
今、美容フリークの間では、肌育ならぬ“膣育”が話題。
少し前まではデリケートなこととして秘められがちだった膣の不調や不快感も、美容医療やセルフケアによって積極的に改善を目指す人が増えてきました。
“膣育”の最終的なゴールは、女性としての自己肯定感を高めること。
本記事では「膣育って本当に必要?」という人にこそ知ってほしい、膣育のメリットや具体的なケア方法、美容医療のアプローチについて解説します。
“膣育”はなぜ必要?その理由は「加齢に伴う膣の変化」
膣は本来ふっくらと弾力があり、うるおった状態が理想。
しかし、加齢や妊娠・出産などの影響で女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少すると、次第に乾燥や萎縮が見られるようになります。
膣育とは、こうした膣内の状態を理想の状態へと戻し、膣にまつわる違和感や不快感の改善を目指すこと。皆さんは膣やその周囲に、次のような違和感や不調が現れたことはないでしょうか。
- 乾燥によるうるおい・弾力不足
- 性交時の痛み
- かゆみやムズムズ感
- 膣や外陰部のたるみ
- 頻尿や膣なら(ゆるみ)
こうした症状は、年齢を重ねるともに出やすくなります。とくに閉経前後の更年期を迎えた女性は、膣になんらかの違和感を覚えている方も多いのではないでしょうか。
◾️膣内環境の変化と女性ホルモンの関係
女性ホルモンが激減するのは、更年期周囲の40~50代にかけて。この時期にはGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)*を発症しやすく、デリケートゾーンのトラブルや異変を感じやすくなります。
ただし、膣内環境が変化するのは、加齢だけが原因ではありません。
例えば、過度なダイエットやストレス、ピルなどの内服薬の影響から女性ホルモンのバランスが乱れると、膣の乾燥や萎縮が進んでしまうケースもあります。
膣炎や前庭部炎といった病気が潜んでいる可能性もあるので、年齢問わず膣の変化を意識しておいたほうが良いでしょう。
*GSM……女性ホルモンの分泌量が減ることで膣粘膜が乾燥、萎縮し、膣の痛み・かゆみ・性交痛・頻尿などの症状が生じること。
▽膣のゆるみや引き締めるメリットについて解説した記事はこちら
◾️“膣育”が必要とされる理由
膣は女性の健康やQOL(生活の質)に深く関わる大事な器官ですが、普段からケアしているという人はそれほど多くはないかもしれません。
しかし、膣の乾燥や萎縮を放置すると、性交痛による性欲の減退、デリケートゾーンのかゆみによる日常的なストレスなど、さまざまな影響が出てくるようになります。
膣のゆるみによって尿漏れや頻尿がひどくなると、自己肯定感が下がったり、憂うつな気分になったりと精神面にも良くないでしょう。
普段から膣の変化や違和感に意識を向け、しっかりとケアすることは次のようなメリットをもたらします。
- QOL(生活の質)が向上する
- 女性としての自尊心が高まる
- 性生活が充実する
- 女性特有の不調や病気の予防につながる
膣の不快感や頻尿などのトラブルに悩まされていた人は、改善されることでQOLが向上するはず。理想的な膣の状態へと近づけたことで女性として自信を持てるようになり、性生活もより充実したものになるでしょう。
また、膣の乾燥や萎縮が改善されることは、膣内のバリア機能を高め、膣炎や膀胱炎などの病気予防にもつながります。
◾️膣育につながるセルフケア
「膣育って何から始めれば良いの?」という人は、簡単にできるセルフケアから始めてみましょう。
膣の保湿をする
本来、膣を含むデリケートゾーンは善玉菌によって弱酸性に保たれており、自浄作用が働くことで清潔に保たれています。
しかし、乾燥が進むと悪玉菌が増殖して、かゆみやニオイが出やすい状態に。そのため、こまめな保湿ケアで自浄作用を保つことが大切です。
使うのは、刺激の少ないデリケートゾーン専用の保湿剤がおすすめ。清潔な指先で大陰唇周りにやさしく塗りこむようにしましょう。
膣専用ソープで洗う
膣周りを洗うときは、弱酸性のデリケートゾーン専用ソープがおすすめです。
摩擦がおきないようにやさしく洗い、ぬるま湯でしっかりと洗い流すようにしましょう。この際、膣内まで洗うのはNG。泡が入らないように注意しましょう。
膣の筋肉(骨盤底筋群)をトレーニングで鍛える
骨盤の底にある「骨盤底筋群(骨盤底筋)」は膀胱・子宮・直腸などを支える筋肉ですが、加齢、出産・妊娠などによってこの筋肉が引き伸ばされると、膣のゆるみを引き起こします。
そのため、尿漏れや頻尿などに悩む方は骨盤底筋を鍛えることで、年齢を重ねてもQOLを高く保つことができるでしょう。
骨盤底筋を鍛える方法としてまず挙げられるのは、骨盤底筋トレーニング。ケーゲル体操とも呼ばれ、「骨盤底筋を締める→緩める」という動きを繰り返すシンプルな体操です。
より楽に、効率的に骨盤底筋を鍛えたい方には、EMS(電気刺激によって筋肉収縮を起こす機器)や、「ケーゲルボール」などのフェムテックグッズを取り入れても良さそう。
骨盤底筋トレーニングに特化した専用デバイスも登場しているので、ぜひチェックしてみてください。
▽膣トレについて紹介した記事はこちら
ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法では、医師の管理のもと、減少してしまったエストロゲンを外用薬によって補充します。
エストロゲンの量が保たれることで、乾燥や萎縮が起こりにくい膣内環境へと整えることができるでしょう。
また、膣ケアだけでなく更年期の諸症状の改善や骨粗しょう症予防の効果も見込めるため、40~50代女性にはメリットの多い治療でもあります。
◾️膣育のための美容医療
「セルフケアでは効果が感じられない」「専門的に診てもらいたい」という方には、美容医療という選択肢もあります。
クリニックによっては、膣内環境を詳細に調べてくれるところもあるので、ぜひチェックしてみてください。ここでは、膣育につながる美容医療をピックアップしてご紹介します。
膣ヒアルロン酸注入
膣ヒアルロン酸注入とは、膣壁へ注射器を使ってヒアルロン酸を注入し、膣内のボリュームやハリ、うるおいを与える治療法。
膣内の乾燥やゆるみ、性交時の密着感不足などの症状を軽減する目的で行われます。痛みやダウンタイムが少なく、施術直後からすぐに効果が現れるところがメリットです。
膣育注射
膣内環境だけでなく、大陰唇のたるみやごわつき、シワ感といったデリケートゾーンの悩みに幅広くアプローチできるのが膣育注射。
膣RF治療や膣ヒアルロン酸注入の施術前に行われるケースもあります。短時間で気軽に受けられるため、定期的な膣ケアにも最適な治療です。
膣レーザー
膣レーザーは、膣内に特定の波長のレーザー光を照射し、粘膜表面から奥のほうまで広範囲に引き締める治療法。
膣のゆるみだけでなく、乾燥・萎縮によるさまざまな諸症状の治療に用いられます。膣レーザーにはさまざまな種類があり、代表的なものはモナリザタッチやインティマなど。
それぞれ得意とする症状や作用する部分が異なるため、医師へ相談のうえ目的にあったものから選ぶことが可能です。
膣HIFU(ハイフ)
膣ハイフは、高密度の超音波を膣内へ照射し、レーザーよりも深い筋膜層へアプローチする治療法。
たるみやゆるみには高い効果が期待できますが、乾燥の改善はレーザーよりもやや劣るのが特徴。
膣の表面を傷つけにくく、広く深い層の引き締めが見込めるというメリットがあります。
▽膣ハイフについて深堀りした記事はこちら
膣RF(高周波治療)
膣内に高周波(ラジオ波)を照射し、膣内の引き締めやコラーゲン生成の促進を行う治療法です。
期待できる効果はレーザー治療やハイフと重なりますが、膣RF治療のほうが膣粘膜への負担が少なく、痛みやダウンタイムが少ないとされています。
【年代別アプローチ】本当に効果のある膣ケアとは?
ここからは婦人科医の観点から、効果が期待できる膣ケアについて解説します。
◾️本当に効果のある膣ケアとは?
膣の乾燥や萎縮、その他の不快な症状を治療するには、大きく分けて保険診療と自由診療の2つの方法があります。
- 保険診療 ……ステロイド軟こう、抗生物質、ホルモン補充療法など
- 自由診療 ……レーザー治療、高周波治療、ヒアルロン酸注入など
保険診療は費用を抑えられる点がメリットではありますが、即効性を求めるなら美容クリニックでの自由診療でしょう。
とくに、モナリザタッチなどのレーザー治療は難治性の膣萎縮にも有効だとされているので、保険診療で効果が実感できなかった方も試してみる価値はありそうです。
◾️【年代別】効果的な膣育のアプローチは?
年齢によって膣の状態は変わるため、適したアプローチも異なります。
また、膣育は更年期を迎えるころから始めればOK、というわけではありません。
若いうちから意識することで、年齢を重ねてからも膣の健康が保たれやすくなります。ここでは年齢別に適したケアをまとめました。
20代〜30代
20~30代は女性ホルモンの分泌量がピークに達し、おりものの量が増える年代。
また、仕事や育児などのストレスや不規則な生活によって、ホルモンバランスを乱す人が多い時期でもあります。そのため20~30代は、丁寧な膣の洗浄・保湿を徹底することが大切。
妊娠・出産を経た女性は、産後の膣のゆるみ対策として骨盤底筋トレーニングを始めると良いでしょう。
40代以降
更年期を迎える40代以降は、エストロゲンが急激に減少する時期。
膣が乾燥しやすくなることで、今までにない不快感や違和感に悩まされる方も増えてきます。そのため、顔のエイジングケアだけでなく、膣育にも本格的に取り組みたい時期でもあります。
デリケートゾーン専用の洗浄料や保湿剤を取り入れてみたり、美容医療を受けてみたりしても良いでしょう。
【海外トレンドと日本の膣ケア市場】フェムテックの可能性と医療の融合
欧米の女性たちの間でQOLを高めるためになくてはならないものとして認知されている“フェムテック”。膣を含めたデリケートゾーンのケアも、日常的なこととして捉えられています。
また、海外ではフェムテックの市場規模が拡大し、多くの企業がさまざまな製品・サービスを開発・展開。とくに更年期にまつわる諸症状のケアを重視する傾向にあり、女性のQOL向上に社会全体で取り組んでいます。
一方、日本でも欧米の影響を受け、ここ数年の間に認知が広がっている印象。さまざまな自治体や企業がフェムテックの普及に乗り出しています。2021年には「フェムテック」が新語・流行語大賞にノミネートされたこともより注目度を高めました。
しかし、膣を含めたデリケートゾーンの話題は「人前で話しづらい」「恥ずかしい」という風潮があり、人知れず我慢している人も多いのではないでしょうか。
膣の不調やケア方法についてオープンに話しづらい、というのも今の日本が抱えるフェムテックの課題。世間では少しずつ女性の健康課題に目を向ける風潮が広がりつつあるも、一人ひとりの意識が変わるのにはもう少し時間がかかりそうな現状です。
また、日本の医療では“未病を治療する”という文化がないことも、フェムテックの普及が欧米と比べて進まない理由。今の日本では、膣の不快感や違和感は“病名のつかない不調”として捉えられ、治療の対象として扱われない傾向にあります。
そもそも、日本では保険診療で安く治療が受けられるため、自由診療の対象となりやすい予防医療やセルフケアにはお金をかけない人も多いのでしょう。
とはいえ、今後は日本のトップ企業がフェムテックに参入するなどすれば、一気に普及が進むのではと予測する声も。いまはまだ海外に後れを取っている日本のフェムテック市場ですが、近い将来、今よりももっと拡大していくことは間違いないでしょう。
まとめ
日本の女性は肌のケアには気を遣うものの、膣には意識が向かないという人も多くいます。
しかし、膣育は女性としての魅力を高め、自己肯定感を育むのに大切なこと。
まずは、自分の膣の状態について知るところから始めてみませんか。更年期周囲の女性はもちろん、20~30代の方も膣の乾燥や萎縮には注意が必要。
不快な症状が本格的に悪化する前に、ぜひ簡単なところから膣育を取り入れてみてくださいね。
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