カッティングエッジ第3弾!6月30日潜入レポート~「ドクターの技術祭典・カッティングエッジ」~外科編~

カッティングエッジ第3弾!6月30日潜入レポート~「ドクターの技術祭典・カッティングエッジ」~外科編~

INDEX

Cutting Edge(カッティングエッジ)Ⅲ「Surgery」※手術(2024.6.30開催:2日目!)

2024年6月29日に続き、30日に東京ポートシティ竹芝にて開催された 「Cutting Edge(カッティングエッジ)」Ⅲ。
カッティングエッジは、美容医療における最新の技術・知識を共有することに加えて、世界へ向けて日本の美容医療を発信する目的で開催される、美容医療にまつわる祭典です。若手を中心に、医師や研修医、看護師など「最新の美容医療を学びたい」という意識が高い医療従事者が2日間であわせて400名弱が参加しました。
開催テーマは、
カッティングエッジⅡが「Dermatology(※皮膚科)」、
Ⅲが「Surgery(※手術)」。

Ⅱは美容医療でも常に注目される【皮膚科領域】
Ⅲは美容外科で重視される【手術技術】をテーマに、各領域のトップランナーである医師が両日ともに8名ずつ登壇しています。
2日目のコンテンツはかな~~~り専門的だったので、症例内容など、ビデオの内容・技術に価値がありすぎる…レポでは限界があると感じたので、ぜひ気になる方は【次回参加する】ことをおすすめします!!

▼Cutting Edge(カッティングエッジ)Ⅱ:1日目(皮膚科)のレポはこちら


▼Cutting Edge(カッティングエッジ)Ⅰ:初回開催の際のレポがこちら

▼発起人の方たちへのインタビューはこちら

Session1:「予約が取れない 爆モテ二重埋没“ドリームダブル”の極意」
田中優太医師(HAAB統括院長)

二重整形を得意とする田中優太医師。年齢や性別を問わない幅広いジャンルの二重整形で多くの患者様から支持され、これまでに延べ50,000件以上の症例を経験してきた二重整形のトップランナーです。
田中医師によるセッションのテーマはクリニック独自の「二重埋没」。
セッションは、ライブ中継形式でデザイン決めから施術までを生実演。ナビゲーターの堀田先生が随時会場からの質問と合わせて、田中先生と掛け合う流れはまさにインタラクティブなライブサージャリーセッションでした。
田中先生の細やかなデザインのコツや技術。また施術終わりに、腫れや出血がほぼない状態に驚きでした。参加者は目を離せない実演に釘付けになっていました。

手技・特徴 詳細
デザイン決定後の施術準備 デザイン決定後、糸を掛ける位置を決めて施術に移行。事前に患者の目を何度も開閉させ、最適な位置をマーキングし、デザインの精度を高める
麻酔の手法 麻酔の量を適切に調整し、表面麻酔と裏側麻酔の2か所注入。
麻酔の量は患者の状態に合わせて調整。
糸の掛け方 糸を掛ける際は、真皮をしっかり噛むように意識し、持続性を高めるためにループを長く遠くに掛けることがポイントとのこと。
抜糸の際にも簡単に見つけれるよう、同じ穴から糸を通すことがコツ
抜糸のしやすさ 裏止めの施術では、糸が透けにくい波縫いがGOOD。
これにより、抜糸が簡単になり、侵襲も少ない。
患者の反応と結果 施術後、患者様はほとんど腫れや出血がなく、直後から外出可能な状態とのこと。患者様も「目がぱっちりと開き、違和感や痛みがないです!」と終始驚いていました。

【手術後の即効性:腫れや出血の少なさ・ダウンタイムの少なさがメリット】
田中先生の施術は、手術直後から腫れや出血がほとんどなく、患者がすぐにメイクもでき日常生活に戻れることが特徴。この即効性と高い技術力が、多くの患者からの信頼と人気を博している理由の一つだと感じました。施術後の患者様の満足度は非常に高く、目がぱっちりと開いた状態に驚きと喜びの声が上がっていました。

また、ナビゲーターによる誘導もあり、会場との掛け合いの中
「糸は何を使ってますか?」「針は何を?」
「ブジー(二重シミュレーションのツール)でおすすめはありますか?」など、
実際に二重埋没手術を執刀されるドクターから、ここでしか聞けない質問にも即答し、実際の道具を見せてもらうことも。
そこにいる誰もが【日頃試行錯誤していらっしゃるドクターの、明日から使えるお悩み解決の場としてはもってこいの場!】と感じ、本日の全体の雰囲気が決まった瞬間と言ってもいいトップバッターセッションでした。

田中優太先生式:二重オペの極意・特徴まとめ
✅ デザインのコツは、目の幅だけでなく目を最大限開けたときに一番美しい箇所とは?
└目頭の「入り方」・まぶたの「厚さ」も考慮しながらデザインを決めていく
└左右差があれば皮膚のたるみや眉毛を上げた状態なども考慮して決めること
✅糸を掛ける際は、皮膚側ではなく真皮をしっかり噛むように意識することで透けない
✅糸止めはループを長く、遠くに掛けることで持続性が高まる
✅ 患者がすぐに外出できる・腫れない状態を目指すには、「麻酔の量は多めに」「直後腫れないコツは出血を最小限に抑えること」。

 

Session2:「ハムラ法で整える4つのパラメーター」
朝日林太郎医師(日本医科大学形成外科学講座非常勤講師、自治医科大学形成外科非常勤講師、日本形成外科学会専門医、日本美容外科学会(JSAPS)正会員、日本熱傷学会専門医、日本創傷外科学会専門医、医学博士)

国内では少ない、修正手術や後遺症治療を専門に行う朝日林太郎医師。大学病院や国内にある複数の美容クリニックでさまざまな研鑽を積んできたトップレベルの形成外科医・美容外科医です。
朝日医師によるセッションのテーマは下眼瞼形成術の「ハムラ法」。

会場は参加者たちは朝日先生の手術動画(合計オペ時間58分の手術動画)に見入ることに…切開のコツや、眼輪筋下剥離時のNS介助のコツ(角度をつけて引っ張ってもらう)、剥離の範囲や切開の長さなど、術者にしかわからない繊細な質問にも全てお答えくださるところはこれぞ修正も多くこなす、権威ある形成系外科医!」といった印象。ナビゲーターとの受け答えでは若手医師の真剣なまなざしが目立つセッションでした!!

全体的には、以下の観点が技術シェアされていました。
1.術前デザインのポイント

4つのパラメーターで皮膚の切除の幅を決めるが、取り過ぎなようように注意。たるみがある場合でも眼輪筋を引き上げることで改善するケースや、皮膚の余剰が少ない場合でも、しっかりとしたデザインを行うことで手術の再現性が高まり、術後の仕上がりをコントロールしやすくなる。

2. 剥離とリガメント処理の技術
剥離範囲やリガメント処理において、牽引の方向やテンションのかけ方(ナースの介助も含む)が非常に重要であることが具体的な映像と共に解説された。剥離したいところの接点に対して牽引をかけ、特に「垂直に」持ち上げることで眼輪筋と眼窩隔膜に隙間ができ、剥離がスムーズに進むポイント!その後は牽引を倒しながら・・・など具体的な解説に会場も釘付けになっていました。

3. 眼窩脂肪の移動と固定技術
眼窩脂肪の処理と移動の過程での細やかな技術が紹介され、特に糸の位置や固定の方法についての詳細な説明が行われました。適切なテンションを保ちながら脂肪を移動させる技術は、固定すると眼窩隔膜と眼窩脂肪で出てくるところは最後にトーニングなど必要最低限に除去し最適化など。

NERO’sポイント
【ハムラ法の重要な4つのパラメーター】
✅皮膚の余剰
術前のデザイン段階での工夫が成功の鍵であると強調。
皮膚の余剰が少ない場合でも、細かいデザインが術後の仕上がりに大きく影響。
✅眼輪筋のゆるみ
牽引の方向やテンションのかけ方が非常に重要。
適切な角度と力で牽引することで、剥離がスムーズに進み、組織の損傷を最小限に抑えること
✅眼窩隔膜の緩み/眼窩脂肪のボリューム
眼窩脂肪の移動と固定については、脂肪の余剰を見極めながらも、糸の位置や固定方法を工夫しつつ脂肪を自然な位置に固定する※最適化が重要、やりすぎると外販や凹みが生じる
術後のケアと注意点
術後のケアに関する具体的なアドバイスも提供されていましたが、特に皮膚の引き連れや腫れを最小限に抑えるため術後のテーピングやダウンタイムの管理についての説明は、実践的な価値が高く、明日から使える内容といえます!皮膚の引き連れや腫れを最小限に抑えるための工夫もシェアされました。テーピングについては、患者への説明も含め、しっかり行うことが重要です。

Session3:「あご下スッキリペリカン手術の説明書」
播摩光宣医師(加藤クリニック麻ANNEX院院長)

顔形成の専門医である播摩光宣医師。骨切り輪郭形成・鼻整形・二重整形・フェイスリフトなど、顔のさまざまな部分の悩みを抱える患者様に対して堅実な人柄と高い技術で対応している医師です。
播摩医師によるセッションのテーマはあご下のもたつく脂肪を改善する「ペリカン手術」。

【ペリカン手術は俗称/正確にはネックリフト】
アゴの下を3㎝程切開します。
切開した部分から、皮下脂肪と首の筋肉(広頚筋)の奥にある脂肪を除去します。
筋肉をぴんと張った状態で引きしめて縫い固定します。切開した皮膚は丁寧に縫い閉じます。下あごの骨の下の部分を切開するので、傷はかなりわかりにくくなります。


この手術で最も重要なのは”解剖”
解剖学に基づいた手術の詳細な説明と、実際の手術動画での視覚的な理解が非常に効果的でした。また、手術の各ステップが明確に示され、特に「剥離」や「糸を掛ける」工程において、細部にわたる丁寧な解説は感動的で、動画の傍にシェーマも一緒に投影されていることで術式になじみのない人であっても術中の動画の理解がよくできたのも面白い取り組みでした。
(ライター目線での余談ですが、カッティングエッジは、このように、「聴衆のわかりやすさ」に各ドクターが工夫を凝らしていることがよくわかり、独りよがりでなく、「伝えたい」という気持ちが感じられ、大変参考になります。)

会場内でもいくつか質問に出ていましたが、
脂肪吸引との適応の違いは大きなテーマ。見た目だけでは術式選択を誤ってしまう!
┗触診で浅層の脂肪量が多い場合は脂肪吸引の適応
┗舌骨の位置とCTなどで見て浅層の脂肪でない場合や骨切り後はペリカン手術の適応

 

剥離の際の外側のメルクマールは正中から大体10センチ(広頚筋上で行く場合はあまりリスクがないので横はある程度攻めていい)
オペの最後の仕上げの部分では、左右の顎二腹筋同士が完全に寄っている様子などが見え、即時効果性の高さとその理論通りの完成したオペを見ることができました。
また、会場からの質問に答える形で、今現在の吸収糸ではなく非吸収糸などにした方がいいのでは?など、今後についての様々な播摩先生のお考えに触れる部分もありました。

治療方針・特徴
✅軟部組織のボリュームコントロールという難易度の高い手術である
広頚筋や太い血管、舌骨筋、リンパを傷つけないように細心の注意が必要
✅特に広頚筋の上側の脂肪の取り回しには止血と細心の注意を払いながら行う
✅直視下でとにかく全部取ること
✅縫い上げていくというよりは、硬いところを舌骨を引き上げていくというイメージで、顎下の美しさを形作っていく。ペリカン→白鳥になっていく、おとぎ話のようなオペ。

【コラボセッション!Session4×Session5】
「肋軟骨による鼻中隔延長(理想的な鼻の作り方)」×「「耳介軟骨だけで鼻中隔延長」〜自然な美しさを目指して〜」
牧野陽二郎医師(聖心美容クリニック銀座院院長)×新行内芳明医師(BIANCA銀座院長)

 

セッションDr.のプロフィール
牧野陽二郎医師(聖心美容クリニック銀座院院長)

形成外科認定専門医の資格を持ち、顔面領域の再建を数多く行ってきた牧野陽二郎医師。美容外科医に転身してからも才覚を発揮し、鼻や目元の手術全般、リップリフトにフェイスリフト、さらにシリコン豊胸なども得意とする医師です。
牧野医師によるセッションのテーマは肋軟骨を用いた「鼻中隔延長」


新行内芳明医師(BIANCA銀座院長)
鼻整形のスペシャリストである新行内芳明医師。患者様一人ひとりに本当に似合う自然な鼻や目の整形、フェイスリフト、ヒアルロン酸施術などの美容医療を提供し、顔全体を洗練させることに重点を置いている医師です。
新行内医師によるセッションのテーマは耳介軟骨を用いた「鼻中隔延長」。

とてもユニークなセッションでした!!終了直後、会場では150分にも及ぶセッションの長さにも関わらず、「まさに神業!」「凄すぎる…!」「牧野先生、時間内で終わった…」「え、あそこって自分の場合だとさ…」などドクター同士が熱狂しながら会話している様子が見られ、大変盛り上がっている様子が窺えました。

いずれも鼻中隔延長というテーマで、「肋軟骨だとここまで対応できる」「耳介軟骨でもここまでできる」という、それぞれの得意とするオペの技術シェアがしっかりと行われ、また、争い合わず互いに学びあうスタンス、高めあう会話が非常にセッションの新しさを表現していました!これぞコラボ!という感じで、私には理解しきれない専門用語もありましたが、なるべく先生方のお話をメインでまとめました。

まず、前提から。それぞれの所属するクリニックのブランディングや患者側からの認知が異なるため、「自然な鼻を目指してくるプライマリーの患者が多い」という新行内先生と、「こちらも自然な鼻の仕上がりの患者も多いが、修正手術なども含め、難易度の高い患者も多い」という牧野先生。
それぞれ、取り扱う素材の柔らかさや特徴から、術野の確保方法やどこまでの範囲を剥離するのか?など、求める結果に応じて様々な手法があることがわかる講義でした。

牧野先生は、肋軟骨を用いて自然が仕上がりは大前提とし、理想的な細部までの変化、再現性の高さにこだわり、患者の希望に合わせたプロジェクションを重視。一方、新行内先生は耳介軟骨を使用して、ナチュラルで柔らかな仕上がりを目指し、患者の自然な美しさを引き出すことに注力。この違いから、どちらの手法もナチュラルさはありながら、患者のニーズにどこまでも応じた柔軟な対応が求められることが分かります。

▼まず、それぞれのドクターの術式の違いを以下に記載します。
※画像出典:聖心美容外科様公式HPより

▼【NERO作成】牧野先生の実際のライブサージェリーの一部を抜粋※一般の方の目に触れる可能性もあるため、血の色が苦手な人向けに写真の赤の彩度を下げています。ご了承ください。

 

新行内先生の耳介軟骨移植のポイントについて
✅耳介軟骨を使用した患者の適応範囲は、基本的にプライマリーはほとんど対応可能。
✅ただし、求めるデザインがかなりツンとしたデザインが希望の場合は、肋軟骨を推奨
✅軟骨膜を絶対に取ることが大事
✅耳介軟骨は25㎜以上×2(両側)は取りたい。
※それくらいあれば耳介軟骨として使える。耳垂側も奥まで剥離しながら。

▼その他、2名の術式による違いについて以下に記載しています

牧野先生:肋軟骨 新行内先生:耳介軟骨
患者基本情報 プライマリーの20代 プライマリーの20代
骨の採取時のポイント 鼻中隔延長術では乳房下の皮膚を切開し、肋軟骨(7番)を採取 耳介軟骨の強度をいかに維持した状態で採取するかが一番重要
25㎜以上×2(両側)必要
骨の加工時のポイント 肋軟骨のカット・加工の仕方のTips(画像あり)・15分くらい時間を置く・ワーキングしやすい向きで切る 貝合わせにするようにして縫合する。左右のテンション・しっかりと反発しあうようにきつく縫合する。
鼻中隔への対応 鼻中隔軟骨の上に、デザインを整えた肋軟骨で支柱を立てて延長。
※肋軟骨で支柱を立てた場合は、左右から添え木のように肋軟骨で挟んで固定します。※バテングラフト4枚くらいで傾きを調整
なるべく軟骨の強度を維持したまま。バイラテラルに鼻中隔を挟み込む形
ANS(上顎の骨)方向への補強
鼻先側の処理 肋軟骨で十分高さが出る・オンレイはあまりしない。皮膚が薄い患者などの場合は肋軟骨膜でカバーすることはある。 残った耳介軟骨でハートのような形にかぶせ・鼻先にオンレイ・後戻りを防ぐ。エンベロープの減量はあまりしない

新行内先生鼻オペの特徴と思われるのが、
耳側からどれだけの強度をもった耳介を取ることができるのか?が肝である
こともよくわかりました。一定、限界があると思われがちな耳介軟骨に対し、なぜそんなに多数の症例に耳介軟骨での対応を出来ているのか、という部分の答えかもしれません。

また、オペと関係ない部分かもしれないですが、リノメジャーで図ったものがベクトラ通りのシュミレーションになるという牧野先生と、シュミレーションより気持ち大きくした方が感覚的に理想の状態になるという新行内先生。肋軟骨と耳介軟骨の取り回しの違いなのか、答えがないセンスの世界の話題で、これも大変面白かったです。

▼リノメジャーでシュミレーションと合わせている様子
牧野先生のオペでは、想定以上の曲がりがあったことで完成度を鑑み、その修正をすることになり、下外側鼻軟骨(LLC)の高さが合わず苦戦されるシーンもあったのですが、それがむしろ学びになりました。しかも、それらの難題を時間内に乗り越え…綺麗な完成形を迎える、という、会場が一体となったセッションでした。結論、アプローチの違いがあれど、どちらも素晴らしいオペのご共有をありがとうございました!

✅手術の応用と対応力:牧野先生が肋軟骨を用いた鼻中隔延長術をライブで行う中で、軟骨の厚さや形状が予想外だった際の迅速な対応方法が学びとなりました。
✅特にどちらも骨採取・型取りの際の発想転換や、手の打ち方の工夫が印象的。
✅技術の細部へのこだわり:新行内先生が耳介軟骨を用いた手術動画では、特に軟骨膜を温存することで軟骨の強度を保つ技術は、他の手術に応用可能な貴重な知見でした。
✅手術の哲学とアプローチの違い:牧野先生と新行内先生の手術に対するアプローチの違いが明確に示されました。牧野先生は肋軟骨を使用することで、高い鼻先を作り出す手法に重点を置き、新行内先生は耳介軟骨を使い、より自然な仕上がりを目指すアプローチを強調していました。

Session6:「基本の口角挙上」廣瀬雅史医師(Maison PUREJU院長)

学生時代から美容外科医を目指していた廣瀬雅史医師。形成外科専門医と美容外科専門医の資格を持ち、外科のみならず美容皮膚科の知識や技術も豊富で、患者様に総合的な美容医療を提供している医師です。
廣瀬医師によるセッションのテーマは「口角拳上」

会場内でアンケートを取ったところ、「口角挙上は知っているけど自分はオペをやっていない」というドクターが非常に多い、いわゆる、少しニッチなオペであることの認識からのスタートでした。どこに目が行くか?は、やはり目の次は、口だと語る廣瀬先生。

ヒアルロン酸=上がったように見せることはできる。
ボトックス=効く人、効かない人がいる。

▼セッションの中で語られていた手法の違いによる特徴(※内側法やや割愛気味)

術式概要 術式の詳細 メリット デメリット
外側法 唇の外側を切除する。一般的に行われてきた口角挙上 Z状に切開を入れて、外側を口腔内に入れ込む 白唇のたるみは外側法で対応するしかない 水かき状の拘縮になりやすい・傷跡が目立つ
内側法 皮弁・粘膜弁を内側に持ってくることで口角を上げたように見せる 3つの手法の中で最も難しくあまり選択しない。廣瀬先生はあまり行わないため詳細なし 傷が外側から見えない 弛みがある場合、内側側が膨らんで見える・外側の口角は上がらない
全層法 口角の皮膚を上から下まで全層で切開して、上下それぞれで特殊な縫合を行い、口角の引き上げをはかる方法。 皮膚側で口角から上げたい方向へ粘膜側も裏打ちするようにデザインする 縫合した部分が唇の一部になるため、皮膚表面に傷ができないことです 少し口の横幅が広くなるので、広げたくな人には不向き

 

廣瀬先生のデザイン・技術のこだわりポイントまとめ
✅外側法のデザインの注意点
└バーミリオンボーダーには必ず線を引く、絶対に赤唇は切らない(白唇側のみ切る)
※赤唇のぼやっとした唇本来の自然なフォルムがなくなるのを避ける
✅口角挙上の傷と、外側人中の傷は極力つなげないようにする(三又になるので拘縮が出やすくなる)
✅傷の横幅の長さは尾翼の真下ぐらいまで。メルクマールというわけではないが、赤唇にさえ入らなければ、大きな差はない
✅口角を上げたいだけでなく、横幅をそのまま広げたい、というニーズもある。
✅麻酔は限りなく少な目にする(先生の場合0.1ccから0.2㏄程度)※腫れやすい部位なので、デザインがわかりにくくなってしまう
✅あまり止血をしたくない。瘢痕拘縮を避けたいため。(ほとんど8割くらいの人はバイポーラとかを使うこともない)
✅仕上がりを決めるのは一針目が8割、デザインが1割、トリミングが1割。一針目を入れた時に開け閉めしてみて変な感じだったら、あとどれだけトリミングしてみても絶対に編になってしまう。そのため、一針目がおかしいと思った時点で必ずかけなおすこと。

綺麗に笑えるようになった画像はこちらが見ていてもうれしくなるような症例のご共有もあり、「真顔の時の口角を上げたい、というより、「笑いやすくしたい」という方が増えるといいなと思います。」とのことで、笑顔の時の変化・結果にこだわる先生のスタンスがよく伝わるセッションでした。

Session7:「『小野パイの作り方』(完全直視下豊胸マニュアル)」小野准平医師(LOCHIC CLINIC GINZA院長)

豊胸術と鼻整形のスペシャリストである小野准平医師。専用の手術器具から開発したオリジナルの豊胸術『完全直視下法』や、豊胸術の中でも難易度が高い術式の『デュアルプレーン法』を従来よりも患者様の負担がかかりにくい方法で執刀する医師です。
小野医師によるセッションのテーマは「完全直視下豊胸」

まずは、「完全直視下」に至るまでの、機材の変遷のお話。
旧来式の器具を例に挙げ、鈍的に、盲目的に術野を開くことについての問題点を指摘。
大胸筋下にバーティカルに走る血管や神経を見れないままに手術を行うことの危険性を指摘し、内視鏡下で見れるようになったことにより、これまで盲目的に行っていたのを、安全性が向上した。バイポーラで止血しながらちゃんと血管走行も直視しながら実施することが大切。ファインに剥離できるようになった。

しかし、他の内臓における内視鏡手術と比較し、結局は傷もつく豊胸手術において、「内視鏡手術をするメリットってなんだっけ?」と考え、発想を転換し、3センチほどの傷で、直視下にすることにしたとのことでした。
コロンブスの卵とはよく言ったもので、言われてみればまさにそうだと膝を打つ内容です。また、実際にこの方法は着想だけでなく、素晴らしい成果を上げることに成功しているということが、このあとの術中動画でもよく理解ができました。

▼セッション中に説明されていた器具や小野先生お気に入りのインプラントの展示

完全直視下豊胸のメリット
✅ミリ単位の正確な剥離
✅確実なデザインが可能になった
✅疼痛改善にも良いデータ出ている
✅BIA-ALCL(乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の予防観点からも有効
完全直視下豊胸で目指す状態
✅できるだけ自然に
✅できるだけ大きく
✅できるだけ痛くなく
✅美しいバストを作る

※術後の疼痛スコアを比較したものについても表示されましたが、現在小野先生オリジナルの直視法によってのデータなので、比較対象がapple to appleではないかもしれないと思います。(いわば、「小野パイ」か、「そうでない」か?)ただ、剥離を正しく行うことにより疼痛が減少されるということは証明されるデータでした。

特に、実際の術野を見ながらのオペ動画において、先生のおっしゃる完全直視下法の意味合いがよく分かったのは、特にここの部分。

▼NERO’s チェック!手術動画の見どころ
光源付きレトラクターにより視野が非常に見やすく、白い胸筋筋膜の部分、その上の乳腺を含んだエンベロープの境界を進んでいく。事前のマーキングをしたもともとのバージスラインのあたりまで剥離が進んでいる状態のところで一度止め、そこから先を直視下クーパー靭帯を超えてお腹のやわらかい部分が見えるまで切り開いていくあたりの動画が直視下法の魅力がわかりやすい工程動画でした筋膜の上の向こう側のエンベロープまではっきり見える=もともとのIMF(下乳のライン)の硬い部分を超えるあたりの動画は、直視下法でなければこれだけの精緻な剥離は難しいのではないかと素人の私から見ても理解できる素晴らしい動画でした。※副乳部分の脂肪吸引などもありました(副乳を取ることで綺麗な胸のラインができるそう)が、そこについては省略。

POINT:修正手術などの場合にも、直視法であれば出来ることが多くなる
例として、乳腺下にあるシリコンを抜いて、デュアルプレーン法に変更する際や、他クリニックでのインプラント豊胸を抜去して入れなおす場合などにも、この完全直視下法は大変有効であると考えられる。大胸筋の下から大胸筋の裏側から切って、カプセルの裏面もそのまま切ってカプセルの中に入る、といった複雑なオペの場合も、直視下法は有効。

そして、なななんと、手術動画を供覧していたあと、小野先生のお隣で器具を持ったりしていたアシスタントさんのドレスを脱がせると…
実はこのアシスタントさんが症例の患者さんであったという発表。その場には拍手が巻き起こる美しく自然なお胸で、「念願だった小野パイを手に入れたので、今年の夏はたくさん見せびらかしたいと思います」とのこと!
大きな変化なのに、自然な変化で、感動の症例となりました。

Session8:「雰囲気ではなく理論に基づいたわかりやすい麻酔〜美容外科医が知るべき麻酔のコツ~」
金山旭医師(東京美容外科麻酔科診療部長、LOCHIC CLINIC GINZA、CONTOUR CLINIC TOKYO)

ナショナルセンターで数多くの臨床・研究業務を経験し、現在は美容医療業界で活躍する金山旭医師。患者様が安心して手術を受けられ、外科医が高いパフォーマンスを手術で発揮できるよう、痛みが少なく質の高い安全な麻酔にこだわる医師です。
金山医師によるセッションのテーマは「美容外科麻酔」。

冒頭、どんな方たちに向けた麻酔のお話をするか?ということで、その場でQRコードを読み取り、アンケートを取る金山先生。

あなたは、自分で麻酔をかけて手術をしていますか?
YES 69%(45名)
NO 31%(20名)

ということで、「普段は自分で静脈麻酔をしている」というドクターに向けてのコンテンツとなりました。

これまでのセッションへの興味の温度感と少しトーンが違う、「全員が当事者」という不思議な緊張感に包まれたセッションだったのが印象的です。それぞれのドクターが専門分野として学んできたこれまでのセッションと異なり、麻酔科、というものに焦点が当たることがこれまでに頻度としては多くなく、おそらくそれぞれのドクターが自己流であり、「ヒヤっとした経験」や、「手探りでやってみた経験」といったものを持っているのだな、というのが、会場から感じられる雰囲気でした。

だからこそ、体系的に学びたい、見直したい、という意欲が感じられ、専門的で真剣な雰囲気。静脈麻酔の理論と実践のバランスが重要。

細かな投与量など専門的なことについては、一般の方の目にも留まるNEROのサイト特性上、記載できないこともありますが、全体を通じて学んだポイントを以下にまとめます。
1.呼吸モニタリングの具体的な方法やその重要性
2.麻酔薬の選択や使用方法

特にプロポフォールとケタミンの組み合わせの効果を理解。
3.自動投与システム(TCI:標的制御注入)の利点について
4.鎮痛と鎮静のバランスを取ることの重要性
そして最後に、コンビネーション麻酔(レミマゾラムとプロポフォール)の効果。

また、麻酔事故の未然防止策についても多く共有され、具体的な知識を得ることができました。

一部、面白いエピソードとしてあったのが、とあるクリニックでの投与方法マニュアルについての考察。ボーラスを繰り返すマニュアルの投与方法だが、これについて、効くまでのタイムラグや血中濃度との兼ね合いを示し、期待する効果を超えた分は無駄な投与になっているといった麻酔の効きに関する波形が示された。
※スライドは金山先生の投影資料

そうした事例を示した中で、血中濃度の予測シュミレーションに従って自動投与をしてくれるシステム(TCI)について共有され、「これはいい」と、多くのドクターがスライドの写真を撮っていました。(※このセッションは撮影OK)

TODAY’S BRIEFING
呼気二酸化炭素見てないの? カプノグラムは必須のモニターである
鎮静と鎮痛、どっちが大事? 鎮痛優先の鎮静- Analgesia First sedation
薬物の投与法、ボーラス繰り返す? Target Controlled Infusion(TCI)という投与方法
コンビネーション麻酔? プロポフォール×レミマゾラムでおいしいとこどり

最後に、先生がお話された「We are on the same boat」という、台湾の骨切りで有名な医師から言われたというエピソードは、セッションに参加されていない方でもぜひ覚えておいていただきたいお話です。その言葉の意味について。

We are on the same boat=僕たちは、同じ船に乗っている。

業界全体で事故が起きた際に、誹謗中傷しあったり、事故を特定の医院のせいにするのではなく、みんなで業界全体を高めていくことが大切であるということ。台湾でもその時、ちょうど、麻酔による事故が起きたタイミングであったが、業界全体で「ではどうしていくか」ということについてしっかりと話し合いがあった、という話を聞き、日本でもこうしたカッティングエッジなどをきっかけに、そうした業界全体を高めていく、同じ船に乗っているのだという意識での取り組みをしていくことが重要である、というお話が、大変胸に響きました。

編集者コラム

素晴らしいセッションの数々ではありましたが、
果たして、カッティングエッジは、参加費を上回る価値があるのか…?
この問いについて、ガラパーティでの会話などももとに、少し考えるきっかけがありました。登壇者側のドクターから聞いた、「自分の発表でこの会費以上の価値を還元できたといえるのか?と登壇前に悩んだ」「この時間が退屈なものでなく、学びになるのか?」という話。また、観覧席にいた某有名クリニックの若手ドクター同士の「ウチと全然違うわ」といったつぶやき。外科という領域だからこそ、教わってきた師匠の背中が唯一無二の術式と思っている、もしくは一番いい方法だと思っている若手ドクターも多い中、他の学会では得られない、「こんな考え方もあるんだ」「こんな方法があるんだ」という気付きが、先輩や師匠からの押し付けでなく、自分の内から発せられる言葉として新しい気付きを得られるセッションであること。

なぜか?
それは、それぞれのドクターが、みな、実際の診療の前線で新しいコロンブスの卵に向き合っている人達だからこそなのだと感じます。
それぞれのドクターが、それぞれのクリニックで、自分のスタッフと、目の前のお客様に最大限向き合った結果。己の得意分野にまい進する中で見つけた、小さな工夫や、変化の兆し。
それを持ち寄ることで、私たちの一緒に乗った美容医療業界というこの船は、結果として、大航海に出ることができるのかもしれません。

「We are on the same boat=僕たちは、同じ船に乗っている。」

金山先生のご共有くださった、台湾の友人たちからの言葉を、改めて、このレポートの結びに使わせていただきます。

今後のカッティングエッジにも期待大!

ナビゲーターの堀田医師によると、カッティングエッジの今後の展開として海外、まずはアジアでの開催も視野に入れているそうです。アジアで開催して話題になったセッションを逆輸入して、国内開催のカッティングエッジで再度そのセッションを取り上げるという構想もあるのだとか。
もちろん国内での取り組みも、より充実させたものにするため、次回の開催に向けて早速テーマ設定などに多くのドクターが積極的に議論に取り組んでいるそう。
革新的な取り組みでさらなる進化が期待されるカッティングエッジから、ますます目が離せません。新しい技術や知識の共有による美容医療業界の発展を、NEROは今後も応援しています!
次回も楽しみにしています!