
近年、美容整形や施術を目的に韓国を訪れる日本人も多くいます。
SNSでも実際に施術を受けた体験談がたくさん投稿され、気軽にトライできるイメージも広まっています。
しかし、その裏にはリスクやトラブルが潜んでいることをご存知でしょうか。
特に注意が必要なのが、PR案件として提供される施術です。
施術費用が無料、もしくは大幅に割引されるなど、魅力的に見える一方で、契約内容が不明瞭だったり、事前の説明が不十分だったりすることがあります。
さらに、万が一トラブルが起きた場合でも、十分な対応が受けられないまま放置されてしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、韓国施術PR案件に潜むリスクについて、実情をふまえて詳しく解説します。
INDEX
最近、韓国の施術で“血管塞栓”がトレンド入りした理由とは?
最近注目を集めたのが、韓国のPR施術により血管塞栓を起こしたうえ、きちんと対応してもらえなかったというトラブル。
身近になりつつある美容医療の不安点が浮き彫りになった事象として、多くの反響を呼びました。
詳しく見ていきましょう。
■“鼻の血管塞栓”事故が一気に拡散した背景
2025年5月、SNSで大きな注目を集めたのが、あるThreadsの投稿です。
謝罪なし、「ヒアルロン酸が血管にいってます」とのこと。
調べたら放っておいたら壊死するほどの超深刻な医療ミス。
ここに来た交通費も、元々ここは報酬を貰ってPRする予定でしたがその費用も払われず。
クリニックからは「次回来た時同じ施術サービスするね!」
介してるエージェントはただただ謝るだけ。
ちなみにここのあとに6クリニック回る予定でしたがそれらも全てキャンセルせざるを得なくなりました。こちらも有償のPR案件です。
このままエージェントが対応してくれなければ、クリニックとエージェントを持っている全てのSNSで拡散します。
インフルエンサーの方も日本で肌治療考えてる方もこのクリニックとエージェントは選ばないでと発信します。
引用:@ssrapunzelさん
これは実際の投稿の一部。
「韓国で鼻のフィラー注射を受けた結果、血管塞栓を起こして壊死寸前になった」という衝撃的な体験談には、施術直後の写真や症状の詳細が添えられ、瞬く間に拡散されました。
「韓国美容=安くて上手」というイメージが定着していた中でのリアルな体験談は、多くのユーザーに警鐘を鳴らしました。
■「渡韓美容は当たり前」の時代に潜む落とし穴
美容大国・韓国で美容医療を受ける、いわゆる“渡韓美容”が一般化しつつあります。
SNS上でも「私も韓国で整形した」「旅行気分で受けられるから気軽」といった声があふれ、インフルエンサーによるPR投稿も日常的に見かけるようになりました。
しかし、この投稿を皮切りに、SNS上では「私も似たような経験をした」「韓国での施術、実はリスクが高い?」といった声が続々と投稿。
「みんなやってるから安心」と思わせる空気感の裏には、リスクを軽視してしまう土壌があるのかもしれません。
美容施術が“手軽な選択肢”になった今こそ、正しい情報収集とリスクへの理解が、何より大切です。
■失敗が増えたわけじゃない?──情報の“可視化”が進んだだけという視点
今回話題となったトラブルは、氷山の一角にすぎません。
渡韓美容には以前から、合併症のリスクやアフターケアの不十分さといった問題が指摘されてきました。
「渡韓美容ならではのトラブル」は、決して目新しい話ではないのです。
ここで冷静に考えておきたいのが、「血管塞栓などの事故が急増した」のではなく、「情報がようやく可視化されるようになった」のではないかという点です。
SNS、とくにThreadsやX(旧Twitter)では、施術後の経過やトラブルについて匿名かつタイムリーに共有できる環境が整いつつあります。
これまで表面化しづらかった問題も、いまでは“投稿”というかたちで記録に残る時代です。
つまり、「事故そのものが増えた」というより、「ようやく声をあげられる場が整った」と考える方が自然かもしれません。
韓国施術PRの裏にある“構造”なぜ案件は「リスクを隠して」飛びつかれるのか?”美容医療ツーリズムとPRマーケ市場の拡大
■報酬付き、“無料渡韓案件”が当たり前に
近年、SNSでは「航空券・宿泊費・施術費すべて無料、さらに報酬あり」といった“無料渡韓美容案件”が珍しくなくなってきました。
魅力的なオファーを受け、まるで旅行感覚で施術を受ける人も少なくありません。
クリニックにとってはPR効果が期待でき、インフルエンサーにとっては「キレイになって報酬も得られる」という一石二鳥の仕組み。
なかには、渡航にかかるすべての費用を負担する“全額サポート型”の案件もあり、影響力のある投稿者が次々に飛びつく構図ができあがっています。
しかし、この魅力的な案件の裏には、施術内容や経過、感想を発信することが条件として課されているケースがほとんどです。
フォロワー数の多いインフルエンサーほどお得に施術を受けられる傾向があり、実際は“無料の対価として情報発信の義務を負う”契約なのです。
■日本とは異なる、韓国の医療広告事情
日本では消費者が不利益を被らないよう、厚生労働省により医療広告ガイドラインが定められており、ビフォーアフター写真の掲載や体験談の紹介にも明確なルールが存在します。
しかし、韓国では医療広告に関する規制がグレーゾーンとなっており、表現のあり方について問題視されることもあるものの、日本ほど厳しくは規制されていないのが現状です。
こうした環境では、施術を検討している側が「信頼できる情報」を見極めるのが難しく、リスクに気づかないまま意思決定をしてしまうことも。
日本国内の常識が通用しないケースも多く、利用者側がリテラシーを持つことがますます重要になっています。
▽韓国と日本の美容医療の違いはこちら
■契約書なしの施術依頼に潜む落とし穴
無料渡韓案件の多くは、DMやLINEで施術依頼が届き、そのまま現地へ飛ぶ――という“ゆるい契約”で進行することが珍しくありません。
正式な契約書が交わされず、投稿内容や発信タイミング、万が一トラブルが起きた場合の責任の所在などが曖昧なまま施術に至るケースもあります。
契約書がない分法的な保護が受けられず、医療事故があった場合に自己責任とされるなど、インフルエンサー側が不利益を被るリスクも否定できません。
▽渡韓美容(海外美容)のトラブル事例はこちら
注入系施術の重大リスク「血管塞栓」について理解しておこう
今回問題となった血管塞栓とはどのようなものなのか、きちんと理解しておきましょう。
■注入系施術の重大リスク「血管塞栓」とは?
血管塞栓とは、ヒアルロン酸などの注入製剤が誤って血管内に入ってしまい、血流を塞いでしまう状態を指します。
血管が詰まることで、その先にある皮膚や組織に栄養や酸素が届かなくなり、最悪の場合は皮膚壊死を引き起こす非常に危険な合併症です。
特に鼻や眉間、目の周囲は細い血管が密集しているため、誤注入によるリスクが高く、最悪の場合は失明に至る可能性もあるとされています。
実際に日本でも、医師の適切な処置によって一命を取り留めた事例が報告されており、「手軽にできる美容施術」として受けるには、あまりにも重いリスクを孕んでいると言えるでしょう。
■起きてしまったときの対処法はあるの?
血管塞栓が生じたときの初期症状には、急激な痛みや施術部位の変色などが挙げられます。
血管塞栓が起きた場合、迅速な対応が必要です。
特にヒアルロン酸が原因の場合、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼを用いて血管を再開通させる必要があります。
目の周囲に塞栓が起こった場合は、視力の喪失リスクがあるため、眼科的な緊急処置が必要になることも。
渡韓美容における問題は、この“迅速な対応”が、すべてのクリニックで可能とは限らないという点です。
日本国内であればすぐに措置できるクリニックも多いですが、渡韓美容の場合、症状が起こったときにすでに帰国していたりトラブルに対処してくれなかったりするリスクも懸念されます。
だからこそ、安易に飛びつかず、“命に関わるリスクがある”という意識を持って、慎重に判断する必要があるでしょう。
▽渡韓美容におけるチェックポイントはこちら
まとめ
美容医療のPR施術を安易に受けるのはとても危険です。
とくに海外では、施術リスクや契約内容が十分に説明されないまま進むケースもあり、実際に血管塞栓などの重大なトラブルが報告されています。
特に海外で施術を受ける場合は、契約の有無、施術前の説明内容、トラブル時の対応体制など、当たり前に思えることが保証されていないケースもあります。
SNSの華やかな投稿の裏側にはリスクや後悔が隠れていることを理解し、冷静に情報を見極め、慎重に判断することが大切です。
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