
顔の中でも、老けた印象を与えがちな「目の下のクマ」。クマには美容皮膚科で改善できるもの、外科的治療でなければ改善できないものが判明しており、原因に適したアプローチをしていくことが悩み解消への近道です。この記事では、ヒアルロン酸注射・ベビコラ注入・脱脂・表ハムラ法・裏ハムラ法・脂肪注入といった今を代表するクマ治療から、最新治療のGOURI(ゴウリ)まで詳しく解説。クマの状態で分かるおすすめ治療法フローチャートもご紹介しているため、「どの治療が自分に適しているか?」と悩んだときは、ぜひお役立てください。
目の下のクマの原因と治療法の基本
クマのタイプは大きく分けて3つ。まずはクマのタイプを知ることから始めていきましょう。
目の下のクマの種類と原因
茶グマ
色素沈着によってできるクマです。目をこする、紫外線ダメージを受け続けるなどの要因により、皮膚の表面にメラニン色素が定着している状態です。茶グマはメラニン色素を排出することで改善が見込めるため、レーザーやピーリング、内服薬など美容皮膚科の治療が基本。ただし、たるみが強く茶色っぽく見えている場合は黒クマと同様のアプローチをします。
チェック方法:上を向いたり、下瞼の皮膚を引っ張っても何も変わらない場合は茶グマの可能性があります。
青(紫)クマ
睡眠不足や目の疲労、乱れた生活習慣などがきっかけで、目元まで栄養や酸素が行き届かず血液や眼輪筋が透けて見える状態です。涙袋の下が膨らんでいる場合は、脂肪で皮膚が押されて薄くなり、青く見えることも考えられます。
チェック方法:下瞼の皮膚を引っ張り、色が薄くなったら青(紫)クマの可能性があります。
黒クマ
涙袋の下が膨らんで、影になって見えるのが黒クマ。黒クマは加齢とともに眼球を支える靭帯や眼輪筋が緩んで 眼窩脂肪が突出してきている状態のため、セルフケアでは元に戻すことはできません。黒クマはさまざまな要因が絡み合っており、クマの出方も人それぞれ。また、黒クマは青クマと併発しているケースも多く、複数の治療を組み合わせた方がいい場合や、重症になると切開を伴う治療が必要になる場合もあります。
チェック方法:上を向くと色が薄くなり、下を向くと膨らみが目立つ。
治療法の基本概要と選択基準
クマの治療方法には多くの選択肢があり、中でも黒クマの治療は複雑です。主な症例を以下にまとめました。
①の目袋が膨らむタイプ
- ①の目袋の膨らみ+④のティアトラフのくぼみが強いタイプ
- ①の目袋の膨らみ+③のメーラーファット(頬の皮下脂肪)が下垂して凹凸が目立つタイプ
- ①の目袋の膨らみ+たるみを伴い②のゴルゴラインが強調される重症タイプ
今回NEROではアマミネクリニックの院長を務める赤嶺 周亮先生ご協力のもと、種類別の治療方法選択フローチャートを作成。ご自身がどの治療方法に向いているのか、ぜひ鏡を見ながらチェックしてみてください。

引用元:AMAMINE CLINIC
アマミネクリニック院長
赤嶺 周亮(あかみね しゅうりょう)先生
医学博士・日本形成外科学会認定専門医。大阪アマミネクリニックの院長を務める傍ら、渋谷アマソラ、新宿アマシオでも診察を行う。目、鼻、輪郭、豊胸、脂肪吸引など、美容外科治療全般を担う。
▽「ハムラ法」をテーマに赤嶺 周亮先生が登壇したクリエイションラボの様子はこちら!
注入治療法の詳細
クマの症状が比較的軽く、早く症状を改善したい場合は注入治療を検討してみては。クマ治療に用いられる注入治療法は、主にヒアルロン酸注射やベビーコラーゲン注入です。ここからは、それぞれの治療の特徴やメリット・デメリットを事例とともに解説します。
ヒアルロン酸注射の効果と手順
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ヒアルロン酸注射は、肌の内側から皮膚を持ち上げる治療です。クマ治療の場合、目の下の膨らみやメーラーファットの痩せ、皮膚のたるみによって生まれた段差に注入して高さを出すことで、肌を均一にし、クマの影を目立たなくしていきます。
画像は、オザキクリニック目黒祐天寺院 院長の朽木律子先生(@kutsuki_ozaki)の症例。皮膚の浅い層と深い層にそれぞれヒアルロン酸を注入し、表情の動きに沿った自然な仕上がりを可能にする「朽木式マルチレイヤーテクニック」を採用しています。目の下のふくらみと、段差によるクマが見事に消えていますよね。
なお、ヒアルロン酸注射は、あくまでも肌を造形してクマをなくす治療のため、ゴルゴラインなどの目の下のシワや目の下のくぼみをともなうクマに適しており、青クマのような浅いところにできるクマには不向きです。
施術では影をなくしたい部分に、針のとおり道となる穴を1箇所あけてからヒアルロン酸を入れていきます。このとき、カニューレと呼ばれる先端が丸い針を用いるため、痛みを感じにくく、血管を傷つけにくいため内出血や塞栓(血管を製剤の微粒子が塞ぐ)のリスクを抑えながら注入することが可能です。
製剤は一気に注入するのではなく極少量を種をまくように注入するため、自然な仕上がりとなるのも特徴。施術直後から効果を感じられる上、傷痕もほぼ残らないため、ダウンタイムやコストを抑えられる点も魅力です。
【コラム】注入治療の持続期間とメンテナンスの必要性 注入治療は、製剤の種類にもよりますが数ヶ月~数年程度で体内に吸収され、効果がなくなるというのが通説です。製剤の硬さや特徴によって持続性は異なりますが、いずれも効果をキープするには定期的に注入する必要があります。注入治療のメリットは治療費が比較的安く、即効性があることですが、効果が薄れたらその都度費用がかかることや、クマの根本的な解決にはならないことを理解しておきましょう。 |
ベビーコラーゲン注入の特徴
真皮には、網目状の強硬なⅠ型コラーゲン、肌にやわらかさを与えるⅢ型コラーゲン、基底膜の構造を維持するⅣ型コラーゲンの3つのコラーゲンが存在しています。赤ちゃんの肌がやわらかく傷の治癒が早いのは、Ⅲ型コラーゲンによって皮膚の再生能力が高まっていることが関与しているため。ベビーコラーゲンはⅠ型・Ⅲ型コラーゲンが含まれる製剤で、加齢とともに失われるコラーゲンを真皮に直接注入して補います。
ベビーコラーゲンはコラーゲンの増生によりハリや弾力が生まれるため、黒クマの凹凸を目立たなくさせる効果があります。ヒアルロン酸注射とも似ていますが、ヒアルロン酸よりも浅い部分に注入するため、治療が難しいとされていた血管が透けて見えるタイプの青クマにも用いることが可能です。また、ベビーコラーゲンは乳白色のため、チンダル現象(ヒアルロン酸が青く透けて見える現象)の心配もありません。
さらにベビーコラーゲンは、体内に吸収されても肌の再生能力の高まりは維持されるため、効果が長く持続するメリットもあります。デメリットとしては、ヒアルロン酸のように造形がしにくいため凹みが深いクマには向かないことや、ヒアルロン酸と異なり溶解ができないため、1度入れるとやり直しができない点があげられます。
外科的治療法の詳細
クマの外科的治療では、主に脱脂手術、表ハムラ法・裏ハムラ法が選択されます。クマの症状が軽度~重度で、根本的な原因となる眼窩脂肪から改善したい方は外科的治療法を検討しましょう。
脱脂手術の概要と効果
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脱脂手術は、目袋に集まった眼窩脂肪を下まぶたの裏側(結膜側)から除去する施術です。皮膚の表面に傷が残ることはなく、抜糸も要さないため、別名「切らないクマ取り」とも呼ばれています。術後は腫れや内出血が数日~10日ほど続くとされていますが、表からは傷が分からないため、ダウンタイムもあまり気にならないのが特徴です。
画像は、BIANCA CLINICの症例です。脱脂手術のみで、この違い!脱脂手術を行うと、目の下の膨らみをフラットにでき自然で若々しい印象を手に入れられます。その効果は半永久的に続き、老化を止められるわけではないものの、再び脂肪がつくのを予防する効果も期待できます。
ただし、たるみや頬の脂肪下垂が伴う場合、期待した効果が得られなかったり、術後の凹みが目立ったりする可能性があります。その場合は、脂肪注入との併用やハムラ法など、別の治療も検討する必要があるでしょう。
表ハムラ法・裏ハムラ法の特徴と適応
「ハムラ法」は、膨らんだ眼窩脂肪を移動させて再配置し、クマの膨らみをフラットにしていく施術です。脱脂手術とは異なり、脂肪を取り過ぎることで凹みができてしまうリスクが低いという特徴があります。
表ハムラ法・裏ハムラ法の違いは切開をする位置。表ハムラ法は、下まつげのキワを表側から切開するため、余分な皮膚のたるみも同時に切除できる点がメリットです。ただし、傷が治癒するまでダウンタイムが2~3週間ほどと長くなることや、涙袋の消失、下まぶたの筋力低下により三白眼になりやすいといったリスクもあり、主に症状が重い方や40代後半以降の方に適応されます。
一方の裏ハムラ法は、下まぶたの裏側を切開するため、ダウンタイムも軽く表からは傷痕が見えません。涙袋もそのまま維持され、脂肪を移動させることでむしろはっきりすることも。たるみはないが目の下の凹凸が目立つ方や、比較的若い方に適応されるケースが多い方法です。
コラム:手術後のダウンタイムとケア方法 表ハムラ法・裏ハムラ法は、術後痛みや腫れ、内出血、熱感などが伴います。裏ハムラ法のほうがダウンタイムが軽いとはいえ、症状が落ち着くのは1週間程度です。仕事がある方は休日を利用して、2~3日は安静にしておくのがベターでしょう。ダウンタイム中は、なるべく早い回復を促すためにセルフケアを行うことが推奨されています。患部をハンカチに包んだ保冷剤などで冷やしたり、むくまないよう枕を高くして寝たりすることで症状を軽減できます。また、基本的にダウンタイム中の飲酒はNG。食事や睡眠といった基本的な生活習慣の改善から、数日は腫れるものと理解してマインドをコントロールすることも大切です。万が一、腫れや痛みが急激に強まるなど気になる症状が現れた場合は、放置せずクリニックに相談しましょう。 |
脂肪注入とその他の治療法
脱脂やハムラ法とセットで行うことも多い脂肪注入。「脂肪注入は必ず行わなければいけないのか?」と疑問の方も多いのではないでしょうか。また、目元にメスを入れることにやっぱりまだ抵抗がある……という方もいるかもしれません。ここからは、脂肪注入のメリットとリスクについて解説するとともに、近年注目の注入治療「GOURI(ゴウリ)」について紹介していきます。
脂肪注入のメリットとリスク
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脂肪注入は、自身の太ももなどから採取した脂肪を用いて凹みや溝を埋める施術です。目の下のように皮膚が薄く注入部位が浅い部位には、脂肪の粒子を細かくしたマイクロファットやナノファットを使いながら、造形に合わせてきめ細かに注入していきます。画像の@seikeibakariさんは脱脂手術をして2~3年後に目の下の凹みが気になって脂肪注入を選択されたとのことで、術前より明らかにふっくらと若々しい目元になっているのが確認できます。
脂肪注入は、脱脂や表・裏ハムラ法での施術後に凹みが強い場合や、メーラーファット(頬の皮下脂肪)の下垂によるボリューム不足が見られる場合、目の下のシワやたるみが目立つ場合などに適応する施術です。脱脂や裏ハムラ法を行った場合、必ずしも脂肪注入が必要なわけではなく、術前~術後の目元の状態を見て総合的に必要性を判断していきます。
同じく凹みを埋めるヒアルロン酸に比べて、脂肪注入は自分の脂肪を使うためアレルギーリスクが低く、定着すると半永久的に残る点がメリットです。注意点は、定着するまでに一部が体内に吸収されるため、やや多めに注入する必要があること。そこで脂肪を入れすぎると中顔面が間延びしたり、しこりができたりするリスクもあるため、医師の技術力が重要です。また、脂肪注入を行うには採取・注入後それぞれ2週間のダウンタイムを要するため、治療の期間が長くなることも理解しておきましょう。
その他の最新治療法とその効果

出典:GOURI

出典:あきこクリニック
上記のほか、クマ治療に有効とされているのが注入治療の「GOURI(ゴウリ)」です。GOURIは糸リフトの材料PCL(ポリカプロラクトン)を世界で初めて液体にしたもので、コラーゲンの生成を促すことで内側からリフトアップさせる効果が期待できます。
注入後はすみやかに肌全体に行き渡り、針を複数箇所に刺す必要がないため、肌育注射の施術直後によくみられる肌のボコつきがほとんどできないのが特徴です。目の下の凹みやたるみをナチュラルにボリュームアップさせることで、黒クマが目立たない肌へと仕上げます。
GOURIは従来のPCL製剤にあった塞栓などの深刻なリスクが少ないことでも注目されています。しかし、考えられる副作用には腫れ・内出血・しこりなどがあるため、GOURIを選択するべきかどうかは医師の意見を仰ぎましょう。
コラム:治療法の選び方と美容ドクターの意見 クマ治療は一概に正解がなく、クマのどの要素が強いか、目袋の膨らみやたるみの強さ、骨格、年齢、肌質などを見て総合的に判断をしていきます。医師それぞれの見解があり、ときには脱脂×脂肪注入や脱脂×裏ハムラのような一見相反する治療を行うなど、治療の掛け合わせで症状が改善するケースもあるのだそうです。また、その際は同時に施術するか、別々に施術するかにおいても見解は異なり、クマ治療の選択の際は、いかに「医師の意見が根拠に基づいているか?」が決め手となるのかもしれません。 |
まとめ
美容皮膚科、美容外科の領域からクマ治療について解説しました。クマ治療は、話題の治療方法が必ずしもご自身のクマに適応するものではありません。脂肪の膨らみ方、落ち方、生まれつき、老化によるもの、とクマの要因は複雑に絡み合っているものです。医師の見解なしに、自己判断で適切な治療が分かる可能性は少ないと言えます。クマのメカニズムを理解した上で、ドクターに相談しながら、最適なクマ治療を決めていきましょう。
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