THE CLINIC創業者・医師 山川雅之先生へインタビュー。
美容外科の黎明期から業界を牽引し、再生医療関連事業を行うセルソース株式会社を設立し、現在は代表取締役社長CEOを務める山川先生に、これからの美容医療や選択で変わる視点について伺いました。
常に時代の先を読み、既存の枠組みを突破しつづける連続起業家としての軌跡も辿ります。これからの人生のヒントにもなるようなメッセージをいただきましたので、ぜひ参考にしてみてください。
INDEX
ドクターズプロフィール
THE CLINIC創業者・医師
山川 雅之先生
29歳で「聖心美容外科クリニック」を開設し、10年後に事業売却。その後も海外でクリニックを立ち上げ、2007年には脂肪吸引に特化した「THE CLINIC 東京(ザクリニック)」を開設。
2015年にシリアルインキュベート株式会社、セルソース株式会社を設立し、現在は代表取締役社長CEOを務める。現在は、患者への正しい情報発信を提供するイベントに尽力しながら、2026年「FASTCLINIC(ファストクリニック)」をプロデュース。
| (経歴) 1989年 鳥取大学医学部 卒業 1993年 聖心美容外科クリニック 開設 2007年 THE CLINIC 東京(現 THE CLINIC)開設 2015年 シリアルインキュベート株式会社 設立、セルソース株式会社 設立 代表取締役 2016年 東京ひざ関節症クリニック 開設 2022年 セルソース株式会社 取締役 2024年 セルソース株式会社 取締役会長 2025年 セルソース株式会社 代表取締役会長 2025年 セルソース株式会社 代表取締役社長CEO 2026年 FASTCLINIC プロデューサー |
▽山川 雅之先生公式インスタグラム(@masayamakawa)
https://www.instagram.com/masayamakawa/
▽FASTCLINIC(ファストクリニック)公式HP
https://www.fast-clinic.jp/
▽FASTCLINIC(ファストクリニック)公式インスタグラム(@fastclinic_official)
https://www.instagram.com/fastclinic_official/
脂肪の価値を再発見し再生医療の旗手へ ~医師・経営者として歩んだ逆転の発想~
―――医師でありながら、クリニック開業やスタートアップ創業、上場まで導いた経歴を教えてください。
29歳のときに独立して福岡で「聖心美容外科クリニック」を開設したことが、美容外科医としてのキャリアの始まりでした。その後、クリニックは全国へと展開し、39歳のときに事業を売却しました。
事業売却という大きな節目を迎えたものの、医療や仕事に対する情熱は変わりませんでした。「まだ何かできることがあるのではないか」と模索する中で、新たな挑戦を考えるようになりました。
当時の美容医療業界では、さまざまな施術を幅広く扱う総合クリニックが主流で、専門の分野に特化したクリニックはほとんどありませんでした。そこで、特定の分野に精通したクリニックを作ろうと考え、2007年に脂肪吸引に特化した「THE CLINIC 東京」を開設したのです。
転機となったのは、あるとき観ていた海外映画。その中でふと、「脂肪にはまだ見出されていない価値があるのでは」とひらめいたのです。興味を持って調べていくうちに、海外の論文で脂肪組織には幹細胞が含まれていることを知りました。
そこから、この技術に注目して日本国内での提供と普及を確立し、コンデンスリッチファットを用いた施術法をさらに発展させました。また自院のノウハウを紹介するセミナーを通じて積極的に共有し、全国の医療機関へと広まっていきました。
―――技術をオープンにすることへの抵抗はなかったのでしょうか?
たしかに、情報を外に出さないほうが良いという意見もありました。ただ、長い目で見れば、情報を積極的に発信することで、むしろ当院にさまざまな情報や人材が集まってくるのではという考えがありました。
また、「全国の医師に技術を教えているクリニック」という立ち位置は、院内の医師やスタッフにとっても大きな誇りとなり、日々の仕事のモチベーションが上がるきっかけにもなったのです。
結果として、こうした取り組みはクリニックのブランド形成にも大きく貢献したと感じています。振り返ってみても、技術をオープンにするという判断は、ブランド力を高めるうえで非常に意義のある選択だったと思っています。
―――美容医療から再生医療、そして上場へ。大きな転換点はどこにありましたか。
コンデンスリッチファットを用いた施術を続ける中で、単にボリュームが増すだけでなく、注入した部位の肌そのものに変化があることに気づきました。
これは脂肪組織に含まれる幹細胞によるものではないかと着目して研究を始め、より細かく濃縮した脂肪を用いるマイクロコンデンスリッチファットの技術を応用し、自院の新たな施術体系として確立。
ボリュームアップだけではなく、肌質へのアプローチを行うメニューを作りました。
ちょうどその頃、趣味で始めたトライアスロンで骨折し、整形外科を受診する機会がありました。すると、高齢者が朝早くから行列をなしており、話を聞くと、膝へのヒアルロン注射のためだというのです。
その光景を見て、「マイクロコンデンスリッチファットの技術を、整形外科領域にも応用できるのではないか」と、臨床での使用を開始、症例を重ねました。
すると、効果には個人差がありますが、膝の症状が軽減し日常生活の質が向上する方も見られ、事業展開できる手ごたえを感じました。
そして、2015年に新規事業開発を行うシリアルインキュベート株式会社と再生医療関連事業を行うセルソース株式会社を設立。その後、株式上場に至ったわけです。
正直な広告こそが最強の戦略 ~美容医療不透明な時代に貫いた誠実さという武器~
―――山川先生は、当時では珍しい手法でクリニックのPRを始めたそうですね。
はい、昔の美容医療クリニックは人目につかない裏道にあることも多く、広告手段といえば雑誌が中心でした。
誌面には限りがあるため、どうしても魅力的な文言ばかりが並び、実際に施術を受けた患者さまが経験するダウンタイムやリスクとの間にギャップが生じるケースも少なくありませんでした。
私は、「良いことばかりを伝えるよりも、ダウンタイムやリスクについても正直に伝えたほうが、結果的に信頼されるのではないか」と考えるようになりました。これも、独立を決意した大きな理由の1つです。
独立後の広告では、今では当たり前になっていますが、ダウンタイムを明記した広告を開始。さらに、メール相談ができるポータルサイトを立ち上げ、施術の相談や口コミ投稿ができる仕組みも整えました。
結果は大成功。広告で伝えている内容と施術の結果との乖離が小さくなったことで、安心感や信頼感が生まれたのだと思います。
長期的に医療を提供していくためには、正確かつ誠実な情報提供に勝るものはありません。
―――現在は、SNSで情報収集できる半面、アップセルなどが問題になっていますが、どのようにお考えですか?
以前と比べると、美容医療クリニックの情報収集がしやすくなりましたが、さまざまな問題も耳にします。SNSで強いポジショントークをする医師や、炎上商法のような発信をしている方を見かけることもあります。
発信の目立ちやすさと、実際の診療の質が必ずしも一致するわけではない、という点は知っておいていただきたいです。
どうしても注目されている医師に目がいきがちですが、美容医療初心者の方ほど慎重にクリニックを選んでいただきたいですね。
例えば、医師による診察が短く、カウンセラーとの話が中心になっているクリニックには注意が必要です。
もちろん、すべてが悪いわけではありませんが、施術そのものより契約や提案が優先されてしまうケースもあります。また、相談に行った当日に施術の決断を強く求められる場合も。(一度立ち止まって考えたほうが良いと思います。)
「一度持ち帰って考えたい」という気持ちを尊重してくれるかが、安心して任せられるかどうかの目安になると思います。
結局、今も昔も本質は変わりません。患者さまに嘘をつかないこと、不誠実な対応をしないこと。そうした姿勢を持つ、信頼できるクリニックを選んでいただきたいです。
技術か発信力か、SNS時代の荒波を乗り越えるには? ~次世代を育成する使命感~

―――技術と誠実さを備えた医師がSNSの商業性に苦悩する現状を、どのようにお考えですか?
ご指摘のとおり、高い技術力を持っていても、自身やクリニックの魅力をうまく発信できず、埋もれてしまう先生はいらっしゃると思います。
一方で、SNS運用に長けていることで多くの患者さまが集まり、結果として経験を積む機会が増えるケースもあります。経験数を重ねることは、医師としての成長につながる側面もあるでしょう。
ただ、当然ながら発信力だけで良い医療が成り立つわけではありません。最終的に患者さまから信頼され続けるためには、技術力や誠実な診療姿勢が欠かせないと思います。
患者さまが集まらなければ、どれだけ技術があっても経験を積む機会が限られてしまう。逆に、発信だけが先行しても、本質的な信頼にはつながりにくい。その両方のバランスが大切なのだと思います。
今の時代は、医師としての技術だけでなく、患者さまに選んでいただく力や、チームをまとめる力も求められています。
もちろん、技術力・誠実さ・発信力のすべてを高いレベルで実践されている先生方も多くいらっしゃいます。
―――一方で、スタードクターがいても次の医師が育ちにくい問題もあるのではないでしょうか?

はい、実際に、「自分のファンは作れるけれど、2番手となる医師が育たない」といった悩みを相談されることもあります。
かつてはクリニック選びが中心でしたが、現代は医師選びの時代です。だからこそ、医師自身が専門性を持ち、他院との差別化を図る戦略が必要であると考えています。
その一方で、美容医療業界全体の底上げや、患者さまが安心して判断できる場づくりも重要です。そうした思いから、私は「MASTER CLASS(マスタークラス)」というイベントを開催しています。
SNSなどでは、美容医療業界にまつわるさまざまな情報が氾濫している状態です。マスタークラスでは、各分野に精通した医師が集まり、正しい情報やさまざまな選択肢を紹介。
医師の講演やカウンセリング体験、美容医療経験者に直接質問できるコーナーなども設けています。
美容医療を“特別なもの”から“習慣”へ ~FASTCLINICが目指す新しい通院体験~
―――山川先生は立ち止まることなく、新たに「FASTCLINIC(ファストクリニック)」を始動させていますね。

私は、逆転の発想から新しい価値を生み出すことや、目標に対して「どうすれば実現できるのか」を戦略的に考えることが好きなんです。
一度は事業売却でアーリーリタイアも経験しましたが、それでもやはり、「新しい仕組みをつくり、社会に提案していきたい」という気持ちが強くありました。
そうした考えを形にしたのが、「FASTCLINIC(ファストクリニック)」です。美容医療への関心は年々高まっている一方で、実際に施術を経験している方は、まだ一部に限られていると感じています。
興味はあるけれど、不安やハードルを感じて一歩を踏み出せない。そうした方は、まだ多いのではないでしょうか。
実際に「FASTCLINIC(ファストクリニック)」でも予約受付を開始すると、短期間で多くの予約が埋まり、美容医療への潜在的なニーズの大きさを改めて実感しました。
その背景を考えたとき、これから求められるのは、単に価格が安いことだけではないと思ったんです。通いやすい価格設定、待ち時間の少なさ、そして不要なアップセルへの不安が少ないこと。つまり、“価格面・時間面・心理面”まで含めた通いやすさが重要だと考えました。

そこで、「FASTCLINIC(ファストクリニック)」では、『続けやすい美容医療』をコンセプトに、価格設計やオペレーション、接遇体制まで見直しています。
ただし、「安いから質はそこそこ」で良いとは考えていません。大切なのは、患者さまが施術に満足し、「また通いたい」と思える体験を提供することです。結果として、その満足感が口コミとして広がっていくクリニックを目指しています。
そのため、「FASTCLINIC(ファストクリニック)」では、短期的な売上重視の評価ではなく、『患者様がいかに満足し、継続して通いたいと思ってくださったか(次回予約率)』を最優先に評価する体制を整えています。
スタッフの技術力や接客の質が向上し、患者さまの満足度が高まることで、自然と継続的な来院につながる。そうした好循環をつくりたいと考えています。
“続けやすい、肌メンテ。”をモットーに、肌を健やかに保つためには、専門の医師と伴走しながら継続していくことが大切だという考え方を、「FASTCLINIC(ファストクリニック)」を通して広めていきたいですね。
―――最後に、読者の皆さんにひとことお願いします。

年齢を重ねることにネガティブな印象を持つ方もいるかもしれませんが、私はむしろ、今が一番パフォーマンスの良い状態だと感じています。
実際にアーリーリタイアを経験したこともありますが、そのときは、どこか社会との接点を失ったような感覚がありました。
人間にとって、心と体の健康は欠かせません。だからこそ私は、これまでに培った経験に加えて、AIのような新しい技術も積極的に取り入れながら、新しい挑戦を続けることに大きなやりがいを感じています。
同世代の中には、新しい技術や変化に対して慎重な方もいますが、AIを活用し始めたことで、1日の密度が増し、自分の能力が拡張したような気もしています。
新しいものに興味を持ち、自分の頭で考えながら積極的に取り入れていく。その姿勢が、心身の健康にもつながっていくのではないでしょうか。
そして、自分自身の健康やコンディションに投資することは、何にも代えがたい価値があると思っています。適度な運動を取り入れながら、信頼できる医師とともに肌をメンテナンスしていくことで、より満足度の高い人生につながっていくはずです。
再生医療や美容医療といった分野は、これからも伸びていく分野だと感じています。私自身も、患者さまのニーズに寄り添いながら、新しい価値や選択肢を提案し続けていきたいと考えていますので、ぜひ楽しみにしてください。
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