 医政発第105号) / 厚生労働省「オンライン診療における不適切な診療行為の取扱いについて」(平成30年12月26日付け 医政医発1226第2号) / 厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書 2025年 / 日経新聞「美容医療、違法疑い事例明示」2025年9月15日 / Business&Law「美容医療規制 ― 変わりゆく地平」2026年1月16日 / X(旧Twitter)投稿 @yama_prs1、2026年6月9日 / X(旧Twitter)投稿 @_a_o_1026_、2026年6月9日

