美容医療は「美容整形のこと」ではありません。かつてはメスで切る美容外科手術が当たり前でしたが、今や切らない美容医療も一般的です。だからこそ、気軽に美容クリニックに通う若い世代が増えています。美容医療とは、健康的で美しい状態を目指すためにある医療分野。「今どきの美容医療って何?昔と違うの?」と感じる方へ向けて、美容外科や美容クリニックの内容、各診療科の違いについて分かりやすく紹介します。
1.美容外科と美容クリニックに定義の違いはある?
美容医療について調べると、美容外科や美容クリニック、美容皮膚科など、似ている用語がたくさんあります。違いが分からない方も多いでしょう。美容医療を提供する医療施設を指す「美容クリニック」、診療科(診療内容)を指す「美容外科」「美容皮膚科」「美容内科」について、1つずつ解説します。
■美容クリニックとは?美容医療を提供する医療機関の総称
美容クリニックとは、美容医療を提供する医療機関のことを指します。医師や看護師が在籍し、医療行為を行うところです。ただしひとくちに美容医療といっても、美容外科や美容皮膚科、美容内科など、美容クリニックによって診療内容には違いがあります。
美容クリニックの目的と特徴
美容クリニックの目的は、病気の治療ではありません。医学の力で人の容姿を美しい状態に導き、クオリティ・オブ・ライフ(QOL=生活の質)の向上を図ることです。見た目がきれいになることで、コンプレックスの解消や、人生を積極的に楽しむことにつながります。
美容クリニックの大きな特徴は、基本的に自由診療であることです。日本は全国のどこで医療を受けても、同じ保険適用の治療であれば医療費は統一されています。しかし美容が目的の医療行為は、保険適用となりません。自由診療の場合、同じ機械や薬剤を使用した治療であっても、クリニックによって価格設定がさまざまです。そして治療費は、全額自費になります。
また厚生労働省が薬事承認していない多くの医療機器や薬剤が医師の判断で導入されているのも、美容クリニックの特徴です。承認していないということは、国が「安全である」「この症状に効果がある」と確認したものではないことを表します。美容医療の領域は、国内で正式に承認された機器や薬剤が、まだ多くありません。そのため美容医療を行う上では、医師と患者の同意のもと、未承認機器や薬剤を使用することが多くなります。
美容クリニックとエステの違い
美容クリニックとエステの違いは、医療行為を行うか否かです。美容クリニックは、医師や看護師などの医療従事者がおり、医薬品を使用して治療します。しかしエステは、医療資格なしのエステティシャンが施術を行うため、医薬品は使えません。そのため「脱毛」や「ピーリング」など目的は同じであっても、効果や副反応、費用など、美容クリニックとは違いがあります。
■美容外科とは?形成外科との違いも紹介
美容外科は、手術といった外科的なアプローチで容姿を美しくする診療科です。いわゆる美容整形とは、美容外科手術のことをいいます。美容外科は形成外科の1領域といえますが、形成外科と美容外科の違いは、保険診療かどうかです。形成外科は保険診療上の病気を治療しますが、美容外科は審美的に容姿を整えるのが目的です。
代表的な治療として「二重形成」や「脂肪吸引」、顔のたるみを改善する「フェイスリフト(糸リフト)」などがあります。
■美容皮膚科とは?一般皮膚科との違いは保険適用かどうか?
美容皮膚科とは、肌の状態をより美しくすることを目的とした診療科です。加齢や外的ダメージによって増えるシミやシワ、たるみなどにアプローチします。美容外科領域でもたるみ治療はできますが、美容皮膚科と美容外科の違いは、メスを使うか否かです。美容皮膚科は形成外科や美容外科と違い、外科的アプローチではなくレーザーや薬剤などで肌悩みにアプローチします。
また一般皮膚科と美容皮膚科は、保険適用かどうかが違います。例えばニキビ(尋常性ざ瘡)は、保険適用の皮膚疾患のため、一般皮膚科でも治療可能です。しかしニキビ痕の赤みや色素沈着を改善したい場合、審美的な目的となるため、美容皮膚科の対象となります。
■美容内科とは?
美容内科は、内科的なアプローチで健康増進や美しさをサポートする診療科です。美容外科や美容皮膚科の治療を補填し支える役割を持つとして、近年掲げるクリニックが増えています。代表的な治療として「ビタミンC点滴」や「ニンニク注射」、内服などがあります。
2.行くなら美容外科?美容クリニック?一般皮膚科?症状の違いによって選ぼう
昔よりも美容医療が身近になっているとはいえ、美容クリニックの敷居を高く感じる方もいるでしょう。どんな悩みで美容クリニックを利用すれば良いか、よくある疑問を解説します。なお、クリニックによって導入している機器や治療法は異なるため、すべてに当てはまるものではありません。またクリニックによっては、美容外科領域も美容皮膚科領域も、幅広く対応している場合があります。
■ほくろ除去なら皮膚科と美容外科どっちがいい?
顔や体のさまざまな部位にできるほくろをなくしたい場合、一般皮膚科や美容外科で除去が可能です。ただし一般皮膚科と美容外科では、ほくろの治療目的や主な治療方法が異なります。
診療科 | ほくろ治療の目的 | 主な治療法 |
---|---|---|
一般皮膚科
(保険診療) |
ウイルス性や悪性腫瘍のほくろ、
日常生活に支障をきたすほくろの除去 |
切開法・くり抜き法 |
美容外科
(自由診療) |
美容目的のほくろ除去 | レーザー治療・電気メス |
美容皮膚科
(自由診療) |
美容目的のほくろ除去 | レーザー治療 |
一般皮膚科の場合、治療後の傷痕や見た目よりも、再発させないことが優先されます。ほくろを除去して見た目を整えることが目的の場合は、美容外科や美容皮膚科などの美容クリニックに相談するのがおすすめです。
■イボ取りなら皮膚科と美容外科どっちがいい?
イボもほくろと同じく、一般皮膚科や美容外科で除去可能です。イボの除去方法によって、保険診療か自費診療かが異なります。クリニックによって取り扱っている治療法が異なるため、まずは相談し、メリット・デメリットを考えて選択すると良いでしょう。
治療法 | 特徴 | |
---|---|---|
保険適用治療 | 液体窒素 | 幅広いイボに対応可能。複数回の治療が必要。痛みを伴う場合がある。 |
保険適用治療 | 手術による根治的切除 | 大きなイボに対応可能。1度の治療で完治率が高いが、傷痕が目立つ場合がある。 |
保険適用外を含む治療 | 炭酸ガスレーザー | 治療時間が短く、傷痕が目立ちにくい。 |
保険適用外を含む治療 | 内服・塗り薬など補助的治療 | ほかの治療と併用可能。痛みを伴わない。 |
なお外陰部にできるイボは、尖形コンジローマ(性感染症)の可能性があります。女性なら婦人科、男性なら泌尿器科を受診しましょう。
■シミ取りなら皮膚科と美容外科どっちがいい?
シミはレーザー治療や光治療、内服などで治療可能です。シミの種類や治療法によって保険適用になるものもあれば、自由診療でしか治療できないものがあります。そのため内容によっては、一般皮膚科でも治療可能です。ただし多くの場合は、美容クリニックのほうが治療の選択肢が多く、幅広いシミにアプローチできます。
また近年は、美容外科でもレーザー治療や光治療を導入しているクリニックが珍しくありません。信頼できるクリニックであれば、美容外科でシミ取り治療を受けても良いでしょう。
ひとくちにシミといっても、たくさんの種類があります。シミの種類に合った方法で治療しなければ、意味がないどころかシミが悪化する可能性もあるため注意が必要です。クリニックを選ぶ際は、実績や経験が豊富なクリニックで相談しましょう。
■ニキビなら美容皮膚科と一般皮膚科どっちがいい?
ニキビは、尋常性ざ瘡という皮膚疾患の1つです。そのため一般皮膚科で、保険適用で治療できます。赤く炎症を起こしている状態のニキビなら、まずは一般皮膚科を受診するのがおすすめです。医薬品を使うことで、セルフケアや市販薬よりも効果的に治療できます。
炎症が治まった後の赤み・色素沈着・凹みなどのニキビ痕を改善したい場合は、一般皮膚科では対応できません。そのため美容皮膚科を受診しましょう。美容皮膚科では、ニキビを繰り返さないように肌質改善を目指すことも可能です。
■まとめ
美容外科や美容クリニックの内容、各診療科の違いについて解説しました。かつては「美容医療=美容整形」のイメージが定着していましたが、今の美容医療はもっと手軽で身近な存在です。メスで容姿を大きく変えるのではなく、負担の小さい治療で、ナチュラルで自然体な美しさも目指せます。シミやシワ、たるみなど、30~40代以降に増える肌悩みを改善する1つの方法として、美容医療を選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
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