女性の体にとって、妊娠・出産は大きなターニングポイント。産後の女性の中には「授乳で胸が垂れてしまった」「お腹のたるみがなかなかなくならない」など、体型について悩む方も少なくありません。これらの悩みを解決する方法としては、美容医療もその1つ。育児が少し落ち着いてきたら受けてみたいという方も多いのではないでしょうか。
今回は、産後の女性におすすめの治療法や施術の注意点、リスクなどまとめて解説。「産後っていつから美容医療を受けられる?」「産前の体型に戻すならどんな施術を受けるべき?」など、さまざまな疑問にお応えします。
INDEX
1.産後の胸の下垂やたるみには【豊胸術・乳頭縮小など】
出産・授乳によって胸はどう変化する?
産後に多い胸の悩みとしては、次のようなものがあります。
- 胸が垂れ下がってしまった
- 妊娠前よりも胸が小さくなったように感じる
- 授乳によって乳頭が大きくなった
- 乳輪のシワが目立つようになった
女性は妊娠すると、母乳を出すために乳腺が発達し、胸がだんだんと大きくなっていきます。とはいえ横からみたときの胸の高さはそれほど変わらず、乳房の下半分から脇にかけて横に広がっていくイメージ。臨月を迎える頃には、妊娠初期と比べて2カップ以上サイズアップする方もいるのだとか。出産後もしばらくは、たっぷりと母乳が蓄えられ、胸が張りやすい状態が続きます。
しかし、産後1年も経てばだんだんとハリがなくなり、垂れ下がって見えるように。胸のサイズも小さくなり、鎖骨から胸にかけて痩せたように見えることから一気に老けたように感じる方も少なくありません。
また、乳頭も授乳によって大きく垂れ下がったり、形がいびつになったりすることも。産後に胸全体がボリュームダウンすることで、乳輪のシワが気になる方もいるようです。
胸の下垂やサイズダウンを改善する美容医療
産後の胸のたるみやサイズダウンを改善する方法には、マッサージや補正下着などさまざまありますが、美容医療も選択肢の1つ。主な治療法をご紹介します。
胸の引き上げ(バストリフト)
大きさは変えずにバスト全体を上向きに整えたいなら、バストリフト術という方法があります。バストリフト術とは、たるんだ皮膚を切除してバストを持ちあげ、乳輪や乳頭の位置を調整しながらバストラインを整えていく治療法。切除する範囲や施術方法は、垂れ下がりの程度を見ながら決めていきます。
理想的なバストの位置は、左右の乳頭と両鎖骨の中心がちょうど正三角形になっている状態。このバランスになるよう整えながら、同時に乳頭や乳輪の縮小手術も行うことが可能です。
豊胸手術(バストインプラント)
サイズダウンした胸のボリュームアップに効果的なのが豊胸手術。主な治療法としては、次の3つがあります。
■大幅にサイズアップしたいなら【シリコンバッグ豊胸】
「人工乳腺」と呼ばれるシリコン製のやわらかいバッグを胸に挿入する方法です。挿入部位は大胸筋下や乳腺下など、体型や体質に応じて選ぶことが可能。以前は「仕上がりが不自然でバレやすい」とも言われていましたが、近年ではかなり改善されつつあります。
<シリコンバッグ豊胸のメリット>
- 確実なボリュームアップが叶う
- 細身の方でも大幅なサイズアップができる
- 効果が10年程度持続する
<シリコンバッグ豊胸のデメリット>
- ダウンタイムが1~2ヶ月程度続く
- 切開痕の赤みが引くまでに半年から1年以上かかる
- いびつな形で硬く拘縮(こうしゅく※施術後に組織が硬くなる状態のこと。)してしまうことがある
- シリコンバッグが劣化していないか長期にわたって定期的な通院が必要になる
■気軽に豊胸したいなら【ヒアルロン酸豊胸】
吸収されにくいヒアルロン酸を注射器で注入し、バストアップを目指す方法。メスを使わない“プチ整形”のため、初めて豊胸手術を受ける方でもチャレンジしやすいでしょう。体や顔などさまざまな部位に用いられるヒアルロン酸ですが、胸への注入はあまり一般的ではなく、海外では推奨していない国もあるようです。
<ヒアルロン酸豊胸のメリット>
- 他の治療法と比べて施術時間が短い
- もともと体内に存在するヒアルロン酸を注入するため安全性が高い
- ダウンタイムがほぼなく、施術直後から普段通りの生活ができる
- メスを使う外科手術が苦手な方でも受けやすい
<ヒアルロン酸豊胸のデメリット>
- 硬めの仕上がりで触ると不自然に感じやすい
- しこりができるリスクがある
- 効果が最大で2~3年と短い
- 大幅なバストアップは難しい
■自然に仕上げたいなら【脂肪注入豊胸】
他の部位から採取した脂肪から不純物を除去して注入し、胸のボリュームアップを行う方法です。主な治療法としては、「コンデンスリッチファット(CRF)」や「ピュアグラフト」など。これらは採取した脂肪から不純物を取り除く方法に違いがあります。
<脂肪注入豊胸のメリット>
- 自然に近い見た目とやわらかい触感が得られる
- 半永久的に効果が持続する
- 脂肪吸引を同時に行うため部分痩せ効果も得られる
- 傷痕が目立ちにくい
<脂肪注入豊胸のデメリット>
- 細身の方だと施術を受けられないことがある
- 注入した脂肪がしこりになることがある
- 脂肪吸引部位の内出血が半年程度続くことがある
乳首や乳輪の形状修正を行う美容医療
母乳育児などで授乳を頻繁に行っていた女性の中には、乳頭や乳輪の変化に悩まされる方も多くいます。次のような治療法によってそのコンプレックスを解消することが可能です。
乳頭縮小術
乳頭縮小術とは、乳頭を縮小し、形を整える施術。授乳によって乳首が大きくなってしまった方、長く伸びて垂れ下がってしまった方に人気の治療法です。
乳頭縮小術には、次のようなメリットがあります。
- 約30分~1時間程度と短時間で手術が終わる
- 授乳機能を残す治療法が主流
- 傷痕は残りにくく、目立ちにくい
術後の腫れや内出血は2週間程度でおさまることがほとんど。術後に痛みが出た場合も、1~3日程度でおさまります。
以前は授乳機能が残らない術式もありましたが、現在では授乳機能を残す“乳管温存法”が主流。この方法であれば、術後に妊娠・出産をした場合でも問題なく授乳できます。
乳輪縮小術
産後の乳輪のシワやしぼみは、妊娠・出産によって大きく張った胸が授乳後にサイズダウンし、伸びた皮膚が余ってしまうことで起こります。これはセルフケアで元に戻すことはまず不可能。改善するには乳輪縮小術という方法があります。
標準体型の日本人女性の場合、乳輪サイズは3~5cm程度が一般的。乳輪縮小術では、このサイズを目安にして皮膚を切除し、シワのない状態へ整えていきます。
切除部位には、乳輪の内側(乳頭の周囲)と乳輪の外側の2パターンがあり、乳輪のサイズや仕上がりの希望をもとに決めていくようになるでしょう。
なお、クリニックによっては、乳輪の皮下にヒアルロン酸や脂肪細胞を入れることでシワやしぼみ改善を行っているところも。外科手術に抵抗がある方にはチャレンジしやすい方法です。
産後の胸はいつから美容医療を受けられる?
産後に胸の美容医療を受けるタイミングは、次の条件を満たしていることが前提です。
- 卒乳している
- 卒乳後、母乳の分泌がない
- 胸の形やサイズに大きな変化がない状態が続いている
- 術後の副作用やダウンタイムがあっても育児に支障をきたさない
一般的に美容医療を受けられるようになる目安は、産後半年~1年が経過した頃。しかし豊胸などの大がかりな外科手術ともなると、卒乳してから半年後頃が安心でしょう。卒乳直後は授乳によって一度サイズアップした胸の皮膚が引き伸ばされている状態のため、豊胸にベストなタイミングともいわれています。
2.産後の体型戻しには【脂肪吸引】
産後の体型はどう変化する?
妊娠・出産によって大きく変化した体型は、産後の女性にとって悩みの1つ。その中でも、お腹やヒップラインなど下半身は「大きくなった」「たるんでしまりがない」と感じやすい部分のようです。
ワコールによる調査(2021年)によれば、産後女性420人にアンケートをとったところ、「体重が戻った」と感じた人のうち約7割の人が「体型が戻っていない」と回答。体重が戻ったからといって体型が戻るわけではないところも女性が悩みやすいポイントでしょう。
とはいえ、産後は慣れない育児に奮闘する毎日。体調が優れないことも多く、なかなか自分の体型に気を配る余裕はないでしょう。また、産後の体は、妊娠・出産による骨盤のゆがみや筋肉量の減少によって痩せにくい状態。とくに産後半年を過ぎてしまうと、ますます体型が戻りにくくなるともいわれています。
そこで注目したいのが、脂肪吸引という方法。セルフケアに比べると費用はかかりますが、短期間で効果が出る、医師のサポートのもと体型戻しできるというメリットがあります。
脂肪吸引とはどんな治療法?
産後の脂肪吸引としては「ベイザー脂肪吸引」という方法が一般的。周辺組織を傷つけず皮下脂肪だけに働きかける超音波“ベイザー波”を照射し、皮下脂肪のおよそ9割を除去します。ベイザー波は、脂肪吸引と同時に伸びてしまった皮膚の引き締めもできるところが魅力。大きな体型変化を経た産後の体に適した治療法です。
ベイザー脂肪吸引のメリットは、主に次の3つ。
- 専用の極細の管で脂肪吸引するため、ダウンタイムが短い
- 吸引後の皮膚のたるみが少ない
- 施術後のリバウンドがない
脂肪吸引には“カニューレ”と呼ばれる専用の極細管が使われますが、このカニューレにはさまざまな種類があり、吸引したい部位によって使い分けることが可能です。
脂肪吸引の副作用・術後の経過
脂肪吸引の副作用は、痛み・腫れ・むくみ・内出血・拘縮など。痛みは筋肉痛程度で、術後2~3日も経てば普段通りの生活を送れる方がほとんどです。
ただし、脂肪吸引は医師の経験値やスキルに左右されやすい治療法。経験の浅い医師の場合、傷痕が目立ちやすくなったり、施術箇所が不自然な凹凸になったりすることもあります。
産後の脂肪吸引はいつから可能?授乳中でも問題ない?
産後の脂肪吸引は体調が落ち着き、貧血の症状がなければ可能です。施術で使用する麻酔もごく微量のため、母乳への影響も心配ないでしょう。しかし、産後の体はとてもデリケートな状態のため、少なくとも産後2~3ヶ月程度は空けた方が安心。授乳中も避けた方がリスクを軽減できます。
また、帝王切開で出産された方は、傷痕への影響など注意が必要。クリニックを選ぶ際には、症例実績の豊富さもチェックすることをおすすめします。
3.産後の妊娠線や肌のたるみには【レーザー治療・ダーマペンなど】
妊娠線はなぜできる?
妊娠線(ストレッチマーク)は、妊娠によってお腹が急激に大きくなるときに皮膚の表面も引き伸ばされ、皮膚のコラーゲン線維が断裂することで発生します。約8~9割の妊婦さんに妊娠線ができるともいわれていますが、セルフケアでは改善が難しいという難点もあります。
妊娠線を改善する美容医療
妊娠線ができやすいのはお腹だけでなく、胸や太もも、お尻など。クリニックでは妊娠線の治療として次のような施術が受けられます。
- レーザー治療
- ダーマペン
- HIFU
- ラジオ波治療(サーマクール・ポテンツァなど)
- 医療アートメイク
妊娠線治療は、レーザー治療やダーマペンなどで肌のターンオーバーや自己治癒力を促し、皮膚の再生をサポートする方法が基本。さらに、HIFUやラジオ波治療といった皮膚のたるみ治療とあわせ、より目立ちにくくするという方法がとられています。
また、医療アートメイクによって色素を注入し、妊娠線の赤みを目立ちにくくさせる方法も。妊娠線の程度や部位によって適した治療が決まるため、気になる方はクリニックでカウンセリングを受けてみることをおすすめします。
妊娠線を目立ちにくくするにはホームケアも大切!
妊娠線は肌が乾燥していると、悪化するといわれています。そのため、普段から乾燥しないようにうるおいを保つことが大切。保湿によってターンオーバーが整えば、妊娠線を薄くする効果も期待できます。保湿する際には、オイルやクリームなどを使ってマッサージすると良いでしょう。
4.産後に美容医療を受けるときに気をつけることは?
日本では、“産後のかかりつけ医”と聞いてまず頭に浮かぶのは産婦人科であり、形成外科を思い浮かべる方は少ないでしょう。しかし、産後に美容医療施術を受けることは、海外では「マミーメイクオーバー(mommy makeover)」と呼ばれ、一般的とされています。
しかし、美容医療の中には、「妊娠中・授乳中の方は受けられない」としているメニューが多くあることも事実です。なぜなら、母体の負担や赤ちゃんへの影響を考慮しているから。妊娠前に美容医療を受けていたという方も、産後は心身ともにデリケートな状態のため、体調が落ち着いてからのほうが安心です。
また、クリニックを選ぶ際には、症例実績やアフターケアの充実度をしっかりと確認することを忘れずに。産後は通常よりも体調が変化しやすく、ホルモンバランスも乱れやすくなっています。そのため、産後の女性への症例を多く持つクリニックだと、安心して施術を受けられるでしょう。クリニック選びに迷った方は、院内やドクターの雰囲気を見るために無料カウンセリングなどを利用してみても良いかもしれません。
▽初めて美容医療を受ける方向けにクリニック選びのポイントを解説しています。
まとめ
産後しばらくは、赤ちゃん優先の日々が続きます。「体型を戻すなら産後6ヶ月までが勝負!」とも言われますが、育児に精一杯でそれどころではない方も多いですよね。その点、美容医療なら焦る必要はありません。育児が少し落ち着いて、そろそろ自分の美容にも力を入れたいというタイミングでぜひ考えてみてください。妊娠前のように、またはそれ以上に体型が美しく整えば、きっと気持ちも今以上に前向きになれるはず。自分の今の体型に自信が持てない方は、ぜひクリニックのカウンセリングを受けてみてください。
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