
日本医師会は2025年9月17日の定例会見で、全国の診療所を対象にした緊急調査の結果を公表した。
2024年度、診療所の約4割が赤字に転落し、14%が「近い将来の廃業を検討している」と回答した。
物価や人件費の高騰を背景に、地域医療を担う診療所の経営は深刻さを増しており、日医は「診療報酬の大幅引き上げが不可欠」と訴えた。
出典:日本医師会(2025年9月17日発表)「診療所緊急経営調査」
赤字拡大、経営環境の悪化
調査は医師会員の診療所管理者7万1986人を対象に実施し、有効回答は1万1103件にのぼった。
医療法人立では医業利益率が23年度の6.7%から24年度に3.2%へ半減。
経常利益率も8.2%から4.2%に下がり、決算期が直近に近づくほど悪化していた。
日医は「平均値以上に中央値の落ち込みが大きく、実態はより厳しい」と説明。
赤字比率は23年度の24.6%から39.2%へ急増しており、経営危機が現実化している。
出典:日本医師会(2025年9月17日発表)「診療所緊急経営調査」
廃業リスクと地域医療への影響
調査では13.8%が「近い将来廃業を検討している」と回答。
背景には、コロナ補助金の終了や診療報酬のマイナス改定、人件費高騰などがある。
看護師やスタッフが待遇の良い自由診療クリニックへ流出する例も報告され、地域医療の担い手不足が深刻化している。
松本吉郎会長は「このままでは診療所が事業を断念し、継承もできず、地域医療の継続が困難になる」と危機感を示した。
出典:日本医師会(2025年9月17日発表)「診療所緊急経営調査」
「診療報酬の限界」制度疲労を直視すべき時期に
医師会は、「次期2026年度診療報酬改定での大幅引き上げ」「補助金や期中改定による緊急措置」を強く求める方針を明らかにした。
ただし、医療界内部からも「今の診療報酬水準では人件費も払えず、医療従事者の生活が成り立たない」との切実な声が上がっている。
一部の会合では「ストライキでもしなければ変わらない」という意見すら聞かれる状況だ。
赤字が続けば、診療所の廃業と医療従事者の離職が相次ぎ、国家資格の人材が失われる“医療崩壊”に直結する。
編集長ポイント
~「地域医療を守るコスト」を誰が負担するのか~
今回の調査は、診療報酬制度がもはや限界に達している現実を突きつけた。
診療所の4割が赤字、14%が廃業検討――これは単なる数字ではなく、地域医療の持続性そのものを揺るがす事態だ。
一方で、国民は物価高や社会保険料の増加に直面しており、「医療費をどこまで支えられるのか」という社会全体の課題ともつながる。
診療報酬の見直しは、医師会の要望という枠を超え、「誰のための医療か」「持続可能な制度の姿は何か」を考える出発点である。
まとめ
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診療所の4割が赤字、14%が廃業検討
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物価・人件費高騰、補助金打ち切りが背景
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診療報酬改定の大幅アップを日医が要求
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制度疲労が表面化し、地域医療の持続性が危機に直面
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「医療崩壊」を防ぐ制度再設計が不可避
参考文献
▼以下、参考内容/
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