SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?

SUPERVISOR

BIANCA CLINIC

葉山 愛弥 先生

日本大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院皮膚科にて助教、副病棟長、皮膚病理組織チーフを歴任。小児のあざや成人のシミ治療、美容皮膚科領域では脱毛・注入・小手術など幅広く経験を重ねる。吉祥寺まなみ皮フ科院長を経て、2025年よりBIANCAに入職。皮膚科専門医としての知見を活かし、美容医療のさらなる研鑽と普及に尽力している。

SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?

PNとPDRNはどちらもサーモンのDNA由来で、期待できる効果も似ているため混同されやすい成分。美容クリニックのスタッフや美容賢者にさえ、正しく認識されていないこともあるほどです。

また、PNやPDRNにかかわらず、医薬品グレードではない製剤は原則として注入治療には使用できません。しかし、SNSで「注入用でないPN製剤や化粧品グレードのPDRN製剤を顔へ注入しているクリニックがある」という投稿が波紋を広げています。詳しく見ていきましょう。

SNSで物議となった事例|注入NGの製剤を使った美容医療とは

薬剤 SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

SNSで物議を醸した、注入用でない製剤を顔へ注入した事例について考えます。話題となった投稿も踏まえながら、その内容をチェックしましょう。

(事例1)注入用でないPN製剤を顔へ注入

出典:X(旧Twitter)美容大好きちゃん(@mk203987)さん

こちらは、X(旧Twitter)で話題となった、ある美容クリニック代表の投稿をリポスト(引用)したもの。

それにより、PN(ポリヌクレオチド)を配合した「リジュラン(REJURANⓇ)」製品の「リジュラントゥルースキンエッセンス」が、注入用製剤でないにも関わらず注入治療に使用されていたことが発覚しました。

こちらの投稿は50万件以上閲覧され、リポストやブックマークも多数行われています(2025年8月時点)。

2025年8月現在、当該クリニック代表のアカウントが複数の販売代理店に確認したところ、「注入用製剤と成分は同じ」という回答を得たそうですが、引き続き調査中とのこと。

すでに施術を受けた人や、施術を検討している人はなおさら、詳しい結果報告を心待ちにしていることでしょう。

(事例2)注入用でないPDRN製剤をPN製剤として使用?

出典:X(旧Twitter)うに(@uniunisuki1)さん

こちらもX(旧Twitter)の投稿で、美容医療に詳しい方の情報。投稿の中で、「リジュランスキンブースターをリジュランヒーラーのように売ってるところもある」という驚きの情報が確認できます。

そもそも、「リジュランスキンブースター」は注入用ではないPDRN製剤で、「リジュランヒーラー」はPN製剤。使用する製剤のすり替えは薬機法*や医師法*などへ抵触する行為であり、重大な職務違反として処分の対象になると考えられます。

このような行為が本当に行われているのであれば、日本の美容医療業界の健全な発展を願うNERO編集部としても、大変遺憾です。

*薬機法……医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの品質・有効性・安全性を確保し、保健衛生の向上を目的とする法律。旧薬事法のこと。
*医師法……医師の資格・業務内容・診療義務・守るべきルール・罰則などが定められた法律。

専門家の見解は?

今回の件について、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医の資格を持つ「BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)」の葉山 愛弥先生は、クリニック公式ホームページのドクターブログ内で個人的見解を示しています。

葉山先生
葉山先生
最近、クリニックによっては、リジュラントゥルースキンエッセンスといったコスメグレードの製剤が皮内注射に用いられていることがあるようですが、成分の濃度、純度、無菌性が注射用ではないこと、防腐剤や香料などが含まれている可能性もあり、体内で異物反応や感染のリスクが否定できません。
このような化粧品、エステ導入美容液、PDRN配合コスメも同様にコスメグレードのため注入不可ということを知っておいてください。

製剤の種類に限らず、リスクを避けるためにも注入用として製造されたものかどうかを患者としてもきちんと確かめる必要がありそうです。

PNとPDRNは何が違うの?

疑問 女性 SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

混同されやすいPNとPDRNは、どちらもサーモン科であるサケ・マスの生殖腺に由来する成分。

2つの大きな違いは分子量のサイズです。分子量が大きいPNのほうが構造的に安定性が高く、組織再生促進力も高いとされています。

同じ「リジュラン」製品でも、PNを使用しているものと、PDRNを使用しているものとがあります。また、「リジュラン」製品にはPN製剤でも医薬品グレードと化粧品グレードの両方があるため、余計に混同されやすいのかもしれません。

一度、頭の中を整理するために、それぞれの違いについて詳細を表にまとめました。

PN PDRN 違い SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

安全な美容医療のために知っておくべきルールと限界

診察 SNSで物議!PN・PDRN製剤の違いとは?注入用製剤と「成分は同じ」と言われても?|NERO DOCTOR / BEAUTY(美容医療)

美容医療を安心して受けるためには、使用される製剤に関して知っておくべきことがあります。賢い患者になるためにも、クリニック任せにせず次のポイントを押さえておきましょう。

原則を踏まえ、自由診療の適応外使用には注意を

原則として、医薬品は添付文書に明記された使用方法を遵守するよう定められています。しかし、自由診療においては、承認された形とは異なる効能・効果や用法・容量で使用する「適応外使用」も認められています。

適応外使用には既存医薬品の有効活用や新しい治療法確立などのメリットもある一方で、十分なエビデンスや患者への説明がないままでは重篤な副作用やリスクにつながるおそれも。そのため、適応外使用の判断は慎重に行われなければなりません。

患者も製剤名の事前確認を行い、自分の身は自分で守る

日本では、オフラベル使用の多くがドクターの裁量に委ねられているというのが現状です。

副作用やリスクなどの説明責任はもちろん医師にありますが、患者側もオフラベル使用に関する知識や施術前の確認を意識的に行うことが大切。

こちらのSNS投稿にもあるように、クリニックのキャンペーンを検討する際は、製剤名(例:リジュランHB・リジュラントゥルースキンエッセンスなど)まで確認するクセをつけたいものです。可能であれば、箱から製剤を開封するところから見せてもらえるとより安心できるでしょう。

出典:X(旧Twitter)うに(@uniunisuki1)さん

注入用とそうでない製剤の違いを理解する

注入専用として開発された製剤とそうでないものの違いは、滅菌方法や粒子の安定性、不純物の有無などが挙げられます。たとえ成分が同一であっても、基本的には注入専用でないものは注入治療に使用しないことが推奨されます。

美容医療を受ける際は自分でも製剤を確認する意識づけを!

PDRN製剤は、一般的に化粧品や導入治療などで使用されることが多いのが事実。今回解説したPN製剤やPDRN製剤に限らず、注入用製剤でない場合は注入NGが原則であることを覚えておきましょう。

もし、製剤について質問したとき「注入用製剤と成分は同じ」と説明するクリニックであれば、信頼性に欠けると言わざるを得ません。

注入用でない製剤を注入した場合、せっかく受けた施術の効果が期待できないばかりか、重篤な副作用やリスクが生じてしまうおそれも。安全性の確認はクリニックや医師に任せるのではなく、ぜひ自分でも施術前にしっかりと確認するよう意識しましょう。

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・当サイトは、美容医療の一般的な知識をできるだけ中立的な立場から掲載しています。自己判断を促す情報ではないことを、あらかじめご了承ください。また、治療に関する詳細は必ずクリニック公式ホームページを確認し、各医療機関にご相談ください。
・本記事は、執筆・掲載日時点の情報を参考にしています。最新の情報は、公式ホームページよりご確認ください。
・化粧品やマッサージなどが記載されている場合、医師監修範囲には含まれません。

【治療の内容】リジュラン(ポリヌクレオチド主成分製剤)を使用したスキンブースター治療
【治療期間および回数の目安】約2〜3週間ごとに1回、計3~4回程度 ※治療期間や回数等はクリニックごとに異なります。
【費用相場】1回 約 ¥35,000~ ¥100,000 ※使用する部位・量・本数によってクリニックごとに異なります
【リスク・副作用等】内出血、赤み、腫れ、浮腫、かゆみ、痛み、アレルギーなど
【未承認機器・医薬品に関する注意事項について】
・リジュランの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、各クリニックの医師の判断のもと導入しています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参照ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・重大なリスク・副作用などが明らかになっていない可能性があります。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

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