
美容医療の目覚ましい進化に伴い、つぎつぎに登場する最先端設備。美容クリニックにとっては集患力を高める武器に、患者にとってはクリニック選びのポイントになります。
今回は、最先端設備が生む美容クリニックの格差にスポットを当て、クリニックで導入が進む最先端設備と現在も十分活躍している昔ながらの設備を紹介。
最先端設備を導入するメリットや、その反対に過剰な設備導入を行うことの問題点も解説します。
また、信頼できるクリニック選びのポイントも紹介しますので、最後までぜひチェックしてください。
1.最先端設備で変わる美容医療の質
まずは、最先端設備の導入によりもたらされるメリットと、とくに差が出やすい分野の設備について紹介します。
■設備の進化が与える影響—安全性と快適性
医師にも患者にもメリットが大きく、美容クリニックで導入が進む最先端設備を紹介します。
麻酔管理システム

出典:泉工医科工業株式会社
麻酔管理システムとは、患者情報や麻酔の使用記録などのデータを管理するシステムのこと。
このシステムにより、手術中にバイタルサイン*や麻酔の使用量を迅速かつ的確に記録することが可能になりました。
また、電子カルテやそのほかの医療機器と連携できるタイプもあります。
医師やスタッフが患者の状態を管理しやすくなり、手術効率がアップして患者の体への負担軽減につながります。
*バイタルサイン……患者の生命に関する基本的な情報で、心拍数(脈拍)・呼吸数・血圧・体温の4つを指すことが多い
無影灯(むえいとう)
無影灯とは、手術の際に使用される照明のことで、手術器具や手をかざしても影ができにくいように設計されています。
現在では光源にLED電球を使用した無影灯が多く、照射部の温度上昇が抑えられ患者の体への負担が軽減できるようになりました。
また、ポインターを当てた部分を自動追尾して照らす機能がついたタイプでは、照明を手動で調整する必要がなく医師が手術に集中しやすいというメリットがあります。
手術用ルーペ・顕微鏡
以前はあまり使用されていませんでしたが、最近では術野が鮮明に見える手術用ルーペや、細部の構造まで立体的に識別できる顕微鏡を用いた手術を行う美容クリニックも増えつつあります。
それらの使用により、細い血管まで止血することができ手術による腫れ・内出血などのリスクが抑えられます。
また、無理のない姿勢で手術を行えるため医師の疲労軽減につながり、ほかのスタッフもモニターで術野を確認できるため効率的な手術介助が可能です。
■導入事例—最先端設備で差をつけるクリニック
美容医療でとくに設備格差が出やすい、美容皮膚科領域の設備を紹介します。
エネルギーデバイス
エネルギーデバイスとは、さまざまなエネルギーを使用して皮膚・脂肪細胞・筋肉などに働きかけ、毛包・シミ・小ジワ・脂肪・たるみなどにアプローチする美容医療機器のこと。
レーザー機器・光治療(IPL)機器・高周波(RF)機器・超音波機器・脂肪冷却装置・高密度集中電磁波(HIFEM)デバイスなどがあります。
エネルギーデバイスによる施術は美容意識の高い消費者から長年ニーズがあり、新しいデバイスの導入は集患力に大きな影響を与えます。
肌画像診断システム

出典:株式会社インテグラル
肌画像診断システムとは、目視では確認しづらい肌の状態を詳しく分析する機器やアプリです。
LEDや紫外線などの光源を当てて撮影した画像で、シミ・肝斑・小ジワ*・赤み・毛穴の広がり・角栓・皮脂量などをチェックします。
最先端の肌画像診断システムでは、現在の肌年齢や将来予想される肌トラブルまで導き出し、適切な施術の提案やスキンケアのアドバイスまで行える機種も登場。
分析結果が数値やグラフで示されるため、自分に必要な施術やスキンケアを明確にできる点がメリットです。
*乾燥による
2.意外と変わらない? 昔ながらの設備の実力
最先端の設備に注目が集まる一方で、美容医療の世界では以前から根強い人気を誇るものもあります。
■手動でも十分な場面—現場で使われ続ける理由
「使用方法がシンプルなツールや手動調節するデバイスでも十分!」として、美容医療の世界で依然として愛用されている設備も多数存在します。
最先端でなくても治療エビデンスが豊富で効果が高いとされる設備は、ロングラン商品として現在も美容医療の現場で使われ続けています。
Qスイッチルビーレーザー

出典:グンゼメディカル株式会社
「Qスイッチルビーレーザー」は1990年に登場したシミ取りレーザーの1つで、薄いシミや深いシミにも反応します。
血液中のヘモグロビンには反応しにくくメラニン色素へ選択的に反応するため、効率的にシミへアプローチ。
また、レーザーの照射後にメラニン色素への反応具合と肌ダメージを確認できることも特徴です。
さらに、レーザーの出力がシミ取りに適していて、シミの取り残しや傷痕になるほどの肌ダメージを防ぐことができます。
サーマクール

出典:C-edge
「サーマクール」は2002年に開発された高周波(RF)機器で、たるみ治療に使用されています。
熱エネルギーが届きにくい肌の深部まで高周波が作用し、たるみやシワに関わる真皮や皮下組織を加熱。
皮膚の表面にはダメージを与えることなくコラーゲン線維が収縮し、皮膚内部のリモデリング(再構築)が期待できます。
「サーマクールFLX」が最新機種(2025年2月現在)ですが、1世代前の「サーマクールCPT」も症例実績が豊富なため多くのクリニックで現在も使用され続けています。
■最新設備に頼らない医師の技術力
設備に左右されない医師自身のスキルや経験は、昔も今も変わらず重要です。どれほど最先端の設備を導入しても、医師がそれを使いこなせなければ患者の求める理想には近づけません。
ある美容外科手術の仕上がりについて、「医師の技術が95%、残りの5%はデバイスによるもの」と考える医師もいます。
また、さまざまな美容医療を受けてきた患者の中には、「クリニックの設備は結構年季が入っていたのに、痛みや内出血がほとんどなかった!」という経験を持つ人も。
このように、最先端設備に頼らなくても、医師の技術力で設備面をカバーしてハイレベルな美容医療を提供しているクリニックも存在します。
3.患者視点で見るクリニック設備選び
最後に、クリニックの設備を患者視点で見たときにどのような心理的影響があるのか、また設備に惑わされず信頼できるクリニックを見極めるためのポイントは何かについて考えてみましょう。
■最新設備は「必要」か「贅沢」か?
患者視点で考えると、最先端設備のあるクリニックにより魅力を感じるのは当然のことでしょう。ボロボロの設備よりも新しくてきれいな設備を導入したクリニックのほうが、患者からの信頼をより集めやすいこともまた事実。
美容医療の施術料金は決して安価ではないため、「せっかくなら最先端設備のあるクリニックで施術を受けたい」という心理も理解できますね。
しかし、寝心地の良い高級素材を使用した施術台や、精度の高い肌画像診断システムなどは、美容クリニックで昔も今も高級品として扱われる設備です。
腰痛持ちの人にとっては、長時間の施術を受けるならば体に負担のかかりにくい高級な施術台は必要なものになり得ます。
また、さまざまなセルフケアをしても肌悩みが改善しない人にとっては、肌画像診断システムで肌の状態を詳しく知ることは治療をするうえで重要かもしれません。
つまり、設備でクリニックを選ぶ際は、自分にとって施術を受けるうえで「必要」なものか、それとも「贅沢」なものなのかを分類することが大切。
そのような観点で選ぶと、自分に本当に適したクリニックが見つかるかもしれません。
■信頼できるクリニックの見極め方
最新設備に惑わされず、医師の技術や診療方針を見極めるポイントを紹介します。
美容医療業界での経歴
クリニックの公式ホームページや医師の公式SNSなどで、医師がどのような経歴を持つのかを確認してみることもおすすめです。
過去に美容クリニックの院長経験がある医師や、特定の施術で症例数が群を抜いて多い医師は、技術力や経験が豊富といえるでしょう。
美容クリニックの医師は、経験豊富そうに見えても美容医療歴がまだ浅かったり、実年齢よりもかなり若々しく見えるベテランだったり、とさまざま。
そのため、見た目で医師の力量を判断することには注意が必要です。
保有資格・所属学会など
美容外科であれば形成外科や美容外科の専門医資格、美容皮膚科であれば皮膚科の専門医資格など、施術に直結しそうな保有資格を持っているかどうかも調べてみると良いでしょう。
また、専門とする施術に関係のありそうな学会に所属しているかどうかも1つのポイント。その理由は、知識や技術のアップデートに努めている医師かどうかの判断材料になるためです。
さらに医師がKOL*(キーオピニオンリーダー)に選ばれることは、症例数や学会発表などの実績を世間から認められた証になります。
*KOL……特定の分野に影響力を持つ専門家や医師のこと
美容医療への想い
美容医療に特化したウェブメディアのインタビュー記事も、医師の人となりを知るうえで参考になるでしょう。とくに、医師としての背景や美容医療への想いを深掘りしている部分は要チェックです。
NEROでも美容医療業界のトップランナーをインタビューした記事を多数掲載。ぜひチェックしてみてくださいね。
カウンセリングの丁寧さ
医師の診療方針はカウンセリング時の対応にあらわれることも多いようです。丁寧なカウンセリングを行う医師の多くは、患者の悩みやなりたいイメージを傾聴し、それに合った施術を提案してくれるでしょう。
また、施術の良い面ばかりでなく、ダウンタイム・副作用などのリスクや費用についてもきちんと説明があるはずです。
疑問や不安な点をいくつか尋ねてみて、医師の対応をチェックしてみても良いかもしれません。
まとめ
美容クリニックの最先端設備が生む格差について、さまざまな角度から見てきました。最先端設備の導入により魅力がアップするクリニックが存在する一方で、設備に左右されず医師の技術力で集患しているクリニックがあることもお伝えしました。
設備の新旧に惑わされ過ぎないことも大切ですが、あまりにもボロボロな設備を長年使い続けている美容クリニックにはご注意を。衛生管理や身体被害のリスク、経営面の不安なども考えられます。
設備の劣化や破損が著しい、何世代も前のデバイスが現役で稼働しているなど、医師の知識や技術は信頼できても気がかりな点がある場合は、カウンセリングで施術の契約は行わず持ち帰って検討するほうが無難です。
今回の記事でご紹介したポイントを参考に、信頼できるクリニックを見極めて自分の希望を本当に叶えてくれそうなクリニックを見つけてくださいね。
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