女性ホルモンは、女性の体の機能を整え、健康的な生活を送るために欠かせないホルモンです。女性ホルモンが多かったり少なかったりすると、体にどのような変化をもたらすのでしょうか。この記事では、女性ホルモンの種類や役割、月経周期やライフステージの変化によって現れる変化などを解説します。女性ホルモンが多いことによるトラブルや、ホルモンバランスを整える方法もご紹介するので、チェックしてみてください。
INDEX
1.女性ホルモンについて│種類別の役割
女性ホルモンには、卵胞ホルモンである「エストロゲン」と、黄体ホルモンである「プロゲステロン」の2種類があります。ここでは、それぞれの女性ホルモンの役割について見ていきましょう。
■女性らしい体を作るエストロゲン
<エストロゲンの役割>
- 自律神経を調整する
- 骨を形成する
- 血管を健康に保つ
- 肌ツヤを良くする
- 乳房・子宮・膣の発育を促す など
エストロゲンは、卵胞から分泌されるホルモンで、骨や血管などを健康な状態に保ちます。また、コラーゲンの生成を促進し、肌ツヤを良くしてくれるため「美肌ホルモン」とも呼ばれることもあります。一般的にエストロゲンは、8~9歳頃から分泌が開始。思春期を迎えると分泌量が増え、女性らしい丸みのある体を形成し初経を促します。乳房や子宮、膣の発育をサポートするのもエストロゲンです。エストロゲンが、最も多く分泌されるのは20代で、更年期になると分泌量は低下していきます。
■妊娠に関わるプロゲステロン
<プロゲステロンの役割>
- 基礎体温を上げる
- 受精卵が着床しやすい状態に整える
- 排卵を止める
- 妊娠時には子宮内膜を維持する
- 乳腺を発達させる
プロゲステロンは、黄体から分泌されるホルモンで、基礎体温をコントロールしています。プロゲステロンは、排卵直後から分泌量が増えるのが特徴で、妊娠準備のためのホルモンともいわれています。基礎体温を上昇させ、子宮内膜の環境を整備。受精卵が着床しやすい状態にします。月経前に食欲が増えたり、眠気が起きたりするのもプロゲステロンの増加によるものです。妊娠した場合、プロゲステロンは、妊娠を継続させて乳腺を発達させる働きをします。妊娠しなければ、プロゲステロンは排卵後1週間くらいから減少し始めます。
2.女性ホルモン量は変化する!月経周期と年齢に注目
女性ホルモンの量は、月経周期や年齢により変化します。
■月経周期による女性ホルモンの変化
月経周期を「卵胞期」「排卵期」「黄体期」に分けると、エストロゲンが多くなるのは、“卵胞期から排卵期にかけて”。卵胞期には、卵巣内で卵胞が育ち、徐々にエストロゲンの分泌量が増加。子宮内膜が厚くなり、排卵期に卵胞が育つとエストロゲの分泌量は最大になります。すると、排卵が起きて卵胞から卵子が放出されます。
排卵を終えると卵胞が黄体に変わって、プロゲステロンを分泌します。プロゲステロンが多くなるのは排卵後の“黄体期”です。黄体期には基礎体温が上昇し、受精卵を着床させやすい状態にします。受精卵が着床しなかった場合、月経として厚くなった子宮内膜がはがれ落ち体外に排出されます。
■年齢による女性ホルモンの変化
年齢を「思春期(10歳~18歳)」「性成熟期(18歳~45歳)」「更年期45歳~55歳」「老年期55歳~」に分けると、女性ホルモンが多いのは“思春期と性成熟期”です。初潮が起こるとエストロゲンの分泌が増え、性成熟期になると分泌量は安定。その後、更年期といわれる閉経前後5年間にエストロゲンの分泌は急激に低下し、閉経を迎えます。老年期には、エストロゲンの分泌はわずかとなります。
3.女性ホルモンが多いとどうなる?トラブル例3つ
女性ホルモンは、年齢による変化で見ると性成熟期に最も多くなります。女性ホルモンが多いとどのようなトラブルが起こるのでしょうか。女性ホルモンが多い人の特徴や、女性ホルモンが多いと起こる病気についても見てきましょう。
■【トラブルその1】月経に関するもの
エストロゲンの分泌量が多いと、子宮内膜が厚くなりすぎて生理が重くなります。また、月経前に分泌されるプロゲステロンの分泌量が多すぎると、眠気やだるさ、肌荒れ、情緒不安定などを引き起こします。
また、排卵から月経までの黄体期にエストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されますが、黄体期後半にホルモン量が急激に低下した場合、脳内のホルモンや神経伝達物質に異常が起き、「月経前症候群(PMS)」の症状として現れることも。PMSは、そのほか生活習慣やストレスなども関わって発症すると考えられています。とくに精神状態に影響がある場合は、「月経前不快気分障害(PMDD)」の可能性もあります。
■【トラブルその2】女性特有の疾患
エストロゲンの分泌が多いと、「子宮内膜症」や「子宮筋腫」などのリスクも高まるといわれています。子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う子宮内膜に似た組織が、卵巣や卵管など子宮以外の場所にできてしまう病気です。月経痛が強くなるほか、炎症や癒着によって月経の時期以外にも下腹部痛などが起こります。
子宮筋腫とは、子宮の壁に発生する良性の腫瘍。月経量が増えたり、レバーのような血の塊が多く出たりなどの症状が現れます。また、筋腫によって子宮の内腔に凹凸ができることで、不妊や流産の原因となる場合もあります。
■【トラブルその3】女性特有のがん
エストロゲンには細胞の増殖させる作用があります。そのため、乳がんや子宮体がん、卵巣がんなど女性特有のがん発症にエストロゲンが関わっているといわれています。初潮が早かった人、妊娠や出産、授乳経験がない人は、体内のエストロゲンが多い状態が続いているかもしれません。エストロゲンが多い状態が続くと、女性特有のがんの発症リスクが高まります。
4.女性ホルモンが少ない場合についてもチェック
女性ホルモンが多いと起こるトラブルもありますが、反対に女性ホルモン減ると出る症状もあります。
エストロゲンの分泌量が少ないと、生理不順や無月経などが起こり、妊娠に関わる機能が低下します。肌荒れやむくみ、情緒不安定などの症状が現れることもあるでしょう。
また、エストロゲンには、骨を形成し血管を健康に保つ働きがあるため、エストロゲンが少なくなると、骨粗鬆症や動脈硬化、脳梗塞などの病気を発症する可能性も出てきます。とくに、閉経後の更年期前後にはエストロゲンの分泌量が大幅に減少するため、そのリスクが高まるでしょう。また、ほてりやのぼせ、めまいなどの症状が現れる更年期障害もエストロゲンの低下によって起こります。
5.日常に取り入れやすい女性ホルモンバランスを整える方法
健康的な生活を送るためには、女性ホルモンのバランスが大切です。最後に女性ホルモンバランスを整える方法をご紹介します。
■食事改善│バランスを重視
ホルモンバランスを整えるためには、たんぱく質や野菜、炭水化物、良質な脂質をバランス良く摂ることが大切です。女性ホルモンが少ないと感じる場合は、エストロゲンに似た働きをするイソフラボンを含む大豆製品を意識して摂りましょう。骨量を増やすためには、小魚や牛乳といったカルシウムを含む食べ物を摂るように心がけましょう。
■十分な睡眠│長さだけでなく質も大切
質の良い睡眠もホルモンバランスを整えるためには重要です。最低でも6~8時間の睡眠時間を確保すること、また睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質を高めることも大切です。朝日を浴びると自律神経が整い、深い睡眠につながります。良質な睡眠のためには、寝る前にスマホやパソコンを見ないことも大切です。
■ストレスを溜めない│リラックスタイムを作る
ホルモンバランスを整えるためには、精神的・肉体的なストレスを溜め込まないようにすることも大事なポイントです。ストレス解消には、適度な運動がおすすめ。ヨガやストレッチなどで、体をゆっくり動かし深く呼吸しましょう。血行や代謝の改善も期待できます。
■まとめ
女性ホルモンは、体の機能を整え、健康的な生活を送るために欠かせないホルモンです。月経周期や年齢によって増減を繰り返しますが、女性ホルモンは多くても少なくても不調につながる可能性があります。まずは、日常生活に取り入れやすい方法でホルモンバランスを整えましょう。セルフケアで不調が改善されない場合は、婦人科を受診するのがおすすめです。美容クリニックでも婦人科や内科を設けている場合もあります。一人で悩まず、まずは相談してみるとよいでしょう。自分の体質に合った治療法が見つかるはずです。
・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。