男性美容、5年で市場1.8倍・スキンケア実践率42.5%——数字が証明した「当たり前化」の構造

📌 記事をざっくりまとめると……

  • 2024年の男性化粧品市場は497億円・前年比114.8%・2019年比1.8倍に成長(インテージ調査)
  • 男性のスキンケア実践率は42.5%——10〜40代では「やっている人が多数派」に
  • この成長は「意識高い系」の話ではない。「清潔感=社会人のマナー」というリフレーミングが市場を動かした構造的な変化

「男性が美容にお金をかけるのは、意識高い一部の人だけ」

その認識は、もう過去のものになった。

市場調査大手・株式会社インテージが2025年2月に発表したデータが、その変化を数字で証明している。

497億円・5年で1.8倍——男性化粧品市場の現在地

インテージが全国15〜79歳の男女53,600人の購買データ(SCI®)から推計した結果によれば、2024年の男性化粧品市場規模は497億円に達した。

男性化粧品市場 成長データ(インテージ調査)

・2024年市場規模:497億円(前年比114.8%)
・2019年比:1.8倍
・基礎化粧品:438億円(市場全体の約9割)
・美容液:2019年比4.9倍(5年で約5倍)
・日焼け止め:2019年比2.0倍
・メイクアップ化粧品:2019年比1.3倍

特筆すべきは、価格上昇だけで説明できない成長であることだ。

インテージは「多くのカテゴリで市場成長率が個数単価の上昇率を上回っている」と指摘している。つまり「買う人が増え、使う量も増えた」という実需の拡大だ。

全年代で伸びた——「若者だけの話」ではない

男性の基礎化粧品購入状況を年代別に見ると、驚くべき事実がある。

20代・30代だけでなく、60・70代も購入金額が1.5倍に増加している。

💡 年代別 購入金額の変化(2019年→2024年)

20・30代:1.8倍
40・50代:1.6〜1.7倍(推計)
60・70代:1.5倍

購入率も30.4%→33.2%へ上昇。全年代で一貫して増加しており、特定の世代だけのトレンドではないことが明確だ。

スキンケア実践率42.5%——「みんながやっている」時代へ

ナリス化粧品の調査によれば、2026年の男性スキンケア実践率は42.5%に達し、初めて4割を超えた。

集英社オンライン(2026年3月31日)が高千穂大学・永井竜之介氏の分析として報じたデータによれば、この数値は年々右肩上がりを続けており、10代から40代半ばまではスキンケアをしている派が多数派になっている。

スキンケア実践率の推移

2023年:34.0%
2024年:37.0%
2025年:39.0%
2026年:42.5%(初の4割超え)

出典:ナリス化粧品「男性のスキンケア習慣と美容への興味、初めて4割超」

「やっている人が珍しい」から「やっていない人が少数派になりつつある」——
この質的な変化が、市場の性質を根本から変えている。

なぜ男性は美容を受け入れたのか——「リフレーミング」という戦略

高千穂大学の永井竜之介氏は、この変化の背景に化粧品各社が行ってきた「リフレーミング」というマーケティング戦略があると分析している。

リフレーミングとは、対象の「意味づけ」を変える戦略だ。

男性美容を変えた「3つのリフレーミング」

「美容」→「清潔感」
女性的な行為ではなく、社会人として当然のマナーへ

「オシャレな人がやること」→「大人の身だしなみ」
就職・転職・異動での第一印象管理として位置づけ

「贅沢品」→「自分磨きの投資」
スキンケアを自己研鑽・コンディション管理の文脈へ

実際、インテージ調査でも男性が基礎化粧品を使い始めたきっかけの上位は「肌の乾燥やトラブル改善」(31.2%)「自分磨きの一環」(24.1%)だった。

「美しくなりたい」という動機より、「機能的に問題を解決したい」「コンディションを整えたい」という動機が先行している点が特徴だ。

美容液が5年で5倍——「ケアの高度化」が始まっている

もう一つ見逃せないデータがある。男性の美容液市場が2019年比で4.9倍に急成長していることだ。

美容液は、化粧水・乳液の「次のステップ」として、より高度なスキンケアを実践したい層が使うアイテムだ。

💡 美容液の急成長が示すこと
単に「スキンケアを始めた」だけでなく、「スキンケアをより深くやりたい」層が急増している。これは男性の美容リテラシーが底上げされ、「やり込み層」が市場を牽引しているサインだ。

また20代男性では「韓国アイドルなど芸能人の影響」がきっかけの8.9%と、全体平均(3.5%)の2倍以上を記録。K-POPが男性美容の「入口」として機能していることも裏付けられた。

女性の「承認」が後押し——10代女性の85.7%が好意的

インテージの意識調査で浮かび上がったもう一つの重要なデータがある。

「男性が肌の手入れや化粧をすることに対してどう思うか」——10代女性の85.7%が「良い」と回答している。

「男性の肌ケア・化粧」への好意的意見

全体:57.9%が「良い・とても良い」
男性全体:53.3%
女性全体:62.6%
10代女性:85.7%(突出して高い)
20〜40代女性:7割超

出典:インテージ調査(2024年9〜10月実施、n=5,000)

「女性の目線を気にする男性」が美容を始める——という構図が、データでも確認されている。
パートナーや周囲の女性から肯定されることが、男性の美容参入を後押ししている。

美容医療との連動——「スキンケア」の次に来るもの

ここまでは化粧品市場の話だが、NEROが注目するのはその先にある動きだ。

スキンケアの「当たり前化」は、美容医療への入口を広げている。

NERO編集長の視点

NEROがすでに報じたとおり、20代男性の美容医療利用率は女性を逆転し、男性美容医療市場は6,310億円規模に達している。

化粧品で「肌を整える習慣」を身につけた男性が、次のステップとして脱毛・ニキビ治療・AGA・スキンケア施術へと移行している——この流れは構造的なものだ。

「男性美容=特別なこと」という時代は終わった。
美容医療もまた、男性にとって「メンテナンスの一部」になっていく。

まとめ

  • 2024年の男性化粧品市場は497億円・前年比114.8%・2019年比1.8倍(インテージ調査)
  • 男性スキンケア実践率は2026年に42.5%——10〜40代では多数派に
  • 成長は全年代で起きており、60・70代でも購入金額が1.5倍に増加
  • 美容液が5年で約5倍——「ケアの深掘り層」が市場を牽引
  • 背景にある「リフレーミング」戦略:美容→清潔感・身だしなみ・自分磨きへの意味転換が市場を動かした
  • この流れは美容医療市場とも連動——男性美容の「メンテナンス化」という構造転換は加速する

よくある質問

Q. 男性化粧品市場の「1.8倍」は本当に実需の拡大ですか?物価上昇の影響では?
インテージは「多くのカテゴリで市場成長率が個数単価の上昇率を上回っている」と明記しています。価格上昇だけでなく、実際に購入する人数・購入量が増えたことによる成長です。購入率も2019年の30.4%から2024年の33.2%に上昇しており、「購入者が増えた」ことが確認されています。

Q. 「リフレーミング」とはどういう意味ですか?
ある物事や行為に対する「意味づけ・フレーム(枠組み)」を変えるマーケティング手法です。男性美容の場合、「美容=女性のもの・オシャレな人のもの」という従来のフレームを「清潔感=社会人のマナー・自分磨きの投資」というフレームに置き換えることで、美容に抵抗があった層の参入障壁を下げました。

Q. 美容液が5年で5倍というのはなぜですか?
美容液は保湿成分やエイジングケア成分を含む高機能スキンケアアイテムで、化粧水・乳液の次のステップとして位置づけられます。スキンケアを「始めた」だけの層から「深めたい」層へとユーザーが進化し、より高単価・高機能な製品へのニーズが高まったことが要因です。男性の美容リテラシーの底上げを示す指標とも言えます。

Q. 男性が美容医療を受けることに抵抗はなくなっていますか?
インテージ調査では男性の10〜30代の約7割が「男性の肌ケア・化粧」に好意的と回答しており、心理的な障壁は大きく低下しています。NEROが報じてきたとおり、20代男性の美容医療利用率はすでに女性を逆転しており、脱毛・ニキビ治療・AGAなどのメニューを中心に、美容医療は男性にとっても「日常のメンテナンス」として定着しつつあります。


出典

  • 株式会社インテージ「成長トレンド続く『男性化粧品』市場」2025年2月4日 https://www.intage.co.jp/news/5329/
  • 集英社オンライン「〈男性美容が"当たり前"に〉市場は5年で1.8倍…スキンケア実践率42.5%、市場急拡大の決定的理由」2026年3月31日 高千穂大学・永井竜之介氏分析 https://shueisha.online/articles/-/257015
  • ナリス化粧品「男性のスキンケア習慣と美容への興味、初めて4割超」2026年

NERO 安達健一