美容医療の未来が変わる!【3Dプリンティング】ってどんな技術?活用事例や今後の展望も

美容医療の未来が変わる!【3Dプリンティング】ってどんな技術?活用事例や今後の展望も

今、美容医療の分野で「3Dプリンティング」が活用されていることはご存知ですか?3Dプリンティングといえば、3次元データをもとに立体造形できる技術。これが、整形手術前のシミュレーションや患者さんへのインフォームドコンセントなどにとても重宝されているのです。今回は、美容医療における3Dプリンティングの活用事例を紹介。今後の美容医療の発展にも関わる未来の3Dプリンティング技術についても解説します。

1.美容医療に活用される「3Dプリンティング」

まずは、3Dプリンティングとはどういう技術なのか、簡単にご紹介します。

3Dプリンティングとは

3Dプリンティングとは、3Dプリンターを用いてデジタルデータをもとに立体造形を作り上げる技術のこと。ベースとなる3次元データは3DCADなどのソフトウェアで作成します。

3Dプリンティングの基本原理は、3次元データを薄くスライスして2次元の層状にしたものを樹脂などの材料を用いてプリントアウトし、1枚ずつ積み重ねて成形していくもの。その方式には、大きく分けて次の2種類があります。

出典:MONOist

  • ノズルから材料を押し出して積み重ねていく方式
  • 粉や液体などの材料にレーザー光などを照射して積み重ねていく方式

現在ではさまざまな方式が開発され、材料や製作にかかる時間、製作可能サイズなども機器によって異なります。造形物の出来栄えや表面の質感、精度の高さも、3Dプリンターを選ぶときの大事なポイントです。

3Dプリンティングの歴史

3Dプリンティング技術の歴史を紐解くと、その原型となる機器は1980年に登場しています。今では世界中のあらゆる場面で活用されている3Dプリンターですが、その最初の考案者はなんと日本人の技術士。当初は、工業製品の試作品を作る機器として開発されました。

その後、世界中で実用化された3Dプリンティング技術は、2009年に特許が切れたことを皮切りにさまざまなメーカーの手によって開発・改良が重ねられることに。今では企業用だけでなく家庭用の機器も登場し、より身近な技術となってきつつあります。コストも以前と比べて安価になり、手が届きやすくなったという方も多いのではないでしょうか。

最新の3Dプリンティング技術では、品質面やコスト面、環境への配慮から次のような材料・手法が注目を集めています。

3Dプリンター材料の多様化

3Dプリンターで使用される材料は樹脂がメインでしたが、最近では多様化が進んでいます。例えば、金属やカーボンファイバー、廃プラスチックの再利用、自然由来の土など。また、耐熱性・耐候性・耐薬品性に優れた材料、UV感受性の低い材料、生体適合性の高い材料など、複合化させることで高機能を叶えた新素材も登場しています。とくに医療や電子機器分野において、新素材の導入は性能や耐久性を高められるのではと期待されています。

時間経過とともに形状変化する4Dプリンティング

4Dプリンティングとは、3Dプリンティングに「時間経過による変化」を取り入れた造形技術のことをいいます。例えば、熱や水分、圧力、磁力といった外部環境の変化が、4Dプリンターの技術に欠かせない要素。4Dプリンティング技術は、宇宙開発や医療、製造の分野における実用化を目指し、開発が進められています。医療においては、生体に吸収される医療器具などへの応用も期待できるでしょう。

2.最新3Dプリンティング技術を応用した美容医療

3Dプリンティングの用途は、製造現場での試作品や金型、治工具などの製作、建築業界での模型製作などがメインでしたが、近年では美容医療業界での活用も増えてきました。とくに、美容整形外科手術においては3Dプリンターによって製作した立体モデルがとても重宝されています。

美容整形に3Dプリンティングが活用されている理由としては、次の3つ。

  • 美容整形手術前の高精度なシミュレーションができる
  • 美容整形手術後の状態を事前に確認できる
  • 模型の製作コストや製作期間を削減できる

最近では、製造業以外の分野でも導入しやすいシンプルな機能の3Dプリンターも増えてきました。価格も比較的安価で、造形の専門知識がない医療の現場でも扱いやすく、実際に多くのクリニックで活用されています。ここからは、最新技術とその活用シーンの一例をご紹介しましょう。

3Dプリンティングを応用した最新美容医療

パーソナライズ化された美容医療

CTデータやMRIデータの撮影技術、3Dプリンターの造形精度が格段に向上したことで、美容整形前の模型作成がより詳細に行えるようになりました。例えば、骨内部の形状や神経配置なども細かく再現が可能に。複雑な施術部位の構造を模型によって理解できるため、施術によるリスクを軽減できるようになりました。

マイクロニードルの進化

3Dプリンターを使用して、美容医療でも用いられる微細なマイクロニードルを造形できるようになりました。この技術によって治療内容に合わせたサイズ・形状での繊細なマイクロニードル製作が可能になります。また、設計図面と3Dプリンターさえあれば簡単に製造できるため、製造コストや製造時間も大幅に削減できます。

プロテーゼの製作

プロテーゼ挿入による輪郭形成術においても、3Dプリンティング技術の立体造形が活用されています。基本原理は手術前の模型製作と同じで、CTデータなどをもとに製作するというもの。より人間の軟骨に近い性質のシリコン素材によって作成されます。

バイオプリンティング

3Dプリンティング技術によって、ついに臓器や皮膚などの生体組織の造形が可能になりつつあります。2024年には、アメリカのオレゴン大学研究チームとフランスの化粧品メーカーロレアルが共同開発し、3Dプリンティングによる人工皮膚のモデリングに成功したと報告されました。この技術によってこれまで制限の多かった再生医療の分野が飛躍的に進歩することでしょう。バイオプリンティングによる人工皮膚が普及すれば、シワやシミ取りのレーザー施術が不要になり、エイジングケアの常識も覆されるのではと期待されています。

美容医療における3Dプリンティング活用事例

【活用事例①】美容整形外科手術の3D模型

リッツ美容外科東京院では、美容整形手術の模型作成に3Dプリンティング技術を活用しています。

同院の廣比利次院長は、美容形成外科部門における顔面骨切り施術の専門医。多くの症例実績がある実力派の医師ではありますが、美容整形の中でもとくにハイレベルな技術を必要とする顔面骨切り施術にはどうしてもリスクがあります。口腔内のわずか数センチ程度の極小な切開部から対象部位へアプローチしなければならず、骨の厚みや神経管の配置は個人差が大きいため、神経や血管を損傷する可能性もありました。

そんなリスクを最低限に抑えられるのが、3Dプリンティングによる顔面模型。院内に3Dプリンターを導入し、患者一人ひとりのCTデータをもとに上下顎と神経管までを再現した3D模型製作を可能にしています。

【活用事例②】シリコンプロテーゼの形成

出典:FITme

韓国の美容整形用プロテーゼメーカーであるFITmeでは、3Dプリンターによるオーダーメイドプロテーゼ作成を行っています。

シリコンプロテーゼ作成に3Dプリンティングを活用するメリットは、患者一人ひとりの解剖学的構造に抜群にフィットするだけでなく、多様化する美容への要望へ柔軟に応えられること。従来の既製品を修正する方法とは違い、より精度の高いプロテーゼ作成を可能にしています。

3.美容医療における3Dプリンティングの今後とは?

医療業界における3Dプリンティングの市場規模は、年々拡大傾向にあります。とくに、美容整形はカジュアル化が進むと言われており、3Dプリンティングへの需要も高まることが予測されるでしょう。

美容業界における3Dプリンティング技術では、次のような観点から開発・研究が進められています。

AIとの連携

AI技術の採用によって、3Dプリンティングの造形自動化が進められています。これによってますます製作にかかる人手や時間、コストを削減できるようになるでしょう。美容医療の分野では、AI連携によって患者一人ひとりの整形手術計画立案からプロテーゼデザイン、術後の予測までを自動化できるサービスも登場。手術シミュレーションの精度も向上することが見込まれます。

ただし、AI技術の実用化には、現場の医師への技術的な教育が求められるでしょう。3Dプリンターを医療機器として導入するのであれば、安全面での法規制をクリアする必要もあります。

バイオプリンティングの新素材開発

さまざまな細胞への分化が可能なiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見によって、再生医療分野の発展が期待されています。バイオプリンティングに用いられる材料も生体適合性の高いものへと改良が進むでしょう。

しかし一方で、バイオプリンティングの研究には倫理的な問題も。また、見た目は本物とそっくりに形成できても、機能面が追いつかないという課題も抱えています。

まとめ

ハイレベルな技術を要する骨切りなどの美容整形施術において、リスクを軽減できる3Dプリンティングは画期的な技術といえます。今後は材料や機能の開発が進み、ますます欠かせないものとなってくるでしょう。しかし一方で、開発段階での課題を多く抱えていることも事実。今後、研究開発の成果への期待が高まります。
大きな変化を生む美容整形は、リスクは伴うものの得るものも多い施術。不安な方はぜひ3Dプリンティング技術を導入しているかどうかも、クリニック選びの条件の1つとして考えてみてください。

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