海外学会って何?日本人ドクターが出向く理由とは

海外学会って何?日本人ドクターが出向く理由とは

海外学会と聞くと、「キラキラしたドクターが旅行感覚で行く場所」と思われる方も多いのではないでしょうか。

確かに海外学会には華やかな一面もあるのは事実ですが、実際に海外学会に参加したドクターのSNSを見ると真摯に美容医療に向き合っている現場であることがわかります。

今回は、海外学会とは?という基本から、日本のドクターがわざわざ出向く理由まで深堀りしていきます。

海外学会IMCAS・AMWCとは?学会の規模や参加者層

海外学会って何?日本人ドクターが出向く理由とは|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

海外学会とひと言でいっても、実にさまざまな学会が存在します。

今回は、世界最大級ともいわれる美容医療の海外学会「IMCAS」と「AMWC」に着目。

世界中からドクターが集まる海外学会のスケール感をご紹介します。

■IMCAS(International Master Course on Aging Science)

IMCASは、形成外科・皮膚科学・老化科学に関する最新の技術や開発成果を発表するための国際学会。

1998年にヨーロッパで発足された学会で、現在では160ヵ国以上から23,000人以上の参加者が一堂に会す世界最大級の学会となりました。

2025年には中国、インド、2026年にはフランス、アメリカ、バンコクと世界各地で開催予定。

各国の形成外科学会や皮膚科学会、スポンサー企業とも連携し、講演やブース展示が行われています。

世界で活躍するトップドクターが実際に手技を披露する場も設けられるため、治療のスキルを実践的に学ぶことも可能です。

IMCASに参加できるのは、医師や看護師、企業の専門家などのみ。学会の公用語は英語に設定されています。

■AMWC(Aesthetic and Anti-Aging Medicine World Congress)

AMWCは、美容やアンチエイジング医療分野で23年もの歴史を持つ世界有数の国際学会です。

毎年3~4月にモナコで開催され、参加者12,000人以上、講演者300人、250社もの美容医療関連企業が集います。

2025年にはアメリカ、コロンビア、ブラジル、ロンドン、ドバイ、中国、タイで開催予定。

2025年11月に日本で開催される「AMWC JAPAN」では、「近畿大学アンチエイジングセンター」創設者の山田 秀和先生、「NPO法人自由が丘アカデミー」代表理事の大慈弥 裕之先生、「医療法人社団 喜美会自由が丘クリニック」理事長の古山 登隆先生といった錚々たるメンバーが委員会を務めます。

AMWCに参加できるのは、美容皮膚科医や形成外科医、婦人科医や内分泌学医など、美容医療やアンチエイジング医療分野での貢献に関心がある人に限定されています。

日本の学会との違いは?わざわざ海外学会に行く理由とは

キャリーケース 海外学会って何?日本人ドクターが出向く理由とは|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

美容医療の海外学会は、世界各国からドクターが集う一大イベントです。

しかし、日本にも「JSAPS」や「JSAS」といった学会があるのに、なぜ日本人ドクターは海外学会まで足を運ぶのでしょうか。

■日本にある2つの「日本美容外科学会」

日本にある美容系の学会として代表的な「JSAPS」と「JSAS」。

両者はどちらとも「日本美容外科学会」という名前のため混同されがちですが、英語の略称で区別されています。

それぞれの違いをわかりやすくまとめると以下のようになります。

JSAPSとJSASの違い

  JSAPS JSAS
設立年 1977年 1966年
主な会員資格 日本の医師免許と日本形成外科学会正会員の資格を持つ者 日本の医師免許を保有かつ会員2名の推薦を受ける者
会員層 形成外科医限定で入会条件が厳格 自由診療・美容皮膚科領域の開業医が多数
雰囲気 国際美容形成外科学会(ISAPS)と連携しており学術的 症例や技術の発表など実用的
英語表記 Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery Japan Society of Aesthetic Surgery

どちらが上位という訳でなく、学会にはそれぞれ特徴があり入会できる資格もさまざま

とはいえ、形成系での専門医取得が求められるJSAPSと、勤務実績5年で専門医試験が受けられるJSASという違いがあり、ドクターたちの中には一定の区別があるのが現状です。

どちらかだけにしか入っていないドクターもいれば、双方に入っているドクターもいます。

学会の雰囲気は結構違うので、流派や考え方は異なるといえるかもしれません。

■日本人ドクターが海外学会に出向く理由

日本の学会でも情報の発信や共有がされていますが、日本人ドクターが海外学会にわざわざ出向く理由は何なのでしょうか。

世界規模で最先端の情報やトレンドに触れられる

IMCASやAMWCのような海外学会には、世界中から最先端の情報や技術が集結します。

薬剤や医療用資材、美容医療機器などは海外で開発されることが多いため、海外学会は日本ではまだ導入されていないものにいち早く触れられる絶好のチャンスとなります。

グローバルなコネクションが形成できる

学会はドクターや企業にとっての出会いの場でもあります。

海外学会への出席は、国際的なコネクションを構築できるチャンスです。

学会で懇意になったドクターと学会後も情報や技術を共有したり、共同で新たな技術や製品を開発したりという展開も考えられます。

国際的な視点で偏りのない考え方を持てる

日本独自の美的感覚や文化は素晴らしいものですが、海外には日本とは異なる視点があります。

海外学会で多様な考え方に触れることで、より広く偏りのない考え方で美容医療を捉えられるようになります

発表者・聴講者としてのブランディングになる

IMCASやAMWCのような世界規模の海外学会で登壇をした、聴講したといった経験は、ドクターが国際的に評価されるブランディングとなり得ます。

日本人ドクターは何を学びに行く?SNSで見つけたリアルボイス

演説 海外学会って何?日本人ドクターが出向く理由とは|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

海外学会に実際に足を運んだドクターたちが何をしているのか、SNSで見つけてみました。

■日本では否定的な意見もある施術に賞賛を得られた

「BLINC CLINIC」の院長 柳川 央徒先生(@babumi_yanagawa)は、2025年6月にタイで行われた「IMCAS ASIA 2025」に登壇。

「ナゾラビアルファット脂肪吸引と糸リフトの併用治療の効果について」というテーマで発表を行いました。

日本では「ナゾラビアルファットは除去しない方がいい」という否定的な声が少なくないそうですが、登壇後には聴講者から賞賛の声が多数あったそう。

これは技術的な問題もあれど、世界によって美の基準が異なることも大きなポイント。

例えば、日本では頬コケはNGとされる傾向があるが、ハリウッドセレブなどには人気のあるデザインだったりということもあります。

このように、同じ施術でも、日本のドクターと海外のドクターでは捉え方が異なる好事例といえるでしょう。

■科学的な正確性が厳しく審査される非常にレベルの高い学会だと実感

「湘南美容クリニック」の松浦 翔先生(@sbc_s.matsura)は、2025年6月にタイで行われた「IMCAS ASIA 2025」に登壇。

「脂肪豊胸手術における、3次元解析を用いた最適な注入量の予測モデル確立を目指す研究」について発表しました。

脂肪豊胸はアジア人と欧米人では異なる戦略を取る必要があるため、登壇時には日本での施術について多くの質問をされたそう。

学会の印象として、「賑わいがあり華やかだが、単に商業的なだけでなく科学的な正確性が厳しく審査される非常にレベルの高い学会」と語っています。

■日本にいながらグローバルな視点で美容医療を学べる

銀座スキンクリニック(@ginzaskinclinic)のインスタでは、2024年11月に日本で開催された「AMWC JAPAN」で院長の坪内 利江子先生を含む4名のドクターが講演した様子がアップされています。

坪内先生は「手と首の見た目と機能改善に向けた包括的アプローチ」について発表を行い、海外から来日されていた3名の医師とともにセッションを行ったそうです。

海外学会が日本で行われる場合、海外から多くの医師が来日するため、日本にいながらグローバルな視点で美容医療を学ぶことができる貴重な機会となるようです。

■日本と海外の共通点と相違点が発見できた

表参道レジュバメディカルクリニックの恩地 菊乃先生(@dr.kikuno)は、2023年11月に日本で開催された「AMWC JAPAN」に参加。

意外なことに、国が違ってもドクターが疑問に思う点や悩む部分は似通っていて、学会で得たアドバイスはそのまま臨床に使えるレベルのものだったそうです。

日本の学会は“コアな視点”なのに対し、海外学会は“マクロな視点”で美容医療を俯瞰しているという違いも実感。

学会に参加したことで、美容医療を学ぶモチベーションが高まったと投稿されていました。

まとめ

海外学会とは、世界各地から“最先端”が結集し、さまざまなヒトやモノが交差することで新たな美容医療が切り開かれていく現場であることがわかりました。

ドクターにとって、海外学会は日本の美容医療を客観視できるチャンス。

広く多様な考え方から、日本の美容医療をより良くする工夫が生まれています。

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