妊娠線は、多くの妊婦さんに現れるといわれており、悩んでいる女性も多いはず。妊娠中もきれいな肌を保つためには、どのようなケアをすれば良いのでしょうか?今回は、妊娠線ができるメカニズムや予防法を詳しくお伝えします。また、妊娠線ができてしまったときに美容医療でできる対処法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1.妊娠線とは?
妊娠線は、妊娠中に皮膚にできるひび割れのような線のことです。お腹の赤ちゃんが大きくなってくると、急な体重増加や体形の変化によって妊娠線ができやすくなります。妊娠線はお腹だけでなく、胸、太もも、二の腕など、脂肪がつきやすいところに現れ、産後も消えることなく皮膚に残るのが特徴です。
また、妊娠中は、へその下から恥骨の下辺りまで1本の縦線が現れることがありますが、これは正中線です。正中線は産後に消えるため、妊娠線とは異なります。
2.妊娠線はなぜできる?
妊娠線はいつからどのようにできるのでしょうか?効果的に予防できるように、妊娠線が発生するメカニズムを知っておきましょう。
■妊娠線ができるメカニズム
皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっていますが、妊娠線は真皮の組織が裂けることによって生じます。表皮は皮膚の表面を覆う薄い層のことで、伸縮性があるのが特徴です。また、表皮の下にある真皮は、外部の衝撃から守るクッションのような働きをします。真皮は表皮よりも厚みがあり弾力性がありますが、横方向への伸びにはやや弱いつくりになっています。妊娠中はお腹を中心に皮下脂肪が厚くなり、皮膚が張っている状態のため、真皮が裂けやすいのです。
さらに、妊娠線ができるのはホルモンの影響もあると考えられます。妊娠中は副腎皮質ホルモンの分泌が多くなりますが、このホルモンは皮膚のターンオーバーや、皮膚の弾力性を保つコラーゲンの生成を抑制します。これにより真皮の弾力が弱まり、裂けやすくなってしまうのです。
■妊娠線はいつからできはじめる?
妊娠線ができはじめる時期には個人差がありますが、妊娠中期~後期に現れることが多い傾向です。妊娠線は、皮膚が伸びる方向に対し垂直の向きで現れます。その後は線が増え、放射線状に広がっていく場合も。できはじめは、皮膚にピリピリとした刺激や軽いかゆみを感じる方もいるでしょう。また、妊娠線は赤紫色やピンク色で現れはじめ、次第に色素沈着によって黒ずんだ褐色調になるのも特徴の一つです。産後は白くなって目立ちにくくなりますが、完全に消えることはないといわれています。
3.妊娠線ができやすい人
妊娠中期~後期に多くの妊婦さんに現れやすい妊娠線ですが、妊娠すると必ずできるというわけでもありません。妊娠線ができない人もいますし、発生しやすい人もいるのです。では、どんな人に妊娠線ができやすいのかチェックしておきましょう。
■小柄な人
小柄で骨盤が小さい人は、妊娠線ができやすい傾向があります。骨盤が小さいと、赤ちゃんの成長によってお腹が前方にせり出すように大きくなり、一部の皮膚が引っ張られやすいのです。また、小柄な人は、体格が大きい人よりもお腹の皮膚が引っ張られると考えられます。
■乾燥肌の人
肌が乾燥している人も、妊娠線ができやすいため注意が必要です。妊娠線は、お腹が大きくなることに皮膚の伸びが追いつかず、真皮が裂けてしまうため生じます。肌がカサついていると皮膚が伸びにくいため、できやすくなるのです。乾燥肌の人以外にも、乾燥する季節は気をつけたほうが良いでしょう。
■経産婦
出産を経験している経産婦さんも、妊娠線ができやすいといわれています。経産婦さんは、初産婦さんに比べてお腹の皮膚が伸びやすく、お腹が大きく膨らみやすいのが特徴です。お腹が大きくなるスピードも速いため、妊娠線ができやすいと考えられます。初回の妊娠で妊娠線が生じなかった場合でも、2回目以降にできる可能性があります。
■高齢出産の人
高齢出産に該当する35歳以上の妊婦さんは、年齢を重ねて皮膚が乾燥している可能性があります。それに伴い肌の柔軟性も低下するため、妊娠線ができやすいのです。皮膚の乾燥を改善してやわらかさを取り戻せるよう、丁寧な保湿ケアを心がけましょう。
■多胎妊娠の人
双子など多胎妊娠の場合は、単胎妊娠に比べてお腹が大きくなるため、妊娠線ができやすいといえます。お腹が膨らむスピードも急なため、皮膚の伸びが追いつかなくなるのです。多胎妊娠の人も、早いうちから丁寧に妊娠線の予防ケアをすることが大事です。
4.妊娠線を予防するための対策は?
妊娠線は、一度できると完全に消えることはないといわれているため、しっかりと予防したいものです。では、予防するためには何をすれば良いのでしょうか?妊娠線の具体的な予防法を確認していきましょう。
■体重管理に気をつける
妊娠線の予防には、体重管理に気をつけることが大切です。妊娠中は赤ちゃんを守るためにお腹周りの皮下脂肪が厚くなり、皮膚が張るため妊娠線ができやすい状態になっています。よって、急激な体重増加はできるだけ避けられるようにしたいものです。具体的には、食事のカロリー制限と適度な運動が有効でしょう。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、妊娠中の1日の摂取カロリーは、妊娠初期に+50kcal、中期に+250kcal、後期には+450kcalが目安となっています(※1)。摂取したいカロリーはそこまで多くないため、脂肪分の少ないメニューで規則正しく食事を摂ることが大切です。また、運動はウォーキングやエアロビクス、水泳などの有酸素運動が適しています。体調が良いときに安全な場所で行うようにしましょう。
■しっかりと保湿する
妊娠線を予防するためには保湿も重要です。皮膚が乾燥していると妊娠線ができやすくなってしまうため、マタニティクリームなどを使用して保湿ケアを行いましょう。妊娠線ができやすいお腹や胸、太もも、二の腕といった部位に保湿クリームを塗りマッサージをすると、皮膚がやわらかくなり乾燥を防げます。お風呂上りや着替えのときなど、朝と夜の2回保湿するのが目安。乾燥が気になるときは1日3~4回の頻度が理想です。
■早い時期からケアをする
妊娠線の予防には、早い時期からのケアが重要です。妊娠線が現れやすい妊娠中期ではなく、妊娠初期のうちから保湿ケアをすると、皮膚をやわらかく保つことができ体形の変化に備えられます。また、保湿ケアは、皮膚の伸びによるかゆみを抑えることも期待できるため、出産まで続けると良いでしょう。
5.妊娠線は医療アートメイクでカバーする方法も
保湿ケアや体重管理をしても、妊娠線ができることがあるかもしれません。できてしまった妊娠線は消えることはないといわれていますが、目立たないようにカバーすることは可能です。その方法として、医療アートメイクがあります。
■医療アートメイクとは?
医療アートメイクとは、専用の針を使用し、皮膚の比較的浅い部分に色素を注入し定着させる治療法です。妊娠線や傷痕など体の隠したい箇所に施すことで、自然に目立ちにくくすることができます。また、肌のターンオーバーに合わせて1~3年程度で少しずつ色が薄くなるため、肌の色に合わせてカラーチェンジも可能です。なお、医療アートメイクは、医師や医師の常駐しているクリニックの看護師が施術を行います。
■医療アートメイクのメリット・デメリットは?
医療アートメイクのメリットは以下のとおりです。
- 自然な仕上がりになる
- 痛みが少ない
医療アートメイクでは、皮膚になじむ色素を入れていくため自然な仕上がりを目指せます。また、麻酔を使用して施術時の痛みを軽減できるのが特徴です。
一方、医療アートメイクには以下のようなデメリットもあります。
- 一定期間で効果が薄れる
- 副作用のリスクがある
- 施術後の過ごし方に制限がある
医療アートメイクの効果は永久に続くものではないため、効果を持続させたい場合は再施術が必要です。また、施術した部分に腫れや赤み、内出血が生じるケースがあります。さらに、施術後は色素を定着させるために、入浴を控えなければなりません。医療アートメイクには、このようなデメリットもあることを理解しておきましょう。
■医療アートメイクの施術時間や費用は?
妊娠線に医療アートメイクを施した場合の施術時間は、施術の範囲にもよりますが15~30分程度になります。また、費用は大体15~20万円程度です。同じような料金でも施術回数などのプランはクリニックごとに異なるため、よく確認して受診先を選びましょう。
まとめ
妊娠線を予防するためには、妊娠線ができるメカニズムを知り、早いうちから保湿ケアをすることが大切です。しかし、丁寧にケアをしても妊娠線ができることがあります。もしも妊娠線ができてしまった場合は、美容医療でカバーする方法もあるため検討してみてはいかがでしょうか?妊娠・出産を経てもきれいな体を保ち、自分に自信を持って過ごせるようにしましょう。
【参考】
※1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
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