美容医療は海外発のものが多いですよね。最近では、海外旅行のついでに現地のクリニックで美容医療を受ける人も増えています。しかし、ふと「国・人種などに由来するスキンタイプの違いなどによって合う施術は違わないの?」と思ったことはないでしょうか。
その答えを探るためには、骨格や皮膚など人種ごとの違いを理解したり、国ごとの人気施術や美の基準を押さえたりすることも大切。そのうえで海外から輸入される美容医療のリスクや選び方をチェックしていきましょう。
※本記事は人種差別を意図するものではありません。NERO編集部としては、あくまで身体的な特徴ごとに適した美容医療もあるという事実に焦点を当てております。
INDEX
人種によって「合う施術」は違う?—解剖と肌質の違いから見る適応差
人種ごとに適した施術を考えるために、まずは骨格や肌質などの特徴から確認していきましょう。
■人種ごとに異なる骨格・皮膚の構造
人種とは、頭の骨・皮膚の色などの身体的な特徴にもとづく人類学的な分類。以下に、人種ごとの骨格・皮膚の構造についてまとめました。
■モンゴロイド系(分布地域:東アジア・東南アジアなど)
黄色人種とも呼ばれ、日本人もこの人種に含まれます。
<骨格の特徴>
頭蓋骨:短頭型*が多い。前頭骨の突出はコーカソイド系よりやや低め。
顔:短く幅広で、頬骨が突出。エラ張り傾向。
鼻:幅が広い。鼻根(鼻の付け根)・鼻筋ともに低く、上向きで丸い鼻先。
*短頭型 ……真上から見たとき、「横幅>前後幅」で丸みのある頭の形。
<皮膚の特徴>色は白色~淡褐色。皮膚構造に厚みがある。
■コーカソイド系(分布地域:ヨーロッパ・中東・インドなど)
白色人種とも呼ばれ、ヨーロッパにあるコーカサス地方が名前の由来。
<骨格の特徴>
頭蓋骨:長頭型*。前頭骨が突出。
顔:面長で幅が狭い。全体として立体的な骨格。
鼻:長く幅が狭い。鼻根・鼻筋が高く、下向きでツンとした鼻先。
*長頭型……「前後幅>横幅」で、真上から見ると細長い頭の形。
<皮膚の特徴>色は白色。皮膚構造は薄い。
■ネグロイド系(分布地域:アフリカ ・インド など )
黒色人種とも呼ばれ、「黒い」を意味するラテン語に由来。
<骨格の特徴>
頭蓋骨:長頭型が多いが、短頭型も存在。前頭骨は突出傾向。
顔:面長。コーカソイドとくらべて小さい。
鼻:幅が広い。鼻根・鼻筋が低く、鼻根にモンゴロイドとは違ったくぼみがある。
<皮膚の特徴>色は黒色で、メラニン量が多く色素沈着しやすい。皮膚構造は厚い。
■ オーストラロイド系(分布地域: オセアニア・南アジアなど)
黒褐色人種とも呼ばれ、外見はネグロイド系と似ているが人類学的には別の人種。
<骨格の特徴>
頭蓋骨:長頭型。眉上弓(眉毛の上のふくらみ) が突出。
顔:上下に短く幅広。目がくぼんでいる。
鼻:幅が広い。鼻根にくぼみがある。
<皮膚の特徴>色は褐色~黒色。毛深い。
■肌質・皮膚反応の違い
人種によって肌質や皮膚反応が違います。そのため、自分の人種とは異なる地域で美容医療を受ける際には注意が必要かもしれません。とくに気を付けたいポイントを解説します。
レーザー適応の違い
レーザー治療は、皮膚のメラニン量が影響します。そのため、コーカソイド系(白人)向け治療をほかの人種が受けると、火傷(やけど)や色素沈着などのリスクにつながるケースも。
こちらの表は、「フォトスキンタイプ」と呼ばれるもの。紫外線への反応性の違いで6つのタイプに分類されています。
<フォトスキンタイプ>
| スキンタイプ | 反応 |
| Ⅰ | 常に赤くなり、決して皮膚色が濃くならない |
| Ⅱ | 常に赤くなり、その後少し皮膚色が濃くなる |
| Ⅲ | 時々赤くなり、必ず皮膚色が濃くなる |
| Ⅳ | 決して赤くならず、必ず皮膚色が濃くなる |
| Ⅴ | 皮膚色がとても濃い |
| Ⅵ | 黒人 |
コーカソイド系(白人)はスキンタイプⅠで、もともとのメラニン量が少ないため紫外線を浴びた肌は赤くなっても黒くはなりません。日本人を含むモンロイド系はスキンタイプⅡ~Ⅳで、紫外線を浴びると最初は赤くなり後からやや黒くなります。ネグロイド系(黒人)はスキンタイプⅥで、もともとメラニン量が多いため日焼けしないといわれています。
■ヒアルロン酸・ボトックスの適応の違い
先ほどお伝えしたように人種ごとに骨格は異なり、骨格によって筋肉の付き方にも違いがあります。そのため、ヒアルロン酸注入やボトックス注射などの注入系治療では、同じ場所に同じ量の製剤を注入しても人種によって仕上がりに差が生じてしまうのです。
海外で注入系治療を受ける際は、慎重に少しずつ注入してこまめに仕上がりを確認してくれるドクターの施術を受けると安心かもしれません。
■リフト系施術の効果差
<皮膚・頬脂肪の厚さの違い>
| モンゴロイド系 | コーカソイド系 | |
| 皮膚の厚さ | 厚い | 薄い |
| バッカルファット(頬脂肪) | 多い | 少ない |
| 多い悩み | たるみ | シワ |
こちらの表は、モンゴロイド系とコーカソイド系の皮膚や頬脂肪の厚さを比べたもの。
コーカソイド系とくらべて、モンゴロイド系は皮膚構造に厚みがあり引き締まりにくいのが特徴。しっかりと引き上げるためには、皮膚下層のSMAS筋膜にアプローチするリフト系施術を行います。
また、バッカルファットと呼ばれる頬の脂肪量が多く顔がたるみやすいのも特徴。そのため、モンゴロイド系のリフト系施術ではバッカルファット除去を組み合わせることも比較的多いでしょう。
一方、コーカソイド系の場合はバッカルファットの重みによるたるみは少ない反面、薄い皮膚自体にシワやたるみが起こりやすい傾向。そのため、コーカソイド系のリフト施術では余分な皮膚を切り取る切開フェイスリフトがよく行われるでしょう。
モンゴロイド系特有の美容医療—東アジア・東南アジアで人気の施術と美的基準
日本人を含むアジア人はモンゴロイド系ですが、同じモンゴロイド系でも美容医療で何か違いはあるのでしょうか?アジアの代表的な国ごとに、人気の施術と美の基準をチェックしてみましょう。
■モンゴロイド系の特徴
前項で解説した、モンゴロイド系の特徴をまとめました。
■平坦な骨格
- 鼻が低め
- 目元が丸みを帯びている
- 立体的な骨格の人種と同じ施術をしても仕上がりに差が生じる場合あり
(注入系治療やリフトアップ施術など)
■厚みのある皮膚
- バッカルファット(頬脂肪)の量が多い
- フェイスリフト単体の施術では効果が出にくいケースあり
- エイジングは遅い傾向
■色素沈着しやすい
- メラニン量に影響するレーザー治療は色素沈着リスクあり
⇒日本人向けに開発されたデバイスや、海外製デバイスの出力を調整したクリニックを選ぶと◎
■アジア圏で人気の美容施術と「美の基準」
興味深いことに、同じアジアでも国によって美の基準が異なり、人気の美容施術にも違いがあるようです。各国の傾向を以下にまとめました。
■韓国
韓国は、韓流アイドルのような顔が美の基準。具体的には、地眉感のある自然で美しい眉毛、ぱっちり二重または切れ長の一重、スッととおったきれいな鼻筋などがあります。
そのため、二重整形や目元を強調する涙袋形成、横顔を見たときに鼻尖(鼻先の最も高い部分)の突出を強調するナチュラルな鼻整形などの美容施術が支持されています。
■日本
日本では、ナチュラル美と清楚感が大切にされ、シャープなフェイスラインが好まれる傾向。そのため、美容施術もバレにくいソフトな整形やナチュラルなリフト系施術などが人気です。
■中国
中国は、印象的なパキッとした濃い顔立ちが美しいとされる傾向。そのため、欧米風の高い鼻+Vライン(あご先~エラのライン)を形成したり、眉下リフトで目元を強調したりする美容施術が人気です。
■タイ・フィリピン
タイやフィリピンでは透明感のある白い肌が重視されていて、ぱっちり目も美人の条件。そのため、美白を叶える美容施術や目を大きく見せる手術が多くの人に選ばれています。
■各国で人気の美的アイコン
韓国・日本・中国などアジア人ならではの美しさは、世界から“アジアンビューティー”と称されていますよね。ここでは、各国で人気の美的アイコンを紹介します。
■【韓国】 ソン・ヘギョ(女優・モデル)
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数々の韓流ドラマで主演を務め、韓国内外で絶大な人気を誇る女優のソン・ヘギョ。透明感ある美肌と黄金比を感じる整った顔立ちが彼女の武器です。
10代でモデルデビューした彼女はドラマ主演でブレイク。40代(2025年時点)を超えた現在もなお韓国の美的アイコンで、数々の有名雑誌でグラビアを飾るほど。
【日本】 中条あやみ(女優・モデル)
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女優・モデルの両方で活躍を続ける、中条あやみ。イギリスと日本にルーツを持つ彼女は抜群のスタイルで、やわらかくフェミニンな顔立ちが魅力的。
世界的な高級ブランドのアンバサダーだった際は、日本だけでなく海外からも注目が集まったほど。
【中国】 アンジェラベイビー(女優)
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日本・香港・中国とアジアで幅広く活動する、アンジェラベイビー。ドイツと中国にルーツを持つ彼女は、あご先~エラの立体的なVラインとぱっちり目が印象的。
くっきりした目鼻立ちの彼女は、「なりたい顔No.1」として中国内外の女性から憧れの的に。彼女の画像をお手本にメイクする人も多いのだとか。
海外治療の輸入リスク—“白人モデル治療”が通用しない理由
近年、海外からさまざまな美容医療が日本へ上陸していますよね。素晴らしい技術が輸入されるのは喜ばしいことなのですが、注意しなければならいことも。詳しく見ていきましょう。
■欧米の美容医療がアジア人に適さない理由
理由①皮膚の厚さ・骨格が違うため
ここまでお伝えしてきたように、欧米人とアジア人では皮膚の厚さや骨格に違いがあります。例えば、表皮だけを引き上げる「欧米式リフト」は皮膚の薄い欧米人には効果的でも、バッカルファット(頬脂肪)の多いアジア人では術後元通りになってしまうケースも。
そのため、皮膚の深部やSMAS筋膜から引き上げる「SMAS法」といったリフト施術が日本人には適しています。
理由②アジア人の美的感覚に合わないため
欧米では、注入治療において製剤をしっかり入れるほうが好まれる傾向です。しかし、アジア人の美的感覚はどちらかというとナチュラル志向。
中でも日本はアジアのほかの国にくらべて美容医療への抵抗意識がまだ残っているため、「バレない程度の自然な施術」がより求められる傾向です。つまり、欧米の美的感覚はアジア人には合いづらいのです。
理由③デバイスの出力
欧米人にくらべて、アジア人の皮膚には厚みがありメラニン量も多いのが特徴。そのため、欧米人と同じ出力でデバイス治療を行うと、肌への刺激が強過ぎるのです。
■失敗例と適応施術の選び方
では、どのような白人モデル治療をアジア人に行うと施術の失敗につながりやすいのでしょうか。具体的に見て行きましょう。
失敗例①白人向けのリフト施術で顔が伸びたように見えるケース
白人とくらべて、アジア人、とりわけ日本人の角質層は3分の2ほどの薄さ。一方で、真皮層と皮下組織はアジア人のほうが厚いことが分かっています。このように人種によって皮膚の構造が違うため、白人向けのリフト施術をアジア人に行うと引き上がり過ぎてしまうことがあります。
すると、頬の丸みが失われ、のっぺりと顔が伸びたように見えてしまうおそれも。とくに技術力が未熟なドクターの施術ではいわゆる整形顔になり、その後他院で修正手術をしても不自然さが消えないこともあるようです。
失敗例②高出力レーザーを使用してPIH(炎症後色素沈着)を起こしたケース
レーザー治療後、PIH(炎症性色素沈着)が起こることはよくあります。PIHが表皮にできたのであれば、炎症が落ち着いた後のターンオーバーにより自然と治まることがほとんど。
しかし、日本人の肌にはあまりに強過ぎる高出力のレーザーを使用すると、肌の奥深くにダメージが及びPIHが真皮層にできる場合も。
レーザー照射後にできたPIHが1年経っても改善しない場合は、美容皮膚科の受診を検討しましょう。
どの施術を選ぶべきか?肌質・骨格に合わせた治療の選び方
現在は、白人向けに開発された美容医療のデバイス・製剤・素材を自国向きにアレンジして使用するクリニックが大半です。導入前に副作用やリスクについて独自に徹底検査するクリニックもありますが、それは大変な労力と期間を要します。
また、美容医療業界で長年キャリアを積んだドクターやナースであっても、数多ある美容医療施術について国別のスキンタイプに合わせた対応方法を学び尽くすことは不可能。患者のスキンタイプに最適な施術効果を常に提供することは難しいでしょう。
そのため、美容医療においてもAI技術のサポートが急務かもしれません。また、海外から輸入するのではなく、企業とドクターがタッグを組んで自国の患者向けの技術開発が今後ますます増えれば良いですね。
人種ごとに適した治療選びが施術後の満足につながる
結論、人種によって合う施術は違います。美容医療を行う際は、骨格や肌質などを考慮して慎重に施術選びをする必要があります。とはいえ、海外から輸入される美容医療について調べ、どのデバイス・製剤・素材が自分に合っているかを検討するのは難しいもの。
そこで、アジアの中でもとりわけ日本人に適した施術について、普段から深く研究し独自のメソッドを確立したクリニックやドクターを選ぶと良いでしょう。
検索しても分からないポイントは、事前に問い合わせたり、カウンセリングや診察の際にしっかりと相談したりすると◎。施術後の心配をできるだけ少なくして、これからも美容医療を上手に取り入れてくださいね。
※本記事は人種差別を意図するものではありません。NERO編集部としては、あくまで身体的な特徴ごとに適した美容医療もあるという事実に焦点を当てております。
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