INDEX
1. アジアで拡大する偽造ネットワーク——構造的危険の可視化
2024年、中国四川省では 偽造ボツリヌス毒素5万本以上が押収された。
甘粛省では合計50名以上が関与した地下サプライチェーンが摘発され、
天津では 原価10元 → 販売価格数千元に化ける偽造工場が壊滅。
これらの事件は一過性ではない。
いずれも共通した構造を持つことが明らかとなった。
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追跡不能な倉庫網
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物流過程における無管理(温度管理ゼロ)
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SNS・ライブ配信による無資格販売
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医療機器ではなく「化粧品」と偽装する手口
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低コストで大量生産できる偽造技術
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ロット番号・QRコードさえ偽造された“精巧な偽物”
これはもはや中国だけの話ではない。
“利益 × 不透明流通 × 無管理”の構造は、
国境を越えて広がる。
そして、その構造が日本の美容医療市場に入り込む余地も十分にある。
偽造を生むインセンティブ=異常な利益率(1万%以上)。
人間の倫理を簡単に上回る“数字の魔力”が、市場の底面で確実に動いている。

写真引用:红星新闻/ 偽造品3万1000個以上を押収

写真引用:红星新闻/ ほぼ見分けつかないものまで・・・。
注釈:
2.日本の美容医療市場でも進む“静かな変容”
NEROが今回、複数の正規メーカー・正規輸入代行業者に独自取材したところ、
各社が驚くほど一致した危機認識を語った。
「2025年、並行輸入の“量と質”が急拡大している。」
それは次のような“構造的変化”として可視化してきているかもしれない・・・。

■ 医師側の変容
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一部の医師やクリニックで、価格を優先した仕入れ判断が強まりつつある
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製剤の適応・承認状況・製造所情報を十分に確認しないまま注入されるケースが増えている
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大量購入によるボリュームディスカウントを背景に、製剤が想定外の経路で流通するリスクが指摘されている
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医師がMS法人を通じて流通に関与することで、卸売り的な構造が生まれる例も報告されている
※特定の医師や立場を一律に問題視するものではなく、あくまで市場構造の変化として整理している。
■ 流通構造の変容
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正規輸入代行業者“風”の非正規業者が増加
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ロット番号の追跡が途中で断絶
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40〜50度で保管されていた可能性のある製剤が市場に流れる
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横流し → 再横流し → 価格競争の無限ループ化
■ 安全の崩壊
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「希釈や使い回しが行われている可能性がある」という現場の声
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事故発生時、責任の所在が曖昧
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メーカーも追跡不能な製品には一切フォローできない
正規ルートから外れた瞬間、
温度管理/追跡/輸送/責任の所在のすべてが消える。
そして“安い製剤”に目が向いた医師は、
その実態や追跡消失を見ないまま患者に注入してしまうケースがあるという・・・。
ここに、市場の安全基盤が揺らぎ始めている兆しがある。
3.正規ルートが支えてきた“見えない安全コスト”が削られている
正規品の価値は、
「本物であること」だけではない。
むしろ正規ルートが担っているのは、
“目に見えない安全”のレイヤーである。
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温度管理(コールドチェーン維持)
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製造ロットの追跡
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事故発生時の対応ライン
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医師教育(適応・解剖・リスク管理)
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カダバー研修・学会支援
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承認情報・FMDS・CEの裏取り
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保証された輸送・保管体制
これらは本来、
“安全というインフラ”を構成する不可視のコストであり、
消費者はその恩恵を「安全な施術」という形で享受してきた。
だが並行輸入が広がると、
正規企業の売上=教育・安全管理費が減少し、
インフラそのものが干上がる。
今回の正規ルートを担う主要企業の取材で、全員が同じ言葉を口にした。
「安さには必ず理由がある。」
「正規が支えてきた安全の土台が削られている。」
これは企業の主張ではない。
“安全インフラの崩壊の観測データ”である。
編集長POINT
~安さの影で溶け落ちる“安全というインフラ”~
美容医療の安全は、
製剤そのものの品質ではなく、「流通の設計」から生まれる。
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温度管理
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追跡可能性
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教育システム
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承認情報の透明性
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製品トラブルへの対応ライン
これらすべてが積み重なって、
はじめて「安全」は成立する。
しかし、横流し・並行輸入・追跡不能な流通が拡大するとき、
市場が失うのは “本物か偽物か”ではない。
「安全という社会インフラそのもの」だ。
NEROは今回、独自取材を通じて、
今こそ、日本の美容医療業界のため、消費者のためにも協調する時代が来たと確信している。
NEROは未来の美容医療と文化を守るため、
“構造の可視化”を続けるために発信し続けます。
まとめ
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中国では偽造ボトックス5万本押収など、地下流通の大規模事件が続発
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日本でも、並行輸入・横流し・トレーサビリティ断絶が静かに加速
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正規ルートが担ってきた“教育・安全管理・品質保証”の土台が危機に直面
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正規ルートを担う主要企業への独自取材で、驚くほど一致した危機構造が確認された
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今回はその“全体像”を示し、シリーズ全体の導入として位置づける
次回シリーズ予告(第2回)
第2回|並行輸入の“正体”とは?
大量購入・MS法人・コミュニティ流通が生む、見えにくい揺らぎ・・・・
今回の取材では、正規ルート企業から
日本市場において、医薬品流通の構造が静かに変化しつつあるという声が複数寄せられた。
そこでは、
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医師間での製剤移動につながり得る動き
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MS法人を介した卸売り的な流通の兆候
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仕入れ条件(大量購入等)によって価格が調整された製剤が、限定的なコミュニティ内で流通する可能性
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ロット追跡が途中で途切れるケースが確認されることがある
など、これまで表に出にくかった
“正規・非正規の境界が曖昧になる瞬間”が示唆された。
こうした現象は、
医療現場の意思決定や安全構造にどのような影響を及ぼし得るのか——。
第2回では、この“見えにくい変化”の背景を整理し、
市場の安全基盤とどう接続するのか、その輪郭に光を当てていくこととする。
NEROとしての使命
NEROは、
美容医療をより良い未来につなぐために
“安全の構造”を可視化し続ける。正規か、並行か。
その選択が、あなたの安全を左右する時代が始まっています。だからこそ、
患者も医師も、そして市場に関わるすべての人も、
“正しい判断材料”を持てる世界をつくりたい。NEROはこれからも、
一次情報に基づく独立した医療ジャーナリズム を軸に、
より透明で、安全で、持続可能な美容医療の未来を報じ続けていきます。




