栗林歯科医院 栗林 研治先生にインタビュー。千葉県浦安市で地域医療に取り組みながら全身の健康を口から維持する真の予防を追求し、さまざまな情報発信を行う栗林先生。SMIワールドクライアントオブザイヤーで世界一の称号を得た経験もあり、経営者としても高い評価を得ています。そんな栗林先生に、開業までの道則や予防医学の重要性を意識した背景、SMIプログラム導入のきっかけなど、詳しくお伺いしました。
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ドクターズプロフィール
医療法人社団 栗林歯科医院 理事長
栗林 研治(くりばやし けんじ)先生
東京医科歯科大学口腔外科で臨床を重ねた開業医のもと6年間学び、浦安市に栗林歯科医院を開業。さまざまな専門家と連携を取りながら、全身の健康を口から維持するための、真の予防を追求。現在は学術・教育・経営の3本柱により安定した歯科医院の診療活動を推進するMID-Gの代表理事としても活躍されています。
<経歴> 2003年 日本歯科大学 生命歯学部 卒業 2003年 医療法人社団 歯聖会 田中歯科医院 勤務 2009年 New York University CDE Program 修了 2009年 栗林歯科医院 浦安診療所 開院 2012年 栗林歯科医院 医療法人化 2014年 Medical University of Vienna 修了 2015年 栗林歯科医院 予防診療所兼セミナールーム 開設 2017年 東京西の森歯科衛生士専門学校 保存歯周学講師/歯科衛生士総合講義 講師 2018年 栗林歯科医院 国東診療所 開設 2021年 栗林歯科医院 丸の内診療所 開設 2022年 MID-G 代表理事就任 |
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医師としての背景 ~歯科医院は患者さまに喜びを与える舞台の1つ~
―――まずは、医師になったきっかけを教えてください。
大分県国東市で1941年から続く歯科医院の3代目の長男として生まれたんですが、昔から歯科医という仕事に興味があったわけではありませんでした。私は喜劇が好きで、もともとは舞台の演出家になりたかったんです。しかし、進路を考えるにあたり、歯の悩みを持った患者さまが治療により喜びを得るという歯科医院での流れは1つの舞台だなと思い、祖父や父と同じ歯科医の道を選ぶことを決めました。大学卒業後は、海外留学の経験があり勉強家の先生のもとで勤務医として6年間働き、たくさんのことを学びましたね。
歯科医としての情熱 ~反対を押して開業した浦安の地で地域医療を目指す~
―――勤務医としての経験を経て開業された栗林先生ですが、浦安市に開業を決めた背景は?
東京で開業したいという祖父の夢を受け継ぎ、関東で開業することを決めました。ビジネスは人通りが多い場所を選ぶのが基本になると思うのですが、「栗林歯科医院」は新浦安駅から歩いて28分と少し距離があるうえ、周囲に飲食店もない田舎なんです。なので、浦安市に開業すると決めた当初は、10人中8人くらいに反対されましたね。しかし、田舎出身だった私の優先順位は、広々とした場所であることと向こう30年続けられそうな場所かどうかということ。
幅広い年代層が生活している浦安市なら地域医療が実現できると考え、浦安の地を選びました。開業から5年たちますが、海外を含めて遠いところからわざわざ患者さんが来てくれるようになり、ありがたく思っています。
栗林先生の強み ~海外での学びが歯科医としての本質を支える基盤に~
―――栗林先生は海外でもたくさん学ばれていますが、何か理由はあるのでしょうか?
歯科医院を開業した当初は、とにかく楽しく仕事ができる環境を作りたかったんです。チームを一致団結させるためには、正しいことをやる必要がある。そのためには、世界でも認められているような情報をきちんと理解しなければと考えました。はじめのターニングポイントは、開院後に留学したウィーン大学のルドルフ スラビチェック名誉教授との出会いです。ここで嚙み合わせの本質を学んだことで、歯科医は世界一大切な職業だと思えるほどの価値観を与えてもらい、現在の診療方針の確立につながりました。
―――栗林先生は予防歯科に力を入れた情報発信されていますが、きっかけは?
予防歯科の重要性を学んだのは、スウェーデンのイエテボリ大学です。せっかく学ぶなら世界最高峰の現場で学びたいと、歯周病の予防の情報発信源であるイエテボリ大学で研修を受けました。ここで驚いたのは、セミナールームがあること。口の中を見る職業なのになんで座学なんだろうと思ったのですが、ここでやっていたのが予防医学だったんです。
もともと治療をメインでやっていたのですが、「歯垢をとって口内環境を変えても、思考がちゃんと変わらないと意味がない」という学びを受け、まさにその通りだと思いましたね。歯が悪くなった患者さんを集めるのではなく、健康意識の高い患者さんを集める。そういう患者さんが増えてくると今度はそういう方々に引っ張られる、これが自分の考え方にマッチしていると気づいたんです。イエテボリ大学の影響で「栗林歯科医院」にも予防診療所兼セミナールームを開設しました。
治療を行うのは医師ですが、予防は歯科衛生士の領域だということで、歯科衛生士の働きや考え方を理解するためスイス歯科衛生士学校でも研修を受けました。そこでの学びを踏まえ、「栗林歯科医院」ではひとりの歯科衛生士が600人の患者さまを受け持つ体制を取っています。患者さまと会話しながら家族のことまで気にかけ、必要そうな情報を前もって与えてあげる。そうやって患者さまの口の健康を保つサポートをしてもらっています。
海外でのたくさんの学びが、『歯科医療は歯や歯茎だけを診るのではなく顎や全身管理を診ることが大事だ』という、歯科医師としての本質を理解する助けになりましたね。
―――予防医学を広げていくため、栗林先生が行っているアプローチを教えてください。
院内には自分自身と患者さま、そしてスタッフという3つの軸があります。患者さまに対してはきちんと情報発信して少しずつ認知を広げ、3ヶ月に1回来ていただいて口腔環境をチェックさせていただくしかないのですが、まずは内部の教育、スタッフの人材育成を重視しています。
スタッフ全員が予防の考え方を正しく理解できれば、スタッフ全員で情報発信できる。そのうえで患者さまに親身に寄り添うことで、健康志向の高い方が増えていくことにつながると思っています。
栗林歯科医院の強み ~食の側面からも全身の健康をサポート~
―――栗林歯科医院には管理栄養士を配置されている珍しい体制ですが、その理由はどんなところにあるのでしょうか?
2016年に料理人の松嶋 啓介さんと知り合ったことが、食の重要性を意識するきっかけになりました。「歯が良くて嚙み合わせが良くても、食べ物が悪いと虫歯になるよ」という話を聞いて衝撃を受けたんです。加えて、彼がやっている食サミットで食に関わる方と出会って、歯と健康の関係性や体における歯の重要性など、すごく腑に落ちたんです。
体を作るのも生命を維持するのも、やっぱり食なんです。栄養のバランスはどうか、どのように調理するか、食べ方はどうするかなどによって、体やお口・歯に与える影響は異なります。
治療して嚙み合わせが良くなると、いろんなものが食べられるようになって今度は糖尿病や高血圧などの病気が増えるという側面もあるんです。歯の治療とあわせて患者さんに食事の正しい知識を教えてあげる必要があると思い、管理栄養士を受付に配置することを決めました。管理栄養士が在籍していれば、赤ちゃんの離乳食教室や年配の方に向けた食指導ができることに加え、気軽な会話から食の重要さを伝えることもできる。食育にも力を入れて、口や体全体の健康につなげていく真の予防を追求していくつもりです。
―――これからの「栗林歯科医院」について、どんな未来を描いているのですか?
「栗林歯科医院」ではSMIプログラム*を導入して、目標を持つ重要性を学びました。これからの当院のビジョンをスタッフに示して、長い目で見た組織の在り方を落とし込んでいます。目的を分化して見える化しないと、みんなどうしていくのか分からないと思うんですよね。
「栗林歯科医院」は、患者さまと社員の幸せを基本目的とすることを30年後の目標として、以下のように掲げています。
1章(2009~2018年)は、人材育成する心構えや仕組みを作っていく 2章(2019~2028年)は、社員と患者さまが幸せになるような仕組みを作っていく 3章(2029~2028年)は、社会貢献などにより行政や企業とのつながりを作っていく |
現在は2章の途中で、61歳で経営者は終えるつもりでいます。62歳からはもともとの夢だった舞台演出家を目指したいなと思っていて。もちろん丸投げするのではなく、どういうクリニックなら次期理事長が楽しく仕事できるか考え、医科歯科連携、行政連携できるような状態を整えて、引き継ぎできる状態にしたいと思っています。
この目標を立てるに至ったきっかけは、東日本大震災です。震災の影響で浦安市全域が液状化し、2ヶ月間は患者さんがほぼゼロの状態になってしまい、売り上げも激変。一時は目標を見失い、閉院を考える状態になりました。それまでは先輩とか友だちを参考にしながら、今思うと小手先だけの経営していたのですが、社員の生活を預かっている以上どんな変化にも対応できる経営者を目指す必要性を痛感しましたね。
漠然と生きるのではなく、目的をもって生活するため、毎年12月の第2週の日曜日に翌年365日全部の予定を決めるようにしています。今年の夏休みや冬休みの予定ももう全部決まっているし、健康の目標設定を行う日も決めているんです。2018年にはSMIプログラムの導入で業界やコミュニティに変化をもたらした人物に贈られるSMIワールドクライアントオブザイヤーで世界一の称号を得ることができ、手探りながらもやってきた経営を進める後押しにもなりました。
*SMIプログラム…ポールJマイヤー氏が考案した、モチベーションを向上させ潜在能力を開発し、心構えと行動を変える成功法則と理論・具体的方法を提供するプログラム
歯科医療業界の今後の動向と期待 ~企業や行政との連携で真の予防を実現~
―――栗林先生が考える歯科業界・医療業界の今後の動向を教えてください。
これからは、治療と予防歯科、企業や行政との連携という3つの軸が求められる時代になると思います。私の取り組みとしては、企業で歯の重要性と仕事への関連性を講演したり、虫歯の罹患率について市長と話をしたりするなどして、口腔機能と健康の関わりや重要性について広く情報発信していくつもりです。また、さまざまな専門家とタッグを組み、企業や国を巻き込んで口の健康と全身の健康に目を向け、真の予防を実践していけるよう努めてまいります。
読者や患者さまへ向けて伝えたいメッセージ ~歯科医院を気軽に相談できる窓口に~
どんな些細な悩みでも、まずは相談することが大切です。栗林歯科医院は歯や口にとどまらず、どんなことも気軽に相談できるパートナーになりたいと思っています。弁護士なら相談だけで数万円かかりますが、歯科で保険証を出せば初診料で1,000円以内です。「栗林歯科医院」に限らず病院に行ってたくさん相談してみれば、なにか解決の糸口が見つかるかもしれません。保険診療のメリットをしっかり活用して、相談先の選択肢の1つに病院を加えていただけるとうれしいですね。未来まで長く患者さまと関わり、幸せな人生を送るサポートができるよう、今後も努力を続けていきます。