眼瞼下垂を形成外科で治したいと考える方の多くは、「視界が狭い」「まぶたが重い」といった機能的な悩みを抱えています。
しかし、眼瞼下垂の治療は形成外科だけではありません。
美容外科や眼科など、複数の診療科でも対応可能な疾患です。
治療を希望する場合は、各診療科の役割や治療範囲をきちんと理解しておく必要があります。
眼瞼下垂の治療を受けるにあたり、形成外科と美容外科のどちらを受診すべきか悩んでいる方は、ぜひ目を通してみてください。
眼瞼下垂とは

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眼瞼下垂は、まぶたが下がって目が開けづらくなる状態を指します。
視界が狭くなるだけでなく、外見の印象に影響を与えたり日常生活に支障をきたしたりすることも。
まずは、眼瞼下垂の具体的な症状やその原因、治療の必要性について詳しく見ていきましょう。
■眼瞼下垂の原因や症状
眼瞼下垂は、主にまぶたを持ち上げる眼瞼挙筋や、その腱膜の機能が低下することで発症する病気です。
原因は大きく分けて生まれつきの先天性と、加齢やコンタクトレンズの長期使用、疾患などが要因となる後天性に分類されます。
眼瞼下垂の代表的な症状は、視野が狭くなること。
まぶたが瞳孔にかかると視界が遮られるので、無意識におでこの筋肉を使ってまぶたを持ち上げようとすることから、おでこにシワが寄る、目つきが悪くなるなどの変化が現れることもあります。
さらに、眼精疲労や肩こり、頭痛といった症状を伴うケースも少なくありません。
症状が進行すると、見た目だけでなく身体的な負担も大きくなるのが特徴です。
■治療が必要な眼瞼下垂の基準
治療が必要な眼瞼下垂かどうかは、主に視野障害の有無で判断されます。
診断のために医療機関で行われる代表的な検査は「MRD-1(瞼縁角膜反射距離)」「瞼裂高(けんれつこう)」「挙筋機能検査」の3つです。
MRDは、黒目の中央から上まぶたの縁までの距離を指します。
MRD-1は、目の開き具合や左右差を確認する検査です。
瞼裂高は角膜の一番下から上まぶたの縁までの距離のこと。
この検査では、角膜がどのくらい見えているかを調べることで下垂の程度を評価します。
挙筋機能検査は、眼瞼挙筋の機能がどの程度低下しているかを調べる検査。
測定数値が低いほど重度と判定されます。
これらの検査結果から、日常生活に支障をきたしていると診断されれば、治療の対象となります。
また、検査に加え、問診も重要な判断材料です。
車を運転するときに視界が狭くて危険を感じる、読書や仕事で目が疲れやすい、まぶたが重くて目を開けているのがつらい、といった症状がある場合は、医師にその旨をしっかりと伝えましょう。
眼瞼下垂は何科を受診する?形成外科・美容外科・眼科の違い

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眼瞼下垂の治療を受けるにあたり「形成外科」「美容外科」「眼科」のうち、どの診療科を選ぶべきか迷う方は少なくありません。
それぞれの診療科には異なる専門性と治療目的があります。
知らずに治療を受けて「やらなきゃ良かった……」と後悔することがないよう、ここでは各診療科の役割と治療範囲の違いを詳しく解説しましょう。
■形成外科の役割と治療範囲
形成外科は、皮膚や筋肉、脂肪、骨など体の構造に生じた異常や変形を、外科的な手技で再建する診療科です。
眼瞼下垂においては、まぶたを引き上げる筋肉や腱膜の構造を調整し、機能的な改善を主な目的とします。
視野障害がある場合は保険適用の対象になることがあり、医療機関では各種検査結果を踏まえて治療方針を決定します。
形成外科で行われる眼瞼下垂手術は、挙筋腱膜前転術や挙筋短縮術など。
詳しい手術方法は異なりますが、どちらも皮膚を切開し、筋肉や腱膜を正しい位置に固定し直すことでまぶたの開きを改善する手術です。
これらの手術は日帰りで行われることもありますが、術後は腫れが一定期間続くことがあるため、経過を丁寧に診ていく必要があります。
形成外科での眼瞼下垂手術は基本的にまぶたの構造に基づいた機能回復がメインとなるものの、クリニックによっては見た目の印象を考慮してもらえることもあるようです。
手術を希望しない場合は、手術しないで治す方法があるかどうかも併せて確認しておきましょう。
■美容外科の役割と自由診療の位置づけ
美容外科は、見た目の改善を目的とした自由診療が中心。
眼瞼下垂の治療においても、二重ラインやまぶたのデザインなど、審美性に重点を置く治療を提供しています。
一方で形成外科の一分野として発展してきた歴史があり、形成外科出身の医師が在籍する美容クリニックでは、形成外科的なアプローチを取り入れた治療を行うケースもあります。
ただし、美容外科における眼瞼下垂治療は基本的に自由診療となり、症状ではなく“見た目の改善”を希望する方が対象です。
二重の幅や形、まぶたのたるみを含めた全体バランスを考慮しながら治療が行われるため、より仕上がりの印象を重視したい方に向いています。
注意点としては、費用や術後フォローの内容がクリニックによってまちまちであること。
手術を受ける前は十分に情報収集を行い、期待できる効果やコストをしっかりと確認しておく必要があります。
■眼科の役割と治療範囲
眼科は、視機能や眼球そのものの病気を扱う診療科で、視力低下やドライアイ、白内障など幅広い疾患に対応します。
まぶたの疾患を扱うこともありますが、形成外科のように広範囲な再建手技を専門とするわけではなく、主に眼機能の改善を目的とした治療が中心です。
眼瞼下垂においては、視野や目の状態を評価し、必要に応じて形成外科と連携しながら治療を進めるケースもあります。
一方で、眼瞼下垂は目の病気というよりはまぶたの状態がもたらす病気であることから、眼科では対応しきれないことも。
もちろん目の病気がないかどうかを確認するには眼科への受診が基本となりますが、眼瞼下垂の治療も併せて希望する場合は、自分に合う治療を受けられるかどうかという点も踏まえてクリニックを選ぶことが大切です。
眼瞼下垂は形成外科と美容外科のどちらで治療すべき?クリニック選びのポイント

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眼瞼下垂の治療を受けるクリニックを選ぶ際は、医師の専門性や診療体制、術後のフォローなど、いくつかの観点から検討する必要があります。
押さえておきたいポイントは、大きく4つです。
■医師の専門性と経歴を確認する
クリニック選びでまず重視したいのが、医師の専門性と経験です。
眼瞼下垂手術は、まぶたの構造を細かく理解したうえで行う必要があるため、解剖学的構造に精通しているかどうかが仕上がりに大きく影響します。
また、眼瞼下垂の治療では、医師が日本形成外科学会認定の形成外科専門医や日本美容外科学会認定の美容外科専門医の資格を持っているかどうかも確認しておきたいところ。
これらの資格を持つ医師は、まぶたの再建と審美の両面における知識を体系的に学んでいる名医が多く、選択するうえでの判断材料になります。
また、美容外科を標ぼうするクリニックであっても形成外科出身の医師が在籍する場合、機能面と審美面の両方に配慮した治療が可能に。
まぶたの状態や希望に応じて最適な治療プランを提案してくれるでしょう。
■保険適用の可否と診療体制
眼瞼下垂治療を検討する際、保険適用が可能かどうかは費用面で大きな差となります。
保険診療を行っているクリニックは、形成外科や眼科を標ぼうしている医療機関が一般的です。
美容外科において保険診療内での治療を希望する場合は、受診を検討しているクリニックが保険診療を取り扱っているかを確認しましょう。
一方、自由診療を選択する場合は、料金体系の明確さがクリニック選びの重要なポイントに。
手術費用だけでなく術前検査や麻酔、術後の診察、薬代など、追加費用が発生する可能性についてきちんと調べておくことが大切です。
料金が曖昧なクリニックは避け、明細を提示してくれる誠実な医療機関を選びましょう。
■カウンセリングや説明の丁寧さ
カウンセリングの質は、治療の満足度に直結します。
クリニックを選ぶ際は十分な時間を取って説明してくれるか、自分の話をしっかり聞いてくれるかをカウンセリングで見極めましょう。
また、メリットだけでなくリスクやデメリットを含めて説明してくれるかも重要なポイントです。
腫れやダウンタイム、仕上がりの個人差、起こりうる合併症など、ネガティブな情報も隠さず伝えてくれる医師を選ぶことをおすすめします。
納得して治療に進めるかどうかを判断するためにもカウンセリングは複数のクリニックを比較し、何度も検討を重ねましょう。
まとめ
眼瞼下垂は、形成外科・美容外科・眼科いずれでも治療が可能です。
ただし、それぞれの診療科では治療目的や範囲、費用体系が異なります。
機能回復を目的とする場合や保険診療での治療を希望する場合は、形成外科や眼科へ受診を。
一方、自由診療で審美性を重視しつつ機能面での回復も期待する場合は、形成外科出身の医師が在籍する美容外科が選択肢となります。
どの診療科を選ぶにしても、医師の専門性や診療体制、説明の丁寧さなどを多角的に検討しながら、信頼できる医師のもとで自分に合った治療を選択しましょう。
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【治療の内容】眼瞼下垂術
【治療期間および回数の目安】1回※状態によって異なります。
【費用相場】¥300,000~¥600,000※クリニックや術式により異なります。
【リスク・副作用等】腫れ、内出血、左右差、目が閉じづらくなる、感染など
【未承認機器・医薬品に関する注意事項について】
・本治療には、国内未承認医薬品または薬事承認された使用目的とは異なる治療が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、各クリニック医師の判断のもと導入しています。
・重大なリスクや副作用が明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。


