【Breaking News】厚労省、コージンバイオに改善命令 ――2025年患者死亡事案の“その後”、再生医療の安全神話は制度で崩れた

📌 記事をざっくりまとめると…

  • 2025年8月:再生医療中に患者が死亡、厚労省が初の緊急命令

  • 対象施設:治療を行ったクリニック+コージンバイオ埼玉細胞加工センター

  • 2026年1月:立入検査の結果、複数の法令違反が確定

  • 改善命令の核心は、清浄度管理・逸脱管理・品質照査の不全

  • 再生医療は「技術」ではなく、製造と運用のガバナンスが問われる段階へ

厚生労働省は2026年1月23日、
再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき、
コージンバイオ株式会社 埼玉細胞加工センターに対して
改善命令(法48条2項)を発出した。

本件は、NEROが2025年8月に速報した「再生医療中の患者死亡事案」を起点とする、
一連の行政対応の最終局面にあたる。
当時は、国内で初めて「患者死亡」を理由に緊急命令が発令され、
クリニックおよび細胞加工施設の双方に提供・製造の一時停止
が命じられた。

NERO速報(2025年8月・患者死亡事案)

その後の立入検査を経て、今回、
品質管理・衛生管理に関する複数の法令違反が正式に認定され、
改善命令という形で結論が示された。

【Breaking News】厚労省、コージンバイオに改善命令 ――2025年患者死亡事案の“その後”、再生医療の安全神話が制度で崩れた瞬間国(厚生労働省)が、コージンバイオ株式会社に改善命令を出した〈出典:厚生労働省〉

1. 2025年8月|患者死亡で国内初の「緊急命令」

2025年8月、
東京都中央区の医療機関で行われた
自己脂肪由来間葉系幹細胞を用いた再生医療において、
50代女性患者が投与中に急変し死亡する事案が発生した。

1-1. 再生医療提供中に発生した死亡事案

本件は、
「慢性疼痛に対する自己脂肪由来間葉系幹細胞による治療」として
再生医療等提供計画が提出されていた治療だった。

患者は投与中に急変し、心停止に至り死亡が確認された。

1-2. 厚労省による緊急命令の発出

厚生労働省は本事案を重く受け止め、

  • 治療を行った医療機関に対する
    再生医療提供の一時停止

  • 細胞加工を担った
    コージンバイオ株式会社 埼玉細胞加工センターに対する製造停止

という、
再生医療等安全性確保法に基づく国内初の緊急命令を発令した。

👉 当時の詳細な経緯は、NEROの速報記事で詳報している
🔗 https://nero-drbeauty.com/news/24040/

2. 立入検査で判明した「品質システムの機能不全」

緊急命令後、厚生労働省は
医療機関および細胞加工施設に対し立入検査を実施した。

2-1. 単発ミスではなく、構造的な法令違反

検査の結果、
コージンバイオ埼玉細胞加工センターでは
事故対応以前に、品質管理体制そのものが機能していなかったことが確認された。

確認された主な違反事項は以下の通り。

  • 原料の供給者・規格が文書で管理されていない

  • 受入試験や試験成績書の確認が行われていない

  • 年1回義務付けられた品質照査を一度も実施していない

  • 清浄度管理区域で菌量が基準超過しても逸脱処理をしていない

  • 自己点検を長期間実施していない

  • 死亡事案に関する品質情報の記録が作成されていない

2-2. とくに問題視された「清浄度管理の逸脱」

とくに重く受け止められたのは、
製造環境で管理基準を超える菌が検出されていたにもかかわらず、
是正措置を講じないまま製造が継続されていた点
である。

厚労省は、
この状況を再生医療等の安全性に対する重大な懸念と判断した。

3. 2026年1月|改善命令が示した行政判断の本質

2026年1月23日、
厚生労働省はこれらの検査結果を踏まえ、
改善命令(法48条2項)を正式に発出した。

3-1. 改善命令で求められた主な対応

改善命令の内容は、形式的な是正ではなく、
安全体制の再構築を求めるものだった。

具体的には、

  • 過去に遡った逸脱処理と影響評価

  • 問題期間に製造された細胞について
    提供先医療機関・患者の健康被害有無の確認

  • 施設の徹底的な清浄化

  • 外部専門家による第三者評価

  • 教育訓練・逸脱管理手順・文書管理の全面見直し

  • 改善計画の提出と進捗報告の義務化

が命じられている。

3-2. 行政が突きつけた問い

今回の命令が示したのは、
「安全性は制度として本当に機能していたのか」
という根本的な問いだ。

再生医療は、
技術の先端性ではなく、
製造・記録・逸脱対応という“裏側の運用”が信頼を左右する段階に入った。

医師・クリニック向け実務解説

※本文理解を深めるための補足

今回の改善命令は、
医療行為の是非ではなく、
細胞加工と品質管理の“運用実務”に焦点が当てられている。

医師・クリニック側で特に重要なのは、

  • 細胞加工を外部委託していても、責任は切り離されない

  • 「届出済み」「過去に問題なし」は安全保証にならない

  • 逸脱が起きた際の判断主体・判断基準が不明確な体制は高リスク

  • 患者説明時に
    「どこで、どんな管理下で細胞が作られているか」を
    説明できない医療は、今後選ばれなくなる

再生医療を扱うということは、
治療だけでなく製造背景まで説明責任を負う時代に入った。

一般読者向けQ&A

Q:再生医療って、やっぱり危ないの?
A:技術自体が危険というより、
「管理がずさんなまま提供されること」が危険

Q:今回の死亡は治療のせい?
A:因果関係は現時点では確定していない。
ただし、細胞を作る過程の管理に重大な問題があったことは確認された。

Q:患者はどう見抜けばいい?
A:

  • 細胞はどこで加工されているか

  • 国の制度に基づく管理・届出があるか

  • リスクについてきちんと説明されているか

「最先端」「若返り」という言葉だけで判断しないことが重要だ。

編集長POINT― これは事故ではない。“見えなくなる構造”が生んだ問題

今回の一連の事案が突きつけたのは、
再生医療の安全性が、一般の人には極めて見えにくい構造にあるという現実だ。

死亡事案の発生後、
法人名や医療機関名が変更され、その後廃止届出が出されたことで、
患者や一般市民が過去の重大事案を把握しづらくなる状況も生じた。

安全性に問題を抱えた細胞加工施設や医療提供体制が、
名称や形を変えることで不可視化されるのであれば、
それは制度として看過できない。

再生医療は希望の技術である一方、
信頼が失われた瞬間に市場そのものが崩壊する分野でもある。
今回の改善命令は、
その分岐点に日本の再生医療が立っていることを示している。

まとめ

  • 2025年8月、再生医療中の患者死亡で国内初の緊急命令

  • 2026年1月、立入検査を経て改善命令へ

  • 問題の核心は、細胞加工施設の品質・衛生管理体制

  • 再生医療は
    「先端技術」から「制度とガバナンスの医療」へ移行している

NERO 安達健一 

NEROでは、世界各国における医療の制度変容と自由診療の構造分析を継続的に報じている。今後も「医療市場の倫理とサステナビリティ」をテーマに、
日本がどこまで自由診療を拡張すべきか、その境界を問い続ける。