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【第4回日本美容医師会レポート】大会長・田中亜希子医師が語った「未来に繋ぐ」ための線引き

【第4回日本美容医師会レポート】大会長・田中亜希子医師が語った「未来に繋ぐ」ための線引き

本記事は、NERO編集部が独自の編集判断で取材・執筆した学会レポートです。講演会場内は撮影・録音が禁止されているため、写真は展示会場と会場周辺で撮影したものです。大会長のコメントは、会期中にご本人の許可を得て収録しました。

渋谷ヒカリエの9階。エスカレーターを上がると、ガラス張りの通路が続いている。窓の外には、スクランブル交差点を渡る人の波と、ビルの壁面で切り替わり続ける広告が見える。

第4回日本美容医師会2026の会場、渋谷ヒカリエ9階から見た渋谷駅前とスクランブル交差点
会場の9階から見た渋谷駅前。2026年10月3日、大会初日の午後

大きな柱が並ぶその通路の先に、第4回日本美容医師会の会場、ヒカリエホールがある。

2026年10月3日(土)・4日(日)の2日間、第4回日本美容医師会が開かれた。テーマは「未来に繋ぐ美容医療」。会長は、あきこクリニック院長の田中亜希子医師である。

NEROは開催前の記事で、この学会のプログラムを「製剤の世代交代」という視点から読み解いた。今回は会場に足を運び、大会初日に田中会長から直接話を聞いた。この大会で、会長の許可を得て取材に入ったメディアは、NEROのみだった。会長がはっきりと口にしたのは、プログラムの手応えと、もう一つ、この学会に「誰を入れないか」という線引きだった。

この記事の3つのポイント

  • ✦ 第4回日本美容医師会は、2日間・2会場で、シンポジウム18本を中心に、美容外科から美容皮膚科、美容内科、婦人科形成、AGA治療までを扱った。
  • ✦ 田中亜希子会長は、登壇者への感謝とともに「思い描いていた学会の形に、少し近づけた」と語った。インフルエンサーを招いての発信はしない、という方針も明言した。
  • ✦ 開かれた学びの場を守るために、入口は慎重に絞る。その設計は、情報があふれる美容医療で、患者が「何を信じるか」を考える手がかりにもなる。

EVENT OVERVIEW第4回日本美容医師会の開催概要

第4回日本美容医師会(2026年10月3日・4日、渋谷ヒカリエ ヒカリエホール)のポスター。テーマは「未来に繋ぐ美容医療」、会長は田中亜希子医師
会場入口のデジタルサイネージ。テーマは「未来に繋ぐ美容医療」
学会名 第4回日本美容医師会(The 4th of Japan Cosmetic Medical Association)
テーマ 未来に繋ぐ美容医療
会期 2026年10月3日(土)・4日(日)
会場 ヒカリエホール(東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ9F)
会長 田中 亜希子(あきこクリニック 院長)
副会長 荒尾 直樹(あらおクリニック 院長)
プログラム 2会場(ホールB/フリースペース)で、シンポジウム18本、特別講演1本、ライブサージェリー1本(医師限定)、ランチョンセミナー4本、企業共催セミナー4本
公式サイト jcma2026.umin.jp

プログラムの本数は、公式サイトで公開された日程表(2026年8月3日時点)による。

日程表を見ると、扱う領域の幅がまず目に入る。初日の朝は「機器による肌たるみ治療」から始まり、クマ治療、ボツリヌス製剤、豊胸、鼻、美容内科と続く。2日目はヒアルロン酸注入、肌育製剤、骨切り、ニキビ跡、上まぶた、AGA治療、スレッドリフト、婦人科形成まで並ぶ。初日には「経営について」と題した特別講演も組まれていた。

切る手術から、注入、機器、内科的なアプローチまで。一つの学会の中で、美容医療の「専門の境界線」をまたいでプログラムが組まれている。

会場で、開催してみての手応えを尋ねると、田中会長はまず登壇者への感謝を口にした。

田中亜希子会長
田中亜希子会長
お願いした先生方が、期待以上のご講演をしてくださっていて、ありがたい気持ちでいっぱいです。ほかの学会ではなかなか聞けないようなお話もうかがえて、思い描いていた学会の形に、少し近づけたかなと感じています。

用語解説:シンポジウム

学会のシンポジウムとは、一つのテーマについて、座長の進行で複数の医師が順に発表し、議論する形式のセッションです。→ 同じ治療でも、医師ごとの考え方や手順の違いが並んで見えるのが特徴です。

ON SITE会場で見たもの──天井の光と、1,004という数字

今回、会場をヒカリエにした理由を尋ねると、会長はこう答えた。

田中亜希子会長
田中亜希子会長
一つは、毎月開いている「あきラボ」で、ヒカリエのカンファレンスを使わせていただいていて、よく知っている場所だったことです。それから、規模感がちょうどよくて、皆さんにも足を運んでいただきやすい場所だと思いました。

そのあと、会長は「これは全然採用されないと思うんですけど」と前置きして、もう一つの理由を明かした。ヒカリエには劇場がある。会長自身もときどき舞台を観に来るという。学会の会場として使うと、出演者が使う楽屋も使えるのだそうだ。「ここに推しが座ったかもしれない、と思いながら、楽屋に座っていました」。30年のキャリアを持つ大会長の、素顔がのぞいた一言だった。

展示会場に入ると、まず天井に目を奪われる。黒い格子の天井に、丸い照明が奥まで等間隔に並んでいる。その下に白いパネルで仕切られたブースが続き、各社の機器や製剤が置かれていた。

ブースの前では、展示台をのぞき込む人や、スーツ姿の担当者と立ち話をする人の姿があった。講演会場とは違い、ここでは会話の声が絶えない。

第4回日本美容医師会2026の企業展示会場(渋谷ヒカリエ ヒカリエホール)。美容医療の機器や製剤のブースが並ぶ
展示会場の様子。各社のブースに機器や製剤が並ぶ

大会初日、講演会場の入口には、白いスタンドに「定員 1,004名」の札が立っていた。この日の会場の定員を示す札で、2日間の参加者数を表すものではない。それでも、千人規模の席が用意されていたことは、この学会にかける準備の大きさを物語っている。扉の向こうでは、撮影も録音も禁じられた中で、講演が続いていた。

第4回日本美容医師会 大会初日、講演会場の入口に置かれた「定員1,004名」の表示
大会初日、講演会場の入口に立てられた「定員 1,004名」の表示(会場の定員であり、参加者数ではない)。会場内は撮影・録音が禁止されている

ロビーの壁には、協賛企業のロゴがパネル一面に並ぶ。機器メーカー、製剤の輸入元、医療人材の会社。学会という場が、医師だけでなく、美容医療に関わる多くの企業に支えられていることが一目で分かる。

第4回日本美容医師会2026の協賛企業ロゴが並ぶパネル
協賛企業のロゴが並ぶパネル

INTERVIEW大会長・田中亜希子医師に聞く──「これから、いい医療に変わっていく」

田中会長は、美容外科医として30年のキャリアを持つ。大手美容外科で14年間勤務したのち、二子玉川で開業して16年。2022年には第110回日本美容外科学会(JSAS)の会長を務めた。2023年11月からは、クリニックの垣根を越えて医師が学び合う勉強会「あきラボ」を主宰している(経歴は公式サイトの会長挨拶による)。

会長挨拶には、大手に勤務していた頃は学会参加も他院の医師との交流も制限されていた、という一節がある。開業してから学びの場が一気に広がり、それが自分を進化させた。その経験が、あきラボと、今回の学会の出発点になっている。

大会初日の会場で、これからの美容医療に何を期待するかを尋ねた。

第4回日本美容医師会 会長 田中亜希子医師(あきこクリニック院長・美容外科医)
第4回日本美容医師会の会長、田中亜希子医師(あきこクリニック院長)。写真提供:あきこクリニック
田中亜希子会長
田中亜希子会長
今は、残念ながら「偽物」と呼ばれるようなものも多い時代です。でも、患者さんも、企業の皆さんも、私たち医師も、みんなが学んで、それを見分けられるようになっていけば、これからもっといい医療に変わっていけると思っています。

筆者は、日本美容医師会に良い意味での「敷居の高さ」を感じていた。倫理観を大切にしている学会に見える、と伝えると、会長の答えは明快だった。

田中亜希子会長
田中亜希子会長
インフルエンサーの方に来ていただいて発信してもらったほうが、盛り上がるのかもしれません。ただ、医療の専門家ではない方の発信だと、意図せず誤った内容が広がってしまうこともあります。だから、この学会ではそういう形はとらないようにしています。

コメントは録音をもとに、話し言葉の言い淀みなどを整えて掲載しています。

盛り上がりよりも、間違えないことを選ぶ。会長の言葉は短かったが、迷いはなかった。

NERO'S VIEW中は開き、入口は絞る──学会の「入口の設計」

「インフルエンサーを招かない」という考えは、会長の個人的な好みではない。学会の運営そのものに、同じ考え方が組み込まれている。公式サイトに掲載された参加と取材のルールを読むと、それがよく分かる。

項目 公式サイトに掲載されたルール
参加登録 医師以外(メディカルスタッフ、一般・企業)は承認制。在籍証明書や名刺を提出し、事務局の確認を経て登録できる
撮影・録音 講演会場内(展示会場を除く)での撮影・収録・録音は一切禁止
ライブサージェリー 参加・聴講は医師に限定
取材 事前申請が必要で、会場内の取材は会長の事前許可を要する。発表の撮影は不可
SNS 許可なく、本会や登壇者の名前を使った広報・営業活動をしないよう求めている

今回、取材の許可を受けたメディアはNEROだけだった。入口を慎重に絞る学会が、その内側を記録する役目を託してくれたことの意味を、編集部は重く受け止めている。託されたのは、場を盛り上げる言葉ではなく、ここで交わされた考えを正確に伝えることだと考えている。

会長挨拶では、「若手からベテランまで学ぼうとする意欲のある方には広く門戸を開いた」と書かれている。一方で、参加と発信の入口には、いくつもの確認の段階が置かれている。

この二つは矛盾していない。NEROはこれを「入口の設計」と呼びたい。学びたい医師には中を開く。そのかわり、学会の名前や講演の中身が、文脈を離れて外に出ていく入口は慎重に絞る。症例写真や未発表の手技が、そのまま宣伝や誤った発信に使われれば、それは学びの場を壊すことになるからだ。

そして、この考え方は、学会の中だけの話ではない。会長が「『偽物』と呼ばれるようなものも多い」と語った美容医療の情報環境は、患者が毎日、目にしているものそのものである。誰が、どんな立場で、何を根拠に発信しているのか。「入口」を確かめる習慣は、患者の側にも求められている。

この記事から持ち帰る物差し

美容医療の情報を見るときに

  • その情報は、誰が、どんな立場で発信しているのかを確かめる。医師なのか、施術を受けた個人なのか、企業なのか。
  • 「学会で話題」「最新の治療」と紹介されていたら、どの学会の、どのセッションの話なのかを確かめる。出典をたどれない情報は、いったん保留にする。
  • 医師の発信であっても、効果だけでなく、リスクや「向いていない人」についても語っているかを見る。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一
インフルエンサーを招いたほうが盛り上がる、と分かっていても招かない。田中会長がためらわずにそう答えたことが、今回いちばん印象に残りました。学会の外に出ていく情報まで責任を持つ、という姿勢だと受け取りました。
「みんなが学んで、見分けられるようになっていけば」。その「みんな」には、私たちメディアも含まれています。学会の扉の向こうで交わされた議論を、正確に、文脈ごと読者に届けること。NEROもその役割を果たしていきます。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

SUMMARY盛り上げるより、間違えない

2日間で、美容外科から内科的なアプローチまでを一つの場に並べた第4回日本美容医師会。会長が語ったのは、プログラムへの手応えと、学会の入口をどう守るかという考えだった。

学びの中身を開くことと、その入口を絞ること。その両方がそろって、はじめて「未来に繋ぐ」場になる。美容医療を選ぶ側にとっても、問われているのは情報の量ではなく、その情報がどこから来たのかを見極める目である。

FAQ第4回日本美容医師会に関するよくある質問

Q第4回日本美容医師会はいつ、どこで開かれましたか?

第4回日本美容医師会は、2026年10月3日(土)・4日(日)に、渋谷ヒカリエ9階のヒカリエホールで開かれました。テーマは「未来に繋ぐ美容医療」です。

Q第4回日本美容医師会の会長は誰ですか?

会長は、あきこクリニック院長の田中亜希子医師です。美容外科医として30年のキャリアを持ち、2022年には第110回日本美容外科学会(JSAS)の会長を務めました。副会長は、あらおクリニック院長の荒尾直樹医師です。

Qどのようなテーマが扱われましたか?

美容外科、美容皮膚科、美容内科にまたがるテーマが扱われました。日程表には、機器によるたるみ治療、クマ治療、ボツリヌス製剤、豊胸、鼻、ヒアルロン酸注入、肌育製剤、骨切り、ニキビ跡、上まぶた、AGA治療、スレッドリフト、婦人科形成などのシンポジウムが並んでいます。

Q医師以外も参加できる学会ですか?

医師以外の参加は、承認制となっていました。第4回では、メディカルスタッフや一般・企業の参加者は、在籍証明書などを提出し、事務局の確認を経て登録する仕組みでした。ライブサージェリーの聴講は医師に限定されていました。

Q「あきラボ」とは何ですか?

あきラボは、田中亜希子医師が2023年11月から主宰している、クリニックの垣根を越えて医師が学び合う勉強会です。田中会長によると、毎月、渋谷ヒカリエのカンファレンスで開かれており、その経験が今回の会場選びにもつながりました。

出典・参考

  1. 第4回日本美容医師会 公式サイト(会長挨拶、開催概要、参加登録、参加者へのご案内、取材申込) https://jcma2026.umin.jp/
  2. 第4回日本美容医師会 日程表(2026年8月3日時点)
  3. NERO編集部による現地取材、田中亜希子会長へのインタビュー(2026年10月3日、渋谷ヒカリエ)
NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長 安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。