きずときずあとのクリニック 豊洲院院長 村松 英之先生へインタビュー。形成外科専門医として、重いケガややけど、口唇口蓋裂など多くの症例を担当してこられた村松先生。傷や傷跡でどこを受診したら良いか分からない方に安心して治療できる場所を提供したいと、クリニックを開院されました。そんな村松先生に傷や傷跡に注目した理由や患者様への寄り添い方、美容医療業界への想いなど、詳しくお話を伺いました。
INDEX
ドクターズプロフィール
きずときずあとのクリニック 豊洲院 院長
村松 英之(むらまつ ひでゆき)先生
さまざまな病院で形成外科専門医として多くの症例を担当したのち、傷跡の治療方法を探求。傷と傷跡の治療をメインに、形成外科と美容外科を診療する「きずときずあとのクリニック 豊洲院」を2017年に開院。2023年には「きずときずあとのクリニック 銀座院」も開院する。「日本自傷リストカット支援協会」の代表理事も務めている。
| (経歴) 2000年 昭和大学医学部 卒業、昭和大学 形成外科学講座 入局、横浜労災病院 臨床研修 2001年 福岡和白病院 形成外科 2002年 西尾市民病院 形成外科 2004年 埼玉県立小児医療センター 形成外科 2005年 聖マリア病院 形成外科 2006年 太田西ノ内病院 形成外科 2007年 前橋赤十字病院 形成・美容外科 2015年 昭和大学形成外科 2016年 KK Women’s & Children Hospital Plastic Surgery(シンガポール)留学 2017年 きずときずあとのクリニック 豊洲院 開院 2023年 きずときずあとのクリニック 銀座院 開院(資格・所属学会) 日本形成外科学会 形成外科領域専門医 日本熱傷学会専門医 日本創傷外科学会専門医 日本形成外科学会 皮膚腫瘍外科分野指導医 日本形成外科学会 小児形成外科分野指導医 日本形成外科学会 形成外科領域指導医  | 
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医師としての背景 ~子どものころの夢を努力で叶える~

―――まずは、医師になったきっかけを教えてください。
子どものころアトピー性皮膚炎に悩んでいたんです。そのころはまったくこの病気は知られておらず地元の病院をいくつも受診しましたが、効果的な治療を受けることができませんでした。常に身体中を掻きこわしその跡が黒いのもコンプレックスでしたし、治療のためと言われて、毎日食卓には玄米が並び、一人だけ給食の時は弁当を持って行くことも辛い経験でした。このような経験がきっかけで小さい頃から医師になりたいというイメージは持っていました。
しかし、両親が離婚して父親に引き取られるなど、家庭があまり良い状態ではなかったこともあり、中学生のときの成績は下から数えた方が早いくらいだったんです。そんな状態に危機感を覚えて中学生なりにいろいろと考え、運動も得意でないし、せめて勉強を伸ばしたいと一念発起。教育熱心な母親のもとに行き、真面目に勉強に取り組むようになりました。勉強を積み重ねて一浪して、何とか医学部に進学したという感じです。
―――たくさんある科の中から形成外科を専門に選んだ理由を教えてください。
手術の手技に魅せられたことが、形成外科を選んだ一番の理由です。外科や整形外科など手術をする診療科はほかにもありますが、悪くなったところを取り除くのが一般的。しかし、形成外科では失った部位の再建など、今ないものを生み出すための治療ができます。そういった特殊性に興味を惹かれて、形成外科に進むことを決めました。大学6年のときの形成外科の授業で、担当の助教授が形成外科の面白さやすごさを話してくれたことも、形成外科に入るきっかけの1つになりましたね。大学卒業後は昭和大学形成外科に入局し、その後もさまざまな土地で研修を積みました。
村松 英之先生の情熱 ~やけど治療とシンガポールでの学びが傷跡に注目するきっかけに~

―――そこから村松先生が形成外科専門医として活躍していく中で、傷や傷跡に注目していくことになったきっかけを教えてください。
群馬県にある「前橋赤十字病院」で部長として働いていたとき、全身熱傷の患者様を多く引き受けていたんです。そこで、重篤な患者様に自家培養表皮を用いた治療をいち早く行いました。僕は新しいことを取り入れるのがすごく好きなんです。1つのデバイスや技術が入ってくるだけで、自分たちの技術を一気に10年分くらい先に進めることができます。先進技術導入のために、必死でスキルも磨きます。
自家培養皮膚を用いた治療のおかげで、全身熱傷の死亡率も減ったのですが、印象的だったのが傷跡も良くなったことです。全身熱傷は、傷跡が治ったあとでも痛いし痒いし熱いしで、また傷ができるなどずっと悩み続けるケースが多い。にもかかわらず、傷跡治療といえば、ステロイドやヘパリン類似物質製剤を塗るくらいしか選択肢がなく、それまで全身熱傷の傷痕の経過に十分に目を向けられていませんでした。ところが、自家培養皮膚を用いた治療では生存率が上がるだけでなく、その後の傷跡が目を見張るほど良くなったんです。その傷跡への効果の高さに驚いたと同時に、傷跡を治療する方法がもっとあるんじゃないかと思ったんです。
そして最初に注目したのが、フラクショナルレーザーです。初めて実際にレーザー治療を見たのは、海外留学で行ったシンガポールの小児病院でした。シンガポールではやけど治療で当たり前のようにフラクショナルレーザーを使っていたんです。このような治療ができれば傷痕も治せるのかなと考えましたが、保険診療では対応していなくて。日本にも導入して、やけどなどで悩んでいる患者様にも治療してあげられるような環境を提供したいというところから、開業のイメージが湧きました。
また、海外留学で驚いたのは、形成外科の認知度の高さです。海外ではケガややけど、傷跡などで悩んだ際は形成外科を受診することが一般的です。対して、日本では「傷に悩んでいるけれど、どこ行ったら良いか分からない」という患者様をたくさん見てきたので、その差をすごく感じましたね。傷や傷跡で悩む方のクリニックを開業することで、形成外科の治療を広めることができないかと考えたのも、開業に至った理由の1つです。
村松 英之先生の強み ~患者様に寄り添い正面から傷跡に向き合う~
―――「きずときずのあとのクリニック」という名称は分かりやすいですね!
傷や傷跡を治療できることを知って安心して治療を受けてもらうため、このクリニック名にしました。傷と傷跡を押し出しているクリニックは全国にもありませんし、敷居が低くなるのではと思ったんです。尊敬する先輩である野田 弘二郎先生の「肌と爪のクリニック」にも大いに影響を受けています。すぐにうまくいったわけではないですが、分かりやすいクリニック名のおかげもあってか、広く知られるようになっていきました。もし“村松クリニック”にしていたら、来院していない患者様は多いと思いますね(笑)
―――患者様に寄り添うために大事にしていることはありますか?
傷や傷跡の治療は、前提としてきれいに消えるわけではありませんし、治療には時間もかかります。「きずときずのあとのクリニック」という名前だからこそ、患者様の期待値が上がってしまう…その期待に応えられないケースがあることは申し訳ないのですが、自分ができるのはここまでだよ、という説明はきちんとするようにしています。
―――美容外科で手術したあと、傷跡修正に来られる患者様も多いと伺いました。
当初は美容外科手術の傷跡修正はお断りしていたのですが、お腹の脂肪吸引で皮膚が壊死してしまった患者様が紹介で来られ、ポテンツァで治療して良くなった症例を経験しました。自分の経験や知識が美容外科手術の傷痕修正にも適用できると感じ、困っている方を救えるならと2年くらい前から診るようになりました。
―――2023年に開院した銀座院は、13歳以上の患者様の診療をメインとしたクリニックと伺いました。銀座院は美容外科手術の傷痕修正の患者様が多いのですか?
豊洲院は、転んでケガした子どもの傷を心配した親御さんが連れてくるというケースが多く、待合室は一見小児科のようになっています。そんな中に美容手術後の患者様やリストカットした患者様もいるという状態で、傷跡治療に高いお金を払っている患者様になんだか申し訳なさを感じ…。ゆったりとプライベートな空間で待てると良いのかなと考えた末、13歳以上の患者様を診る銀座院の開院に至りました。結果、美容外科手術の傷跡修正で来られる患者様が増えたという感じです。
―――村松先生が治療するうえで大事にしていることを教えてください。
美容外科手術の傷跡修正の患者様に限らず、傷や傷跡の治療において傷のバックグラウンドはさまざまですが、それを否定することは絶対にしません。例えば、美容外科の手術を受けたこと自体を否定したり、執刀した先生を否定したりしてしまうと、患者様を傷つけてしまうことになると思うんです。子どもをクリニックに連れてくる親御さんも、必死で病院を探して当院にたどり着くことも多い。リストカットにおいても、原因はさまざまですが、自分も家庭環境で問題を抱えていた過去もあり、正直気持ちが分かる部分もあるんです。
せっかく当院を頼ってきてくれた患者様のこれまでを否定することはせず、今までしてきたことは全部間違いではないというスタンスで、これからさらに良くするためにはどうするか考えていくことに注力しています。
―――先生のお人柄をヒシヒシと感じました…!今後のビジョンや夢はありますか?
僕は、もっともっと傷跡の治療を身近にしたいと考えています。傷跡をきれいにしたいというときに、どこに行けば良いか分からない方も多いんです。傷跡ならここ!というように、迷わない状態が提供できれば良いなと思っています。今のところは東京にしかクリニックはありませんが、日本各地に「きずときずのあとクリニック」を作りたいというのが自分の夢ですね。
美容医療業界の今後の動向と期待 ~傷痕の知識を深めて患者様に寄り添う姿勢を~

―――美容外科手術の傷痕修正が増えてきたのはなぜだと思いますか?
美容外科手術の傷跡修正が増えてきた理由は、美容医療が大衆化していること、患者様の傷跡についてのリテラシーが高まっていること、難易度の高い鼻周りの手術が増えていること、形成外科の知識を持たない美容外科医が増えていること、この4つが主な要因だと思います。美容医療への関心が高まり情報も得やすいため、患者様の知識も肥えてくる。その反面、きちんと知識を備えていない美容外科医が増えてしまうとどうしてもトラブルが起きやすくなります。
美容外科手術の傷跡修正で当院に来る患者様の中で多いのは、ほくろの炭酸ガスレーザー治療です。炭酸ガスレーザーは赤みやへこみができ、半年~1年くらい治りません。しかし、来院される患者様は、他院で手術を受ける際に傷痕の説明をされておらず、心配になって受診されるケースがほとんどです。医師の経験からどのような傷痕がどのくらいの期間できますということまできちんと伝えると、患者様も安心でき、満足にもつながるのではないでしょうか。
―――美容医療業界の今後について、村松先生の形成外科医としての意見をお聞かせください。
美容医療業界の質を高めるためには、美容外科に携わる先生方が傷跡に対する知識をある程度持っておく必要があると考えます。患者様は傷痕に対するリテラシーが上がっていると感じますが、残念ながら美容外科の先生方はあまり傷跡に対するリテラシーが上がっていないというのが私の印象です。
どんな風に傷跡ができてどのように治療していくべきか、どういうときに傷跡が肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)になりやすいのかといったことをきちんと理解し、患者様にもお伝えできればトラブルも少なくなる。傷跡は手術後すぐではなく、1ヶ月以上経ってから出てくるものなので、手術してそれで終わりではなく、3ヶ月後、半年後と継続的に患者様を診るようにしてしっかりフォローしていく姿勢も大事かなと思います。
私の知識や経験をもとに、傷や傷跡についての知識を広げて先生方の傷痕に対するリテラシーを高めていくお手伝いができたらと、情報発信にも力を入れています。
読者や患者様に向けて伝えたいメッセージ ~傷痕で悩む方が減ることを願って~
―――最後に、患者様に向けて何かメッセージをいただけますでしょうか。
せっかくきれいになるために美容クリニックに行くなら、むやみに傷跡で悩むようなことにはなって欲しくありません。美容施術を受けたいとなったときに多くの方が悩むのが、どこのクリニックを選べば良いかということだと思います。私としては、形成外科の知識のある医師に対応してもらうことをおすすめしたいです。
もちろん形成外科の知識がなくても美容外科として研鑽を積み高い技術を持つ先生方も多いことは承知しています。しかし、鼻周りなどの難易度の高い手術の場合は、形成外科の知識が大きな差を生むと思うので、悩んだときの判断材料の1つにしていただければうれしいです。また、傷や傷跡で困ったことがあれば、お気軽にご相談ください。
―――若手医師に向けても一言お願いします。
傷跡について学会などで発信していて、傷跡の治療について話ができる先生も増えてきましたが、まだ注目度は高くありません。しかし、傷痕に少し目を向けてみると、傷がどういう流れできれいになるか理解できるようになります。傷跡が落ち着くまでには半年くらいかかるので、手術したあとそこまで目をかけてあげられると患者様のためにもなりますし、自分の成長にもつながると思います。傷や傷跡悩む患者様が少しでも減るよう、一緒に頑張っていきましょう。
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ポテンツァ(マイクロニードルRF)
【治療期間および回数の目安】
1~3カ月に1回、3~5回程度
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1回 約¥44,000~ ¥148,000
※施術部位・施術範囲によって異なります。
【リスク・副作用等】
出血、赤み、色素沈着、炎症、腫れ、一時的なニキビなど
【注意事項】
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-妊娠中および妊娠の可能性がある方、授乳中の方
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【未承認医療機器を用いた治療について】
・ポテンツァの治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
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・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国において、治療に伴う重大な副作用の報告はありません。
・万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
【治療の内容】
フラクショナルレーザー(パールフラクショナル)
【治療期間および回数の目安】
2~3ヵ月に1回のペースで、約5回の治療を推奨
※治療期間や回数等は個人差があります。
【費用】
1回 約¥1,100~¥33,000
※施術部位・施術範囲によって異なります。
【リスク・副作用等】
赤み、やけど、色素沈着、色素脱失、水泡形成など
【注意事項】
・次の方は、施術をお受けいただけません。
-使用する薬剤の成分にアレルギーがある場合
-妊娠中・授乳中の場合
-重度の日焼けがある場合
-光線過敏症がある場合
-光感受性が高くなる薬を服用している場合
-ヘルペス疾患の場合
-重度の炎症や傷がある場合
-肝斑がある場合
※詳細については医師にお尋ねください。
【未承認医療機器を用いた治療について】
・フラクショナルレーザーの治療には、薬事承認を取得した使用目的とは異なる治療が含まれている可能性があります。
・治療に用いる医薬品および医療機器は、医師の判断のもと、個人輸入手続きが行われています。個人輸入における注意すべき医薬品等に関する情報は、下記をご参考ください。
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/purchase/index.html
・薬事承認を取得した製品を除き、同一成分や性能を有する他の国内承認医薬品および医療機器はありません。
・諸外国において、治療に伴う重大な副作用の報告はありません。
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