美容外科後遺症診療医 朝日林太郎先生へインタビュー!美容医療トラブルの防止とアフターフォロー体制強化に注力

美容外科後遺症診療医 朝日林太郎先生へインタビュー!美容医療トラブルの防止とアフターフォロー体制強化に注力

美容外科後遺症診療医 朝日林太郎先生へインタビュー。美容医療の市場規模が拡大する中、不適切な治療によって満足いく結果を得られなかった患者も少なくありません。朝日林太郎先生は、美容後遺症診療で多くの患者を支えてきた美容外科医。今回は「安全性を向上して、美容医療へのネガティブなイメージを払拭したい」と話す朝日先生に、後遺症と向き合う中で感じることや自身の強み、業界の課題について伺いました。美容医療に興味はあるものの一歩踏み出せない方、美容医療業界の深い部分について知りたい方はご覧ください。

ドクターズプロフィール

形成外科美容外科医
朝日 林太郎(あさひ りんたろう)先生

形成外科専門医として大学病院や複数のクリニックで研鑽を積む。日本医科大学形成外科では、美容外科診療とともに美容後遺症診療に注力。不適切治療による後遺症を抱えた患者に対し、もともと希望していた状態の実現をめざす『マイナスからプラス』の治療を多数手がけてきた。2024年からは非常勤医師として、大手美容クリニックなどで美容診療や後遺症治療を提供する。正しい美容医療の知識を広めたいとの思いから、メディア出演やSNS発信も積極的に行う。

(経歴)
2009年 三重大学医学部 卒業
2009年 東京労災病院にて研修
2011年 日本医科大学付属病院形成外科・美容外科勤務
2014年 会津中央病院形成外科・美容外科勤務
2015年 自治医科大学付属病院形成外科勤務
2018年 タウン形成外科クリニック 非常勤医勤務
2020年 自治医科大学大学院修了
2020年 自治医科大学形成外科 非常勤講師兼任
2020年 日本医科大学 講師
2024年 日本医科大学形成外科 非常勤講師兼任
2024年 湘南美容クリニック新宿院・WOM CLINIC GINZAなど複数の医院で非常勤医勤務
(資格)
日本形成外科学会 専門医
日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
日本熱傷学会 専門医
日本創傷外科学会 専門医
医学博士
(所属学会)
日本美容外科学会
日本頭蓋顎顔面外科学会
国際脂肪治療科学会

医師としてのキャリア ~形成外科のスペシャリストが美容の分野へ~

―――朝日先生が形成外科医を志したきっかけを教えてください。

父が医師だったので、医師という職業を子どもの頃から身近に感じており、自然とめざすようになりました。もともとは研究者志望だったのですが、患者様と直接向き合って医療を提供したい気持ちが高まり、医師の道へ。そして研修先の診療科に形成外科があったことがきっかけで、形成外科へ進みました。形成外科は手術手技がかなり重要な診療科で、治療のビフォア・アフターが明確です。そこにやりがいを感じました。

―――形成外科から美容外科へシフトした背景は何だったのでしょうか?

形成外科では、外傷外科や小児先天性疾患などの分野に熱意を持って取り組んでいました。そんな折に関連病院で美容診療に触れる機会があり、実際に診療に携わるうちに強く興味を惹かれたんです。そして少しずつ、美容診療の割合が増えていきました。その後2020年に日本医科大学に戻り、美容外科・美容後遺症外来を任されたことで、本格的に美容医療の分野にシフトしました。

美容後遺症診療への思い ~マイナスからプラスをめざす診療を~

形成外科美容外科医 朝日 林太郎(あさひ りんたろう)先生

―――美容後遺症外来は日本でもかなり希少性の高い分野ですね。

美容後遺症の治療は、傷・やけどなどのオールラウンドな知識が必要ですが、形成外科で幅広く経験を積んだことが大いに役立ちました。私にしか診られないケースもたくさん経験できて、大変な面もありますが非常にありがたいですね。また、美容外科自体すごく優秀な医師が多いので、みんなで切磋琢磨していくおもしろさがあります。

―――通常の医療と美容後遺症診療では、どんな違いがあるのでしょうか?

医療は基本的に困っている方や病気の方を助けるものですが、美容後遺症診療は対象が美容医療の分野になるというだけで、私の中で大きな違いはありません。

しかし、美容後遺症は症状が非常に幅広いですし、年齢によっても対処が変わってくるので治療をパターン化できない側面があります。それに加えて国民健康保険が適用されないため、「どれくらいまでの出費を許容されるのか」という点も重要ですね。その他、ダウンタイムがどのくらいとれるか、仕上がりのゴールをどこに設定するかも考慮しなければいけません。自分の力量やリスクを踏まえたうえで、患者様一人ひとりに一番良いゴールを提供できるようにと考えています。

―――朝日先生は、『形成外科診療・美容外科診療・美容後遺症診療それぞれがめざすゴール』について図とともに提唱されており、多くの美容外科医から共感を集めていますね。

それは嬉しいですね。形成外科は、マイナスの状態を限りなく正常に近付けていく。これに対して美容外科は、病気がないゼロの状態からプラスの状態へ。しかし美容外科でプラスの状態をめざしたのに、マイナスの状態になってしまったのが後遺症の患者様です。
美容後遺症診療では、マイナスの状態をゼロに戻すだけなく、患者様がめざしていた『プラス』を実現するよう尽力しています。

大学病院での自費治療 ~特定機能病院と美容外科のマッチングとは~

―――そもそも日本医科大が美容後遺症外来を立ち上げた意義は何なのでしょうか?

まず東京都内は形成外科がとても多いので、その中で特殊性を出していこうという思いがあったのかもしれません。ただ美容後遺症外来が立ち上がる前から、美容医療のトラブル、特に豊胸治療のトラブルの相談がよく来ていたと聞いています。そういった相談にも、しっかり対応できる専門外来を作ろうということだと思います。

―――大学病院特有の課題として、「形成外科教室が美容外科を良く思わない」という風潮についてどのようにお考えですか?

問題は大きく分けて2つあって、1つはやっぱり病院としての問題ですよね。
大学病院は特定機能病院としての意義があります。患者様によって異なる治療を行うというよりは、ある疾患に対して画一的な治療を安心安全に提供するのが一つの役割です。未承認製品の使用も規制によって制限されています。

対して美容医療は未承認製品も多いですし、治療の安全性や有効性も不確かな面があります。提供する治療と病院の理念が乖離している点が、大学病院で美容診療を行うことの問題だと思います。

もう1つの問題は、医師同士の待遇の差ですね。美容診療は本質的なところを言うと待遇が良くて、1日分の給与が大学病院勤務医のひと月分の給与にあたるほどです。日本人特有の「みんな平等に頑張ることを良しとする」という考えと、どうしても相容れない部分があり難しいですね。

美容医療業界への思い ~安全性・透明性を高めると市場はさらに広がる~

形成外科美容外科医 朝日 林太郎(あさひ りんたろう)先生

―――美容医療トラブルに対峙する中で、業界に対して感じることは?

そもそも私が後遺症診療にしっかり対応して、評価されていること自体がまずい状況かもしれないと思っていて。相対的に業界全体のモラルがあまり良くない状況なんじゃないかなって率直に思います。

また、若く早い段階で美容医療に携わっている医師の中には、素晴らしい技術を持っていて成功している医師ももちろんいます。しかし、傾向としてイレギュラーな事態やトラブルには弱い面があるかもしれません。専門医としての軸をしっかり作ってきた末に美容医療に携わった先生方とそうでない先生とでは、イレギュラーな事態が起きたときの対応の幅広さ・粘り強さにおける差はどうしても出てくるんじゃないでしょうか。

―――美容医療に携わっていく中で、意識の変化はありますか?

美容医療がより安全に広く普及していき、社会のプラスになってくれたらという思いはずっと変わりません。でも近年、小・中・高校生といった若い世代に美容医療が浸透していく流れは、健全で正しいのか?と疑問に思っています。

大前提として、美容医療はすごく安全で、透明性が高いものでなければいけないと思うんです。提供する側の知識や技術が不十分で、それが社会に広がってしまっては良くありません。場合によっては、美容医療は限られた人に対して、限られた医師が提供する方が良いのかもしれない。社会にとって美容医療がどういう形でどう広まっていけば良いか、いろいろと考えるところですね。

―――朝日先生の中で、美容医療業界が抱える課題とは何でしょうか?

私は大学で4年間、たくさんの医師にいろいろと教えてきましたが、美容外科医を育てるのは本当に難しいと感じています。そのため、一貫して課題だと考えているのは『教育』ですね。手術はもちろん、適切な治療をどう提供するかという面も含めて、どのように教育していくかが非常に大きな課題だと思っています。

美容医療は本当に熱意のある人が携われば良いし、うまくいかなければドロップアウトしても仕方ないという業界であれば良いのですが。ただ、うまくいかない医師が淘汰されずにトラブルを起こすケースもあります。業界としては、医師へのバックアップ教育が一番必要なのかもしれません。

―――美容医療の将来性について、どうお考えですか?

後遺症や仕上がりの不満足などに対して、しっかりアフターフォローできる体制が整ったら、美容医療市場はさらに広がっていくと思います。美容医療になかなか踏み出せない方は、漠然とした『怖さ』を抱えているんです。例えば、カウンセリングで高額料金を提示されたり、治療の痛みや確実性に不安を感じたり。
だから大手美容クリニックについては、巨大な広告費のうち2割3割でも安全性の確保に注ぐと、おそらく患者様が莫大に増えると思うんです。

―――メディアやSNSでの情報発信にも力を入れていらっしゃいますね

私個人の影響力は小さいですが、大手がそれをうまくキャッチして軌道修正してくれれば、より良い健全な業界になって安全性の低いクリニックが淘汰されるんじゃないかと思っています。私も「湘南美容クリニック」に非常勤として勤めていますが、最終的に美容医療の安全性が向上するかどうかは、大手次第ですね。

読者の方にメッセージ ~よく検討して満足度の高い美容医療を~

形成外科美容外科医 朝日 林太郎(あさひ りんたろう)先生

―――患者様に向けて伝えたいことはありますか?

どんな治療にもメリット・デメリット、リスクがあるので、患者様にはしっかり情報収集をしていただきたいです。メリット・デメリットを天秤にかけて、「自分に向いている」または「やらない方が良い」という検討をして、そのうえで良い担当医と巡り合い、ハッピーになる治療を受けていただきたいですね。

―――最後に若手医師にアドバイスをお願いします!

『困っている人を助けたい』という理念で医師になった人がほとんどだと思うので、そこを根底に持ち続けてほしいですね。自費診療によってトラブルを抱えた患者様がいらっしゃる可能性もあるので、自分で対応できない場合は経験ある先生にお願いするなど、マイナスな部分にもしっかり向き合ってほしいです。それは最終的に、クリニックの信頼獲得にもつながりますから。

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