今回は、東京・銀座にある「LOCHIC CLINIC GINZA」の院長である小野 准平先生にインタビュー。形成外科医として研鑽を積んだのち、もともとの目標であった美容外科医に転身した小野先生。専門としている豊胸手術では、オリジナルの豊胸術『完全直視下法』を開発するなど、美容医療の発展に大きく寄与しています。そんな小野先生に、美容医療を目指した背景や現在の豊胸手術のスタイルが確立したきっかけ、いま力を入れている豊尻手術についてなど、詳しくお話を伺いました。
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ドクターズプロフィール
LOCHIC CLINIC GINZA 院長
小野 准平(おの じゅんぺい)先生
形成外科全般に加え、乳腺外科、消化器外科、整形外科、救命救急センターでも研鑽を積み、日本形成外科学会専門医を取得後、「KJC北里美容医学センター」に勤務。その後「東京美容外科」に入職し鼻整形や豊胸手術を専門に取り組み、2022年に「LOCHIC CLINIC GINZA(ロシッククリニック銀座)」を開院。国内外での学会発表や学術活動などを通し、美容医療の普及に尽力する。
(経歴) 2006年 東京医科歯科大学 医学部医学科 卒業 2008年 北里大学病院 形成外科・美容外科学 入局 2014年 東京美容外科 勤務 2016年 東京美容外科 新宿院院長 2022年 LOCHIC CLINIC GINZA開院 |
医師になったきっかけ ~芸術的創造活動へ~
―――まず、医師を目指したきっかけを教えてください。
父親が内科医だったので、医療業界は比較的身近な世界でした。でも芸術的創造活動にも興味があったので、高校生のときには建築の道に進むか医師になるか悩みましたね。結局医師の道を選び、医学部に入るために勉強しました。しかし、芸術的創造活動への想いはずっとベースにあり、大学生のときから将来的には医学と芸術の両方の要素を備えた美容医療に従事したいと決めていたんです。
美容医療への情熱 ~形成外科専門医を経て美容外科の道へ~
―――大学卒業後に形成外科を選んだのはどのような経緯だったのですか?
医師になり診療科を選ぶにあたり、心臓血管外科か形成外科の2つで悩んだんです。卒業後の研修先を選ぶにあたりいくつか見学させていただき、魅力を感じたのが「北里大学病院」の形成外科・美容外科の医局でした。当時では珍しく、「北里大学病院」は美容に対して良い意味で寛容で。「北里大学病院」の医局出身者には、高名な美容外科医が何名もいらっしゃいます。
ただし、寛容ではあるものの、美容外科は健康体に傷をつけることであり、生半可な気持ちでやるものではないというのが北里大学の考え方。美容医療は形成外科の下積みのうえにあり、病気やケガによる手術よりもハードルが高い医療であるという教えにすごく感銘を受けて、「北里大学病院」に就業することに決めました。
「北里大学病院」の形成外科・美容外科は何というかすごくストイックな医局で。通常であれば入った医局で技術を深めていきますが、本質的なところまできちんと理解するため、消化器外科や乳腺外科、整形外科、救命救急センターと、途中形成外科を離れていろいろな診療科を回るんです。自分自身も形成外科以外の知識も深めたうえで、日本形成外科学会専門医を取得しました。
―――いろいろな科で学んでさらに美容医療に進むモチベーションを保ち続けられたのはなぜですか?
僕の心の中では、ずっと美容医療への気持ちは燃え続けていて。一見遠回りに思えるかもしれませんが、形成外科専門医になるまでの道のりは全部必要だと自分でも思っていました。美容外科は体の表面を扱いますが、深いところも理解しておかなければ事故にもつながります。体の本質的なところまできちんと理解できた経験は、決して無駄ではなかったと思っています。
小野先生の強み ~世界最先端の豊胸手術を目にし、日本のレベルの低さを痛感~
―――大学生のときに決めていた通り、「東京美容外科」で美容外科医としての一歩を踏み出された小野先生。小野先生と言えば鼻整形と豊胸手術ですが、「東京美容外科」で研鑽されたのですか?
形成外科医から美容外科医に転身し、「東京美容外科」で8年間お世話になりました。東京美容外科がジョン ジェヨン医師の在籍する「ザ・プラス美容整形外科」と業務提携するようになったのがきっかけで、東京美容外科の鼻整形の顧問に就任されて。私が鼻整形を専門的に行うようになったのは、師匠であるジョン・ジェヨン先生との出会いがきっかけです。
豊胸手術に携わったのも、「東京美容外科」に在籍している際に麻生泰先生のご厚意で韓国に世界最先端の豊胸手術を勉強しに行く機会をいただいたことがきっかけです。「東京美容外科」での環境が、今の自分を形成していると思っています。
―――小野先生の豊胸手術のスタイルが確立された背景を教えてください。
麻生先生と訪れた韓国で学んだ豊胸手術が、内視鏡で行うデュアルプレーン豊胸です。従来の大胸筋下法の欠点を補う方法で、豊胸手術の中で難易度の高い術式の1つ。このときに日本との技術の差を痛感したんです。当時日本ではまだ「デュアルプレーン豊胸?なんだろう?」という時代でした。
デュアルプレーン豊胸はもう20年以上前から世の中にありますが、ちゃんとできる日本の美容外科医は非常に少ない。日本の豊胸手術は、正直20年遅れていると思いましたね。今に至っても術式をアップデートしないまま豊胸手術を行っているクリニックもたくさんあります。日本の技術の遅れを取り戻すべく、豊胸手術をブラッシュアップしていこうと心に決めたんです。
自分なりに豊胸手術を追求していくうちに、内視鏡を使うデメリットも感じるようになりました。内視鏡でモニター越しに診るよりも、血管や神経を直接見ながら手術を行う方が当然精度も安全性も高い。なんとかできないかと、いろいろ器具を改良し、今から5~6年ほど前に『完全直視下法』が形になりました。直視下で行うためより正確に操作でき、従来の方法よりも傷も小さく術後の痛みも少なくすみます。ありがたいことにSNSなどで“小野パイ”という名前でも認知が広がるようになりました。
▽小野先生も登壇したCutting Edge(カッティングエッジ)のレポートはこちらから
―――小野先生がカウンセリングで重視していることはありますか?
結構失礼なぐらい患者様のライフスタイルについて伺いますね。胸が小さいことを馬鹿にされた、授乳後に垂れてしまった、仕事の関係上胸が大きい方が良いなど、豊胸手術の目的は患者様によって全然異なるんです。そのため、まずはカウンセリングで、患者様の目的に寄り添うことからスタートします。
豊胸手術にはいくつか種類があり、どの方法が良いのかは患者様により異なります。例えばデュアルプレーン豊胸は、痩せている方がシリコンを入れたときにシリコンの形がくっきり出るのを回避するために、筋肉の下の深いところに入れる技術です。海外のモデルさんのようなくっきりと浮き出ているような胸にしたいのか、それとももっと自然な胸にしたいのか、どういうスタイルを求めているか伺ったうえで、背景や価値観、個性などを大事にしてデザイン設計します。
―――現在豊尻手術にも注力されていると伺いましたが、その背景を教えてください。
そうですね、例えば鼻整形でも、患者様の目的は“きれいな鼻”ではなく“きれいな顔”ですよね。ボディの手術に関しても、目指しているのはきれいな体です。きれいな体を目指すうえで、胸と同じくらいお尻も重要なポイントになります。美意識の高い方は以前から豊尻手術にも注目されていました。
豊尻手術は欧米などで人気のブラジリアンバットリフトが有名です。しかし、アジア人のお尻は骨格的に平たんになりがちでボリュームも出にくく、胸よりも難易度が高い。そのため、ブラジリアンバットリフトとは考え方の異なる、アジア人に向けた技術が必要になります。そこで僕現在考案しているのが、アジアンバットリフト。変えられない骨格の形をベースにどうきれいな形を作っていくか、今試行錯誤しているところです。“小野パイ”と同じく“小野ケツ”が定着していけばうれしいですね!
美容医療のこれまでとこれから ~美容整形=隠すものという風潮を変えたい~
―――小野先生はCutting Edge発起人の1人でもありますが、美容医療業界の発展のために必要なことをどのようにお考えでしょうか。
日本の豊胸手術は20年遅れていると痛感しましたが、これに気づけた理由は麻生先生に学ぶ機会を与えていただいたから。あのとき機会を与えていただいていなければ、20年遅れている事実にも気づけなかったし、そこから得た学びもありませんでした。だからこそ、与えていただいたものと同じくらいのことを他の方に返していくのが僕の美容外科医としてのミッションだと思っています。積極的に自分がやってきたことを発信していくことで、ほかの方に気づきを与える機会になればうれしいです。
日本の美容医療のマーケットを成熟させていくためには、技術的な向上ももちろん必要ですが、患者様の意識改革のため見せ方を良くする業界側の努力も必要だと思っています。時代背景はかなり変わってきましたが、美容整形のネガティブなイメージはいまだ根強く、整形は隠すべきものと思っている方も多い。ネガティブなイメージをポジティブに変えて、「整形してますが何か?」と患者様が胸を張って言えるような風潮を作るのが僕たちの仕事です。
クリニックによっては“バレない豊胸”とか“バレない整形”というフレーズを使っているところもありますが、僕はあまり好きではなくて。もちろん、あわよくばバレたくないという患者様の気持ちは理解していますし、質感や触り心地が自然で傷も目立たない方が良いと思うのは当然のことです。しかし、バレない手術という表現では、恥ずかしい、後ろめたいことをしていると言っているようなもの。患者様が希望する分には良いですが、提供する医療者側がその言葉を使うのは間違いだと思うんです。
見た目や質感を自然にするのは当たり前のことですし、傷も含めてきれいにするのが僕たちの仕事。“小野パイ”という言葉がSNSなどで浸透してくれたため「私小野パイだよ」と堂々と自慢してくれる方もいます。隠すよりもむしろ言いたい、自慢したいような技術を提供していくことが、「ロシッククリニック」の目指すところ。私の一つひとつの仕事が美容医療のイメージをポジティブに変えていくことにつながると良いなと思っています。
読者の方へのメッセージ ~人生を豊かにするきっかけを提供したい~
美容医療は美容の側面が先行しがちですが、目的と行為は人生を幸せにする医療であることを忘れてはいけません。専門の1つである豊胸手術も、胸を豊かにするのではなく、人生を豊かにする手術だと思っています。
僕は、松井秀喜選手が好きな言葉のはじめのみ変えて、『体が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、運命が変わる。』とお伝えしています。もちろん、シリコンが直接体に良い働きかけをするわけではありませんが、体が変わることが一歩踏み出すきっかけになり、患者様の人生を豊かにしていけると良いですね。今を変えたい方は、ぜひ僕に相談しに来てください。