“Z世代”と呼ばれる若い世代にとって、美容整形は「隠れてするもの」ではなく、「自分磨きのための手段」。以前はネガティブでデリケートなイメージの強かった美容医療が、より身近でポジティブなものへと変化しつつあります。
その一方で、SNSでは美容医療のキラキラした成功体験や魅力的な広告が目につきやすくなり、若者が正しい知識を持たないまま不適切な施術を受けてしまうといったケースも。
この記事では、Z世代が美容医療に抱くリアルな心理を紐解きながら、その裏にあるリスクや美容医療の在り方について考えていきましょう。
Z世代が美容医療に抵抗が少ないのはなぜ?
Z世代とは、主に1990年代半ばから2010年代初め頃に生まれた若い世代のことを指します。
彼らが生まれたのは、デジタル技術やインターネットが普及し、SNSが日常的ツールとして爆発的に広まった時代。また、世界的な新型コロナウイルスの流行を経験した“コロナ世代”でもあります。
こうした環境で生まれ育ったZ世代は、その上のY世代やX世代との価値観の違いが注目を集めることも。それは、美容医療においても例外ではありません。
こちらは、美容医療の⼝コミ・予約アプリを運営する株式会社トリビューが行った「美容医療に対する意識調査」の結果です。
Z世代(1995~2010年生)とY世代(1981~1994年生)、X世代(1964~1980年生)の男女49,499人を対象に「美容医療全体に対するイメージ」を聞いたところ、Z世代だけがポジティブなイメージを持つ人が多いという結果に。
若い世代にとって美容医療は、「隠すべき後ろめたいもの」ではなく、スキンケアやヘアケアなどと同じような「自分磨きのための手段」の1つとして、前向きに捉えられているようです。
では、なぜZ世代はその上の世代と比べて美容医療への抵抗感が少ないのでしょうか?その理由は彼らが育ってきた環境の影響が大きいのではといわれています。
画面の中の自分が“本当の自分”|自撮り加工が当たり前の時代
Z世代が自分の外見を気にし始める年齢にさしかかった頃、世の中には高機能な画像加工アプリを搭載したスマホがすでに存在していました。
彼らにとっては自撮り写真を理想の姿へと加工してSNSにアップするというのは当たり前のこと。加工後の自分の姿を見慣れている、というのもこの世代の特徴です。
こうした加工アプリの普及によって生じるのは、思い通りに補正された自分の姿と現実の姿とのギャップ。その差が大きければ大きいほど違和感を強く抱くようになり、美容医療を受けるきっかけになる人も少なくありません。
近年ではクリニックで施術を受ける際、芸能人や有名人の写真ではなく、加工した自分の写真を持ち込む若者も増えているのだとか。
普段から加工アプリを使っているZ世代は自分の顔を客観視し、「顔のここを変えたらもっと可愛くなれる」とセルフシミュレーションするのも得意。
日常的に加工していると、補正後の自分=“本当の自分”という心理も働きやすくなると考えられます。
美容医療は芸能人のようなまったくの別人に生まれ変わるものではなく、加工済みの自分と現実とのギャップを埋めるごく自然なアップデートとして受け入れられているようです。
コロナ禍も美容整形へのハードルを下げる要因に
コロナ禍によるマスク生活も、Z世代の間で美容医療へのハードルが下がった要因の1つ。
マスクで顔の下半分が常に隠れる生活、リモートワークやリモート授業の普及によって、ダウンタイム中の顔を誰にも見られなくて済む、というのがコロナ禍の美容医療人気を加速させました。
リアルな体験談も!SNSが美容医療の情報収集源に
以前は、美容医療の情報を得るためにはクリニックのホームページやインターネット検索、友人や知人からの紹介などがメインでした。
しかし今では、SNSが主な情報収集源。クリニックが発信するオフィシャルな症例だけでなく、成功例や失敗談も含めたリアルな体験談、術後の経過を簡単に見ることができます。
昨今ではSNSで整形をオープンにする有名人も多く、今後はますます情報があふれる時代になることでしょう。
こうしたSNSでの情報共有文化は「みんなやっているから大丈夫」という安心感につながりやすく、Z世代の美容医療に対する心理的なハードルを下げることにつながるといわれています。
SNSと自己肯定感:Z世代を取り巻く他者との比較と承認欲求

Z世代の中には美容医療の沼から抜け出せなくなり、依存のような状態になる人もいます。そこには、SNS時代特有の価値観が影響しているようです。
「いいね!」が可視化する自分の価値
“SNSネイティブ”と呼ばれるZ世代は、他の年齢層に比べて承認欲求が強くなる傾向にあるようです。また、世の中の動きとして「多様化」が注目される一方で、他人の反応を気にする人が多いのもZ世代の特徴の1つ。
例えば、自撮りをSNSにアップするときには「加工した自分じゃないと見せられない」という心理が働き、その写真に「いいね!」がつくとますます加工済みの姿こそが“正解”だと信じるようになる、こうした状況が承認欲求に拍車をかけることになります。
「何もしなくても元からきれいな人」を肯定し、つくられた美しさを否定する、という価値観はもう過去のもの。
今では、加工アプリや美容医療によって外見を整えることは“美しくなるための努力”として肯定的に捉えられる時代です。こうした世の中の変化も影響し、若者にとって美容医療の体験談を発信することは、承認欲求を満たすための手段として捉えられているのかもしれません。
自己肯定感の満たされなさを埋める整形依存
美容医療がポジティブに、オープンに語れることとして捉えられるようになったことは、良い面もあれば懸念すべき点もあります。それは、承認欲求を満たそうとして整形依存、美容医療中毒のような状態に陥ってしまうこと。
Z世代はSNSが日常的になりすぎたことで、常に他者との比較や承認欲求に振り回されやすい状態に。その中で自己肯定感の低さに苦しみ、コンプレックスをなんとか埋めようと整形を繰り返してしまう人もいます。
また、美容医療が身近になったことで「セルフケアよりも早く悩みを解決したい」と考える若者が増加。その結果、必要のない施術を受けたり、結果を求めすぎてしまったりするケースもゼロではありません。
Z世代に広がる美容医療と医療側の責任とは

Z世代も含め、美容医療を受ける年齢層の幅が広がり、身近になりつつある中で不安視されているのが、不適切な施術によって被害を受ける人が増えてしまうこと。
医療機関側にはこれまで以上に高い倫理観と患者を守る姿勢が求められています。
ときには施術を断る決断も……患者の将来につながる美容医療
SNSの情報をもとにクリニックを訪れる患者からは、次のような要望を受けることも増えているといいます。
- 変化を過度に強調した詐欺加工症例写真を信じ込み、実現不可能な施術を求められる
- 不自然に毛穴やシワのない写真を加工と見抜けず、現実とかけ離れた仕上がりを希望している
こうした患者には医師の立場から丁寧に説明し、ときには施術自体をお断りする判断も必要。しかし、中には患者の言いなりになり、施術を強行してトラブルに発展するケースもあるといいます。
こうした事態を防ぐためには医師としての専門的知識やスキルはもちろん、正しい倫理観を持ち合わせることが重要です。
患者の立場からいえば、安易に施術をすすめてきたり、施術のリスクについてきちんと説明しない医師は信頼しないほうが安心でしょう。
未成年への施術で気をつけるべきことは?
Z世代の中でも、とくに判断能力や美容医療知識が十分でない未成年は、SNSの情報に振り回されないように要注意。具体的には、次のようなプロモーションへの警戒が必要です。
- 「必ず○○になれる!」のような医療広告ガイドラインに違反する広告
- インフルエンサーによるPR表記のないステマ
- 施術によるメリットのみを過度に強調した広告
また、医療機関側も未成年であることに配慮し、親権者の同意を得ることはもちろん、本人が施術によるリスクを十分に理解しているかどうか確認することが大切です。
美容医療が身近なものになりつつあるからこそ、低価格や手軽さだけで安易に施術を受けてしまうことのないよう注意喚起が必要。"医療行為は必ずリスクと限界がある"ということを、改めて発信していくことが求められています。
まとめ

“整形前提世代”と呼ばれるZ世代のリアル。
そこには、デジタルネイティブならではの感性と、SNS社会特有の葛藤が共存しています。美容医療は今や、一部の人が受ける特別な美容法ではなく、日常的な自分磨きのための選択肢の1つになりました。
コンプレックスを解消するだけでなく、なりたい自分へと近づくポジティブな手段として捉えられるようになったのは、今の時代の流れからすると自然なことかもしれません。
大切なのは、「自分らしさ」を見失うことなく情報に振り回されすぎないこと。
美容医療は万能ではなく、リスクやデメリットのあるものであることを十分に理解する必要があります。そのためにもSNSを賢く活用し、美容医療リテラシーを正しく育んでいきましょう。
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