
全国の病院経営が急速に悪化している。
2024年度の調査では61%の病院が赤字に転落。静岡県では68.9%が赤字見込みという数字も示された。
診療所の経営難を取り上げたNEROの報道(9月26日公開)に続き、
今回は「病院経営の赤字」というより深刻なデータが明らかになった。
「病院は消える」現実が加速か?
前回NEROが報じたように、厚労省の概算要求は「クリニック誘導型」の補助制度を描いた。
しかしその前提には、すでに病院の持続性が急速に失われつつある現実がある。
赤字の主因は、診療報酬が公定価格で全国一律に定められ、人件費・医療材料費の高騰を転嫁できない仕組みにある。
「地域の基幹病院ほど患者は増えるのに赤字も拡大する」という逆説が、経営者たちの共通の悲鳴となっている。
赤字拡大、地域医療が持続困難に
全日本病院協会調査によれば、2024年度は病院の61%が経常赤字。
物価・賃金の上昇が背景にあり、診療報酬の改定では補填しきれていない。
精神科病院の窮状も深刻で、慢性期入院の医療費は「都内ビジネスホテルの宿泊料より安い」との指摘も。
医療費全体の2割強を精神病床が占める一方、精神科医療費は全体の約4%にとどまり、構造的な矛盾が浮き彫りになった。
静岡県でも7割弱が赤字に
静岡県病院協会の調査では、2023年度の赤字病院は59.7%。
2024年度はさらに増加し 68.9%が赤字見込み。
中でも高度急性期・急性期病院は 8割超が赤字 という深刻な結果だった。
浜松医療センターは患者数・手術件数・救急搬送件数が増加し増収を果たしたものの、
「規模拡大がそのまま赤字拡大につながる構造」と院長は訴えているという。
利益を生みにくい構造的問題
病院収益の大半を占める診療報酬は、全国一律の公定価格。
人件費や医療材料費、光熱費が高騰しても、価格転嫁できない仕組みとなっている。
患者負担には消費税がかからないが、病院が購入する薬剤・医療材料には課税がかかる。
さらに、自治体病院では人事院勧告に基づく給与引き上げが必須で、浜松医療センターの人件費は 25年度に3億円増 となる見込みだ。
救急や小児・周産期といった不採算医療を担う自治体病院は、赤字でも撤退できない構造的ジレンマに直面している。
編集長ポイント
~病院再編の時代、その先に来るもの~
今回の赤字データは、病院が消えるスピードが国の想定以上に速いことを示している。
これから避けられないのは、
-
急性期病院の 再編・統合
-
不採算領域の 国による直接補填
-
そして残った医師が地域で拠点化する 複合型クリニックの台頭
NEROでは以前から「クリニック時代の到来」を伝えてきた。
だが今後はそれ以上に、“どんなクリニックを育てるか”という選択の時代に入る。
病院の赤字は単なる経営問題ではない。
それは「日本の医療インフラの再設計」を迫る、避けられない現実なのかもしれない。
まとめ
-
病院の赤字は診療所以上に深刻化し、全国6割超が赤字
-
急性期・精神科を中心に「価格転嫁できない構造」が限界に
-
クリニック時代を迎える一方で、病院再編と制度補填が不可避
-
今後は「病院をどう減らすか」と同時に「どんなクリニックを育てるか」が問われるのか
参考文献
▼以下、参考内容/
▲以上で終了▲
関連記事
NEROでは美容医療に関連するニュースをキャッチ次第、投稿していきます!
編集長のコメントも記載していくので、情報をトレンドキャッチしたい人はぜひお気に入りに登録してくださいね。