2025年最新版!美容医療のトラブル・健康被害にはどんなものがある?厚生労働省に寄せられた被害や相談の内容をチェック

2025年最新版!美容医療のトラブル・健康被害にはどんなものがある?厚生労働省に寄せられた被害や相談の内容をチェック

自分らしい美しさを実現できる美容医療。近年では、脱毛や二重整形といったメニューを中心にニーズが高まっていますが、実はその裏では健康被害に関する相談が増加しています。今回の記事では、美容医療で起きやすいトラブルや健康被害について詳しく解説。独立行政法人国民生活センター(以下、国民生活センター)や厚生労働省がまとめた2024年の事例をもとに、トラブルを未然に防ぐためのポイントについても触れていきます。美容医療の市場が拡大する今、改めて施術のリスクについて考えていきましょう。

1.美容医療トラブルの最新状況を知る

近年、消費者から美容医療を巡る相談が急増しています。国民生活センターによれば、美容医療サービス*のトラブルや健康被害に関する相談件数は、2019年度までは2,000件前後で推移してきましたが、その後右肩上がりで増加していき、2023年度には6,000件を突破。2024年度に関しても9月時点で2,300件を超える相談が寄せられており、今後の動向が注目されています。
このような状況を受け、厚生労働省では2024年6月28日から計4回にわたって「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催。専門家などと議論しながら、トラブルの原因分析と対策を進めています。

*医師による診療の中で「専ら美容の向上を目的として行われる医療サービス」を指す。医療脱毛、脂肪吸引、豊胸手術、二重まぶた手術、包茎手術、審美歯科などを主な施術(医学的処置、手術及びその他の治療)とする。

健康被害が増えている施術は?

厚生労働省の調査によれば、美容医療サービスを巡る相談内容は契約内容や料金、アフターサービスに関するものなどさまざま。その中には、健康被害を伴う「危害」に関する相談も含まれています。

2023年度、最も多く発生した危害に関する相談は「皮膚障害」。具体的にはアンチエイジング点滴やボトックス注射、ヒアルロン酸注入、二重整形による肌の腫れや赤み、発疹などが報告されています。次いで、ハイフや医療脱毛による「熱傷」、GLP-1受容体作動薬などの内服治療がもたらす「消化器障害」、クマ取り治療や糸リフト後に発症しやすい「感覚機能の低下」「神経・脊髄の損傷」が多く見られました。

中でもヒアルロン酸注入をはじめとするフィラーは、海外でも安全性が問題視されている施術の1つ。腫れや発赤、痛みに加えてしこりや血管閉塞などの重篤な合併症が発生するリスクがあります。血管閉塞が起きれば組織に酸素や栄養が届かなくなるため、施術部位によっては失明や脳卒中を発症することもあるそう。2024年11月に東京都内で開かれた「AMWC(Aesthetic and Anti-Aging Medicine World Congress) JAPAN 2024」では、オーストラリアで発足した美容医療救命救急チームAMETが、合併症の危険性について注意を促しています。

消費者から寄せられた具体的な相談事例をチェック

出典:photoAC

ここでは、全国の消費生活センターや厚生労働省に寄せられた相談事例を見てみましょう。

危害に関する相談

“美容クリニックで顔のリフトアップの施術を受けたところ、出来栄えが左右非対称となり、傷が残った。返金を求めたい。”(※1)

“医療レーザー脱毛で襟足にやけどの跡が残り腫れて皮膚から膿が出た。クリニックに治療費などを請求できるか。”(※2)

“画像専用SNSで見たクリニックの予約を取り、二重まぶたの埋没法の手術を受けたが、痛みや腫れがひどく結局抜糸した。返金してほしい。”(※1)

“美容クリニックで涙袋にヒアルロン酸を注入する施術を受けたら、片目の周囲が腫れて痣(あざ)としこりができた。美容クリニックにどのようなことを求められるか。”(※1)

美容医療サービス全般に関する相談

“美容外科に包茎手術のカウンセリングに行くと、当日か翌日に手術を受ければ安くなると勧められ、当日手術を受けた。冷静に判断できず承諾したが、高額なので減額してほしい。”(※1)

“二重まぶた手術の相談に行き、当日中の手術を強く勧められて手術を受けたが、金額や仕上がりに納得がいかない。一部で良いので返金してほしい。”(※2)

“美容クリニックで顔のシミ取りレーザー治療を体験で受けたあと、モニターになれば安くなると勧誘され10回コースの契約をしたが説明に不審な点がある。解約したい。”(※2)

このようなトラブルが発生した背景にあるのは、安全な医療体制や適切な診療プロセスが提供されていないこと。診療にあたる医師のスキルが不足しているだけでなく、一部では無資格者による診察や施術が行われていることも問題視されています。
実際に、厚生労働省が美容医療で何らかのトラブルに巻き込まれた患者600人に行った調査(※3)では、「美容医療の施術を誰から受けたか?」という質問に対し、医師と答えたのは57%。次いで20.1%がカウンセラー・受付スタッフと回答。7%は「誰から施術を受けたか分からない」と報告されています。
医師以外のスタッフによって診察や施術が行われることや、医師の指示がないままに無資格者が施術や薬を処方することは明らかに違法行為ですが、現状では不適切な診療行為を取り締まる手立てがありません。その理由は、医療美容が本来治療の必要がない患者に対して行われる自由診療だから。標準化されていない診療行為は医事関係法令の適用関係が不明瞭であり、医療機関に定期的な立ち入り検査を行い、安全管理措置を確認するのが難しいのです。このような美容医療の性質が、トラブルや健康被害を解決しにくくしています。

2.相談件数が増えた背景に潜むもう1つの原因

美容医療サービスのトラブルや健康被害が増加しているもう1つの理由は、美容クリニックの急増によるもの。2020年1月に国内ではじめて新型コロナウイルスの感染者が確認されて以降、国民の間ではマスクをつける生活が当たり前になりました。
このような生活環境の変化を受け「ダウンタイムを気にせず施術を受けられる」と、美容医療に興味を持つ人が増加。実際に、美容外科を標ぼうするクリニックが2020~2023年までの3年間で4割ほど(※4)増えており、世間の美に対する意識が変化した時代であることがうかがえます。
しかし、増えたのは医療法人が設立するクリニックだけではありませんでした。異業種から参入したオーナーが、一般社団法人としてクリニック経営を始めたのです。一般社団法人とは、人の集まりによって設立できる営利を目的としない団体のこと。「管理者の医師がいる」「非営利性が徹底されている」などの要件を満たせば、クリニックを設立できるのが特徴です。
2023年末までに一般社団法人として開設されたクリニックの数は、実に298件。5年間で6倍に増えていることが明らかにされています。さらに、その6割以上で美容医療サービスが提供されており、業界では新たな開業の道として広がりを見せているとのこと。しかし、その実態は医師が名義だけ貸していたり、美容医療の経験がほとんどない医師のみで構成されていたりと、診療体制に問題があるクリニックが散見されます。
また、一般社団法人には監督官庁がありません。
医療法人の規制対象外となるため、通常のクリニックのように業務内容を報告する義務もなし。どのような事業を日ごろ行っているのか監視する仕組みがなく、定款*の変更や分院展開も容易です。
このような一般社団法人の体制を考慮すると、健康被害などのトラブルにつながりやすいことは明らか。加えて、美容医療という標準化されていない診療行為が安全性を担保しにくくするという側面もあります。もちろんすべての一般社団法人が不当な経営を行っているわけではありませんが、美容医療と組み合わさることで、第三者の目が届きにくい状況を作り出したのです。

*会社の基本情報や規則など、経営に関するルールが記載された書類。

3.トラブルを未然に防ぐための方法は?

出典:photoAC

美容医療サービスで健康被害などのトラブルを防ぐには、信頼できるクリニックを選ぶことが大切です。

クリニック選びで重視したいポイント1|虚偽広告や誇大広告はないか

医療には、Webサイトやメルマガに使ってはいけない表現があります。広告規制に関するルールは、美容医療サービスにおいても同様です。例えば医療法で禁止されているものとしては「絶対安全」「必ず成功する」といった虚偽広告、「最高の医療を提供する」「国内一の実績を有する」などの比較優良広告、「〇年間脱毛し放題」「回数制限なし」のような誇大広告があります。WebサイトやSNSで広告規制にあたる表現をしているクリックには要注意。クリニックが過去に問題を起こしていないか、提示された施術内容に不審な点がないかを細かく確認したうえで、慎重に施術を検討するようにしましょう。

クリニック選びで重視したいポイント2|副作用やリスクについて十分な説明があるか

医療行為には、リスクや副作用がつきもの。とくに美容医療の分野においては、厚生労働省から承認されていない施術が数多くあります。承認されている医薬品の場合は、健康被害があった際の救済制度がありますが、未承認の場合は救済対象外となることも。そのため、美容医療を受ける際は施術によって得られるメリットのみでなく、副作用や合併症、後遺症のリスク、発症確率などについてしっかりと確認しておきましょう。
カウンセリングは、その施術にどのような効果とリスクがあるかを医師と患者がお互いに共有する場でもあります。しかし、残念ながら多額の宣伝費を回収するために、説明に十分な時間を割かないクリニックがあるのも事実です。副作用やリスクについての説明がなく「大丈夫です」「任せてください」と言うだけのクリニックは避けたほうが良いでしょう。

クリニック選びで重視したいポイント3|契約を急かしてこないか

美容医療はケガや病気を治療するためのものではないため、基本的に緊急性はありません。しかし、相談事例で紹介したように、中には当日や翌日などの即日契約を強く勧めるクリニックもあるようです。美容医療は高額な費用がかかるからこそ、じっくりと検討を。自分にとって本当に必要な施術かどうかを冷静に判断するには、その場で即決しないことが重要です。もしかしたら、医師の勧める施術以外にも自分に合った施術が見つかるかもしれません。健康被害以外にも、契約に関するトラブルが相次いでいます。家族や友人などの信頼できる人に相談しながら、自分のタイミングで決断しましょう。

【NERO’s Check Point】
契約時に確認すべきこととしては、

  • 施術の効果や起こりうる副作用・リスクについて
  • 薬や医療機器の安全性・有効性
  • ほかの選択肢の有無
  • 施術費用・回数
  • 支払方法(都度払いがあるかなど)
  • 解約条件
  • 医師との相性

などがあります。
また、特定の美容医療サービスでは、契約期間が1ヶ月以上、契約金額が5万円を超える場合において、特定商取引法に定める特定継続的薬務提供に該当します。契約書面の受け取りから8日間はクーリングオフができるため、契約後に不安を感じた場合は迷わず利用しましょう。

<コラム>被害に遭ったときはどこに相談すればいいの?

美容医療サービスで万一トラブルに巻き込まれたときは、最寄りの医療安全支援センターや消費者ホットラインに相談できます。医療安全センターは、医療に関する苦情・心配などさまざまな相談を受け付ける機関です。
一方、消費者ホットラインは、契約や解約条件に関するトラブルを主に扱っています。年末年始を除いて原則毎日相談でき、電話番号は全国共通の188番です。
また、医療事故に関する損害賠償請求を検討するのであれば、弁護士に相談するのもおすすめ。
医療訴訟に強い弁護士であれば、トラブルの内容に応じて適切なサポートを受けられます。「強引な勧誘で高額な契約を結ばされた」「リスクや副作用について十分説明してもらえなかった」「クリニック側に相談してもまともに対応してもらえない」など、幅広い相談を受け付けているのが特徴です。費用はかかりますが、相談先の1つとして覚えておきましょう。

まとめ

美容医療は、新型コロナウイルスの流行をきっかけに急速な成長を遂げています。しかし、忘れてはいけないのは、医療行為には副作用やリスクがつきものということ。実際に美容医療サービスに関する健康被害やトラブルは右肩上がりで増加しており、決して対岸の火事というわけではありません。厚生労働省も美容医療に関する規制強化を進めていますが、なによりも大切なのは、施術内容について正しく理解し、自分が納得したうえで契約すること。美容医療で自分らしい美しさを実現できるよう、信頼できるクリニックや医師を自身の目でしっかりと見極めましょう。

【参考】
※1独立行政法人国民生活センター 調査データ

※2政府広報オンライン 調査データ

※3厚生労働省 調査データ

※4厚生労働省 令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況

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