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【韓国取材】ニードルフリーは痛みをどう変えるか──明洞の院長が語る「SYNERJET PRO」と継続できる治療

【韓国取材】ニードルフリーは痛みをどう変えるか──明洞の院長が語る「SYNERJET PRO」と継続できる治療

本記事は、NERO編集部が独自の編集判断で取材・執筆した業界ニュースです。
記事内で紹介する機器は、日本国内では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医療機器です(詳細は記事末尾)。

明洞(ミョンドン)の大通りは、平日の夕方でも人の流れが途切れない。化粧品店の呼び込みの声と、スーツケースの車輪が石畳を叩く音。その喧騒をくぐり抜けてビルのエレベーターに乗り、4階で降りる。扉が開いた瞬間、街の音がふっと遠のいた。

夕暮れのソウル明洞。人通りの多い通りと屋台
取材当日の明洞。この街の一角のビル4階に、グランメディ医院がある

2026年10月1日、16時。「グランメディ医院(그랑메디의원)」の施術室に、日本から訪れた医師6人が集まった。テーマは、針を使わずに薬剤を肌へ届ける「ニードルフリー・インジェクター」。講師は同院の代表院長、キム・サンヒョク(김상혁)医師である。

機器の電源が入るより先に、院長のほうから質問が飛んできた。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「日本で主に使われているスキンブースターがあると聞きました。主成分は何ですか?」

教える側が、まず教わる側の現場を知ろうとする。90分の講義はこの問いから始まり、最後は機器の性能ではなく、患者の変化についての話で終わった。その間に何があったのかを、順に記録していく。

この記事の3つのポイント

  • ✦ ソウル明洞のグランメディ医院で、日本の医師向けにニードルフリー・インジェクター「SYNERJET PRO」のハンズオンが開かれ、NEROが潜入取材。
  • ✦ 講義の中心は機器のスペックではなく、「どう届けるか」と「痛みをどこまで調整できるか」だった。出力、ノズル、製剤の粘り気の組み合わせで、体験は大きく変わる。
  • ✦ キム院長は、患者が以前より痛みに敏感になり、「通い続けられること」を重視するようになったと語った。美容医療の競争軸が、一度の効果から継続できる体験へと移りつつある。

取材条件:施術デモは撮影許可を得て記録。本記事は講義と施術デモの記録であり、効果を示すものではありません。製品画像は本メーカー提供資料より。

KEY FACTS

SYNERJET PRO
(シナージェット)とは
韓国のHIRONIC(ハイロニック)社が開発したニードルフリー・インジェクター。注射針を使わず、マイクロジェット、エレクトロポレーション、コールドプラズマの3つの方法で製剤を皮膚に届ける。韓国では、食品医薬品安全処(MFDS)の医療機器データベースで、2026年4月21日付の品目認証(2等級「噴射式注射器」、低周波刺激器との組み合わせ医療機器)が確認できる。日本では未承認。
MIGLOU
(ミグロ)とは
同じくHIRONIC社が開発したマイクロ波(2.45GHz)機器。ハンドピースに接触冷却の機構を備え、熱を一点に集めて照射する設計。韓国では、MFDSの医療機器データベースで、2026年7月8日付の品目認証(2等級「極超短波刺激器」)が確認できる。登録された使用目的は「2,450MHzの電磁波エネルギーを人体に加えて痛みの緩和に使用する器具」(編集部訳)で、肌の引き締めなどの美容上の目的は含まれていない。日本では未承認。
取材先 グランメディ医院(GRAN MEDI/ソウル・明洞)代表院長 キム・サンヒョク医師(Kim Sang Hyeok, MD)
取材日 2026年10月1日

EVENT OVERVIEWソウル明洞・グランメディ医院で開かれた、日本の医師向け90分の講義

日時 2026年10月1日(木)16:00〜17:30
会場 グランメディ医院(ソウル・明洞)
講師 キム・サンヒョク医師(同院 代表院長)
参加医師 日本の医師6名(下記)
内容 ニードルフリー・インジェクターの解説、実技、質疑応答

参加医師

今泉明子医師

今泉 明子 先生

堀内祐紀医師

堀内 祐紀 先生

室孝明医師

室 孝明 先生

上野佐知医師

上野 佐知 先生

佐藤英明医師

佐藤 英明 先生

篠原秀勝医師

篠原 秀勝 先生

キム院長は、2年半の勤務医生活を経て2009年に明洞で開院し、2017年に独立して現在の名前に改めた。得意分野はリフティングと、ニキビ跡などの瘢痕(はんこん)治療である。

韓国の医療専門メディアの取材では、「長く評価が定まった、検証された機器と施術だけを使う」と語っている。同じ記事には、こんな言葉も残っている。「私は嘘をつくと顔に出る。だから患者には、効果も痛みも期待値も正直に話す」(2019年、出典は記事末尾)。

検証済みのものしか使わないと公言してきた医師が、新しい「届け方」の技術を教える側に立っている。この取材の面白さは、まずそこにあった。

CLINIC INFO

グランメディ医院(그랑메디의원/GRAN MEDI)

代表院長 キム・サンヒョク(김상혁/Kim Sang Hyeok, MD)
所在地 ソウル特別市中区 明洞7キル21 4階406号
서울특별시 중구 명동7길 21, 4층 406호
沿革 2009年に明洞で開院。2017年に独立し、現在の名称に改める
主な診療 リフティング、ニキビ跡などの瘢痕治療(院長の専門領域)
公式サイト www.granmedi.co.kr(韓国語)

2026年10月の取材時点の情報です。院長の経歴は、韓国の医療専門メディア「Medical Aesthetic News」(2019年7月29日)のインタビューによります。

01 WHY THIS MATTERS韓国のスキンブースター治療と「痛み」という壁──ニードルフリーが登場した背景

スキンブースターとは、ヒアルロン酸などの製剤を肌の浅い層に少しずつ届け、肌の質感を整えることを目指す施術の総称だ。韓国では、ニキビやニキビ跡の治療とあわせて日常的に行われているという。

この施術の宿命は、一度で終わらないことにある。間隔をあけて何度も受ける。だから従来の「細い針で何十回も刺す」届け方では、回数を重ねるほど痛みが通院のハードルになっていく。

用語解説:ニードルフリー・インジェクター

ニードルフリー・インジェクターとは、注射針を使わず、高い圧力で製剤を細い流れ(ジェット)にして皮膚に送り込む機器のことです。→ 美容医療との接点:スキンブースターなど、肌の浅い層へ製剤を届ける施術で使われ始めています。

院長自身も、届け方を何度も変えてきた。講義の端々で語られた変遷を整理すると、次のようになる。

届け方 特徴 課題として語られたこと
手打ちの注射 狙った場所に、狙った量を届けられる 何十回も刺すため、痛みと時間がかかる
複数の針がついた器具(水光注射など) 一度に広い範囲を処置できる 針である以上、痛みは残る
ニードルフリー(ジェット) 圧力で製剤を送り込む。院長によれば、製剤が立体的に広がる 設定次第で痛みも変わる。製剤との相性を見極める必要がある

進化の方向は一貫している。「もっと効く」ではなく、「もっと続けられる」へ。この講義は、その最新の地点を日本の医師に見せる場でもあった。

SESSION REPORT 01SYNERJET PRO(シナージェット)の仕組み──針を使わずに「届ける」3つの方法

院長が電源を入れると、白い本体の画面に女性の顔のイラストが浮かんだ。本体の左右に、色の違う2本のハンドピースが掛かっている。

ニードルフリー・インジェクターSYNERJET PROの本体。左右に2本のハンドピースと12.1インチの操作画面
SYNERJET PRO(シナージェット)。左がプラズマ用、右がジェット用のハンドピース(画像:メーカー提供資料)

この機器の要点は、薬剤を届ける方法を3つ持っていることだ。院長の説明とメーカー資料を突き合わせて整理すると、次のようになる。

方法 何をするか ハンドピース
コールドプラズマ メーカー資料では、皮膚の表面に働きかけ、製剤が通りやすい状態をつくるとされる。院長は「より深く入れたいときの下準備」と表現した PS(プラズマ用)
マイクロジェット 高い圧力で製剤を細い流れにして送り込む。出力とノズルの組み合わせで、届く深さと広がり方が変わる SJ(ジェット用)
エレクトロポレーション 先端のチップから微弱な電流を流し、製剤を押し込む。院長がよく使う強さはレベル2だという SJ(先端チップを交換)
ニードルフリー・インジェクターの本体、ハンドピースの装着、操作画面
取材当日の施術室で。届け方のモード、ノズル径、出力を画面で切り替える

続いて院長は、ジェット用ハンドピースの先端から小さな部品を外してみせた。製剤が噴き出す「ノズル」だ。側面に刻印された数字は、噴射口の直径(マイクロメートル)を表している。

シリンジを装着したSYNERJET PROのジェット用ハンドピースと、先端のノズル
ジェット用ハンドピース。上部にシリンジを差し、先端のノズルから製剤を噴射する(画像:メーカー提供資料)

SPEC NOTE

数字を、身近なものに置き換えてみる

注入圧 100bar 乗用車のタイヤの空気圧(2気圧あまり)の、およそ40倍の圧力
ジェット速度 150〜500m/s 時速に直すと540〜1,800km。下限でも新幹線の倍近く、上限は旅客機の巡航速度のおよそ2倍
ノズル径 180µm 0.18mm。髪の毛の太さ(0.08mm前後)の2倍ほど
1ショットの量 0.1〜2.0µl 目薬1滴(約50µl)の、500分の1から25分の1
照射の速さ 1〜25Hz 最大で1秒間に25回
届く深さ 0.05〜2.5mm 出力の設定で調整する。メーカーは真皮の上層から中層を想定している
ノズルの寿命 9,000ショット 消耗品にはRFIDタグが付き、装着すると機器が正規品かどうかを読み取る

数値はすべてメーカー公表値(製品資料より)。換算は編集部によるおおよその目安です。性能を示す数値であり、治療効果を示すものではありません。

数字だけを並べると、強い機器という印象が残るかもしれない。だが講義を聞いていて分かったのは、院長がこれらの数字を「どこまで上げられるか」ではなく、「どこで止めるか」の目盛りとして扱っていることだった。

注目したいのは

院長が何度も口にしたのは、機器の性能より製剤との相性だった。「サラサラした製剤はジェットになって入りやすい。粘り気のある製剤は途中でジェットが切れて、流れ出てしまうことがある」。粉末状の製剤は生理食塩水とヒアルロン酸で溶いて量を整える、といった現場ならではの調合の話が続いた。

もう一つ、取扱説明書には載らないコツがあった。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「肌に密着させないでください。先端がふさがると製剤がうまく出ず、中に溜まってしまいます。少しだけ浮かせて打つのがポイントです」

▶ MOVIEノズルの先端を肌に押し当てず、少し浮かせて打つ

スペック表の数字ではなく、何千回も打ってきた手の感覚。ハンズオンの価値は、こうした一言に凝縮されている。

SESSION REPORT 02SYNERJET PROの施術デモ──顔の半分だけプラズマを当てる「ハーフテスト」

「実際に受けてみれば、すぐ分かりますよ」。院長の言葉に、室 孝明医師(ビスポーククリニック 統括院長)が施術台に横になった。

提案されたのは、顔の右と左で条件を変える「ハーフテスト」だ。片側だけ先にプラズマを当て、もう片側は当てない。そのうえで、両側に同じ製剤をジェットで届ける。プラズマの有無で何が違うのかを、その場で確かめるためである。

製剤をセットしたジェット用ハンドピースと、操作画面で出力を設定するキム・サンヒョク院長
製剤をセットし、出力は130から。「慣れてきたら、打つ間隔を速くしていけばいい」

プラズマのハンドピースが、肌の上をゆっくり往復する。施術室に、かすかにオゾンのような匂いが漂った。

次はジェットだ。出力130から始める。先端にキャップをつけ、肌から少し浮かせて打ち始めると、最初は製剤が細い筋になって頬を伝った。まだジェットになりきっていない。院長が出力を一段上げると、筋は消え、製剤はジェットとして肌に届くようになった。

肌との距離を保つキャップを当てたハンドピースの先端
ハンドピースの先端。キャップで、肌との距離を一定に保つ。施術直後は赤みや点状の出血がみられることがある

続いて、電気で押し込む段階に入る。院長は、先にプラズマを当てた側について「こちら側はプラズマも当てているので、より感じるはずです」と説明を添えた。

▶ MOVIE室 孝明医師へのデモ施術。出力130から始め、製剤の様子を見ながら調整していく

ここで院長は、はっきりとこう告げた。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「今のが、いちばん痛みの強いレベルだと思ってください。この製剤は粘度が最も高いため、出力を上げています。通常はもっと弱い設定から始め、患者さんの様子を確かめながら進めます」

日本ではもう少し控えめな、出力120前後から始めることが多い。そう伝えると、院長はうなずいた。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「粘度の低い製剤であれば、その設定で問題ありません。ただし、ジェットにならず製剤が肌の表面に残っている場合は、出力を上げて確実に届けてください」

低すぎれば届かない。高すぎれば痛い。その間の一点を、製剤の粘り気と患者の表情を見ながら探していく。痛みの調整とは、出力の目盛りを読む技術ではなく、目の前の皮膚を読む技術なのだと分かる。

ハーフテストは、結果を比べるためというより、プラズマ、ジェット、電気をどの順番で、どの強さで重ねるのかを、参加医師が目の前で確認するための実演だった。

今回のハーフテストは、講義のデモとして行われたものです。条件をそろえた比較試験ではなく、浸透の度合いや効果を示すものではありません。

針とジェット、どちらが痛いのか

室先生が質問したのは、皮膚の下で癒着した組織を切り離す「サブシジョン」という手技についてだ。通常は針を使うこの手技を、ジェットで行うと何が違うのか。院長は、どちらかに肩入れせずに答えた。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「針は、狙った場所だけを精密に処置できます。ただし、刺す角度によって届く範囲が限られます。ジェットは圧力で立体的に広がるため、一度でより広い範囲に届けられます。痛みは設定次第で、出力を上げれば通常の針より痛く感じることもあります」

長所と限界を、同じ温度で語る。2019年の取材で口にしていた「期待値も正直に話す」という姿勢は、教壇でも変わらなかった。最後に院長は出力を160に上げ、サブシジョンのモードを一打だけ見せた。打った箇所が、わずかに盛り上がる。「傷跡の治療には、このくらいの強さを使います」。

SESSION REPORT 03MIGLOU(ミグロ)とは──熱を「一点に集める」マイクロ波機器のデモ

講義の終盤、院長は同じメーカーのもう一台を紹介した。マイクロ波で熱を加える機器「MIGLOU(ミグロ)」だ。デモでは、筆者がモデルを務めた。

マイクロ波機器MIGLOUの本体
MIGLOU(ミグロ)。2.45GHzのマイクロ波を使い、ハンドピースに冷却機構を備える(画像:メーカー提供資料)

電源を入れても、すぐには始まらない。先端の冷却部が5℃まで下がるのを待つ必要があるからだ。冷却が整うと、院長は顔の片側からハンドピースを当て始めた。

マイクロ波機器のハンドピースを手にするキム・サンヒョク院長と、施術デモの様子
熱を一点に集める「スタッキング」の実演

施術室に、ピッ、ピッという電子音が一定の間隔で響く。電子音のたびにマイクロ波が照射される。ハンドピースの先端には冷却機構があり、照射の合間も皮膚に触れて冷やし続ける設計だ(メーカー資料)。

院長は、この機器の使い方について、こう語った。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「この機器を適切に使うには、患者さんが『熱い』と感じるところまで、しっかり熱を届ける必要があります」

院長が使っていたのは、熱を一か所に重ねる「スタッキング」という打ち方だ。通常はハンドピースを円を描くように動かすが、一点にとどめて熱を積み上げていく。つまり、痛みが少ないかどうかは機器が決めるのではなく、どう使うかが決める。同じ機器でも、どこまで熱を重ねるかという医師の判断によって、施術の体験は変わってくる。

印象に残ったのは、院長が経営の目線も隠さなかったことだ。出力を上げれば施術時間は短くできるが、熱すぎれば火傷や不快感につながる。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「施術時間は、結局のところ人の手間であり、それが施術料金になります。適切な設定を選び、価格に反映させてください」
項目 MIGLOUの仕様(メーカー公表値)
エネルギー マイクロ波(2.45GHz)、最大200W
ハンドピース 3mm・7mm・12mmの3種類。顔には3mmと7mm、体には7mmと12mmを使い分ける設計
安全機構 ハンドピースに接触冷却、皮膚との接触と動きを検知するセンサー
その他 ハンドピース重量200g、集束技術「FIM」は特許出願中(PCT/KR2025/004452)

▶ MOVIEMIGLOUの施術デモ。熱を一点に重ねる「スタッキング」という打ち方

施術デモの記録であり、効果を示すものではありません。熱さや痛みの感じ方には個人差があります。

COMMENT「見て、聞いて、体感できる場所は、ここにしかない」

施術を終えた室先生に、話を聞いた。最も印象に残ったのは、プラズマの使い方だったという。

「プラズマで通り道をつくって、製剤を浸透させやすくする。その発想がすごく面白かったですね」室 孝明医師(ビスポーククリニック 統括院長)

こうしたセミナーへの参加を迷っている医師に向けては、こう話した。

「話を聞くだけでなく、実際に見て、聞いて、体感していけるのは、こういうセミナーくらいです。国内だけでなく、アジアの国のやり方から学ぶことは多い。どんどん海外に出てほしいですね」

グランメディ医院の受付で撮影したキム・サンヒョク院長との2ショット
写真:NERO編集長とキム院長 (講義を終えて。グランメディ医院の受付にて)

NERO'S VIEW「一度で変える」から「通い続けられる」へ──痛みとダウンタイムをどう設計するか

講義の最後に、筆者は院長に尋ねた。「新しい機器が次々に出ていますが、患者さんの悩みは昔と比べて変わりましたか」。院長は少し考えてから、こう答えた。

キム・サンヒョク院長
キム・サンヒョク院長
「変化は二つあります。一つは、患者さんが痛みに敏感になったことです。こうした施術は一度で終わらず、定期的に受けるもの。痛いと、次に来るのが嫌になってしまいます。もう一つは、すぐに日常へ戻れることです。みなさん仕事をしていますから。効果や費用以上に、痛みが少なくダウンタイムのない施術を望む方が増えています」

だから自分も、手作業の注射から複数の針の器具へ、そして今の機器へと移ってきたのだ、と院長は続けた。

この言葉は、美容医療の重心の移動をよく表している。これまで施術の価値は、主に「一回でどれだけ変わるか」で語られてきた。しかし定期的に受ける施術が増えるほど、結果を左右するのは患者が次も来られるかどうかになる。痛みとダウンタイムは「我慢するもの」から、施術の設計に組み込む要素へと変わりつつある。

NEROはこれを「継続設計」と呼びたい。一回の効果の最大値ではなく、痛み・回復・費用・通う頻度を合わせて、患者が無理なく続けられる道筋を設計することだ。たとえば同じ施術でも、初回に最大出力で打つ医師と、二回目以降も同じ設定で受けられる強さから始める医師とでは、患者が次も同じ条件で来られるかどうかが変わってくる。ニードルフリーという届け方の技術は、その設計のための道具の一つとして登場している。

一方で、忘れてはいけないこともある。院長自身が「強くすれば針より痛いこともある」と語ったように、新しい機器が自動的に「痛くない」わけではない。出力、ノズル、製剤、そして打つ人の判断の組み合わせで、体験は大きく変わる。日本では未承認の機器であり、導入する医師には、入手経路やリスク、救済制度の対象外となることまで含めた説明が求められる。

この記事から持ち帰る物差し

美容医療を選ぶときに

  • 定期的に受ける施術なら、「何回、どのくらいの間隔で通う前提か」を最初に聞く。
  • 痛みは「我慢できるか」で終わらせず、「次も同じ設定で受けられるか」で考える。
  • 未承認の機器や製剤を使う場合は、入手経路と、副作用が起きたときの救済制度の対象外であることの説明を受ける。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一
院長は最初に、教わる側である日本の現場のことを質問してきました。教える側が先に聞く。その姿勢に、韓国の美容医療の強さが表れていたように思います。
取材を通して見えたのは、「痛くない機器」があるのではなく、「痛みを設計できる医師」がいるということ。機器を見るときは、それを使う人の判断まで見てほしいと思います。
NERO編集長 安達健一
NERO編集長 安達健一

SUMMARY届け方が変わると、通い方が変わる

明洞の4階で見たのは、新しい機器のスペックではなく、「どうすれば患者が次も来られるか」を突き詰める臨床の姿だった。針を使わない届け方は、その答えの一つにすぎない。出力を一段上げるか下げるか、肌から何ミリ浮かせるか。その判断の積み重ねが、患者にとっての「続けられる体験」をつくっている。

美容医療を選ぶときに見るべきなのは、一度の変化の大きさだけではない。その施術を、自分は続けられるか。そして、それを一緒に設計してくれる医師かどうかである。

FAQSYNERJET PRO・MIGLOUに関するよくある質問

QSYNERJET PRO(シナージェット)とは何ですか?

SYNERJET PROは、韓国のHIRONIC社が開発したニードルフリー・インジェクターです。注射針を使わず、マイクロジェット、エレクトロポレーション、コールドプラズマの3つの方法で製剤を皮膚に届けます。日本では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医療機器です。

QMIGLOU(ミグロ)とは何ですか?

MIGLOUは、HIRONIC社が開発したマイクロ波(2.45GHz)を用いる機器です。ハンドピースに接触冷却の機構を備え、熱を一点に集めて照射する設計とされています。日本では未承認医療機器です。

Qニードルフリー・インジェクターとは何ですか?

ニードルフリー・インジェクターとは、注射針を使わず、高い圧力で製剤を細い流れにして皮膚に送り込む機器です。スキンブースターなど、肌の浅い層へ製剤を届ける施術で使われ始めています。

Q針を使わなければ、痛くないのですか?

針を使わないことは、痛みがないことを意味しません。講師のキム院長も「強くすれば普通の針より痛いこともある」と話しており、出力や製剤、打ち方によって感じ方は大きく変わります。麻酔クリームを使うこともあります。

Q日本では承認されている機器ですか?

記事で紹介した機器は、日本では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医療機器です。未承認機器を用いた施術を検討する場合は、医師から入手経路やリスク、救済制度の対象外となることについて、十分な説明を受けることが大切です。

記事で紹介した機器について(未承認医療機器に関する表示)

  • SYNERJET PRO(ニードルフリー・インジェクター)、MIGLOU(マイクロ波機器)は、日本国内では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医療機器です。
  • 入手経路:日本国内では承認品として流通していません。国内の医療機関で使用する場合は、医師が自らの判断と責任のもとで個人輸入により入手することになります。
  • 国内の承認医療機器の有無:SYNERJET PROについて、PMDAの医療機器添付文書検索で「無針」「ニードルフリー」を名称に含む国内の承認・認証品は確認できませんでした。MIGLOUについて、マイクロ波で体の組織を温める国内の医療機器としては、一般的名称「マイクロ波治療器」の製品(主に理学療法用)があります。ただし、MIGLOUと同一の製品ではありません(いずれも2026年10月7日時点、編集部調べ)。
  • 諸外国における安全性等に係る情報:SYNERJET PROは、韓国の食品医薬品安全処(MFDS)の医療機器データベースで、2026年4月21日付の品目認証(제인26-4350호、2等級「噴射式注射器」)が確認できます。登録された使用目的は、薬液を微細に噴射して皮膚を通過させる噴射式注射器と、筋肉痛の緩和を目的に電極から電流を加える低周波刺激器を組み合わせた医療機器とされています(編集部訳)。米国では、一部の機能(電気手術機能、電気刺激機能)について食品医薬品局(FDA)の510(k)クリアランス(K260397、K260387)を取得していますが、製剤を届ける用途を対象としたものではありません。
    MIGLOUは、同データベースで、2026年7月8日付の品目認証(제인26-4619호、2等級「極超短波刺激器」)が確認できます。登録された使用目的は「2,450MHzの電磁波エネルギーを人体に加えて痛みの緩和に使用する器具」(編集部訳)で、肌の引き締めなどの美容上の目的は含まれていません(韓国の登録情報は2026年10月8日に編集部確認)。重大な副作用については、米国FDAの医療機器有害事象データベース(MAUDE)を2026年10月7日に検索した範囲で、HIRONIC社製品に関する報告は見当たりませんでした。韓国を含むその他の国・地域の副作用情報は、編集部では確認できていません。
  • 未承認医療機器を用いた施術で重い副作用が起きた場合、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
  • 主なリスク・副作用(一般的なもの):痛み、赤み、腫れ、内出血、出血、熱感、火傷、色素沈着など。施術内容や体質により異なります。
  • 記事中の機器の仕様(圧力・速度・深さ・周波数など)は、メーカーの公表値です。

出典・参考

  1. Medical Aesthetic News(韓国)、2019年7月29日 キム・サンヒョク院長インタビュー https://www.aestheticnews.co.kr/news/articleView.html?idxno=540
  2. HIRONIC「SYNERJET PRO」(HIRONIC Co.,Ltd.)
  3. HIRONIC「MIGLOU」(HIRONIC Co.,Ltd.)
  4. 電子新聞(韓国)、2026年4月22日「하이로닉, 무침주사기 시너젯 프로 국내 의료기기 정식 허가 획득」 https://m.etnews.com/20260422000210
  5. アジア経済(英語版)、2026年8月20日「Hironic Begins Supplying Synerjet Pro to Major Hospitals and Clinics」 https://view.asiae.co.kr/en/article/2026082010084871822
  6. ビーガンニュース(韓国)、2026年7月16日 MIGLOUの品目許可に関する記事 https://www.vegannews.co.kr/news/article.html?no=384090
  7. 韓国 食品医薬品安全処「医療機器安心本棚(의료기기안심책방)」品目・業者検索(SYNERJET PRO:제인26-4350호、MIGLOU:제인26-4619호、2026年10月8日検索) https://emedi.mfds.go.kr/search/data/MNU20237
  8. 米国FDA 510(k)データベース(K260397、K260387) https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfpmn/pmn.cfm
  9. 米国FDA 医療機器有害事象データベース(MAUDE、2026年10月7日検索) https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfmaude/search.cfm
  10. PMDA 医療機器 添付文書等情報検索(2026年10月7日検索) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiSearch/
  11. NERO編集部による現地取材(2026年10月1日、ソウル・グランメディ医院)

情報提供:HIRONIC Co.,Ltd.。製品画像はメーカー提供資料より。本記事の内容は取材当日の講義・発言に基づくもので、効果を保証するものではありません。施術を検討する際は、医師から十分な説明を受けてください。

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長 安達健一

安達 健一

NERO DOCTOR/BEAUTY 編集長

日本・米国看護師(BSN)・MBA保有。世界の一次医療データをもとに監修。広告主からの影響を受けない独立した編集方針を貫いています。