紫外線対策に欠かせないアイテムといえば日焼け止め。日焼け止めには「紫外線吸収剤」と「紫外線錯乱剤」の2種類があります。しかし、一部の情報によると「紫外線吸収剤は肌に悪い」との噂が……。ここでは、紫外線吸収剤が肌に悪いといわれる理由に加え、紫外線錯乱剤との違いについてご紹介していきます。日焼け止めの購入を検討している方は要チェックです。
1.紫外線吸収剤とは
「紫外線吸収剤」は、紫外線を皮膚の上で吸収し、化学反応や赤外線などによってエネルギーに変換することで、皮膚内部に到達するのを防ぎます。水分を吸収するスポンジを皮膚の上に乗せているようなイメージです。一般的に吸収剤が含まれている日焼け止めは、「ケミカル処方」や「ケミカル成分配合」などと呼ばれます。
■紫外線錯乱剤との違いは?
「紫外線錯乱剤」は「紫外線散乱剤」とも呼ばれ、微粒子によって物理的に紫外線を錯乱・反射させて肌を守ります。皮膚の上に紫外線をカットする成分のベールをまとっているようなイメージです。一般的に錯乱剤が含まれている日焼け止めは、「ノンケミカル処方」と呼ばれます。
紫外線カット効果は、スポンジのような役割を持つ吸収剤のほうが高くなります。一方、錯乱剤はベールのようにやさしく肌を包み込み、皮膚の上で化学反応が起きないため、肌負担は軽い傾向にあるのです。
■使い心地の違いは?
紫外線吸収剤は無色透明のため白浮きせず、ほかの分子と結びつきやすい性質を持っているため肌に塗布したときの感触が良いのが特徴です。
一方、紫外線錯乱剤は白色の粉末が入っているため、白浮きしやすい傾向にあります。
2.紫外線吸収剤のメリットとデメリット
紫外線吸収剤のメリットとデメリットに加え、「吸収剤は肌に悪い」といわれる理由についても解説していきましょう。
■メリット
先ほども触れたように紫外線吸収剤は無色透明のため、日焼け止めによくある白浮きをすることがありません。また、テクスチャーがやわらかいので伸び広げやすく、塗り心地がなめらかなのもメリットといえます。吸収剤は少量でも高い紫外線カット効果を発揮するため、屋外での運動やレジャーなど紫外線を浴びやすいシーンに最適といえるでしょう。
■デメリット
「紫外線吸収剤は肌に悪い」という情報の背景には、吸収剤の1つである「オキシベンゾン」が関係しています。この成分がアレルギー反応を起こす可能性があったことから、肌に良くないという認識が広まったといわれているのです。
しかし、現在では安全性に考慮し、肌への刺激が強い成分の使用を中止したり、ほかの吸収剤と混ぜ合わせて相乗効果を高めたりした日焼け止めが販売されています。そのため、「吸収剤は危険」「肌に悪い」といった考え方は見直されつつあるのです。
とはいえ、皮膚の上で化学反応を起こすのは事実。感肌の方は刺激を感じる場合があるので注意が必要でしょう。
3.日焼け止めを選ぶときのポイント
日焼け止めを選ぶ際のポイントについて解説していきましょう。
■SPFとPAに注目
日焼け止めには「SPF」と「PA」という値が記載されています。
「SPF(Sun Protection Factor)」とは、紫外線に含まれる「UV-B」から肌を守る値のこと。UV-Bは赤くなる日焼けを引き起こす原因でもあります。SPFは1~50+まであり、SPF値が高ければ高いほどUV-Bを防ぐ効果が高まります。
一方、「PA(Protection Grade of UVA)」とは、紫外線に含まれる「UV-A」から肌を守る値のこと。UV-Aはシミやシワ、たるみなどを引き起こす光老化の原因でもあります。PAは+~++++の4段階。「+」が多くなればなるほど防止力が上がります。
SPF値(UV-B) | PA値(UV-A) | ライフスタイル |
SPF10~20 | PA+~++ | 日常生活 |
SPF20~40 | PA++~+++ | 屋外での軽い運動やレジャー |
SPF40~50 | PA+++~++++ | ・屋外での激しい運動 ・炎天下でのレジャー ・海水浴 |
SPFとPAは数値が高いほど紫外線カット効果が上がりますが、その分肌への負担も大きくなるといわれています。そのため、ライフスタイルやシーンに合わせて選ぶことが大切です。
日常生活であれば「SPF10~20・PA+~++」程度で紫外線は防げます。一方、屋外でのスポーツやレジャーで使用する場合は、「SPF40~50+・PA+++~++++」など、数値が高いものを選ぶようにしましょう。
■シーンに合わせた日焼け止めタイプを選ぶ
屋外でのスポーツやレジャーで使用する際は、SPF・PAの数値が高いものに加え、汗や水に強いウォータープルーフタイプを選ぶのが最適です。しかし、ウォータープルーフタイプには耐水性や吸着性に優れたシリコンが使用されているため、使用後には必ずクレンジングが必要になります。
日常生活での使用や、肌に負担をかけたくない場合は、石けんでオフできる日焼け止めが最適でしょう。
■乾燥肌・敏感肌の場合は高保湿・低刺激のものを選ぶ
日焼け止めの中には、清涼感を演出するアルコール成分が入ったものがありますが、肌が乾燥しやすくなるため保湿を同時に行うようにしましょう。乾燥肌や敏感肌の方は、ジェルやローションタイプのものよりも、保湿力に優れているクリームタイプが最適といえます。
肌への刺激が少ないものを選ぶためには、「皮膚科医協力のもとテスト済み」や「アレルギーテスト済み」「敏感肌用」などの表記があるかを確かめることに加え、無香料・無着色にも着目しましょう。
4.日焼け止めの正しい塗り方
日焼け止めは、汗や水で流れたり擦れで落ちたりするため、定期的に塗り直すことが重要です。日焼け止めを塗る際は、肌全体にムラなく塗ることも意識しましょう。部位ごとに正しい塗り方を解説していきます。
■顔
適量を手に取り、額・両頬・鼻・あごに5点置きしてなじませます。手の平ではなく指の腹を使って、顔の中心から外側に向けて塗り広げていきましょう。塗り残しがあると十分な紫外線防止効果を得られないため、小鼻や髪の生え際などの細かい部分まで塗るようにします。
日焼け止めがムラなく塗れたら、顔全体を両手でやさしく包み込みながらハンドプレスをしましょう。額・頬・鼻・あごは日焼け止めが取れやすいため、同量を手に取りもう一度重ね塗りをしてください。
■首元やデコルテ
首元やデコルテも紫外線を浴びやすい部位のため、しっかりと日焼け止めを塗りましょう。適量を手に取ったら親指以外の指を使って、首筋からあご下へとなじませていきます。左右交互に1回ずつ行ったら、首とデコルテのリンパの流れに沿ってなじませていきましょう。
とくに、デコルテや首の後ろ、うなじなどは塗り忘れることがあるため、意識して塗ることが大切です。
■体
体は、顔や首元などに比べて日焼け止めを塗る範囲が広いため、直接肌の上に出します。量が少ないと十分な紫外線防止効果を得られないため、たっぷりの日焼け止めを使うようにしましょう。線状に日焼け止めを出したら、手の平を使ってクルクルと円を描くように広げていき、ムラなく伸ばします。腕や手の甲は日焼けしやすいので、意識して塗っていきましょう。
また、炎天下での運動やレジャー、海水浴などでは、普段よりも多めに塗ることが重要です。
■まとめ
一部では、紫外線吸収剤は肌に悪いといった情報があります。しかし、肌への刺激が少ない成分を使用したり、複数の紫外線吸収剤を混ぜたりした、安全性の高い日焼け止めが増えてきているため、紫外線吸収剤に対する考え方が変わりつつあります。紫外線吸収剤の特性を知り、どんな成分が含まれているのかを確認しながら自分に合う日焼け止めを選び、正しい塗り方で使うようにしましょう。
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