美容医療のトレンドは、もはや「次に何が流行るか」では語れません。いま現場で起きているのは、治療法やデバイスの入れ替わりではなく、医療そのものの“設計思想”が書き換わっているという大きな変化です。
本特集では、第一線のドクターたちが臨床の中で掴んでいる実感値をもとに、2026年以降美容医療がどこへ向かうのかを多角的に読み解きます。
キーワードは予測ではなく判断。これからの美容医療をどう見極め、どう選ぶべきか。流行に振り回されないための視点をお届けします。
INDEX
【美容皮膚科】美容皮膚科は「今」ではなく「未来の肌」を設計する

シミやシワを取る、肌をふっくら見せるなど、これまでの美容皮膚科は、「今ある悩み」をどう改善するかが中心でした。しかし、現在の美容皮膚科の役割は大きく変わりつつあります。
第一線で診療にあたる今泉明子先生に、これからを見据えた美容皮膚科の“考え方の変化”を伺いました。
NERO美容皮膚科アンバサダー/今泉スキンクリニック 院長 今泉 明子先生
今泉先生:
2026年の美容皮膚科では、「予防美容」と「ナチュラル志向の注入治療」がさらに主流になると感じています。
なかでも、患者様の肌質・骨格・筋肉の動きに合わせた“スキンコンディショニング治療”のニーズは確実に高まっており、従来の「ボリュームを補う注入」から「未来の老化変化を予測した注入」へと進化しています。
また、スキンブースターやバイオスティミュレーターなど、肌そのものの質感改善や再生を促す注入も注目されています。
さらに、皮膚常在菌(マイクロバイオーム)を整えるスキンケアや、DNA解析による美容プランの提案など、より“個の肌”に向き合う医療が求められています。
治療を選ぶ際は「今の悩み」と「5年後の肌」を意識した選択が、美容医療の価値を最大化する鍵になると考えています。
NERO編集長の見解|美容皮膚科選びは「施術名」より「設計思想」で見る
スキンブースターやバイオスティミュレーター、予防注入など、美容皮膚科の世界では新しい言葉が次々に登場しています。しかし、本質は決して複雑ではありません。
選ぶ基準は、以下のとおり。
- この治療が、どの老化変化を予測して設計されているのか
- 皮膚・骨格・筋肉のうち、どこにどう作用させる意図なのか
- 将来的に、やり直しや修正が必要になるリスクまで想定されているか
問うべきなのは「何を入れるか」ではなく、「なぜ“今”それを選ぶのかを説明できるかどうか」。今後、美容皮膚科は「メニューが多い医院」ではなく、「未来の変化まで語れる医師」が選ばれる時代へと確実に進んでいくでしょう。
▽今泉先生のインタビュー記事はこちら
【美容外科】美容外科は敷居低下ではなく専門分化の時代へ

美容外科を「受けやすくなった医療」と捉えるだけでは、現在起きている変化の本質は見えてきません。いま進んでいるのは、医師ごとの役割と責任範囲が明確になる構造的な変化です。その実態を、小野准平先生の言葉から読み解きます。
小野先生:
近年、「美容外科は敷居が下がった」と言われることがありますが、実際に起きているのは敷居の低下ではなく、専門性の再編と分化だと感じています。
かつては、大手美容外科グループが豊胸や輪郭、鼻などの大きな手術まで幅広く担っていました。しかし現在、大手は再現性が高く、短時間で全国展開しやすい皮膚科寄り・非外科寄りの美容医療へと明確にシフトしています。
その一方で、骨切りによる輪郭形成や、保存的鼻形成(Preservation Rhinoplasty)など、より深い外科的専門性を要する領域は、個人のスペシャリストへと集約される構造が進んできました。
若い医師が積極的に海外へ学びに行き、世界の新しい術式が高速で日本に流入することで、これまで美容医療では扱われにくかった「骨」や「深層構造」が、現実的な選択肢として提示できる時代になっています。
結果として現在の美容外科は、デバイスや皮膚・脂肪を中心とした非外科的アプローチと、骨格や構造まで踏み込む高度外科的アプローチへと、はっきりと二極化しています。
2026年は、美容外科が「何でもやる医療」から、「誰が、どこまでを担うのか」が明確に問われる医療へと、本格的に移行していく節目の年になると考えています。
NERO編集長の見解|美容外科は「敷居」ではなく「担当領域」で選ぶ時代へ
美容外科を選ぶ際に、「有名だから」「大手だから」「何でもやっているから」といった基準は、すでに通用しなくなりつつあります。これから本当に重要になるのは、その医師がどこまでを専門として担っているのかという視点です。
判断の軸は、次の3点です。
- 皮膚・脂肪・デバイスを中心とした治療領域なのか
- 骨格や深層構造まで踏み込む外科手術を専門としているのか
- その領域において、十分な症例数と再現性を積み上げているのか
美容外科が明確に二極化する今、「何でもできる医師」を探すよりも、「自分の悩みがどの領域に属し、それを専門とする医師は誰なのか」を見極めることが、失敗しないための近道。
これからの美容外科選びは、敷居の低さではなく、専門の深さと責任範囲で判断する時代に突入しています。
▽小野先生のインタビュー記事はこちら
【美容婦人科】女性医療は“見た目の美容”から“人生に寄り添う医療”へと進化

美容医療の選択肢が広がる一方で、女性の身体にはこれまで見過ごされがちだった新たな課題も浮かび上がっています。
第一線で女性医療に向き合い続けてきた関口由紀先生に、今後を見据えた美容婦人科の現在地と、その先に必要な視点を伺いました。
美容婦人科アンバサダー/女性医療クリニックLUNA理事長 関口 由紀先生
関口先生:
2026年に向けて、美容医療全体ではGLP-1製剤を用いた減量治療が、さらに一般化していくと考えています。一方で、その流れの中で、女性の身体にはサルコペニアや皮膚のたるみ、全身倦怠感といった新たな課題も顕在化していくでしょう。
その結果、単なる「見た目の美容」ではなく、サプリメント療法やメンタル系薬剤、各種ホルモン治療など、女性のコンディション全体を支える医療の重要性が、より高まっていくと感じています。
また、顔や身体の美容が日常的になった層においては、フェムゾーン美容や性機能障害の治療が、次の自然な選択肢として広がっていく可能性があります。
とくに高齢層では、QOLやライフステージに寄り添った医療として、これらの分野はより一般的になっていくでしょう。
2026年は、女性医療・美容婦人科が「局所の美容」から「全身・人生設計に関わる医療」へと進化していく転換点になると考えています。
NERO編集長の見解|美容医療のゴールが“若く見える”から“楽に生きられる”へ
これからの美容婦人科選びで重要になるのは、「見た目がどれだけ変わるか」ではありません。本当に見るべきなのは、その医療が今の不調だけでなく、これからの人生をどう支えようとしているかという点。
見極めるポイントは、以下のとおりです。
- 体重や見た目の変化だけでなく、筋肉量・ホルモンバランス・全身状態まで見ているか
- サプリメントや薬剤、ホルモン治療を“対症”ではなく、生活や年齢変化と結びつけて設計しているか
- フェムゾーンや性機能の悩みを、恥や特別扱いではなく、QOLの問題として扱っているか
これから美容婦人科は「きれいになる場所」ではなく、年齢やライフステージの変化を、無理なく乗り切るための医療として選ばれていきます。
“若さ”ではなく、“楽さ・快適さ”を基準に医療を選ぶ視点が、これからのスタンダードになるでしょう。
▽関口先生のインタビュー記事はこちら
【アンチエイジング医療】「若さ」ではなく「人生の質と時間」を設計する医療へシフト

アンチエイジング医療は、長く「若く見えるための医療」として語られてきました。しかし、現在その定義は大きく書き換えられつつあります。研究と臨床の両面からアンチエイジング医療に向き合ってきた山田秀和先生に、現在地を伺います。
アンチエイジング医療アンバサダー/近畿大学アンチエイジングセンター客員教授 山田 秀和先生
山田先生:
これまでアンチエイジングや美容医療は、「若く見せる」「老化を遅らせる」といった感覚的・経験則的な領域として語られることが少なくありませんでした。しかし現在、世界の潮流は明確に変わりつつあります。
アンチエイジングは気分や印象の医療から、測定でき、学習でき、価値として蓄積できる医療へと移行し始めています。
背景にあるのは、エピジェネティッククロックをはじめとした老化指標の進化、健康診断・画像・生活データの統合、そしてHealth Asset(健康資産)=健康はコストではなく資産であるという考え方の国際的な広がりです。
2026年は、アンチエイジングが「治療」や「予防」という枠を超え、個人が自らの健康状態を把握し、設計し、投資する対象として本格的に再定義される年になると見ています。再生美容も重要なキーワードになるでしょう。
とくに日本は、国民皆保険・介護保険制度のもとで蓄積された超高齢社会の医療・健康データを有する、世界でも稀有なポジションにあります。
このデータをどのように活かし、どのような価値指標として可視化するのか。そこにこそ、日本発のアンチエイジング医療が世界に貢献できる可能性があると考えています。
今後のアンチエイジング医療に求められるのは、「何をするか」以上に、なぜそれを行い、どの状態を目指すのかという思想と設計です。
2026年は、アンチエイジングが“若さを競う医療”から、人生の質と時間をどう設計するかを問う医療へと大きく舵を切る転換点になるでしょう。
NERO編集長の見解|アンチエイジング医療は「若さ」ではなく「健康資産」で判断
これからのアンチエイジング医療を選ぶうえで重要なのは、「若く見えるか」や「流行っているか」ではありません。本当に問うべきなのは、その医療が自分の健康状態をどこまで可視化し、将来に向けて積み上げられる設計になっているかどうか。
アンチエイジング医療を選ぶ際のポイントは、次の3点です。
- 年齢や見た目ではなく、老化指標や身体データをもとに現状を把握しているか
- その治療が一過性の改善ではなく、再生や回復力を引き出しながら学習・蓄積できる「健康資産」として設計されているか
- 将来のQOLや時間の使い方まで見据えた目標設定がなされているか
近い将来、アンチエイジング医療は「何を受けるか」ではなく、「どの状態を目指し、どう管理していくか」で選ぶ医療へと転換します。
若さを競うのではなく、人生の質と時間をどう設計するか。その視点を持てるかどうかが、これからのアンチエイジング医療を見極める分かれ目になります。
▽2026年アンチエイジング医療の現在地はこちら
▽山田先生のインタビュー記事はこちら
【医療トレンド】美容医療は「結果」ではなく「プロセス」で評価される医療へ

ボリュームを足す、形を整える。美容医療は長く「何を入れるか」「どこを変えるか」という発想で語られてきました。
しかし、近年その前提は大きく変わり始めています。第一線で国内外の医療トレンドを見続けてきた堀田和亮先生に、美容医療がどこへ向かうのか、その構造的な変化を伺いました。
NERO医療トレンドアンバサダー/BIANCA CLINIC理事長 堀田 和亮先生
堀田先生:
2026年に向けて、美容医療の潮流は、「異物を入れる」発想から「自らの組織を育てる」方向へ、より明確にシフトしていくと感じています。
海外ではすでに、ヒアルロン酸などのボリューム補填を目的とした注入治療だけでなく、hADM製剤やECM製剤など、コラーゲン生成を促す製剤を選択したいという層が着実に増えています。
見た目の変化だけでなく、組織の質そのものを改善したいというニーズが背景にあります。
この流れは、日本でも2026年にかけて「ナチュラルさ」「持続性」「生体反応を重視する治療」として、徐々に広がっていくと考えています。
また同時に、デバイスを用いた非侵襲・最小侵襲の治療(Non-Surgical Procedures / Non-Invasive Treatments)は世界的にもすでに確立された選択肢となっており、フェイス・ボディともに市場は拡大を続けています。
とくにRF(高周波)などのエネルギーデバイスは、「手術(Surgery)」に代わる、より安全性と再現性を重視した医療的アプローチとして位置づけられています。
日本においても2026年は、“切る・入れる”かどうかではなく、いかに非侵襲で、どこまで結果を出せるかという判断軸が、より一般的になっていく年になるでしょう。
2026年は、美容医療が施術中心の時代から、組織・エネルギー・再生反応を含めた「医療設計」の時代へ進む節目になると考えています。
NERO編集長の見解|「入れる→育てる」非侵襲=妥協ではないという再定義
美容医療を選ぶ際、「切らない」「入れない」「ダウンタイムが少ない」といった言葉は、
長らく“軽い治療”“控えめな選択”として受け取られてきました。しかし、その認識は大きく変わっていくと考えられます。
美容医療を受ける際の判断基準は、次の3点です。
- 異物による即時変化ではなく、組織反応や再生をどう引き出す設計か
- デバイスや製剤が、どの層・どの生体反応を狙っているのか
- 非侵襲であることと、結果の再現性・持続性が両立しているか
「非侵襲=妥協」ではありません。むしろ、どこまで侵襲を抑えながら、どこまで結果を出すかを設計できるかが、医療としての成熟度を分ける時代に入っています。
今後、美容医療は施術名で選ぶものではなく、組織・エネルギー・再生反応まで含めて説明できる“設計思想”で選ぶ医療へと転換していくでしょう。
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▽堀田先生のインタビュー記事はこちら
2026年、後悔しない人がしているたった1つの共通点
美容医療はこれから、「新しい治療を知っているか」ではなく、その治療をなぜ選ぶのかを説明できるかが問われる時代に入ります。第一線のドクターたちが語ったのは、流行の先にある“構造の変化”でした。
施術名や話題性に振り回されるのではなく、自分の悩みと人生設計に照らして医療を選ぶこと。そのための判断軸を持てるかどうかが、美容医療で後悔しないための分かれ道になります。












