性別に関わらず、老けた印象を与えるシミ。男性の濃く目立つ顔のシミは、セルフケアで消すのは至難の業です。近年では男性の美容意識が増加傾向にあり、美容皮膚科でもさまざまなシミ取り治療を受けられるのをご存知でしょうか?今回は、男性にできる顔のシミの特徴を解説するとともに、今主流のシミ取り治療を解説。シミに悩んでいても、「美容皮膚科に行くまでのハードルが高い」「どんな治療があるのか分からない」という方はぜひ参考にしてみてください。
1.男性のシミの特徴は?目立ちやすいのはなぜ?
通常、シミができるメカニズムに男女で違いはありません。しかし、女性よりも男性のほうが、シミが深く濃くなりやすいといった特徴があります。まずは男性のシミが目立つ理由を見ていきましょう。
■顔のシミができるそもそもの原因とは
私たちの皮膚には、メラノサイトという細胞が存在しています。メラノサイトは紫外線などの刺激を受けることで活性化し、シミのもととなる「黒色メラニン」を生成。通常、黒色メラニンは自然と排出されます。しかし肌のターンオーバーが乱れたり、肌のバリア機能が低下したりすると蓄積し、シミとなって現れるのです。ターンオーバーやバリア機能は、外部からの刺激だけでなく、生活習慣やストレスにも影響されます。女性に比べ、男性のシミができやすいのには、以下の理由が考えられます。
- もともと紫外線に対する意識が低く、日焼け止めなどで対策していない
- 毎日のひげ剃りで皮膚にダメージを与えている
- スキンケア不足で肌が乾燥状態にある
- 飲み会など、脂質や糖分が多い食事をとることが多い
■男性の顔のシミは深くて濃く、40代から急増傾向に
男性のシミは、40代から急に目立ってくる方が多い傾向にあります。その理由の1つが、皮膚に存在する炎症物質「プラスミン」の存在です。プラスミンは、黒色メラニンの生成を促進させる働きがあり、肌を擦るといったささいな刺激でも活性化します。特に40代~50代はプラスミンが増えるとされており、とくにシミができやすい状態になっているのです。また、男性のシミは女性のシミよりも肌の奥深くまで根付いていることが判明しています。浅いシミに比べて黒色メラニンが蓄積する量が多いため、より色が濃く見えるというわけです。
■男性に見られる主なシミの種類
シミにはいくつか種類があり、それぞれに適した治療を行う必要があります。主なシミの種類は以下のとおりです。
老人性色素斑 | 紫外線ダメージの蓄積や、加齢とともにできるシミ。輪郭はくっきりしており、円形や楕円形となって現れる。 |
炎症後色素沈着 | ニキビやひげ剃りなどが原因で肌に炎症が起き、治癒したあとに色素沈着となって現れる。 |
肝斑 | 頬骨辺りに左右対称に出るのが特徴。女性ホルモンの乱れによってできるとされている。 |
そばかす | 鼻を中心に左右対称に発生するのが特徴。遺伝的要因でできるとされている。 |
脂漏性角化症 | 長年にわたる紫外線や摩擦などのダメージで角質細胞が増殖し、イボのように盛り上がって現れる。 |
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス) | 頬やおでこの両側に現れるシミのようなあざ。後天性で成人になってから現れる症状で、明確な原因がないのが特徴。 |
男性にできやすいのは、老人性色素斑と炎症後色素沈着といわれています。女性ホルモンが関係する肝斑は男性にできないと思われがちですが、まったくできないわけではありません。また、シミによく似た皮膚がん「メラノーマ」も存在します。シミは種類の見分けが難しいものです。シミが気になったら自己判断で放置せず、皮膚科や美容皮膚科で診てもらいましょう。
2.市販の男性用シミ消しクリームは効果がない?
クリニックに頼らず市販の化粧品で「シミを消したい!」と思っている方もいるでしょう。ドラッグストアで売られている顔の「シミ取りクリーム」には、「薬用」「医薬部外品」といった記載がされているものがあります。そのような商品には美白有効成分が含まれており、シミをケアしたい男性にはおすすめです。
しかし美白有効成分は、あくまでも「メラニンの生成を抑え、シミを防ぐ」というもの。シミを消す、剥がすといった効果はないため、シミのない肌を目指す場合は医療機関への受診を検討しましょう。また、そもそもシミにはクリームで薄くできるものと、そうでないものがあります。肌の内側から改善が求められる場合もあるため、シミの種類を見極めることが重要です。市販薬でのセルフケアも無駄ではありませんが、クリニックでシミの種類を判断してもらうことで、より適切で効果的なシミ治療を行えます。
3.レーザーだけじゃない!男性の顔のシミ取りに有効な治療方法5選
シミの治療法と聞いて、レーザー治療をイメージする方は多いでしょう。たしかに、レーザーはシミの代表的な治療方法です。しかしシミの種類によっては、レーザー以外の治療方法が適している場合もあります。皮膚科や美容皮膚科でのシミ取り治療は、基本的に自由診療です。通院や副作用も発生するため、さまざまな治療法の中から、予算や生活スタイルに合った治療を選択していきましょう。ここでは、シミ取りに有効とされる治療方法をいくつかご紹介します。
■レーザー治療
レーザー光線でシミの黒い色素だけを狙い、メラニンをピンポイントで破壊する施術です。破壊されたメラニンは皮膚に吸収されるか、表皮に排出されてかさぶたとなって剥がれます。ルビーレーザーやヤグレーザーなどのマシンが用いられ、肌の状態やシミの種類によって使い分けられます。
レーザー治療は照射時に痛みを伴いますが、1回の施術で治療が終わる場合も多く、ダウンタイムは1~10日ほど。比較的、短期間でシミの改善を望める点がメリットです。ただし、シミの種類や範囲によっては複数回の施術が必要となるでしょう。また、痛みが苦手な方には、マイルドな刺激で少しずつメラニンを減らすピコレーザーやレーザートーニングという方法も。施術後は紫外線などから肌を守るために、保護テープを貼ったり、UVケアをしたりする必要があります。
■IPL(光治療)
IPL(光治療)はレーザーフォトとも呼ばれています。レーザーに似ていますが、レーザーよりマイルドな光であるため、施術後に保護テープなどを貼らなくても良いのが特徴です。とくに皮膚の浅いところにあるシミに効果的で、レーザーでは治療が難しかった薄いシミや、そばかすにも対応しています。また光を顔全体にあてるため、シミのほか肌の赤みや毛穴、小ジワなどの改善にも効果的です。ダウンタイムはほぼありませんが、治療期間は月1回の施術を半年続けるのが目安となります。一般的に、顔の広範囲にシミがある方はIPL、特定の深いシミにはレーザーと、使い分けられることが多いでしょう。
■ピーリング
ピーリングは薬剤を顔に塗布し、古い角質を取り除く治療方法です。ターンオーバーのサイクルを整え、メラニンを排出するほか、メラニンが蓄積しにくい肌をつくり出します。肌への負担が少なく、ダウンタイムがほとんどないため効果の出方はゆるやかです。そのためシミを薄くするには複数回治療を行う必要があり、レーザー治療などと組み合わせて行うことで短期間の治療が望めます。ピーリングは、角質層のみに作用し皮膚を剥離させるケミカルピーリングや、真皮層まで浸透し皮膚を剥離させないマッサージピールなど種類も豊富。ただし、施術後は乾燥しやすいため、日常の保湿ケアが欠かせません。
■外用薬(塗り薬)治療
クリニックで処方される塗り薬は、「トレチノイン(レチノイン酸)」が主流です。トレチノインとは、皮膚の角質を剥がす作用を持つビタミンA誘導体のこと。ターンオーバーの促進や真皮のコラーゲンを増やす働きがあり、シミの排出をサポートします。シミを薄くするには数ヶ月継続する必要があり、マシンなどを使わず、少しずつ治療を進めたい場合に選ばれる方法です。自宅でできる治療ですが、赤みや皮むけ、乾燥感が生じるといった副作用があります。
また、トレチノインには同時にメラニンの生成を抑える「ハイドロキノン」を組み合わせるのが一般的です。ハイドロキノンはメラノサイトの数を減らし、シミ予防にも効果を発揮します。いずれも医師の指導のもと使用する必要があり、経過観察のための通院も必須です。
■内服薬(飲み薬)治療
シミに有効とされる成分は、トラネキサム酸(トランサミン)やアスコルビン酸(シナール)、L-システイン(ハイチオール)、ビタミンE(ユベラ)などです。これらの成分が含まれる飲み薬は市販もされていますが、成分濃度が高く、効果を実感しやすいのは処方薬になります。ただし、内服薬は徐々にシミが薄くなっていくものの、完全に消すといった効果は期待できません。ほかの治療との併用や、予防対策として取り入れたい治療方法です。また、トラネキサム酸は止血作用があるため、血液をサラサラにする薬を服用している方は使用できません。美容目的の治療とはいえ、薬には副作用が付きものです。服用中の薬や病歴は、必ず医師に申告しましょう。
■まとめ
男性の顔のシミは深く濃くなりやすく、目立ってきてからセルフケアで改善するのは難しいでしょう。また、シミには種類があり、自己判断でのケアは思わぬ副作用を招く場合があるため要注意です。医療機関でのシミ取り治療は進化しており、ダウンタイムが少ないなど男性でも受けやすい施術もあります。日ごろの紫外線対策や保湿ケアも大切ですが、まずは医師に相談して、ご自身に合った治療方法を知ってみてはいかがでしょうか。
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