美容医療の現場で今、コラーゲンブースターと呼ばれる注入治療が注目を集めています。
従来のコラーゲン注射は、コラーゲンを補充するだけであったり、作らせたりすることに主眼が置かれてきました。
コラーゲンを“補うだけ”“作らせるだけ”の治療から“補って作らせる”治療へ。そして、“肌の環境そのものを整える”という新しいアプローチが注目されています。
とくに広がりを見せているのが、細胞の足場となる細胞外マトリックス(ECM)に着目した韓国発のヒト由来ECM製剤です。
本記事では、こうした変化を単なるトレンドとしてではなく、“構造”として読み解きます。
NERO編集部は、「自由が丘クリニック」で開催されたECM製剤「スキンプラス(韓国名:セルディエム/CellREDM)」の勉強会と、「BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)」で行われたECM製剤「ブナジュ(韓国名:リトゥオ/Re2O)」の勉強会を取材。
学術的な整理と臨床現場での使い分けという2つの視点から、コラーゲンブースターの現在地を整理します。
※編集部注:本記事は、医師向け勉強会で共有された内容や臨床現場での視点をもとに、次世代スキンブースターの学術的背景を整理したものです。なお、自由が丘クリニックでは現在スキンプラスの導入予定はありません。最新製剤の臨床知見を深めるスタンスとして勉強会に協力されており、実際の施術検討に関しては導入施設へのお問い合わせを推奨します。
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INDEX
なぜ今“ヒト由来ECM”なのか|コラーゲン注射の新潮流
近年、美容医療の現場ではコラーゲンブースターと呼ばれる注入治療が急速に増えています。
従来はコラーゲン注射といえば、コラーゲンを作らせる製剤が中心でしたが、近年は“肌そのものの質を整える”という発想の治療が注目されるようになってきました。
そうした流れの中で韓国を中心に登場しているのが、ヒト由来ECMを用いたコラーゲンブースターです。
ECMとは何か、そして従来のコラーゲン注射と何が異なるのかを整理していきます。
ECMとは何か|肌の“土台”となる細胞外マトリックス

近年注目されている「ヒト由来ECM」を理解するうえで、まず押さえておきたいのがECM(細胞外マトリックス)の役割です。
ECMは「Extracellular Matrix」の頭文字を取った言葉で、日本語では「細胞外マトリックス」と呼ばれます。ECMとは、細胞の周囲に存在する構造体で、コラーゲンやエラスチンなどの成分から構成されています。細胞の増殖・分化・修復を支える“足場”のような役割を担う存在です。
<ECM(細胞外マトリックス)に含まれる成分と主な役割>
| 成分 | 主な役割 |
| コラーゲン(主にI型・III型) | 真皮の構造的な支持・強度を担う |
| エラスチン | 皮膚の弾力性・伸縮性を提供する |
| GAG(グリコサミノグリカン) | 水分保持・保湿の役割を果たす |
| フィブロネクチン・ラミニン | 細胞の接着・移動を助ける |
| 成長因子(GF) | 細胞の増殖・分化を調節する |
ECMは体内の細胞と連携しながら、組織の自然な再生プロセスを支える働きがあり、再生医療の分野でも注目されています。
近年の研究では、細胞そのものだけでなく、細胞を取り巻く環境(マイクロエンバイロメント)が組織の機能や再生に大きく関わることが明らかになってきました。
肌の状態は、細胞そのものだけでなく、その周囲の環境にも大きく左右されます。ECMはその環境を構成する重要な要素であり、細胞が正常に働くための“土台”ともいえる存在です。
こうしたECMの役割を踏まえると、近年のコラーゲン注射は「何を増やすか」だけでなく、「どのような環境で細胞を働かせるか」という視点へと広がってきていることが分かります。
コラーゲン注射は2つの設計思想に分かれる
美容医療では、コラーゲンの補充や産生を促す施術を総称して「コラーゲン注射」と呼ぶことがあります。これらの施術は、作用の考え方(設計思想)によって大きく2つのタイプに分けられます。

コラーゲン注射は、大きく分けて次の2つのアプローチに分類される施術です。
- 細胞を刺激してコラーゲンを作らせるタイプ
- 細胞が働きやすい環境を整えるタイプ
1つは、線維芽細胞を直接刺激することでコラーゲン産生を促すタイプです。PLLA(ポリ-L-乳酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、PDLLA(ポリ-D,L-乳酸)などの製剤がこの設計に含まれます。
これらは、体内の反応を利用してコラーゲン生成を促すことで、ハリやボリュームの改善を目指す治療です。
もう1つは、細胞を取り巻く環境を整えることで、結果として組織の働きを高めるアプローチです。
ECMはコラーゲンやエラスチンなどで構成され、皮膚の構造を支える重要な土台となります。この環境を整えることで、肌のキメや質感の改善を目指す施術として用いられています。
ECM製剤とは|“環境に働きかける”コラーゲンブースター
ECMの働きに着目して開発されたのが、ECM成分を含むECM製剤(細胞外マトリックス製剤)です。ECM製剤は、細胞外マトリックスの構成要素や、その環境に着目して設計された製剤の総称。
フィラーのようにボリュームを補う治療とは異なり、組織環境に働きかけることで肌質改善を目指すアプローチとして用いられる製剤です。
線維芽細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンを再構築し、肌のハリ・弾力・水分量を根本から改善する「肌育治療」として注目されています。
その中でも、ECM成分を含むコラーゲンブースターは、ECM自体を補いながら、ECMの働きに作用が期待される製剤です。
組織の再生や修復をサポートすることを目的としたアプローチで、肌質改善や組織環境の再構築を目的とした施術として用いられています。
そして、コラーゲンブースターとして知られている製剤には「ブナジュ」や「スキンプラス」などがあります。
なお、「ブナジュ」と「スキンプラス」は日本で流通している製剤名で、韓国ではそれぞれ「リトゥオ(Re2O)」「セルディエム」と呼ばれます。
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※自由が丘クリニックでは現在、本製剤の取り扱いはありません。
なぜ“ヒト由来ECM”なのか|動物由来コラーゲンからの進化
ECM製剤の中でも、近年注目されているのがヒト由来ECMを用いた製剤です。
これまでコラーゲン治療では牛や豚などの動物由来成分が広く用いられてきましたが、アレルギー反応のリスクや生体適合性の課題が指摘されてきました。
こうした背景から開発が進められてきたのが、ヒトの組織由来成分を用いたヒト由来ECM製剤です。ヒト由来成分を用いることで、生体との親和性を高め、組織環境の再構築をより自然に促すことが期待されています。
ただし、ヒト由来であること自体が必ずしも優位性を意味するわけではありません。製造過程や安全性、長期的な影響については慎重な検討が必要とされています。
NEROが「自由が丘クリニック」で開催されたECM製剤「スキンプラス」の勉強会を取材した際にも、「どこに作用する治療なのか」という整理が繰り返し強調されていました。
従来のコラーゲンブースターが線維芽細胞への刺激を軸としているのに対し、ECM製剤は細胞が機能する環境に働きかける設計とされています。この違いは、コラーゲン治療の捉え方が変わりつつあることを示しています。
ECM製剤をどう読む?ブナジュ・スキンプラスの位置づけ
ECM製剤とコラーゲンブースターという言葉が広まり始めたことで、「ブナジュとスキンプラスはどう違うのか」といった製剤比較の議論も増えています。
とはいえ、臨床で重視されるのは成分表上の見た目だけではなく、どのような設計思想で作られ、どのような目的で用いられるのかという視点です。
コラーゲンブースターは、フィラーのように形を作る治療とも、従来のコラーゲン刺激製剤とも異なる考え方で設計された注入治療です。
ここでは、代表的なコラーゲンブースターである「ブナジュ」や「スキンプラス」を例に、臨床でどのように理解され、どのように使われているのかを整理していきます。
コラーゲンブースターは“スペック”ではなく“設計思想”で読む
コラーゲンブースターは、コラーゲンやエラスチンなど、細胞外マトリックスを構成する成分をベースに設計されています。
従来の美容医療では、コラーゲンに着目した注入治療として、ボリューム補填を目的とする治療や、線維芽細胞を刺激してコラーゲン産生を促す治療が用いられてきました。
一方、近年登場しているコラーゲンブースターは、そうしたコラーゲン注射とは設計思想が異なります。目的はボリューム補填ではなく、細胞を取り巻く組織環境に働きかけ、肌の土台を整えることです。

一見すると成分構成が似ているため、数値や配合量といった“スペック”で比較したくなりますが、それだけで製品の真価を推し量ることはできません。
実際には、成分の由来や加工方法、粒子設計、注入層の想定などによって、製剤ごとの作用の出方は変わります。重要なのは、「何が入っているか」ではなく、「どのように働かせる設計か」という視点です。
こうした設計思想を具体的に理解するうえで参考になるのが、ヒト由来ECM製剤のひとつである「ブナジュ」です。BIANCA CLINICで開催された勉強会では、製品の科学的背景と臨床的な使い方について詳細な解説がありました。
「ブナジュ」は、ヒト無細胞真皮マトリックス(hADM:human Acellular Dermal Matrix)を超微粉砕したECMブースターであり、ヒトの皮膚から細胞や免疫関連因子を除去した真皮組織をベースに、独自の加工技術によって約75μmの均一な粒子に設計されている点が特徴です。
製造および安全性の観点では、米国組織銀行連合会(AATB)の認証、米国食品医薬品局(FDA)承認施設で処理された原材料の使用、韓国食品医薬品安全処(MFDS)の認可取得など、複数の基準を満たした体制で製造されています。
作用機序としては、注入されたhADM粒子がECMのの土台として機能し、その内部に線維芽細胞が入り込むことで、周囲のECMの活性化やリモデリングを促進。これにより、コラーゲン(I型・III型)、エラスチン、ヒアルロン酸の増加や、線維芽細胞数の増加が期待されます。
臨床試験*では、4週間後の評価として、毛穴・肌のキメ・弾力などにおいて一定の改善が報告されています。また、ヒアルロン酸注射で見られることのあるチンダル現象が観察されていない点も、フィラーとは異なる設計思想を反映した特徴の1つです。
このように、ECM製剤は単に「何が入っているか」だけでなく、どのような原料を、どのように加工し、どのような作用を引き出すかまで含めて設計されている点に特徴があります。
そのため、コラーゲンブースターでは成分構成だけでなく、製造工程や安全性管理も重要な評価軸となります。今回取材した「ブナジュ」と「スキンプラス」はいずれも、ヒト由来ECM成分を扱う製剤として、原料管理や製造・精製工程、品質管理に強いこだわりを持って開発されている点が共通していました。
臨床現場でも、「ブナジュ」と「スキンプラス」について「大きな差を感じにくい」「使い分けは設計や打ち方の問題になる」といった意見があり、単純な製剤比較ではなく、治療戦略の中で位置づける必要があるとされています。
また前述のとおり、これらの製剤はフィラーのような形を作る治療とは異なり、肌の土台に働きかける“スキンブースター”として用いられるケースが多い点も特徴です。
*ブナジュ臨床試験:参考文献:Kim et al.(2022)『Treatment of Human Immunodeficiency Virus-Associated Facial Lipoatrophy With Hyaluronic Acid Filler Mixed With Micronized Cross-Linked Acellular Dermal Matrix』/National Library of Medicine
ECM製剤はどんな人に向く?|医師が考える適応と使いどころ
ECM製剤は、明確なボリュームアップや輪郭形成を目的とする治療というよりも、肌質改善を目的とした治療として位置づけられることが多い製剤です。そのため、劇的な変化を求めるケースよりも、肌の質感や印象を自然に整えたいケースで検討されることが多いとされています。
実際に医師からは、以下のような適応が挙げられています。
- 毛穴や小ジワなどの肌質改善
- ナチュラル志向の患者
- ボリュームを出しすぎたくないケース
また、高瀬先生からは、既存治療との位置づけについても言及がありました。
このように、ECM製剤は“全く新しい治療”というよりも、既存の肌質改善治療の延長線上にありながら、組織環境へのアプローチという新しい捉え方が加わった選択肢として理解する方が実態に近いといえます。
どの患者に、どのゴールを想定して使うかによって価値が変わる製剤であり、適応の見極めが非常に重要です。
ヒト由来ECM製剤のリスクと注意点|可逆性と長期安全性
ECM製剤を検討するうえでは、期待できる効果だけでなく、可逆性や長期安全性についても理解しておく必要があります。
まず、ヒアルロン酸のように溶解して元に戻すことができないため、適応の見極めや注入量の設計が重要です。過度な注入や層の選択を誤った場合、修正が難しくなる可能性があります。
また、しこり(結節)などのリスクもゼロではありません。特にヒト由来製剤では、製造管理や安全性への配慮が重要である一方で、施術後に献血が制限されるケースがあるなど、事前に説明しておくべきポイントもあります。
さらに、比較的新しい治療であることから、長期的な経過や安全性に関するデータが十分に蓄積されているとは言い切れない点も、現時点で理解しておくべきポイントの1つです。
ECM製剤は“自然な変化”を目指しやすいというメリットだけでなく、こうしたリスクや不確定要素も理解したうえで選択することが重要です。
コラーゲンブースターはどう選ぶ?|製剤名ではなく“変化の仕組み”で考える
ここまで見てきたように、コラーゲンブースターと一口に言っても、その設計や作用機序はさまざまです。
重要なのは、製剤名やイメージで選ぶのではなく、「どのような仕組みで変化を引き出すのか」という視点で整理することです。
コラーゲン注射は作用機序で整理する――“なんとなく良さそう”で選ばないための判断基準
コラーゲン注射は、作用点が大きく2系統に整理できます。重要なのは「どちらが上か」ではなく、自分が欲しい変化が“ボリューム寄り”なのか、コラーゲンブースターを使う“肌質寄り”なのかを先に決めることです。
同じ注入治療であっても、どこに作用するか、どのように変化を引き出すかは製剤によって異なります。
ボリュームやハリを出すのか、毛穴やキメといった肌質を整えるのか。目的によって、選ぶべきアプローチは変わります。
コラーゲンブースターは「自然に変化する」「肌育」といったイメージで語られることが多い一方で、効果の出方や適応には個人差があります。
そのため、
- 何を改善したいのか
- どのくらいの回数・期間で変化を出す設計なのか
- リスクやダウンタイムの説明が十分か
といった点を整理したうえで検討することが重要になります。
今回取材させていただいたクリニックはこちら
自由が丘クリニック公式HP(学術協力)
BIANCA CLINIC公式HP(ブナジュ・スキンプラス導入・カウンセリング予約)
コラーゲンブースターは“製剤名”ではなく“設計思想”で選ぶ時代へ
コラーゲン注射は、単に「何を入れるか」で選ぶ治療ではなくなりつつあります。
線維芽細胞を刺激してコラーゲンを作らせるのか、あるいはコラーゲンブースターのように細胞が働きやすい環境を整えるのか。同じ“肌育”と呼ばれる治療でも、その設計思想や作用機序は大きく異なります。
トレンドや製剤名に左右されるのではなく、自分が求める変化は何か、どのような仕組みで変化が起こるのかを理解することが、これからのコラーゲンブースター選びにおいて重要な視点です。
美容医療は今、成分やスペックの比較ではなく、治療戦略としてどう組み立てるかが問われています。
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【BIANCA CLINICにおける施術詳細】
【施術の内容】リトゥオ(ブナジュ)
【施術期間および回数の目安】4週間ごとに3回程度 ※状態によって異なります。
【費用】¥110,000
【リスク・副作用等】腫れ、赤み、むくみ、微小な結節など
【未承認医薬品に関する注意事項について】
・本施術には、日本国内において薬事承認を受けていない未承認の医薬品を使用する場合があります。
・施術に用いる医薬品は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。詳細は厚生労働省の「個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報」をご確認ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分を有する他の国内承認医薬品は存在しない場合があります。
・重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
・本施術を受けた方は、献血を行うことができません。
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