美容医療・美容外科での【ペインケア】とは?局所麻酔やリラックス麻酔など代表的な麻酔の特徴やメリットを解説!

美容医療・美容外科での【ペインケア】とは?局所麻酔やリラックス麻酔など代表的な麻酔の特徴やメリットを解説!

美容医療に興味はあっても「痛そうで怖い…」と躊躇してしまう方は少なくありません。そんなとき、痛みへの不安や恐怖を和らげてくれるのが麻酔。美容医療の現場では欠かせないものであり、麻酔のおかげで「思ったよりも痛くなかった」という声も多くあります。しかし、一時的とはいえ局所的に、または全身を麻痺させる麻酔には「痛みを感じなくなるってどんな感覚なの…?」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、美容医療で使用されるさまざまな麻酔について、特徴やメリット・デメリットを解説。最新の麻酔技術についてもご紹介します。

1.多くの患者を救う“ペインケア”|美容医療における麻酔の重要性

コンプレックスを解消し、理想の自分へと近づける美容医療は、憧れる方も多いでしょう。しかし、多くの美容医療施術において多少の痛みはつきもの。ダウンタイムで赤く腫れた症例写真などを目にしては、美容医療への恐怖心を募らせている方もいるかもしれません。

TCB東京中央美容外科が全国の18~49歳の男女を対象に行った「美容医療に対する意識調査」(2022年)(※)では、「美容医療に対するイメージ」について全体の約7割が『抵抗がある』『怖い』と答える結果に。美容医療と聞けば“メスを使った外科的施術”を思い浮かべる方も多く、痛みへの恐怖心を感じる方も少なくないようです。

美容医療や美容外科での麻酔の役割

多くの美容施術では、施術を受ける方の不安や恐怖心、緊張を軽減するために麻酔が使われます。麻酔には主に次のような役割があります。

施術中の痛みを和らげる

麻酔の一番の目的は、施術時の痛みを和らげること。美容医療では注射器やメスなど痛みを伴う器具が使われることも多くあるため、麻酔が欠かせません。
麻酔には種類がさまざまあり、施術内容や施術を受ける人の痛み耐性の強さなどによって使い分けることになります。

安全に施術を行えるようにする

人の体は刺激を感じると、じっと動かずにとどまることが難しくなります。強い痛みはもちろんですが、注射器を刺すときのわずかな痛みですら、ぴくっと動いてしまう方もいるでしょう。痛みのほぼない施術だからといって麻酔を使わずにいると、わずかな刺激で体が動き、予定外の部位を傷つけてしまったり、思わぬ事故が起こったりしてしまうことも。そしてその傷によって傷痕や後遺症が残ってしまうこともあります。
こうした予期せぬトラブルを防ぎ、安全な施術を提供するためにも麻酔によって患部を麻痺させる必要があるのです。

AIの活用も!進化し続ける麻酔技術

麻酔は美容施術に限らず、さまざまな医療の現場で活用されています。しかし一方で、薬の効きや持続時間などのコントロールが難しいという課題も。副作用や合併症などを引き起こすリスクも抱えています。

近年ではこうした麻酔の課題について改良が重ねられ、より持続期間が長く、副作用や合併症リスクの少ない麻酔薬が登場。麻酔中の異常を早期発見できるように麻酔管理技術の精度も高まってきています。

例えば、2024年に発表されたのは、AI技術によって全身麻酔中の患者の心拍数や血圧などをリアルタイムで分析し、合併症などのリスクを予測するシステム※。これは「美容外科手術を受けたいけれど全身麻酔が怖い」と躊躇する方の背中を押してくれる、画期的な技術といえそうです。

※全身麻酔患者状態のAI予測及びナレッジ共有システム……ARアドバンストテクノロジ株式会社・横浜市立大学医学部麻酔科学教室・医療法人横浜未来ヘルスケアシステム戸塚共立第2病院の共同開発。

2.美容医療で使われる麻酔にはどんなものがある?

美容医療で使われる麻酔には、次のような種類があります。

・表面麻酔(テープ麻酔/クリーム麻酔)
・点眼麻酔
・局所麻酔(ブロック麻酔)
・笑気麻酔
・静脈麻酔
・全身麻酔
・エクスパレル麻酔

ボトックスやヒアルロン酸注入など比較的痛みの少ない施術では、麻酔なしで施術を受けることも可能。しかし、痛みがまったくないわけではないので「麻酔はできるだけ使いたくないけれど痛みはやっぱり不安…」という方もいるでしょう。

そんなときには、次のような方法で麻酔を使わずに痛みを緩和することもできます。

  • 施術前に保冷剤で施術部位を冷やす
  • 施術部位を振動させながら注射する

痛みに弱い方は施術前のカウンセリングで使用できるか相談してみると良いでしょう。

3.麻酔の特徴やメリット・デメリットは?治療に合わせた麻酔の選び方

施術を受ける際には、さまざまな麻酔方法の中から適したものを選ぶことが大切。そうすることで、必要以上に麻酔が体内に入ることを防ぎ、体への負担も少なくなります。
麻酔方法は医師と相談しながら決めていきますが、痛みに弱い方はそのことも伝えておくと安心です。
ここからは美容医療で使用される麻酔について、特徴とメリット・デメリット、向いている施術や使用シーンについて解説します。

表面麻酔(テープ麻酔/クリーム麻酔)

表面麻酔では、麻酔テープや麻酔クリームが使用されます。麻酔が効くまでの時間はテープが約10~30分、クリームが約30分。麻酔の持続効果は、約1~2時間ほどです。注射針の痛みを和らげることができるため、局所麻酔の注射をする前に使用されることもあります。比較的痛みが少なく、手軽にできる施術に向いている麻酔です。

【メリット】
◇ピンポイントで麻痺させるため、意識がはっきりした状態で施術を受けられる
◇注射による麻酔が苦手な方でも受けられる

【デメリット】
◇皮膚の深い部分には効きにくい
◇アレルギー反応を起こしてしまうことがある

表面麻酔が向いている施術の例
・ヒアルロン酸注入
・ボトックス注射
・肌育注射(ボライトやリジュランなど)
・ダーマペン
・レーザー照射治療
・糸リフト
・イボ取り
・婦人科形成
・局所麻酔注射の鎮痛

点眼麻酔

点眼麻酔は、目元の施術で使用される目薬タイプの麻酔です。点眼後、わずか20秒ほどで麻酔が効き始めるため、待つ必要がありません。麻酔の持続時間は、約15分。鎮痛効果はそれほど強くないため、局所麻酔の前段階で主に使用されます。

【メリット】
◇点眼するだけなので痛みがない

【デメリット】
◇強い痛みにはほとんど効果がない

点眼麻酔が向いている施術の例
・二重整形
・眼瞼下垂術
・局所麻酔注射の鎮痛

局所麻酔(ブロック麻酔)

注射針で皮下や粘膜に麻酔薬を注入する局所麻酔は、多くの美容施術で採用されている方法です。注入痛が数秒~1分程度続き、その後すぐに効果が現れます。効果の持続時間は、使用する麻酔薬や麻酔を受ける人の体質にもよりますが、20分~1時間程度。一度に大量に注入すると体へ大きな負担がかかるため、規定量を超えて注入することはできません。

なお、より広範囲を麻痺させたい場合には、知覚神経の根元に麻酔薬を注入する「ブロック麻酔」という方法が用いられます。

【メリット】
◇ピンポイントで患部を麻痺できる
◇意識のある状態で施術が受けられる(仕上がりの確認や会話も可能)

【デメリット】
◇注射針によるチクっとした痛みがある
◇まれに局所麻酔中毒(頻脈や血圧上昇など)を起こすことがある

局所麻酔が向いている施術の例
・目元や鼻、口などの局所的な施術(二重形成や眼瞼下垂、鼻尖縮小など)
・ほくろやイボの除去
・ レーザー治療
・婦人科形成
・ヒアルロン酸注入
・ボトックス注射
・脂肪注入

笑気麻酔

医療用のガス(亜酸化窒素)を鼻や口から吸うことで、痛みだけでなく、緊張感や不安を和らげることのできる麻酔。麻酔が効き始めるとお酒を飲んだ時のようなフワフワとした感覚になり、眠ってしまう方もいます。ただし、完全に意識を失うものではありません。吸入後すぐに麻酔の効果があらわれますが、吸入を辞めるとわずか2分ほどで効果が切れます。

【メリット】
◇鎮痛だけでなく、緊張感や不安も軽減できる
◇ガスを吸うだけなので注射の痛みはない
◇体への負担が少なく、副作用もほとんどない

【デメリット】
◇強い痛みには効果がない(局所麻酔などと併用する)
◇既往歴によっては使用できない場合がある

笑気麻酔が向いている施術の例
・埋没二重術
・レーザー治療
・ダーマペン
・ヒアルロン酸注入
・ボトックス注射
・肌育注射(ボライトやリジュランなど)
・糸リフト

静脈麻酔

点滴によって血管(静脈)から麻酔薬を投入します。静脈麻酔を使うと眠ったような状態になりますが、完全に意識を失うことはありません。鎮痛目的だけでなく、緊張感や不安を軽減し、リラックスさせる目的での使用が一般的。笑気麻酔よりも即効性と鎮痛効果が高く、持続時間は体質や投与量によります。
痛みが強く出やすい施術の場合には、途中で目が覚めてしまうことも。そのため、痛みの強い施術の場合には局所麻酔と併用することもあります。長時間にわたる施術や体への負担が大きい施術によく用いられる麻酔です。

【メリット】
◇眠っている間に施術を終えられる
◇施術への不安や恐怖心を和らげ、リラックスできる

【デメリット】
◇痛みが強い施術には向かない
◇施術後に吐き気などの体調不良になることがある

静脈麻酔が向いている施術の例
・脂肪吸引
・豊胸手術
・鼻や顎などの外科手術
・婦人科形成

全身麻酔

全身麻酔とは、笑気麻酔や静脈麻酔で全身を鎮静させた後、筋弛緩薬を投与する方法。完全に意識を失った状態になり、自発呼吸ができないため、人工呼吸器を装着して施術が行われます。麻酔科医のいないクリニックでは、この方法を行うことはできません。術後は体の負担を考え、一泊入院を推奨しているクリニックもあります。

【メリット】
◇強い痛みを伴う大がかりな施術でも痛みを感じない
◇無意識状態のまま施術が完了する

【デメリット】
◇体への負担やリスクが大きい
◇クリニックによっては追加費用が発生することがある
◇気管挿管を行うため術後に喉の痛みやかすれが残ることがある

全身麻酔が向いている施術の例
・脂肪吸引
・フェイスリフト
・脂肪吸引
・豊胸手術
・鼻や顎などの外科手術
・婦人科形成

エクスパレル麻酔

エクスパレル(EXPAREL)とは、麻酔薬の製品名。“長時間持続型局所麻酔薬”とも言われ、主に施術後の痛みを軽減させる目的で使用されます。
エクスパレル麻酔を使うのは、他の麻酔のように施術前ではなく施術後。痛みが出やすいとされる術後約72時間の痛みを抑制します。まだ麻酔が効いているうちに打つため、痛みもありません。
術後の痛み止めとしては内服薬処方が一般的ですが、それだけでは不安な方、お仕事などで内服が難しい方にはおすすめの方法です。

【メリット】
◇術後の痛みを軽減し快適に過ごせるようになる
◇麻酔が効いているうちに打つので痛みがない

【デメリット】
◇追加費用がかかる
◇副作用として吐き気や便秘、発熱などが起こる場合がある

エクスパレル麻酔が向いている施術の例
・脂肪吸引や骨を削る整形など大規模な手術の後
・術後の痛みが不安なとき

4.マルチモーダル麻酔法

マルチモーダル麻酔とは、作用機序(薬が治療の効果を表す仕組み)の異なる複数の鎮痛薬や投与方法を組み合わせ、鎮痛の相乗効果を得る方法のこと。マルチモーダル麻酔法には「それぞれの麻酔薬の量を減らせる」「副作用のリスクを軽減できる」などのメリットがあります。

近年、マルチモーダル麻酔がさまざまな医療現場で活用されるようになってきました。今後は美容外科手術でも主流の方法として採用されることが予測されます。麻酔の効果や持続時間、副作用などが改善されれば、今よりもさらに美容施術を受けやすくなるのではないでしょうか。

まとめ

美容医療、とくに美容外科などの痛みを伴う施術において、麻酔は欠かせないもの。美容医療ではさまざまな麻酔が使われており、治療の内容に応じて選ぶことができます。痛みに弱いことを担当医師に伝えれば、より痛みに配慮した麻酔選定をしてもらえるでしょう。麻酔への不安を理由に美容医療を受けようか迷っている方は、一度クリニックのカウンセリングを受けてみるのもおすすめ。クリニックを選ぶ際には、ぜひ採用している麻酔の種類もチェックしてみてくださいね。

【参考】
TCB東京中央美容外科「美容医療に対する意識調査」(2022年)

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