本当は「絶対やらないで」とドクターたちが言いたい施術は?「アブナイ美容医療」と「悪徳美容外科」

本当は「絶対やらないで」とドクターたちが言いたい施術は?「アブナイ美容医療」と「悪徳美容外科」

美容医療には素晴らしい治療法も多い一方で、リスクが高い施術や問題を抱えたクリニックも存在します。

しかし、業界内でリスクを正直に話すことには大きな躊躇が伴います。「他院を蹴落とすようなことは言いたくない」「誹謗中傷に繋がるかもしれない」という理由で、本音を患者に伝えたくない医師が多いのです。

この記事では、医師たちの本音や業界の圧力に迫り、ハイリスクな美容医療や悪徳美容外科の実態を明らかにします。悪意のあるクリニックや医師にだまされないためのポイントも紹介していますので、最後までぜひご覧ください。

「その治療、やらないで!って本当は言いたい。でも言いづらい……」理由は?匿名医師が語る「言えない本音」—業界の圧力と良心の狭間で

今回、NERO編集部では美容クリニックで働く医師に打診し 、匿名という条件で業界の圧力や医師の本音を伺うことに成功しました。

インタビュー形式で伺った内容をお届けします。

■ 医師が語る「言えない本音」—業界の圧力と良心の狭間で

美容クリニックで長年働くA医師に、他院を批判せずにリスクを伝える難しさと、その中で正しい情報を届けるために工夫していることについて伺いました。

―――「その美容施術はやらないで」と医師が本音を言えない理由は何でしょうか?

A医師:普段、どんなに誠実に美容医療に向き合っていても、リスクが高い治療について本音を話すと、この業界では「他院を誹謗中傷した」と言われてしまうことが多いんです。

また、「あの先生は、他院のイメージを下げて自院の好感度を上げた」みたいな印象になってしまうリスクもあります。

―――伝え方を工夫しても難しいのでしょうか?

A医師:患者さまから意見を聞かれたとき、「おすすめはしないですけど……」という風にこちらの意見をやんわりと伝えたとします。

しかし、医師にそのようなつもりはなくても、患者さまの受け取り方によっては他院の批判や悪口と捉えられかねません。

また、患者さまご本人がその施術やそのクリニックでの治療に前向きであったら、患者さまの選択を否定しきれない難しさが出てしまうのです。

―――本音を話しにくい背景には、美容医療業界ならではの圧力も関係ありますか?

A医師:もちろんあると思います。この業界では、他院の治療メニューを批判すること自体タブー視されています。

場合によっては、所属する学会や団体に居づらくなって、知識や技術をアップデートする場が失われるかもしれないという懸念も。

さらに、美容クリニックによっては、クチコミ投稿を業者に委託しているところもあります。

いわゆるサクラを使われて自院に低評価がたくさんついたり、悪いウワサを世間に流されたりすると、それを払拭するのは至難の業です。

―――本音を話すことで医師が最も恐れていることを教えてください。

A医師:多くは、経営的な視点から本音を話しづらいのかもしれませんね。

本音を話すことは医師個人にリスクがあるだけでなく、何か問題が起こったときに自院のスタッフの生活にも影響を及ぼしかねませんから。

とくに院長は雇用を守る責任があるため、本音を話せなかったとしても致し方ないことではないでしょうか。

■インタビューの総括

美容医療は人気商売の側面もあるため、クリニックの規模に関わらずSNSで炎上したり、嫌なイメージがいつまでもつきまとったりすることが何より怖いもの。

また、医師が経験や事実に基づいて話したとしても、ネガティブな内容はそもそも心象が良くありません。

このように、業界の圧力と医師としての良心というジレンマに苦しみながら美容医療に携わる医師も多いようです。

「悪徳美容外科」の特徴—患者の安全を脅かす危険因子

医者 本当は「絶対やらないで」とドクターたちが言いたい施術は?「アブナイ美容医療」と「悪徳美容外科」|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

続いては、悪徳美容外科の特徴に迫ります。

あわせて、悪徳美容外科にだまされないための対処法もチェックしておきましょう。

■カウンセリングの不透明さ—リスクを隠す手法

出典:聖心美容クリニック公式YouTube(@SeishinBiyougeka

こちらは、『とことん真面目に、美容医療』をスローガンに掲げる「聖心美容クリニック」が公式YouTubeで公開しているショートムービーです。

映像に登場するのは、私利私欲にまみれた悪徳美容外科の醜さを擬人化したドクター・ビーストと、就職面接での印象を良くするために二重整形の相談に訪れた女性。

患者に十分な説明をせず、短期間で決断を迫る不正なカウンセリング手法が紹介されています。

ぜひ一度ご覧ください。

※こちらの映像にはショッキングな内容も含まれるため、閲覧の際はご注意ください。

■クチコミの操作—信頼できる情報源を見抜く方法

偽のクチコミやレビューを活用して患者を誘導する悪徳美容外科の特徴を踏まえて、信頼できる情報源を見抜くポイントをお伝えします。

また、悪徳美容外科に捕まってしまったときに覚えておきたい対策も紹介します。

■悪徳美容外科の特徴

悪徳美容外科には以下のような特徴があるといわれています。

①患者によって施術費用を変動させる

服装やカバン、アクセサリーなどの身なりなどにより患者を品定め。

施術費用は一律であるにも関わらず、患者の予算を聞き出して施術費用を変動させます。

②不都合な話は華麗にスルーする

施術後の異常で患者から問い合わせがあっても、診察を受け入れないクリニックも。

また、事前説明にあったアフターケア・検診を行わず、保証期間内の対応をしないケースも存在。

③ウソの情報で患者をだます

「施術の効果は永久的」「某有名人も受けた」など事実無根の情報を患者に伝えたり、「絶対にやるべき」「受けないと一生後悔する」など心理的に追い込んで不要な高額施術をすすめたりします。

④誇大広告で患者を惑わす

広告では非常にリーズナブルな費用を打ち出しておきながら、カウンセリングに行くと「あなたの状態には適用外です」と言われ、その数十倍もの費用を提示されるケースも。

また、患者を勘違いさせるような二重価格表示*でカウンセリングに誘導することもあります。

*二重価格表示 ……通常料金とそれより安い特別料金を併記すること。適切な比較が行われていない場合は不当表示にあたるおそれがある。

⑤倫理に反した医療を行う

薬剤を別の患者に使い回したり、健康保険を不正に適用したりするクリニックもあります。

また、カウンセリングをメインで行うのが医師ではなくカウンセラーで、医師は流れ作業のように短時間で多数の施術をこなすところも。

⑥勧誘がしつこい

「今スグ契約すれば〇%安くできる」「契約に必要なハンコを持ってきたんでしょ?」などと畳みかけるような言葉で患者を煽ったり、契約書にサイン・捺印するまでクリニックから帰さなかったりすることも。

■悪徳美容外科にだまされないための対策

もし「悪徳美容外科に捕まってしまったかも」と感じたら、以下の対策を行ってみましょう。

①施術内容・契約内容で外せないポイントを再度確認する

医師の説明を受ける際は、以下のポイントが網羅されているか確認しましょう。

説明が不十分な場合は、しっかりと理解できるまで医師に尋ねてください。

自分でも誰かに説明できそうなくらいしっかりと落とし込みましょう。

<確認ポイント>

  • 施術の効果、起こり得る副作用や合併症
  • 施術の費用(保険適用の有無も含めて)と回数
  • 施術で使用する薬剤・素材・デバイスなどの安全性や有効性
  • 解約条件を含む契約内容
  • 選択肢となるほかの施術方法の有無

②冷静かつ慎重に判断してから契約する

「理想の自分に近づくために、本当に今スグ必要な施術なのか?」というポイントで、もう一度冷静に判断することは大切です。

契約しようかどうか悩んでいるときはすぐに判断せず、持ち帰って検討しましょう。

インターネットで再度情報を集めたり、信頼できる人に相談したりして、自分がその施術を受けることに納得できてから契約しても決して遅くはありません。

③初診の際はクレジットカード・印鑑・身分証明書は携帯しない

初回のカウンセリングの際は、カウンセリング代ちょうどの現金だけを持参するのも良いでしょう。

クレジットカードや印鑑を持参しなければ、契約自体ができません。

また、人質となりかねない健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードなどの身分証明書を持参しないこともおすすめです。

④困ったときは行政の相談窓口へ

個人で解決することが難しそうな場合は、行政の相談窓口を頼ってみるのも1つの手です。

相談窓口 医療安全支援センター
(都道府県、保健所を設置する市・特別区)https://www.anzen-shien.jp/
消費者ホットライン
(消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
相談内容 医療に関する苦情・心配・相談、医療安全に関するアドバイスや情報提供など 契約内容・解約条件など、主に契約に関する相談

業界の圧力に関する実態調査

医療者 本当は「絶対やらないで」とドクターたちが言いたい施術は?「アブナイ美容医療」と「悪徳美容外科」|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)暗黙のルールであるかのように、他院の治療メニューを批判することがタブー視されがちな美容医療業界。

そのような中でも、正義感をもって注意喚起を行っているドクターも存在します。

医師や業界関係者の証言を紹介します。

■事例①法外な施術料金への注意喚起

こちらは、「X Clinic(エックスクリニック)恵比寿院」の北尾 善杜(きたお よしと)先生がご自身の公式Xで 2024年5月に投稿したもの。

投稿の最初には【悪徳美容外科】【胸糞拡散希望】というワードが見受けられます。

画像は、北尾先生のもとへ相談に訪れた患者が持参した、他院で施術を受けた際のレシート。

こちらのレシートから判明したのは、クマ取りや糸リフト(スレッドリフト)で相場よりはるかに高い施術料金を支払わされたという事実。

さらに診察では、同時に受けたヒアルロン酸注入でオーバーフィラー顔になってしまい、外出もはばかられる状態だと患者から打ち明けられています。

北尾先生がこちらの投稿をした理由は、悪徳美容外科の被害者を1人でも減らしたいという強い想いから。

また、先生は投稿内で「当日の施術を強くすすめてくるクリニックには絶対に行かないで」とも呼びかけています。

■事例➁PRP+FGF(成長因子)を用いる治療への注意喚起

美容注射 本当は「絶対やらないで」とドクターたちが言いたい施術は?「アブナイ美容医療」と「悪徳美容外科」|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

出典:NHK

こちらは、NEROでインタビューさせていただいた美容外科後遺症診療医の朝日林太郎先生が、美容医療で注意するべきポイントについてお話された記事です。

こちらの記事には、過去にNEROがNews Topicとして取り上げたPRP*(多血小板血漿)にbFGF(ベーシックエフジーエフ、成長因子)を添加した美容医療施術に関する内容も盛り込まれています。

PRP+bFGF施術を巡るトラブルでは、裁判にまで発展し美容クリニック側に解決金を支払う命令が出された判例も。

*PRP ……患者本人の血液より抽出した血小板を濃縮して注入する再生医療の1つ

朝日先生は、「医師と患者が治療のリスクについて共有することが必要」「不適切な治療による美容後遺症を回避するために、インターネットやSNSなどからではなく、治療前に自ら情報収集してしっかりと考えることが大切」と提言しています。

記事の最後には、信頼できるクリニック・医師を選ぶポイントについて朝日先生からのアドバイスも掲載されています。

また、こちらは「THE CLINIC(ザ・クリニック)」の公式Xの投稿。

同じく、PRPやFGFによる豊胸で、一般的に“成長再生豊胸”や“血液豊胸” と呼ばれる美容施術への注意喚起がなされています。

投稿で紹介されている症例では、成長因子を注入したバストが膨らみ続けたり、たくさんのしこりが確認されたり……。

豊胸を検討中の方は、ぜひ一度詳しく確認してください。

■事例③美容クリニックの違法行為への注意喚起

「業界の圧力があり、実名では大きな声で言えないけれど……」と、今回の調査でさまざまな医師や業界関係者から多く上がった情報についても紹介します。

■極端に安い施術には要注意

施術料金の安さに心惹かれても、一旦冷静になりましょう。

肌やボディ、骨格などの状態は一人ひとり違うため、その料金で全員に施術を行えることはまずないと考えたほうが無難です。

また、「〇〇円~」のようにを表す記号の「~」がついている医療広告にも注意が必要

広告では表示金額が安くても、実際にクリニックへ行った際、提示される見積り金額がどのくらいになるか不透明なためです。

■身分証明書は提示しない

美容医療は保険診療ではなく自由診療であることが圧倒的に多いもの。

当然、保険適用外の施術に健康保険証は必要ありありません。

また、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認ができるものも、医療ローンを組むときになって初めて必要になります。

必要がないのに、クリニックで「身分証明書をお預かりします」と言われたら素直に預けないのがベスト。

中には、契約書にサインするまで身分証明書を返してもらえないケースも実際にあったそうなので注意が必要です。

■アップセルに乗せられないよう心構えをしておく

どのような広告にも言えることですが、企業が出稿費を回収するためには顧客1人あたり一定の単価を上げる必要があります。

そうでなければ赤字となり、経営に影響を及ぼしかねません。

そのため、医療広告で施術費用の安さを強く打ち出していると感じた際も注意が必要かもしれません。

実際にクリニックへ行ってみたら、グレードの高い施術やオプションなどをすすめられて高額な見積もりを提示されるケースも。

不必要なアップセルに応じる必要はないため、毅然とした態度で断りましょう。

■見積書の持ち帰り・撮影がNGなクリニックは要注意

本来であれば、患者の求めに応じて見積書の持ち帰りやスマホでの撮影は許可されるもの。

それらをクリニックが認めない場合や、話をすりかえて契約や施術を即日すすめてくる場合などは要注意です。

■施術者が医療資格を持つか確認を

今回の取材では「カウンセラーや受付スタッフが施術しているクリニックが実際にあるらしい」という驚きの証言も!

医療資格を持たない人による施術はもちろん違法行為であり、身体被害や合併症・後遺症などにつながりかねません。

その施術を行える医師や看護師かどうかもしっかり確認しておきたいところです。

まとめ:アブナイ美容医療や悪徳美容外科の真実を知り、自衛を!

美容医療業界の医師たちが胸に秘める、リスクが高い施術や問題を抱えたクリニックへの本音について紹介してきました。

一方で、業界の圧力に屈することなく自分の正義を貫き世間に発信するドクターがいることは日本の美容医療における一筋の光です。

日本でも美容医療が世間に浸透してきて倫理に反する美容クリニックはずいぶん減ってきていますが、それでもなお光と影は存在します。

今回の記事で紹介したように、アブナイ美容医療や悪徳美容外科にだまされない知識を身に着け、施術を受ける前に押さえるべきポイントを毎回確認する癖をつけておきましょう。

美容医療は外見を美しくするだけでなく、内面の豊かさももたらしてくれる素晴らしいもの。

納得して施術を受け、満足度の高い結果にアプローチできるよう、ぜひ自衛も大切に。

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