銀座S美容・形成外科クリニック 院長 酒井 直彦先生にインタビュー。北里大学で19年研鑽を積み、形成外科・美容外科学教室の講師まで務めた酒井先生。
美容外科激戦区の東京・銀座で『駆け込み寺』と呼ばれる背景には、恩師の教えを忠実に守る姿勢と再建外科を中心に培った緻密な技術、そして万が一のトラブルまで責任を持つ誠実な倫理観がありました。
今回は、酒井先生の強みや現在の美容医療業界への想いも深掘りします。次世代のドクターや読者へのメッセージもいただきましたので、ぜひ最後までご覧ください。
ドクターズプロフィール
銀座S美容・形成外科クリニック 院長
酒井 直彦(さかい なおひこ)先生
北里大学医学部形成外科の初代教授である故・塩谷 信幸(しおや のぶゆき)先生に師事。大学卒業後、複数の病院で経験を積みながら、「北里大学病院」では延べ19年にわたり、形成外科・美容外科の診療・研究・教育に携わる。
その後、美容外科医へ転身し、2016年に銀座で自身のクリニックを開業。第109回日本美容外科学会(JSAS)では学会長を務めるなど、名実ともに美容外科分野を牽引する医師の1人。
インスタグラムでは症例写真や学会の様子、掲載された論文や医学専門書の紹介のほか、料理・ゴルフ・旅行などプライベートに関する投稿も発信している。
| (経歴) 1991年 北里大学医学部卒業 1991年 横浜南共済病院形成外科 1992年 JA長野厚生連佐久総合病院外科 1993年 国立横浜病院(現 横浜医療センター)整形外科 1994年 北里大学病院形成外科 1997年 横浜市立大学医学部附属病院形成外科助手 1999年 北里大学大学院医療系研究科博士課程 2002年 北里大学大学院医療系研究科博士課程修了(飛び級) 2002年 北里大学医学部形成外科・美容外科学教室講師 2009年 城本クリニック新宿院院長として招へい 2013年 城本クリニック銀座院 開業 2016年 銀座S美容・形成外科クリニック 開業 2021年 第109回 日本美容外科学会(JSAS)学会長 (資格) 医学博士 日本形成外科学会認定 形成外科専門医 日本美容外科学会(JSAPS)認定 専門医 日本美容外科学会(JSAS)認定 専門医 (所属学会) 日本形成外科学会 日本美容外科学会(JSAPS) 日本美容外科学会(JSAS) 日本美容外科医師会 国際形成外科学会 日本先進医療医師会 など |
▽銀座S美容・形成外科クリニック公式ホームページ
https://www.ginza-s.jp/
▽酒井 直彦先生公式インスタグラム(@naohikosakai_ginzasclinic)
https://www.instagram.com/naohikosakai_ginzasclinic/
医師としての背景 ~恩師に徹底的に教え込まれた、入念な準備とフィードバック~
―――医師を志したきっかけと、形成外科の道へ進まれた経緯について教えてください。
クリニックを開業していた父の影響で医師を志しましたが、実は医学部に入るまで形成外科の存在を知りませんでした。
転機となったのは、教授と学生との交流会で出会った北里大学医学部形成外科の初代教授である故・塩谷 信幸(しおや のぶゆき)先生の存在です。塩谷先生はアメリカで形成外科専門医の資格を取得した後に帰国し、日本で形成外科やその延長線上にある美容外科を発展させた著名な医師の1人です。
塩谷先生のお話を聞き、口唇口蓋裂や小耳症、眼瞼下垂*といった先天性疾患の治療、そして腫瘍や熱傷などで失われた組織を復元する『再建外科』の高い専門性に惹かれ、この道を志しました。
*口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)……生まれつき口唇(くちびる)・口蓋(口腔内の天井)・上顎(歯茎)に裂け目のある病態
*小耳症(しょうじしょう)……生まれつき耳の形が不完全な病態。耳がやや小さい~ほとんど耳がない状態まで、個人差がある
*眼瞼下垂(がんけんかすい)……まぶたが下がり、見えにくい病態。生まれつきの場合の多くは、まぶたを上げる筋肉の未発達と組織構成の異常が原因
―――塩谷先生といえば、今なお日本の形成外科におけるレジェンド的な存在ですよね。塩谷先生の教えが、酒井先生の診療スタイルにもつながっているのでしょうか。
そうですね。塩谷先生の『入念な準備』と『フィードバック(振り返り)』という姿勢が、今の私の基礎になっています。カンファレンス*を重視し、症例検討*を術前も術後もしつこいまでに行うのが習慣でした。
塩谷先生は「とにかくメモを取りなさい」というのが口癖で、不十分な手術記録を患者さまの目の前で破られたドクターもいたほどです。本当に厳しい方でしたが、下の者の意見に耳を傾ける寛容さもありました。
また、塩谷先生のレジデント(初期研修医・専攻医を含む)教育は非常に独特でしたね。「全身を診る経験は絶対に無駄にならない」という信念のもと、外科・整形外科・救急科など他科の院外研修の機会を与えられ、全身管理についても深く学びました。
他科での経験を経たことで、傷跡や形などの見た目にこだわる形成外科ならではの良さを再認識し、再び形成外科に戻りました。
*カンファレンス……医療チームで症例や治療方針について検討・情報共有を行う会議
*症例検討……特定の1つの症例を深掘りし、適切な治療法やケア方針を分析する臨床教育の場
美容医療への情熱 ~自ら最後まで責任を持てる施術を選び、全身全霊を注ぐ~
―――大学病院でのキャリアを経て大手美容クリニックの院長として招へいされた際、ギャップはありましたか?
実は、あまりギャップは感じませんでした。当時から北里大学医学部には美容外科もあり、眼瞼下垂手術や二重整形、フェイスリフトなどは身近なものだったためです。
また、院外研修の時期や、北里大学大学院に在籍し講師を務めていた頃も、外勤*(がいきん)はすべて美容外科でした。
「北里大学病院」時代は、悪性腫瘍を切除した部分を新たにつくり直す『再建外科』を中心に行っていました。機能の回復だけでなく、見た目の美しさまで追求する中で、「美容外科を専門にしよう」と考えるのはごく自然な流れだったと思います。
大手美容クリニックで院長を務めた後、質の高い美容外科が集まる激戦区・銀座に、あえて「銀座S美容・形成外科クリニック」を開業しました。
*外勤……大学病院などの勤務先とは別に、他の医療機関で診療を行うこと。
―――銀座S美容・形成外科クリニックの口コミを見ると、酒井先生への信頼がうかがえます。先生が施術を選ぶ基準を教えてください。
施術を選ぶ基準は、「自分で最後までコントロールできるかどうか」です。リスクを十分に把握できない場合は、患者さまに「やめたほうが賢明です」とはっきりお伝えし、そのような施術は行いません。
加えて、施術を選ぶ大きな基準の1つは、「ご本人に合っている施術かどうか」です。ご本人のご希望があっても全体とパーツのバランスを考慮して、おすすめできないような内容の場合は、患者さまに「やめたほうが賢明です」とはっきりお伝えし、そのような施術は行いません。
また、安全性についても、施術後も責任を持ってケアできる治療しか行っておりません。私自身が最後までしっかり責任を持って治療にあたれるような内容でないと、手術や注入などの施術もお引き受けも致しません。
例えば、ヒアルロン酸注射なら万が一の際は溶かすことが可能ですが、非吸収性の注入製剤は修正したくても完全に元の状態へ戻すことは困難です。
そのため、クリニックではそのような製剤を採用していません。美容医療の流行に惑わされず、有事の際に最後まで責任を持てる範囲を見極めています。
酒井先生の強み ~カウンセリングから患者満足を追求。修正手術の依頼も多数~
―――酒井先生の「鼻は1mmの違いで印象が大きく変わる」という診療哲学は非常に印象的です。その精密さへのこだわりについて教えてください。
鼻は本当に繊細なパーツです。厚さ1mmの軟骨を1枚入れるだけで印象は大きく変わり、左右が1mmずれるだけでも鼻が曲がって見えてしまうため、高い精密さが求められます。
そのため、鼻整形の場合はCT撮影で鼻の骨格や構造を詳しく確認し、3Dシミュレーションシステムで仕上がりイメージを患者さまと徹底的にすり合わせることが欠かせません。
鼻だけでなくほかの施術でも同じで、患者さまにご納得いただくまでカウンセリングを行います。たとえば、二重整形はブジー*というスティックで二重のラインをシミュレーションします。
当日に手術予定の方でも、二重幅を決めるのに長時間迷っている患者さまへは当日の施術はあえておすすめしていません。納得して施術を受けていただけるよう、後日に改めてご来院いただくことをご提案しています。
*ブジー……二重のラインを擬似的に作るために使用する、細い金属製の医療器具
―――酒井先生のカウンセリングでは、パワーポイントのスライドや手書きのスケッチを使われることもあるそうですね。
はい。大学病院時代から行ってきたムンテラ(患者さまへの説明)と同じスタイルで、ごく当たり前のことだと思っています。とにかく患者さまに分かりやすく、ご自分の体の中で何が行われるのかを正しく理解していただくことが一番大切ですからね。
他院修正のご相談に来られる患者さまの中には、診断基準があるにもかかわらず計測もせずに眼瞼下垂と診断され医師の勧めで手術を受けてしまうこともあります。
医師から十分な説明を受けないまま、安直に提案された術式で治療を受けてしまったりするケースもあり、非常に残念に思います。やはり、適応や診断基準についてきちんと説明することこそ、本来の医療だと考えています。
―――「銀座S美容・形成外科クリニック」は『銀座の駆け込み寺』と呼ばれ、他院修正のご相談も多いそうですね。また、同業の先生方から患者さまをご紹介されることも多いと伺っています。先生がこれほど信頼を集める理由は何だとお考えですか?
他院修正のご相談は確かに多いですね。
過去には、韓国の美容クリニックで鼻整形を受けた患者さまで、医師から鼻中隔(びちゅうかく)に軟骨を入れていないと言われていたのに、実際は保存軟骨が入っていたケースもありますし、逆に承諾なく自身の鼻中隔を採取されていたケースもありました。
このように、他院修正は実際に手術で中を確認してみないと分からないことが多く、非常に難易度が高いものですが、責任を持って修正手術を行っています。
また、同業の先生から「鼻整形や二重整形は酒井先生に」と患者さまをご紹介いただくのも、非常にありがたいことです。
他院修正だけでなく、私自身、思い通りに仕上がらなかった場合は、患者さまにご納得いただいたうえで修正手術を自ら行うのが基本です。そうした姿勢も、評価していただいている理由の1つかもしれません。
美容医療業界の今後の動向と期待 ~経歴を重んじ、技術を次世代へ継承する~
―――第109回日本美容外科学会(JSAS)の学会長も務められた酒井先生ですが、今の業界をどのように見ていらっしゃいますか?
商業的な側面が先行しすぎていることには、懸念を抱いています。カウンセラーが施術を決め、アップセル*を狙うような体制や、SNSの派手さだけで集客する風潮は、決して好ましいものではありません。
経営も大切ですが、患者さまと一人の人間として向き合えない医師やスタッフには問題があると思います。非常に残念なことですが、身分証を預かったうえで、契約するまで2~3時間にわたり部屋から出してもらないような状況に置くクリニックもあると聞きます。
また、顔面のほくろ数十ヶ所を取る手術に100万円もの費用をかけたにもかかわらず、顔中が傷跡だらけになってしまった方や、冷凍保存した脂肪を注入したところ修正困難なほど組織がガチガチに固まってしまった方もおられました。
このように、患者さまへの説明や施術後の責任が十分とはいえない医療が行われている現状について、日本美容外科学会(JSAS)を通じて情報発信していきたいと考えています。
*アップセル ……より高額なプランや追加オプションへ誘導し、顧客単価を上げる手法
―――倫理観のある医師の育成は大きな課題ですね。次世代のドクターたちに伝えたいことを教えてください。
「経歴も大切にしてほしい」ということです。もちろん、直美の先生でもしっかりとした知識や技術を取得している先生もおられます。
ただ、毎年、直美*(ちょくび)の先生の中には一定数「形成外科で勉強し直したい」という方がいます。しかし、各病院には受け入れ定員があり、一度形成外科から離れた先生や開業した先生の優先順位は極めて低いため、後から戻りたくても戻れないのが現状です。
だからこそ、安易な道に流されず、まずはしっかりとした医学的基礎を固めてほしいですね。たとえば、大学病院や基幹病院などでは、他科の医師と連携して専門外のことも学べるのがメリットです。
また、ムンテラを重ねて患者さまへの説明力をつけたり、患者さまへ寄り添う看護師の姿を間近で見たりすることも勉強になります。
もちろん、とことん真面目に技術を学びたいという志のある先生には、私が培ってきた技術を伝えたいと思っています。
▽「直美」規制、2026年4月の現在地をチェック
*直美(ちょくび)……「直接美容医療」の略称で、保険診療の経験なく自由診療である美容医療へ進む医師を指す言葉
読者へのメッセージ ~SNSに惑わされず、信頼できるクリニックを選ぼう~
―――最後に、美容医療を検討している読者へアドバイスをお願いします。
情報は非常に重要ですが、SNSで発信される華やかな情報だけを鵜呑みにしないでください。他院修正に来られる患者さまの中には、クリニックの実績や医師の技術ではなく、広告の派手さで選んでしまい、後悔されている方も数多くいらっしゃいます。
まずはしっかり調べて、複数のクリニックへ足を運んでみてください。大がかりな手術の場合は、例えば3つくらいのクリニックを回り、情報を比較・検討することをおすすめします。
―――酒井先生が考える、クリニック選びのポイントはありますか?
はい、大きく4つあります。
まず1つ目は、医師自ら施術について説明してくれるクリニックを選ぶことです。カウンセラーが主導で施術を決めるクリニックは要注意です。また、低価格をうたっていても、来院後にアップセルを勧めるクリニックもあるため、注意しましょう。
2つ目は、医師の経歴を確認することです。例えば、もしもご自身が胃がんの手術を受けることになった際には、やはり基礎から学んで経験が豊富な先生に治療を任せたくはないでしょうか?
美容外科も医療行為ですから、専門的な経験をきちんと積んできた先生の方が信頼度は高いと考えます。
3つ目は、メリットばかりを伝える医師には注意することです。診断基準や適応の説明がなく、メリットばかりを語って施術を安易に勧める医師も避けましょう。本当に信頼できる医師であれば、リスクも含めてしっかり説明してくれるはずです。
4つ目は、SNSだけでクリニックを判断しないことです。低価格や豪華な内装など、視覚的な情報だけに惑わされないようにしましょう。
最終的には、実際に足を運んでみることが一番です。その先生があなたの悩みに真剣に向き合い、納得できるまで説明してくれるかを、ぜひご自身の目で見極めてください。







