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なぜ日本は頬こけを嫌い、ハリウッドは頬こけを求めるのか──東西で逆転する「若く見える顔」

なぜ日本は頬こけを嫌い、ハリウッドは頬こけを求めるのか──東西で逆転する「若く見える顔」
🌍 日本 vs 欧米 顔の美容医療
VOGUE JAPAN報道 × ISAPS 2024 × PubMed

頬にヒアルロン酸を入れてふっくら若々しく見せたい──と「頬を削って輪郭をシャープに見せたい」。
同じ「きれいになりたい」という気持ちから、なぜ正反対の施術が選ばれるのか。

VOGUE JAPANの記事が一つの問いを提示している。
日本では頬のボリュームを保ち「バブみ(中顔面のハリ・丸みが若々しさ・愛らしさの象徴とされる状態)」や「なめらかさ」を大切にする傾向がある一方で、
ハリウッドではバッカルファット除去(頬の脂肪を取る施術)で
頬骨の陰影を際立たせることが「セクシーさ・若さ」の記号として消費されている、と。

同じ「若く見えたい」「きれいになりたい」という欲求が、
なぜ正反対の施術に向かうのか。
「流行の施術」を選ぶ前に、「なぜその顔が美しく見えるのか」を知ることが、
失敗しない美容医療の最初の一歩になる。

📋 この記事でわかること
  • 「バブみ」と「陰影」──日本と欧米の美意識が逆転する場所
  • アジア人への美容医療が「西洋化」ではなく「最適化」を目指すとはどういうことか(PubMed)
  • バッカルファット除去は日本人に合うか──ISAPS 2024データから読む
  • 【クリニック選びのヒント】「流行施術」と「自分の顔の設計」を混同しないために
  • 【業界・経営の視点】東西の美意識差が日本市場に何を問うか

「バブみ」と「陰影」──
同じ「若く見えたい」が正反対の施術に向かう理由

「バブみ」は日本で生まれたネット用語だ。
赤ちゃん(バブ)のような、ふっくらとした頬・なめらかな肌・影の少ない顔──
中顔面(目から口にかけての部分)のハリ・丸みが若々しさ・愛らしさの象徴とされる状態を指す。
30〜50代の読者には「疲れて見えない・老けて見えない顔」と言い換えると伝わりやすい。
こうした「ボリュームを保ちたい」という方向性が、
日本の美容医療でヒアルロン酸による中顔面補填が選ばれやすい背景にあるとされている。

一方、ハリウッドで注目されてきた「頬のコントゥア(輪郭・陰影)」は、
頬骨の高さを際立たせ、顔に立体的な陰影を作る方向だ。
バッカルファット除去(Buccal Fat Removal)はその代表的な施術で、
頬の内側にある脂肪体(バッカルファット)を除去することで
顔全体をシャープかつ彫り深い印象にする。

🇯🇵 日本的な「若い顔」の記号
頬のふっくら感・なめらかな肌・影の少ない中顔面
→ 「バブみ」「小顔」「疲れて見えない顔」
→ ヒアルロン酸による頬・こめかみ・目の下の補填が選ばれやすい傾向があるとされている
🇺🇸 欧米的な「若い顔」の記号
頬骨の高さ・立体的な陰影・シャープな輪郭
→ 「セクシー」「大人の美」「彫り深さ」
→ バッカルファット除去・輪郭形成・チークのハイライトメイクが多い傾向
📖 なぜ骨格の違いが施術を変えるのか──構造的な差

欧米人(白人)の骨格的特徴:
一般に彫りが深く頬骨・下顎の突出度が高い傾向がある(個人差あり)。
こうした骨格的特徴を持つ場合、頬の脂肪を削っても輪郭の土台が残りやすいとされる。
「削る」ことで陰影・立体感が得られやすいケースがある。

東アジア人の骨格的特徴:
相対的に骨格が平坦で、加齢とともに
「脂肪が減るボリュームロス」と「靭帯が緩むたるみ」が同時に現れやすいという見解がある。
脂肪を削った場合、加齢後に「やつれた印象」になるリスクがあるとされる(個人差あり)。

→ こうした差がありうることが、「欧米のトレンドをそのまま適用しにくい」理由の一つとされている。

ただし注意が必要だ。
VOGUE JAPANの記事自身も「これは傾向の話であり、個人の好みは多様」と位置づけている。
「日本人は全員バブみ好き」「欧米人は全員陰影好き」という単純化には慎重でいたい。
あくまで「相対的な傾向として、美の記号が異なる」という話だ。

「アジア人への美容医療は西洋化ではない」──
PubMedが示す国際的コンセンサス

ここでNEROとして押さえておきたい重要なエビデンスがある。

Aesthetic Plastic Surgery(査読論文・PubMed PMC4819477)の結論
「アジア人への顔面美容医療は、西洋化を目的とするのではなく、
アジア民族固有の特徴の最適化を目的とする。
あるいは、欠点として認識される骨格的特徴の修正を行うものであり、
アジア民族の美的特徴を保ちながら全体的な魅力を高めるものだ。
アジア人は欧米人と異なる老化の仕方をするため、
異なるアプローチが必要になる。」

国際的なコンセンサス論文(PubMed PMC4819477)では、
アジア人への顔面美容治療は西洋化を目指すものではなく、
アジア人固有の特徴を生かしながら最適化する考え方が重視されている、と整理されている。
「欧米で流行っているから」を施術選びの主な理由にすることには、
この医学的コンセンサスの観点から慎重でいたい。

📖 「東アジア人の老化の特徴」とは
東アジア人は欧米人と老化パターンが異なる。
ボリュームロス(頬・こめかみ・目の下の脂肪減少)が目立ちやすい
・色素沈着・くすみが審美的優先課題になりやすい(メラニン量の多さによる)
・皮膚のたるみより、ボリュームロスが「老けた印象」の主因になることが多い
→ そのため東アジアでは「埋める・補う」設計が医学的にも合理的になる場合が多い

バッカルファット除去は日本人に合うか──
ISAPS 2024データと「加齢後のリスク」

ISAPS(国際美容形成外科学会)の2024年グローバルサーベイでは、
バッカルファット除去(Buccal Fat Removal)が新たに観察対象として追加された(ISAPS 2024)。
顔の微細な設計への関心の高まりを受け、統計上の観察項目として加えられたと読める。

ISAPS 2024 Global Survey──顔・頭部施術の注目データ
213万件
眼瞼手術(二重・眼瞼下垂)が史上初の外科手術No.1に 前年比13.4%増
42.5%
4年間の美容施術総数の増加率 37.9M件(2024年)
3位
日本の美容施術件数の世界順位 米国・ブラジルに次ぐ3位
出典:ISAPS Global Survey 2024(PRNewswire 2025年6月20日)
⚠️ バッカルファット除去の「加齢後リスク」
バッカルファットは加齢とともに自然に減少するため、
若いうちに除去すると40〜50代以降に頬がこけすぎて「やつれた印象」になるリスクがある。
欧米で「頬こけ」が若さの記号になる文化的文脈があったとしても、
東アジア人では老化でボリュームロスが目立ちやすい解剖学的特徴を考えると、
日本人への適応はより慎重な評価が必要だ。

また、バッカルファットは一度除去すると元に戻せない。
加齢後に「やつれてきた」と感じてからヒアルロン酸や脂肪注入で埋め直すことはできるが、
「本来あるべき脂肪を取ってしまった」という修正リスクが生じる。
「不可逆的な施術」であることを十分に理解した上で担当医師に相談してほしい。

「小顔=削る」は思い込みかもしれない──
「埋めて錯視で小顔に見せる」という設計

「顔を小さく見せたいから脂肪を取りたい」と考えている人に伝えたいことがある。

❌ よくある思い込み
「脂肪を取れば顔が小さく見える」
→ 東アジア人の骨格では、脂肪を取りすぎると「やつれた・老けた」印象になることがある
✅ 別の設計アプローチ
「中顔面・こめかみ・鼻筋に適切なボリュームを与えて立体感を出すことで、
視覚的に小顔に見せる(錯視効果・中顔面短縮の印象)」アプローチ。
→ 「削って小顔」より「整えて小顔」のほうが、東アジア人の骨格には合うケースが多い

「削る」か「埋める」かの二択ではなく、
「どこに何をどれだけ加えると、全体として小さく・若く・きれいに見えるか」
を設計できる医師に相談することが、失敗しない近道だ。

【クリニック選びのヒント】
「流行施術」と「自分の顔の設計」を混同しないために

NERO編集部が伝えたいのは、「どちらが正解か」ではない。
「自分の顔・骨格・加齢パターンに何が合うか」が先で、「流行施術」は後だという話だ。

📌 「流行顔に憧れる」前にカウンセリングで確認すること
「私の骨格・脂肪の分布・皮膚の質から見て、この施術は長期的に見ても合いますか?」
今好まれる顔が、10〜20年後も自分に似合い続けるかを確認する
「東アジア人の老化パターンを考えたとき、この施術のリスクはどうですか?」
欧米の症例ではなく、東アジア人の長期追跡データがある医師を選ぶ
「この施術で目指す仕上がりの症例写真を、東アジア人のもので見せてもらえますか?」
欧米人の症例写真だけの場合、東アジア形態学への専門性が低い可能性がある

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

「バブみ」と「陰影」はどちらが正解ではなく、
「文化圏ごとの美の記号が違う」という話だ。

だから「ハリウッドで流行っているから」を理由に
バッカルファット除去を選ぶ前に、
「自分の骨格と加齢パターンに合うか」を
担当医と一緒に考える時間が必要だと思う。


業界関係者に伝えたいのは、
PubMedの国際コンセンサスがはっきり言っていることだ。
「アジア人への美容医療は西洋化が目的ではなく、
東アジア固有の美的特徴の最適化が目的」──

欧米発の施術トレンドをそのまま日本人に当てはめると、
10年後に「やつれた」という後悔につながりやすい。
この視点が「選ばれるクリニック」の差別化軸になる。

NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

まとめ

  • VOGUE JAPANの報道が問いかけた「東は"バブみ"・西は"陰影"」は、同じ「若く見えたい」が正反対の施術に向かう文化的美意識の差を示している。ただし個人差があり、傾向としての差と断定することには慎重でいたい。
  • PubMedの国際コンセンサス(PMC4819477)は「アジア人への美容医療の目的は西洋化ではなく東アジア固有の特徴の最適化」と明示。欧米向けの施術設計をそのままアジア人に当てはめることの問題は、国際学会レベルで議論されている。
  • ISAPS 2024 Global Surveyでは世界37.9M件・日本は世界3位(米国・ブラジルに次ぐ)。眼瞼手術が史上初の外科施術No.1(213万件)となり、バッカルファット除去も新たに観察対象に加えられた(件数増加の裏づけではなく、注目施術として統計上の観察が始まったことを示す)。
  • 「流行施術」より「自分の骨格・加齢パターン・皮膚の特徴に何が合うか」が先だ。特にバッカルファット除去は、東アジア人の加齢によるボリュームロスを踏まえると長期的なリスク評価が必要で、担当医への確認が重要だ。

よくある質問

Q
バッカルファット除去は日本人には向かないか?
一律に「向かない」とは言い切れないが、慎重な評価が必要だ。バッカルファットは加齢とともに自然に減少するため、若いうちに除去すると40〜50代以降に頬がこけすぎて老けた印象になるリスクがある。長期的な顔貌変化を含めた慎重な適応判断が必要な施術だ。「今の流行顔」よりも「10〜20年後の自分の顔」を担当医と一緒に想定することが重要だ。
Q
小顔になりたいが、頬のボリュームを減らすと老けるのか?
「小顔」と「頬のボリューム」は必ずしもトレードオフではない。輪郭のサイズ(骨格・脂肪)と、頬の立体感(ボリューム・ハリ)は別の要素だ。たとえばエラのボトックスや骨格の輪郭縮小で小顔効果を得ながら、頬のボリュームを保つ設計は可能だ。「どこを変えて・どこを残すか」をパーツ単位ではなく顔全体の設計として考えることが重要で、その判断のために医師との十分な相談が必要になる。
Q
「自然に見えたい」は日本だけの感覚か?
欧米でも「自然に見えたい」「やりすぎに見えたくない」という患者の声は広がっている。ただし「自然」の定義が異なる。日本での「自然」は「やっていないように見える」こと(影がなく均一な肌・ふっくらした頬)が多い一方、欧米では「努力している自然」(引き締まった輪郭・程よい陰影)に近いことがある。「自然」という言葉は共通でも、めざす仕上がりのイメージが異なるため、カウンセリングで具体的な症例写真を見せ合う作業が重要になる。

出典・参考文献

  1. VOGUE JAPAN. "Comparing Plastic Surgery Trends in the East and West." vogue.co.jp
  2. Aesthetic Plastic Surgery. "Consensus on Changing Trends, Attitudes, and Concepts of Asian Beauty." PMC4819477. pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Plastic and Aesthetic Research. "Asian facial recontouring surgery." 2023. oaepublish.com
  4. ISAPS. "Global Survey on Aesthetic/Cosmetic Procedures 2024." PRNewswire. June 20, 2025. prnewswire.com
  5. IMCAS China 2026公式サイト. imcas.com
安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。