BIANCA CLINIC/健康増進クリニック 院長
前田 陽子 先生
「沖縄県立南部医療センター・こども医療センター」で初期研修を修了後、京都府立医科大学放射線科、「済生会滋賀県病院」で放射線科医として研鑽を積む。アメリカ「リオルダンクリニック」に留学後、2023年に「BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)」へ入職。美容内科指導医として、再生医療やホルモン補充療法、ペプチド療法など世界基準の先進的な治療を提供し体内からの若返りを目指すことにより、患者の健康と美しさをトータルでサポートしている。2026年から「健康増進クリニック」院長も務める。
この記事は、40代で痩せにくいと感じる理由を、成長ホルモンやインスリン、女性ホルモンなどの変化から解説します。
「食べる量は増えていないのに太りやすくなった」「ダイエットをしても以前のように痩せない」と感じ、さらに食事量を減らしたり、運動量を増やしたりしている方もいるのではないでしょうか。
しかし、40代からの体重管理では、摂取カロリーを減らすことだけに目を向けるのではなく、筋肉や血糖、睡眠など、代謝に関わる体の状態を広く捉えることも大切です。
BIANCA CLINIC(ビアンカクリニック)の美容内科指導医・前田陽子先生の監修のもと、40代で痩せにくいと感じる理由と、体重管理で意識したいポイントを解説します。
BIANCA CLINIC|日本を代表する美容健康再生医療のクリニック
40代で痩せにくいのは代謝が落ちたからだけではない
40代で感じる痩せにくさには、年齢による体の変化だけでなく、日々の活動量や生活環境など、さまざまな要因が関係しています。まずは「代謝が落ちたから」と一括りにせず、何が変わっているのかを整理してみましょう。
同じ生活をしていると思っていても40代になると痩せにくい理由
「食べる量は変わっていないのに太りやすくなった……」そう感じている方も多いのではないでしょうか。
40代の痩せにくさは、複数の変化が重なって表れやすくなります。仕事や家庭環境によって、座って過ごす時間が増えたり、夕食が遅くなったりと、本人が気づかないうちに生活が変化していることも。
体重の増減は、摂取エネルギー・消費エネルギーのバランスが基本です。しかし、わずかな差でも長期間積み重なれば、体重や体型の変化につながります。「急に太った」と感じても、実際には数年かけた変化が40代で目立ち始めた可能性もあるのです。
そのため、痩せにくさを単純に「食べすぎ」や「意志の弱さ」の問題と捉えず、生活や体の変化を含めて考えることが大切です。
体重だけでは捉えにくい筋肉量と脂肪の変化
40代では、体重がほとんど変わっていなくても、筋肉が減って脂肪が増えるなど、体組成が変化していることがあります。
筋肉量が減れば、基礎代謝だけでなく日常生活で消費するエネルギーも減りやすくなります。また、中年期の女性では、加齢や更年期に伴うエストロゲンの変化によって、腹部脂肪や内臓脂肪が増えることも。
そのため、40代からは体重だけを減量の目安にするのではなく、腹囲や筋力、服のサイズ、健診結果なども含めて、自分の体がどう変化しているのかを見るようにしましょう。
40代で痩せにくい背景にある3つのホルモン・代謝変化
40代の痩せにくさを考えるうえでは、生活習慣だけでなく、ホルモンや代謝の変化にも目を向ける必要があります。ここでは、成長ホルモン・インスリン・女性ホルモンの3つに注目します。
成長ホルモンの減少は脂質代謝や体組成にも関わる
成長ホルモンは、子どもの成長だけでなく、成人では脂質代謝や除脂肪量を含む体組成に関わるホルモンです。分泌量は若い時期をピークに、加齢とともに徐々に低下*¹していきます。
ただし、40代以降の痩せにくさを、成長ホルモンの低下だけで説明することはできません。筋肉量や内臓脂肪、食習慣、活動量、睡眠、女性ホルモンの変化など、複数の要因が関係しているケースも。
そのため、40代以降の体重管理では、食事量だけに注目するのではなく、ホルモンや筋肉量、睡眠、血糖などを含めて体の状態を多角的に捉えることが大切です。成長ホルモンの分泌は睡眠や運動、体組成とも関係するため、生活習慣にも目を向けましょう。
一方で、減量を目的に成長ホルモンを安易に補充すれば良いわけではなく、糖代謝への影響なども考慮し、治療は医師の医学的判断のもとで検討する必要があります。
インスリン抵抗性が高まると血糖を調整しにくくなる
インスリンは、血中のブドウ糖を細胞へ取り込ませ、血糖値を調節するホルモンです。このインスリンが効きにくい状態を「インスリン抵抗性」といいます。
インスリン抵抗性が高まると、同程度に血糖値を調節するために、より多くのインスリンを必要とすることも。こうした糖代謝の変化は、内臓脂肪の蓄積などとも関係しているといわれています。
ただし、「インスリンが出る=太る」という単純なものではありません。筋肉量や内臓脂肪、食事、活動量なども含めて考える必要があります。
女性ホルモンの変化が脂肪分布・筋肉・睡眠に影響する
40代女性の中には、更年期移行期に入り、エストロゲンの分泌が揺らぎやすくなる方もいます。こうした変化は、脂肪のつき方や糖・脂質代謝、筋肉量などと関連*²しています。
さらに、ほてりや寝汗などによって睡眠が妨げられれば、食欲や日中の活動量へ間接的に影響することもあるでしょう。
ただし、更年期だけが体重増加の原因ではありません。中年期の体組成変化には、加齢や活動量、食習慣なども関係します。男性でも加齢に伴う性ホルモンや筋肉量の変化があるため、性別を問わず体全体の変化として捉えることが大切です。
成長ホルモンとインスリンから見る40代の痩せにくさの仕組み
成長ホルモンやインスリンの変化は、それぞれ単独で痩せにくさにつながるわけではありません。筋肉量や内臓脂肪、睡眠などを介して影響し合うことで、体重を管理しにくい状態につながることがあります。
筋肉量の低下が血糖を使いにくい体につながる
筋肉はエネルギーを消費するだけでなく、血液中のブドウ糖を取り込んで利用する役割*³も担っています。筋肉量が低下したり、体を動かす機会が少なくなったりすると、エネルギー消費や糖の利用が低下しやすくなるのです。
40代以降は、加齢に加えて成長ホルモンや女性ホルモンの変化なども筋肉量の維持に関わります。こうした変化が重なることで、筋肉量の低下→エネルギー消費や糖利用の低下→脂肪が増えやすくなるという循環につながる可能性があります。
内臓脂肪が増えるとインスリン抵抗性が進みやすい
内臓脂肪は、単にエネルギーを蓄えるだけでなく、糖や脂質の代謝にも関わる組織です。過剰に蓄積すると、脂肪酸やさまざまな生理活性物質を介して、インスリン抵抗性に関わることがあります。
インスリン抵抗性が高まれば、糖・脂質代謝が乱れやすくなり、脂肪を減らしにくい状態につながる可能性があります。
つまり、「成長ホルモンが減るとインスリン抵抗性が高まる」と一方向に捉えるのではなく、筋肉量や内臓脂肪などを介して複数の変化が影響し合うと考えることが大切です。
睡眠不足が痩せにくさの循環を強めることも
睡眠も、40代の痩せにくさを考えるうえで見逃せない要素です。成長ホルモンは睡眠中、とくに深い睡眠と関連して分泌されるほか、睡眠不足はインスリン感受性や食欲の調節にも影響します。
40代は仕事や育児、介護、更年期症状などによって睡眠が乱れやすい年代です。睡眠不足による疲労で日中の活動量が減れば、さらにエネルギー消費が少なくなることもあります。
食事や運動だけを見るのではなく、睡眠も含めて代謝を捉えることが、痩せにくさの循環を見直すポイントです。
40代で痩せにくいときは「減らす」より代謝が働く条件を整える
40代からの体重管理でも、食事や運動が基本であることに変わりはありません。ただし、食べる量を減らすだけでなく、筋肉・血糖・睡眠を含めて代謝が働きやすい状態を整えることが大切です。
食事はカロリーだけでなく血糖と筋肉維持を意識する
痩せにくいからと食事量を大幅に減らすと、必要な栄養が不足し、筋肉量の低下につながる可能性があります。
40代からはカロリーだけに注目せず、食事の量・質・タイミングを見直しましょう。
たんぱく質を意識して摂り、野菜や豆類などを組み合わせることは、筋肉の維持や血糖管理にも役立ちます。
また、甘い飲み物や間食、アルコール、寝る直前の食事など、気づきにくい摂取量を確認することもポイントです。必要な栄養を摂りながら血糖値が大きく変動しにくい食生活を意識しましょう。
有酸素運動だけでなく筋肉へ刺激を入れる
40代からの運動では、消費カロリーを増やすだけでなく、筋肉量を維持する視点も重要です。
ウォーキングなどの有酸素運動に加えて、スクワットや階段の利用など、筋肉に負荷をかける運動も取り入れてみましょう。激しいトレーニングをする必要はなく、無理なく継続できることが大切です。
また、運動する時間をつくるだけでなく、座り続ける時間を減らすなど、日常生活で体を動かす機会を増やすことも意識してみてください。
痩せにくさに関わる睡眠の質を見直す
睡眠は、成長ホルモンの分泌や糖代謝などにも関わります。就寝・起床時間を整え、寝る直前の食事や飲酒、スマートフォン、遅い時間のカフェインなど、眠りを妨げる習慣がないか見直しましょう。
ただし、成長ホルモンの分泌を目的に、特定の食品やサプリメントへ頼る必要はありません。食事・運動と同じように、睡眠も生活習慣全体の中で整えることが基本です。
強いいびきや日中の眠気がある場合や、更年期症状によって眠れない状態が続く場合は、医療機関への相談も検討しましょう。
40代で痩せにくいときは「体の状態」を知ることから始めよう
食事や運動を見直しても思うような変化が得られない場合は、さらに制限を強める前に、自分の体の状態を確認することも選択肢です。美容内科領域では、体組成や代謝、生活習慣などから痩せにくさの背景を確認します。
美容内科的視点では痩せにくさをどのように確認する?
美容内科と呼ばれる分野では、体重だけでなく、BMIや腹囲、体脂肪率、筋肉量などから体組成を確認します。必要に応じて血糖値やHbA1c、脂質、甲状腺機能、性ホルモンなどを調べることもあります。
また、食事や運動、睡眠、ストレスといった生活背景も重要な判断材料です。必要な検査や確認項目は一律ではなく、症状や既往歴、健診結果などを踏まえて医師が判断します。
痩せにくさの背景を多角的に評価する理由
同じ「痩せにくい」という悩みでも、その背景は人によって異なります。筋肉量や内臓脂肪、ホルモン、睡眠、生活習慣など、複数の要素が関係しているためです。
例えば、筋肉量が低下している人が食事量をさらに減らすと、必要な栄養が不足し、筋肉を維持しにくくなる可能性があります。
そのため、「あと何kg減らすか」だけではなく、なぜ今痩せにくいのかを整理し、自分の状態に合った方法を考えることが大切です。
生活習慣を見直しても変化がない場合や、健診結果・体調に気になる変化がある場合は、医療機関への相談も検討しましょう。
美容内科的アプローチでは何を検討する?
美容内科でも、体重管理の基本となるのは食事・運動・睡眠などの生活習慣です。そのうえで、体組成や代謝などを評価し、必要に応じて医療的なアプローチを検討します。
美容内科的アプローチ選択肢の1つとして、成長ホルモン分泌に関与するペプチド製剤を用いるペプチド療法が検討されることがあります。
ただし、ペプチド療法は一般的なダイエット方法ではありません。
使用する製剤や治療目的によって、期待される作用、適応、安全性、国内承認の有無は一律ではなく、製剤によっては国内未承認または適応外使用となる場合もあります。また、成長ホルモンを外から直接補充する治療とは異なります。
治療を検討する際は、食事・運動・睡眠などの生活習慣を基本としながら、治療の目的や期待できること、起こり得る副作用、費用などについて十分な説明を受け、自分に合う選択肢かを医師と相談して判断しましょう。
▷成長ホルモンとペプチド療法について詳しく見る
▷BIANCA CLINICのペプチド療法について詳しく見る
Q&A|40代で痩せにくい人によくある質問
40代の痩せにくさについて、よくある疑問をまとめました。年齢やホルモンとの関係を正しく理解し、自分の体に合った対策を考える参考にしてください。
Q. 40代になると急に痩せにくくなる?
40代になった途端に痩せにくくなるわけではありません。筋肉量や活動量、睡眠、ホルモン環境などの変化が徐々に重なり、この年代で痩せにくさを実感することがあります。
Q. 食べていないのに痩せにくいのはホルモンのせい?
ホルモンの変化も要因の1つですが、それだけが原因とは限りません。食事内容や活動量、筋肉量、睡眠なども含めて考えることが大切です。
Q. 40代女性が痩せにくいと感じるのは更年期が原因?
更年期に伴うエストロゲンの変化は、脂肪分布や糖・脂質代謝などに関係します。ただし、加齢や活動量、食生活、睡眠なども影響するため、更年期だけが原因とはいえません。
Q. 成長ホルモンを増やすと痩せやすくなる?
成長ホルモンは脂質代謝や体組成に関わりますが、成長ホルモンを増やせば痩せやすくなる、という単純なものではありません。まずは睡眠や運動、栄養などの生活習慣を整え、治療を検討する場合は医師の判断を受けることが重要です。
40代で痩せにくいときはホルモンと代謝の変化にも目を向けよう
40代の痩せにくさには、筋肉量や活動量の低下だけでなく、成長ホルモンやインスリン、女性ホルモン、睡眠など、さまざまな変化が関係しています。
そのため、「食べすぎ」や「意志の弱さ」だけを原因と考えるのではなく、年齢とともに変わる体の状態にも目を向けることが大切です。
体重管理の基本は食事と運動ですが、食べる量を減らすことだけに偏る必要はありません。筋肉を維持する食事や運動、血糖を意識した食生活、十分な睡眠などを組み合わせ、代謝が働きやすい環境を整えていきましょう。
生活習慣を見直しても変化がみられない場合は、体組成や健診結果などから痩せにくさの背景を確認することも選択肢です。ホルモンやペプチドに着目した治療についても、一般的なダイエット方法とは分けて考え、適応やリスクを理解したうえで医師と相談しながら判断しましょう。
参考文献:
*¹ Endotext. Growth Hormone and Aging.
NCBI Bookshelf.
*² Kodoth V, Scaccia S, Aggarwal B.
Adverse Changes in Body Composition During the Menopausal Transition and Relation to Cardiovascular Risk: A Contemporary Review.
Women's Health Reports. 2022;3(1):573-581.
*³ Merz KE, Thurmond DC.
Role of Skeletal Muscle in Insulin Resistance and Glucose Uptake.
Comprehensive Physiology. 2020;10(3):785-809.
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